仮面ライダーディケイド 《インフィニット・ストラトスの世界》   作:URUTORA

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第16話 セカンド幼馴染

写真の現像を黛薫子(まゆずみかおるこ)に一任した士は、その足で食堂へと向かっていった。

道中すれ違う女子生徒達は自然と道を開けてキラキラとしたエフェクトが見えてきそうな視線を投げかけるが、士はそれを軽くかわしつつ、程なくして食堂に辿り着く。

 

弁当を持参する者も含めて食堂はすでにごった返しており、配膳受け取り場には長蛇の列が出来ていた。

 

料理の腕はどこぞの世界の厨房をも一瞬で乗っ取れるほどの実力の持ち主である士だが、毎日弁当を作っていくなんて殊勝な真似がこの男に出来るはずもなく、結局メニューの豊富な学食に甘んじているのが現状だ。

 

ただこの行列に並ばされてる今現在に限っては、弁当を作る習慣も少しは取り入れるべきかと割と本格的に検討する。

少しづつ列が進んではいるが、これでは配膳を受け取る前に席が埋まってしまいそうだ。

 

(それにしたって数が多すぎやしないか…?これじゃあ座れないやつだって出てきそうな勢いだが…)

 

正直、どこかのグループ席に入れて貰えば座れないことはないのだろう。しかし今この瞬間にも降り注ぎ続けている門矢士を見つめる視線ぶりを考えると、この数週間『10代女子のパワフルっぷり』をたっぷりと学んだ彼のだいたい正確な分析結果からすれば、例え席に着くことは出来てもゆっくりと食事をとれるはずがないのは明白だった。

 

いっそまた(・・)厨房改革でもおこしてシェフ特別席でも設置してやろうかと、多少現実逃避気味に思案を巡らせていると…

 

「お、きたきた。おーいつかさー」

 

食堂の奥の方から士を呼ぶ声が聞こえてきた。

目を向けると、ちょうどクラス会の際に座っていた席に一夏、箒、セシリアが座っているのが見えた。

 

どうやら士のために座席を確保しておいてくれていたらしい。

特に頼んでおいた訳でもないのに気を回してくれるあたり、彼の好青年振りが窺える。なんとなく小野寺ユウスケの影を重ねながらも、士は素直に感謝した。

 

「おう一夏、わる…い……」

 

と、軽く礼を言いながら近づいて行く士の足がビタリと止まる。

……なんだか一夏の周りの空気がおかしい。

 

 

 

「「ぐぬぬぬぬぬぬ……」」

 

 

具体的には、何か猛獣の唸り声みたいなのが箒とセシリアから発せられていた。眉間にしわを寄せたまさにしかめっ面そのものといった様子で、2人して一夏の方を睨みつけている。

 

士はとりあえず本日の茶碗蒸し定食を置きながらちょっとだけ考え、やれやれとため息を吐きつつお茶を一口すすって呟く。

 

 

 

「一夏……またなにかやったのか」

 

「すでに俺の何かに対する信頼が損なわれているような言い方だな!?俺にだって分かんないって…」

 

「まったく、これじゃ他の席と大差無いな…」

 

正直このIS学園にいる限り落ち着いて食事にありつける場所など存在しないという可能性に士が気づいてしまう直前、あまり聞きなれない女性の声が聞こえてきた。

 

「一夏から聞いたわよ。アンタも専用機持ちらしいわね」

 

「あん?」

 

声のする方を向くと、死角となっている一夏の隣席からヒョコっとツインテールが顔を出した。

 

「お前は確か…」

 

凰鈴音(ファン・リンイン)。鈴でいいわ。あたしも士って呼ぶから」

 

声を掛けてきたのは、今朝1組に宣戦布告をしてきた2組のクラス代表、凰鈴音だった。

どうやら一緒に昼食をとっていたらしい。

 

すると、いい加減痺れを切らしたというように箒とセシリアが同時に机をバン!と叩いて立ち上がった。

 

「一夏!いい加減説明しろ!この転入生とどういう関係なんだ!」

 

「そうですわ!!この私、セシリア・オルコットが在籍するクラスに向かって宣戦布告だなんて、随分といい度胸をしてらっしゃいますわね!!」

 

うおう、と一夏が2人の謎の勢いに若干仰け反る。睨んでいたのは一夏ではなく隠れて見えていなかった鈴に対してのものだった(箒とセシリアの話の論点は何となくずれているようだが)。

 

「まっ、まままままままさか一夏貴様…この女と『付き合って』いるのか!?!?」

 

そして一呼吸おいて放ったその言葉と共に、箒の瞳がギラリと光る。まるで嘘や言い逃れを許さない取り調べの刑事のようだ。

だがその言葉に対してあからさまに反応を示したのは、意外にも鈴の方だった。

 

