仮面ライダーディケイド 《インフィニット・ストラトスの世界》   作:URUTORA

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第15話 「七不思議」

「門矢士。世界で2人目の男性IS操縦者、らしいぜ」

 

「2人目ぇ!?何よそれ、私が入国審査で手間取ってる間にどういう事情になっちゃってるわけ…?」

 

差し出された手を取ることも忘れ、ぶつかって廊下にへたり混んでいた女子生徒はポカンと士を見上げていた。

 

すると、席から近づいてきた一夏が女子生徒の顔を見るなり声を上げる。

 

「鈴!やっぱ鈴じゃん!久しぶりだな!」

 

「ああっ!やっと見つけたわよ一夏!さっさと出てきなさいよね!」

 

一夏の顔を見るなり、鈴と呼ばれた少女は勢いよく立ち上がった。

なんだか随分と理不尽なことを言われているが、当の一夏本人は全く気にしておらず、むしろこのやりとりを懐かしんですらいる様子だった。

 

「うんうんこの感じ、久しぶりだなぁ…ってそうじゃなくて!何でこんなところに!?ひょっとして噂の転校生って…」

 

「そう、このあたしの事よ!いつの間にか専用機まで持つようになっちゃったらしいけど、あたしが来たからには次の対抗戦(リーグマッチ)の優勝は渡さないんだからね!」

 

(……なに?)

 

鈴の一言に士が小さく反応する。

それは会話を聞いていた周りの生徒達も同様であり、途端にクラス中がざわめきだす。

 

「…ってことは、あの子が噂の2組の転校生?」

 

「ええっ、でも今専用機持ってるのって1年の中じゃ1組(うち)と4組だけじゃあ…」

 

「その情報、古いよ」

 

周りのざわめきに対して、鈴はすぱっと言い放つ。

 

「中国代表候補生、凰鈴音(ファン・リンイン)。この私が2組のクラス代表になったの。今日は宣戦布告に来たってわけ!」

 

両腕を組み不敵な笑みと共に言い放った鈴だったが、なんというか体のサイズ感的にいまいち迫力に欠ける。

他の女子達に比べてもかなり小柄なのもあるだろうが、さらに隣に高身長の士が並び立つことで、小柄な体格がより一層小さく見えてしまっていた。

 

そんな小動物の威嚇を連想させる彼女の態度も意に介さず、一夏は爽やかフェイスではにかみながら言った。

 

「何やってんだ鈴、すっげえ似合わねえぞ」

 

「んなっ、なんてこと言うのよあんたは!?」

 

(なんだ、あいつら知り合いか…?)

 

随分とテンポの良い2人のやりとりを見てそう感じたのは、どうやら士だけではないらしい。先ほどまでセシリアと言い合いをしていた箒も、訝し気にその様子を観察していた。表情へはだんだんと影が落ち、不機嫌そのものという様な深紫(こきむらさき)のオーラが彼女の周囲を漂っていたりするのだが、睨みつける先の一夏に関しては相も変わらずの朴念仁ぶりだ。

 

と、士の前をズイッと影が横切る。

 

「おい」

 

「なによ!」

 

ズバシンッ!という快音が廊下に響き渡る。教室の扉の前で千冬が仁王立ちしていた。必殺の出席簿制裁である。

 

「もうSHR(ショートホームルーム)の時間だ。さっさと教室に戻れ」

 

「うう…ち、千冬さん(・・・・)…」

 

「織斑先生と呼べ馬鹿者、さっさと戻れ。お前もだ門矢」

 

「うごぁ!?」

 

再びズバァン!と出席簿が火を吹き、1人新聞部へと足を運ぼうとする士を地に沈める。一瞬にして2人をグロッキーにした鬼教師は、士を適当に机へ放り投げ出席を取り始めた。

 

 

___________________________________________

 

 

 

「いやー、こないだはありがとうね門矢君!もうみんなに大好評だったよー!よかったらまた今度別で特集を――って、どしたのそのたんこぶ」

 

「ああ、気にすんな。くっそあんの暴力鬼教師、どう考えてもはたきすぎだろ…」

 

「あーそっか。門矢君とこの担任、織斑先生だもんねえ」

 

士は千冬の出席簿アタックを食らったあたりをさすりながら苦々しい顔で答える。声をかけてきたのは、先日士たちを取材してきた2年新聞部の黛薫子だった。

 

