仮面ライダーディケイド 《インフィニット・ストラトスの世界》   作:URUTORA

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第13話 打ち上げ

「………で、ドベの俺がなんでクラス代表になっちゃってるわ「織斑君のクラス代表就任を祝して、かんぱーーーーーーい!!」…………………」

 

パンパーン!とクラッカーの乾いた音が食堂に鳴り響く。

放課後の時間、1組のクラスメイト達は自分達のクラス代表が決定したことを祝して、ジュースとお菓子で打ち上げを開いていた。

 

「俺はコーヒーでいかせてもらうぞ。ジュースってのは甘すぎてな」

 

「士さん、よろしければ…こちらのお茶菓子も一緒に召し上がってみてくださいませんか?わたくしも本国で紅茶と一緒に良く嗜んでいたものですの!甘さ控えめですのよ?」

 

「あ、ああ…」

 

パーティーといっても、所詮は学生が食堂にお菓子なりジュースなりを各々持ち寄って行う、いわゆるホームパーティーのようなものに近い。

ただIS学園には各国から代表候補性を含む将来有望なIS操縦者の卵達が入学している。よってテーブルに広がるお菓子や飲み物も国境を越えたよりどりみどりとなっており、ちょっとした国際交流会に見えなくもない。

 

「士さん、こちらのお菓子はいかがでしょうか?アールグレイととてもよく合いましてよ?ももも、もしよかったら、今度わたくしが入れて差し上げげても…」

 

「え…ああ、うん、うまいぞ。お茶もそうだな、今度もらおう、か?」

 

「ほっ、本当ですか!?!?約束ですわよ!?!?!?」

 

「おおっ!?おう、よろしくな…?」

 

「…セシリアってあんな感じだったっけ?」

 

クラス代表決定戦中、何か心境に変化でもあったのだろうか。士にやたらぐいぐいくるイギリス代表候補生。

 

正直に言って、士は彼女の家庭や育ちについて完璧に把握出来た訳ではない。

 

事故で亡くなってしまった両親の列車脱線事故。その事件を皮切りに、オルコット家を守るために自信のすべてを捧げてきたこと。そして、自らの父親に対する思いについて、対話の中でなんとなく理解した程度だ。

 

だがそれらは、セシリア・オルコットという1人の人間の物語のほんの上澄みでしかない。過去に何があったかをいくら聞いた所で、その時に想い、感じたことまでは分からない。相手と関わる時間が長かろうが短かろうが、1人の人間を事情をすべて把握するなんてことは不可能なのだ。

 

だからこそ、全てを知る必要は無いと門矢士は考える。戦いの中でお互いの事を理解し、なんとなく、だいたいで通じ合う。それだけでも、相手と通じ合うには十分だと。

 

…ただそれにしたって、セシリアの言動や距離感が代表決定戦前とマッチしない。押しが強いのは相変わらずだが「積極的に」といった言葉の方がしっくりくるし、言葉の中から感じられた「威圧」のようなものがまるで憑き物が落ちたように(・・・・・・・・・・)綺麗さっぱり無くなっていた。そしてなにより、代表決定戦後からやたらと士に話しかけてくる。

一時は敵同士であっても最後には通じ合い仲間となる、なんて経験も少なくない数を積んできた彼だが、さすがの凄まじい態度の切り返しに当てられ、門矢士にはめずらしく絶賛気遅れ中である。

今もセシリアのお茶菓子&紅茶シリーズのプレゼンをうけながら、おすすめ達をされるがまま食べ続けている真っ最中だ。

 

「なあ、結局なんで2人はクラス代表を辞退したんだ?」

 

流されるままの1組代表(織斑一夏)が、痺れを切らしたように改めて2人へ問いかける。

 

「ひとことで言えば、あの勝負は公平ではなかったから、ですわ!」

 

スクっとセシリアが立って答える。

 

「相手はイギリス代表候補性のわたくし、セシリア・オルコット。そしてこのわたくしをも圧倒した士さん。全員専用機持ちだったとはいえ、わたくしたち2人とでは明らかに差がありましたわ」

 

結局、IS学園1年1組の織斑一夏、門矢士、セシリア・オルコット三名によるクラス代表決定戦は、1位から順に士、セシリア、一夏という結果となり無事幕を閉じた。

本来であれば優勝者の士がクラス代表就任となるはずだったのだが、試合後に「一夏にクラス代表を任せたい」と士自ら進言、クラス代表を辞退した。

 

『この先成長の見込みが大きい一夏であれば、クラスの皆も積極的に一夏を支え、クラス全体としてのまとまりも強くなるだろう』、というもっともらしい理由を建前とし、正直本人からしてみれば1人で自由に動ける時間が無くなり面倒極まりないクラス代表というポストを、意外にもセシリアの後押しもあって一夏に半ば強引に押しつけたのだった。

 

「そこで、わたくしも大人げなく怒ったことを反省し、士さんの意見に賛同した、というわけですわ。クラス代表ともなれば、実践訓練も事欠かないでしょうし」

 

「そういうことだ一夏。しっかり励めよ」

 