「つっつつ付き!?べ、別にあたしたちは付き合ってるわけじゃ…」

 

「そうだぞ。付き合うとかそーゆう仲じゃない。ただの幼馴染だよ」

 

何をご冗談をといった様子で一夏が半目で否定する。

しかし士には、なぜか意見に同調してきた一夏の言葉で、鈴の表情に影が差したように見えた。

箒に関しては依然として一夏の言っている意味が分からず怪訝な顔をする。

 

「幼馴染だと…?」

 

「そうそう。鈴が転校してきたのは小学校5年に上がったタイミングだったから、そういえば箒は知らないはずだよな」

 

話を聞くと、どうやら箒とは小学校4年まで一緒の学校や剣術道場へと通い親睦を深めていたらしい。しかし小学校4年の終わりに突然引っ越し、このIS学園で再開するまでは連絡も取り合っていなかったという。

そして、小学校5年から国に帰る中学2年までの期間でよく一緒に過ごしていたのが、隣にいる鈴であるということだった。

 

「…つまりは入れ違いって事か?」

 

「そんな感じ。さしずめ箒がファースト幼馴染で、鈴がセカンド幼馴染ってとこだな。ほら鈴、前に話しただろ?通ってた剣術道場の娘の話」

 

「ふゥーん、そっか」

 

どうやら2人と既知であるのは一夏だけで、鈴に関しても箒のことは話に伝え聞いていただけのようだ。

 

そっけない返事を返すと、鈴は品定めするように箒を見回す。対する箒も目をそらさず、堂々と鈴を見返していた。

 

「どーも。よろしくね、ファーストさん。」

 

「あァ。こちらこそ、よろしく頼む」

 

短く簡易的な挨拶の中に、バチチチチチチチチッッッ!!!!!と激しい火花が確かにぶつかり合う。その光景を見ていた一夏は、「うんうん、仲良くなれそうで良かった」と額面通りに受け取る朴念仁ぶりを発揮し、士に至ってはなんかもう色々放り出して目の前の食事を楽しむことにしていた。

 

「オ、オホン!わたくしを置いていい気にならないで頂けます?同じ代表候補生とはいえ、わたくしとあなたには大きな差が「それじゃあ一夏、放課後色々話したいし、時間空けときなさいよね!」……って、ちょっとぉ!無視ってどうゆうことですの!??」

 

一方で、何となく置いてけぼりにされているように感じたセシリアが無理やり会話に乱入するが、鈴はセシリアの事など眼中にないといった様子で、食べ終わった食器をもってさっさと席を後にしてしまったのだった。

 

(な、なんなんですの!いきなり士さんの事も名前で呼んだりして!私と士さんが名前で呼び合うようになるまでの苦労もしらずに…!!)

 

未だ経験のない猪突猛進タイプに翻弄される、割と純粋(ピュア)なオルコット家当主。本人は1つ1つ手順(ステップ)を踏んでいるだけのつもりなのだが、段差があまりに小刻みなため正直かなりの鈍行ペースである。

そして問題なのは、あの鈴とかいう手順知らずと同様の輩が今後突然現れないとは限らないという事だった。

 

(油断はできませんわね。…やはり、今日の放課後からの特訓の時間を有効活用していくしかありませんわ!)

 

そう、これだけぎゃあぎゃあと騒いでいる間にも、周りの女子生徒達の視線はやはりずっと飛んできているのだ。

狙撃と同じ、周囲のあらゆる状況を鑑みて、整理し正しく分析。利用できる環境は、どんどん活用していかなくては。

 

やはり放課後に行う特訓が士へのさらなるお近づきになるための重要なキーであると再認識し、改めて自身の作戦のすばらしさにうんうんと小さくうなずいたセシリアだった…のだが。

 

 

 

 

(………あれ、でもよくよく考えると……?)

 

 

 

1つ、彼女は自身の見当違いに思い当たる。

 

考えをまとめ終える前に次の授業開始前の予鈴が鳴り響き、上の空となった授業中では出席簿を1発食らう羽目となった。

 

 

 

 

___________________________________________

 

 

 

闘技場(アリーナ)

 

放課後、セシリアの考案したクラス代表一夏特訓メニューに、1組の専用機持ちが勢揃いしていた…のだが。

 

「箒!なんでここに!?」

 

「なんでとは何だ。貴様の特訓の為に決まっているだろう」

 

グラウンドには訓練機を装備した箒が既に待っていた。

 

「『打鉄(うちがね)』か。訓練機の使用許可降りたのか」

 

「そ、そんなっ!まさかこんなにも早く申請が通るなんて…!」

 