午前の授業が終了し、士は食堂へ向かう前に朝向かうはずだった新聞部へと足を運んでいた。この世界に来てからずっと抱えてきたフィルムのお抱え問題に終止符を打つため、先日の取材の報酬である新聞部の現像機を使用しに来たのだった。

 

「結構あるねぇ…これ多分夕方くらいまでかかっちゃうよ?」

 

「ああ、構わない。適当な時間にまた取りに来る」

 

そういいながら士は机の上に置いてある『IS新聞』を手に取る。表面の見出しには大きく『1年1組のクラス代表決定!2人の男性IS操縦者の素顔とは!?』と書かれている。

 

「あっ!それこないだの取材の記事だよ!もう読んでくれたかな?」

 

「まあ、一応な。そもそもクラスの連中全員がこぞってあれを持ち寄って騒いでたし、内容は読まなくても伝わってきてただろうが…」

 

「いえいえ、ご愛読ありがとうございます!読者あってこそ、読む人が居てくれてこそ、何かを書く甲斐があるってもんだからさ!ちなみに、専用機持ち達以外の特集もちゃーんと記事にしてるんだよ!」

 

そういうと薫子は1組クラス代表の特集ページをめくり別の記事見せだす。

そこには『IS学園☆七不思議大研究!』とタイトリングされた記事が掲載されていた。

 

「『ISコアには心が宿る』、『突如姿をくらますルームメイト』、『存在しない219号室』……なんだこりゃ」

 

「見ての通り、『七不思議』だよ。IS学園やISに関係する不思議を幅広~く(・・・・)集めてみました!これとか超反響良かったんだよ?『食べると恋が叶う!?幻のミックスベリークレープ』!」

 

「IS関係無えじゃねえか」

 

ズビシッ!と記事を士の前に突きつけ自信たっぷりなご様子の黛記者。ほかにも『消えるスイーツ』や『ISコア同士をつなぐ電脳空間』、果ては『集まる各国のIS操縦者!それぞれが掲げる信念とは!?』と、もはや七不思議でも何でもないものがまとめて一括りにされているようだった。これでは幅広くというより、見境なしといったほうが適切だろう。

 

「こういうザ・定番!みたいなのが掴みとしては一番いいんだって!中身を読んでもらうためのインパクト付けも、記者の立派なお仕事なのだよー」

 

「ああ?じゃあこの七不思議は…」

 

「察しがいいねえ、半分以上私のオリジナルです☆」

 

「いよいよ読む気が削がれてきやがった…」

 

士はがっくりと肩を落とし、新聞を元あった所へ適当に放り投げる。

 

「だいたい七不思議以前に、生徒が蒸発なんてしたら学園の一大事だと思うんだが…」

 

「書いてる内容自体は真面目そのものだし、別にどれも嘘は書いてないよ?」

 

例えば、と士が放った新聞を適当にパラパラとめくり、七不思議の記事の1つを指差す。

 

「いま門矢くんが言ってた『突如姿をくらますルームメイト』。この七不思議は本物だよ(・・・・)

 

「………なんだと?」

 

さらりととんでもないことを言い出す薫子の発言に、さすがの士も目を見張る。

 

「ああ、勘違いしないでね。噂が本当に流れてるっていうだけで、生徒が蒸発したってわけじゃあないから」

 

記事によると、夜中に隣で寝ているはずのルームメイトの姿がなく、そのまま一晩中姿をくらましていたという。しかし朝になるとベッドに戻っており、昨晩の事を訪ねるも本人は何のことか分からない、というものだった。

 

「結局何事もなかったから、寝ぼけていただけだろうって事で話は終わっちゃったんだけどね」

 

「そこまで落ちがわかってるなら、七不思議として成立してないだろ」

 

「いやいや門矢君、この話には続きがあるんだよ」

 

新聞を閉じながら薫子は続けようとするが、正直怪奇現象どころか怪物そのものと数多く相対してきた士からすれば、学生の間で流行る七不思議など怖いだとか思う以前の問題だった。

 

しかし、早くも興味を無くしかけてきた士などお構いなしに薫子はズイズイッ!と詰め寄ってくる。

 

「夜中に消えたそのルームメイトの子をたまたま廊下で見たっていう子がいたんだ。まあ角で曲がったところの後ろ姿と影をチラッと見かけた程度だったらしいしんだんけど……」

 

 

解き明かした謎を開示する探偵のようにピッ!と人差し指を立てて、彼女はその七不思議の1つをこう締めくくった。

 

 

 

 

「その時見えたその子の影、大きな虫みたいだったんだって(・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

 




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