セシリアの説明に合わせて適当にひらひらと手を振る士。クラスの女子たちも「いやあ分かってるねーセシリア!」「せっかくなんだから男子を代表にしないとね!」「門矢君も強いのに謙虚でかっこいー!」etc。

もはや、退路はとっくに断たれていたのだった。

 

「ちくしょう…敗者には選べる権利すらないってことか…」

 

「はあーい!新聞部でーす!今話題の男性IS適性者の特別インタビューにきましたー!」

 

すると、群がる女子たちの間をかき分けて(明らかに1組以外の生徒も混じりはじめていた)新たな女子生徒が入り込んできた。

 

「私、2年新聞部の黛薫子(まゆずみかおるこ)でーす!それではまず、晴れて1組のクラス代表に就任した今日の主役!織斑一夏君!ズバリ、意気込みをどうぞ!!」

 

周りの反応などお構いなしに、どんどん話を進めて行こうとする薫子と名乗った女子生徒は、録音中となっているボイスレコーダーをズイッ!と突き出してきた。

 

 

 

 

 

―Interview 1 ≪織斑 一夏≫―

 

 

「……まあ、なんというか、頑張ります」

 

「ええー、もうちょっと具体的にー!」

 

「そう言われてもなぁ…」

 

周りの空気に流されていつの間にかパーティーの主役にまでなってしまっているが、本人は先ほどの士とセシリアの戦いから自身の不甲斐なさを痛感させられたばかりで、意外とへこみ気味なのである。

ちらりと隣に座る幼馴染に視線を泳がせて助けを求めてみるが、

 

「取材までされて随分と人気者の様だな」

 

「…ほんとにそう思うか?」

 

「ふん」

 

ぷいっ、とそっぽを向かれてしまった。行為自体は可愛らしいものだが、どうやらこの幼馴染に救いの手を求めてもそのままストレートに助けてくれることはあまりないらしい。

 

一夏は深く考えるのを諦めて、思っていることを素直に吐露してみることにした。

 

「……俺は、まだまだ弱い。代表決定戦で戦った2人よりもずっと。でも、弱いままじゃいられない、いたくないんです。だから、ええと…がんばります」

 

「んーいい!さっきよりずっといいコメントだよー!」

 

なんとかご満足頂けたらしい。ホッと胸をなでおろすと共に、予想外にも自分の中に先ほどの言葉がストンと落ちていくのを感じていた。

 

(変わりたいなら…誰かを守りたいなら…………そうだよな、ゴチャゴチャ考えたって仕方ないよな!)

 

ぼやいていたって始まらない。一夏の目はまっすぐ前を見据え直す。

そっぽを向いた箒の口元がほんのり優しくほころんだ事には、さすがに気づけなかった。

 

 

 

 

 

―Interview 2 ≪セシリア・オルコット≫―

 

「さてー、次はセシリアちゃん!なぜ門矢君に続いて、クラス代表を辞退したかについて一言おねがい!」

 

「おほん。そうですわね、士さんが辞退したのであれば本来はわたくしこそ「あー、長そうだからもうだいじょーぶ。こっちで勝手に捏造しとくからー」ちょ、ちょっと!?!?!?」

 

姿勢よく立ち上がり大仰な振る舞いで語りだそうとするセシリアを完全に無視する(まゆずみ)記者。

 

「だいじょぶだいじょぶー、ちゃんといいように書いとくから!『初めて自分を負かした男の子に惚れてしまった、イギリス令嬢の恋心の真意やいかに!?』とかいいかなあ?」

 

「ほっ、惚れっ!?わわわわたくしは同じクラスメイトとして、専用機持ちとして…そう!同じ境遇である専用気持ちとして!お二人に敬意を表しようと思っただけですわ!!!」

 

ぼひゅん!という音が聞こえてきそうな勢いで、セシリアの顔が真っ赤に染めあがる。

 

「えー、でも門矢君だけ名前で呼んでる気がするんだけどぉー?」

 

「そっ、そんなことありませんわ!!そうでしょう、一夏さん!?」

 

「ここで俺に振るのかよ!?」

 

「よかったなァ一夏、女の子と仲良くなれて」

 

「くっそう、何で今ので箒が機嫌悪くなされるのかぜんっぜん分かんねぇっっ!!!」

 

 

 

 

 

―Interview 3 ≪門矢 士≫―

 

「さあさあ、最後はもう一人の話題の新入生、門矢君にインタビューしちゃおうかなー!」

 

「悪いが、俺への取材全般はNGだ。事務所を通すんだな」

 

「「「えーなんでー!?」」」

 

何故か他のクラスメイトまでもが士の取材NG宣言に抗議しだすが、士はどこ吹く風といった様子でコーヒーを飲み進める。

 

代表決定戦後、結局士は自身(ディケイド)についての説明を、教師である織斑千冬や山田真耶に改めてする必要はなくなっていた。

 

政府からの連絡が入り、その内容によると、門矢士は『日本政府が非公式選出した代表候補生』であり、専用機は政府極秘技術機関によって研究・開発された特殊試験機体、

第Ⅹ(エクストラ)世代:破壊者(ディケイド)』である、という事になっているらしかった。

 