打鉄(うちがね)』。日本の純国産である第二世代の量産型IS。近接用ブレード『(あおい)』とアサルトライフル『焔備(ほむらび)』を主装備とするこの防御型のISは、そのバランスの取れた性能・安定した出力から企業や国家、そしてこのIS学園にて数多くの『訓練機』として普及されている。

本来であればクラス代表決定戦の際に士が操縦するはずだったもので、士自身も稼働している打鉄を間近で見るのは初めてだったりする。

 

訓練機の使用に関しては申請が必要だが、どうやらそこまで混みあうようなものでもないらしい。

生徒を育むため備品投入は惜しまないようで、そこは流石のIS学園といったところだろか。

 

…などと思案を巡らせる士に見えないようにくるっと背を向けながら、セシリアは爪の先まで整えられたきめ細やかな肌の両手を力任せにガッシィィィッッッ!!と思いっ切り握りしめていた。

 

(くうぅぅ、せっかく『2人でコーチングしているうちに士さんと思いが通じ合ってしまいますわ作戦』決行の大チャンスでしたのに、出鼻から頓挫してしまうなんて……!!!!)

 

あの凰鈴音(ファン・リンイン)とかいう2組のクラス代表の乱入によって、箒が参加するしないの話を後回しにしていた事をすっかり忘れてしまっていた。

その結果、一夏へのコーチングは士、セシリア、そして訓練機を使用した箒の3人で行うこととなったのだった。

 

「そりゃあまあ、やっぱり練習相手になってくれるってのは嬉しいけど……箒お前、ISちゃんと動かせるのか?」

 

と、一夏は1つ疑問を口にする。

正直なところ、箒のISの操縦に関する腕前を一夏は良く知らない。ここ数週間一緒に行った特訓はすべて竹刀を用いた剣道のみであったし、『IS適正』と呼ばれるISとの親和性を図るものも、箒がどの程度獲得しているのか教えてもらえていなかったのだ。

 

(束さんの妹だし、やっぱ操縦もうまかったりすんのかな…?おれは適正Bってめちゃくちゃ中途半端な適性値だったけど…)

 

「ふん、無用な心配だ。専用機などなくとも遅れはとらない」

 

ギロッ!と鋭い眼光を飛ばす。侍のような威圧感はISを纏うことでより一層際立っているように感じる。馬子にも衣装……というより、甲冑に日本刀といったところか。

 

と、士の声が一夏の思考を中断させる。

 

「おい、そろそろ始めるぞ。グラウンドだって使用時間が決められてんだ、だらだらしてるとあの暴力教師にまた目を付けられちまう――――セシリア、どうかしたのか…??」

 

「………はっ!?い、いえ、なんでもありませんわよ!?」

 

急いで取り繕い、セシリアは一旦作戦を練り直すのを後回しにする。当の士に訝しまれては元も子もない。

 

 

 

一夏は手首のガントレット『白式(びゃくしき)』を掴み、セシリアはなびかせるように左耳のイヤーカフス『青い雫(ブルー・ティアーズ)』に触れ、士はバックルを装着し『破壊者(ディケイド)』のカードを掲げる。

 

 

 

 

 

「――変身」

 

 

 

 

(来い、白式!!!)

 

 

 

 

一瞬後、3機の専用機が箒の目の前に展開された。

 

 

(さすがに壮観、だな)

 

クラス代表を掛けて戦った、3人のIS。

 

 

初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)することで量産機とは一線を画する性能を発揮する、『専用機』。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……………私だって……)

 

その光景に一瞬暗い感情を抱くも、箒は首を振って頭の隅へと追いやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で、ブルーティアーズを纏ったセシリアの目つきも変わる。

 

(ともかく今は、イギリス代表候補生としてISの指導も完璧にこなせるところを士さんにお見せしますわ!)

 

ガチリ、と自身の中でスイッチを入れ替える。モチベーションは何だろうが、ISに対する姿勢は真っ直ぐなものであり、それは『代表候補生』と呼ばれるに十分値するものであった。

 

(それに、確認しておかなければならない事もありますわね…)

 

軽く目線だけを動かして箒を一瞥すると(・・・・・・・)、胸の位置まで掲げた腕を真横に突き出し、『スターライトmkⅢ』を展開(オープン)した。

 

箒も武装『焔備(ほむらび)』を腰の横から抜刀する要領で展開(オープン)

 

ディケイドはパンパンッ!と両手をはらい、ライドブッカーをガンモードに変形させた。

 

 

 

「―――そんじゃあ一夏」

 

 

 

「―――準備はよろしくて?」

 

 

 

「―――参るっ」

 

 

 

「は、はは」

 

 

各々の武装を突き付けられ、乾いた笑いが口元から漏れる。

 

 

一刻と立たず、アリーナに派手な爆音が立て続けに鳴り響いた。

 

 




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