(『極秘技術機関』、か。鳴滝の根回しか世界の辻褄合わせによる影響かは知らないが、自分の事とはいえ胡散臭いことこの上ないな)

 

実際、麻耶は釈然としない様子だったし、一夏、セシリア、箒からは散々な質問攻めに合わされた。千冬に関しては割り切っているのか何も聞いてこなかったが、眉間を押さえていた様子から半分投げだしているのかもしれない。

 

そんなこんなで、正直自分の説明に関しては(適当に)たっぷり終えたばかりの士からしてみれば、報酬(ギャラ)の1つも出ない学内新聞のインタビューなど全く持ってノーサンキューなのだ。

 

「記事のネタなら前の2人分で十分足りてるだろ。それで満足しておくんだな」

 

薫子は顎に手を置いて考える。むー、としばらくうなって、士の首にぶら下げられているマゼンタの二眼レフカメラへと目が行った時、ふと思いついたことを提案してみる。

 

「私の特別インタビューを受けてくれたなら、我々『新聞部』が所持しているフィルムカメラの現像機をいつでも自由に使用できる権利と交換、っていうのはどうかな?」

 

「のった」

 

門矢士の写真現像問題は、無事解決したのだった。

 

 

 

 

 

「いやー、3人ともありがとう!月末に『IS学園新聞』で特集を組むから、楽しみにしててね!」

 

インタビューは終了し、薫子はホクホク顔でボイスレコーダーの電源を落とす。

なんだか三者三様それぞれインタビュー前後でテンションが上下しているようだが、良い記事を書くことで頭がいっぱいの彼女はそこまで気が回らないようだ。

 

「それじゃあ最後に、1組の専用気持ち3人で写真撮らせて!もちろん代表の織斑君が真ん中で!」

 

「よっし、クラス代表でもなんでもやってやる!!」

 

「安心しろ一夏。お前はこの俺が直々に鍛えてやる!あの織斑千冬(おにきょうし)、二度とムカつく得意顔を出来なくさせてやるからな…」

 

「まだ根に持ってたのかよ…でもまあ、宜しく頼むぜ!」

 

「つ、士さん、よろしければ一夏さんのIS技術向上のためのレッスンメニューを、わたくしと2人で考えてみ「はーい!それじゃー撮るよー!」もうっ、何で邪魔ばかり入りますの!?」

 

薫子の号令と共に1組全員も迅速に動く。

 

「セシリアだけ抜け駆けはないっしょー!」「わたしも一緒にうつるー!」「わたしいっちーのとなり~」

 

ISを展開しているわけでもないのに、目にも止まらスピード出で3人の専用気持ちの前に押し掛ける。

その時、勢いよく突撃してきた一人のクラスメイトが、軽くセシリアの肩に当たってしまう。

 

「きゃっ!?」

 

「おっと」

 

パシャッ!とシャッターが切られる。

 

 

 

後日、新聞部発行「IS学園新聞」には、1組専用機持ち達のコメントと記念写真が掲載された(何故か士だけまるまる1ページ+足組み座りの決めポーズ写真付き)。

 

ぎゅうぎゅうに押し詰めたクラスメイトたちに押されて、セシリアは士の肩へと寄りかかるような体勢になっており、箒はセシリアがいたところ(=一夏の隣)にちゃっかり入れ替わっていたのだった。

 

 

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「ふぅん、ここがIS学園ね…」

 

1組が食堂で写真撮影をしているのと同時刻。

月明かりに照らされたIS学園を、1人の小柄な少女が見上げていた。

 

「まってなさいよ…一夏!」

 

凰鈴音 (ファン・リンイン)。1年2組の転校生であり、中国の代表候補生。

夜風にツインテールをなびかせ、八重歯を見せて不敵な笑みを浮かべながら、正面ゲートをくぐって行く。

 

 

 

 

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そして、ここはまた別のとある研究施設。

 

照明が一切ついていないのに研究室全体が青白く照らされているのは、無数にあるディスプレイや機械たちから発せられる光によるものだった。

 

「そっか…やっぱりそうだったんだ」

 

その研究室の一角で、ディスプレイの明かりに照らされながら1人の女性が静かに呟く。

そこには一体どこから入手したのか、IS学園1年1組のクラス代表を決定する模擬試合の映像が流れている。

 

ISの発明者、篠ノ之束は自身が設計した覚えの無いマゼンタの全身装甲(フルスキン)型ISを、ハイライトのない目で見つめていた。

 

「こいつがディケイド…かどや、つかさ」

 

感情の無い、ともすれば氷を連想させるような彼女の表情からは、残念ながら胸中を読み取り事は難しいだろう。

しかし、暗がりを照らすブルーライト光を映す彼女の瞳からならば、あるいは親しき間柄の者なら気づけたかもしれない。

 

 

「世界を破壊する…悪魔………!」

 

 

ただその言葉に隠された真意だけは、彼女以外、誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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次回からようやく新章突入です!!!!
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