仮面ライダーディケイド 《インフィニット・ストラトスの世界》   作:URUTORA

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今話投稿時点で、「仮面ライダーディケイド 《インフィニット・ストラトスの世界》」のお気に入り数が500件を突破しました。

キリのいい数字だなと思うと同時に、500人もの方が私の拙い文章をお気に入りと言ってくれているんだと思うと、とても感慨深いものがあります。

お気に入り・感想・投票も含め、いつもご覧頂きありがとうございます。


第17話 自分の居場所

日も暮れた放課後、士は新聞部に回り道をして回収した写真をパラパラとめくって確認しながら1人自室への帰路へと着いていた。

 

 

(………ダメか)

 

薫子は「勝手に他人の写真を見て批評できるほどのぼせてないのだー!」と言って、写真を乾燥室にぶら下げるところまで行い、現像した写真の写りに関して確認する事はあえてしなかったらしい。

 

どうやら彼女なりの写真を撮る事に対するポリシー、というより1人の新聞記者としてのプライドみたいなものがあるようだった。

 

そして、写真の出来は予想道理と言うべきか、期待外れと言うべきか。

士の表情が眉一つ動かないことが、すべての結果を物語っていた。

 

 

 

すると、廊下の反対側から見覚えのあるツインテールが歩いてくるのが見えた。

 

「あ、士じゃないの!アンタ1人?一夏は?」

 

2組のクラス代表、凰鈴音(ファンリンイン)。知り合ったのは今日のはずだが、1日に何度も会っては別れを繰り返しているため正直距離感が分からなくなってきている。

 

「あいつは置いてきた。あれから時間もたってるし、今頃は部屋に戻ってシャワーでも浴びてるんじゃないか?」

 

結局あれから一夏は士達3人の指導をおよそ2時間にわたってをたっぷりと受けることになった。最後らへんは若干涙目になっていたような気もするが、白式に慣れるためにはまだまだ稼働時間が足りていない。専用機持ちである2組の鈴や4組のクラス代表と当たれば、訓練機の箒と互角程度である今の現状では負けは必至だろう。この間の様な試合中に一次移行(ファーストシフト)をして隙ができる、なんてご都合主義はそう何度も起こらない(・・・・・・・・・・)

 

そう、一夏には知識も技術も圧倒的に足りていない。このまま特訓を続けたとして、2週間後にせまるクラス対抗戦までにどこまで実力を伸ばすことができるかは本人の呑み込み次第なのだ。

 

(そういえばセシリアの奴、割と神妙な顔つきで箒を連れて先に帰っていってたが…ありゃ何だったんだ?)

 

「ああくそうっ、やっぱすれ違ったか…全く、ほんと鬱陶しい連中だわ……」

 

士が特訓の事を思い返しているのを他所に、鈴は自分が歩いてきた方を半ば睨みつけるようにして振り返りながら、苦々しげに呟いた。

 

そういえば彼女は放課後一夏と話したい、みたいな事を言っていたはずだ。特訓後の一夏の元に行くにしても、写真部に寄り道した士と今廊下で合流したのではあまりに遅すぎる。

そのまま鈴は歩む方向を士に合わせ、不機嫌そうな顔をしながらぶすっとした口調で愚痴りだした。

 

「途中でしつこい上級生の連中に何度も絡まれたのよ。ISの事を教えてやるから、あの男を叩きのめしてやれってね(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

あの男(・・・)?」

 

「一夏の事でしょ。今度のクラス対抗戦(リーグマッチ)で一夏に当たる可能性のあるやつ全員に声かけてるんじゃない?あたしが新しい2組のクラス代表だっていうのはもうすでに広まってるみたいだし」

 

まああれだけ目立つ名乗り方をすればそりゃあ広まるだろうと頭の中で思いながら、士はそんなことはおくびにも出さず鈴の話に耳を傾ける。

 

「ほんっとくだらないわ、ああいう連中。筋違いな理屈並べちゃってさ」

 

「…なるほど」

 

女尊男卑(じょそんだんぴ)。ISは女性のみが動かせる、という基本理念が捻じ曲がって肥大化した、この世界の悪き風習。

その差別的な考えの浸透具合は士も既に体験済みだが、どうやら上級生に置いてそれはさらに色濃くなっているらしい。

 

「分かりやすいひがみってやつよね。量産型の

打鉄(うちがね)』や『疾風の再誕(ラファール・リバイブ)』でいくら良い成績を残したとしても、限られたISコアから自分だけの専用機を与えられる人数っていうのは限られてる。中にはIS適性が低いっていうだけで候補生にすらなれない人も少なくないわ」

 

「……そんな自分たちを差し置いて、男である俺達が専用機を持つことも、クラス代表になって脚光を浴びながら戦うことも許せない、ってところか」

 

ISを学ぶ学徒達にとっての将来は、『操縦者』と『その他裏方』の大きく2つに分けられる。

そして、生徒達の志望先と実際の進路は圧倒的に『その他裏方』へと反比例の関係になっているのが現実だ。

 

そして、操縦者の中でも更に限られた者だけが選ばれる『国家代表』、『代表候補生』。そして、『専用機』。

 

このIS学園に集う生徒全員がまず最初に目標にするべき到達点であり、ここに至るまでに数多くの事を学ばなければならないのだ。

 

そんな中に突如として現れた一夏や士といった『男』という、異物。

特別というだけで専用機を与えられ、周りからもてはやされ、やっとの思いで自分達が手にできるものを何の苦労もなく手にしてく。

 

そんな現実を認めるわけにはいかないという気持ちが、黒い感情となり彼女たちの内から湧き出てしまっているのかもしれない。

 

「そーゆーこと。2年生、3年生になるほど自分の進路が明確になってきて、それと同時にいろんな不安も大きくなっていくんだと思うわ」

 

でもさ、と一呼吸おいて言葉を続ける。

 

「それって絶対間違ってる。あんたや一夏がなんでISを動かせてるのかは知らないけど、それと自分の実力が低いのは無関係のはずよ。自分の先行きが不安な理由付けを他人にしてる時点で脇道に逸れてるんだって気付かない限り(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)、ああいう連中は自分の思う先になんていけっこないもの」

 

そんな彼女達の在り方を、凰鈴音は正面から否定する。

 

自分が今いる居場所は、自分以外の誰かが居て初めて現実となる。

だがそれは、イメージ通りにいかない目の前の現実の責任を周りの誰かに押し付けていい理由には到底ならない。

 

女尊男卑が蔓延り育った環境が人格形成に影響して間もない若干15歳の年頃でこの考え方が出来るのは、この世界においてはかなり珍しいのかもしれない。

 

「………」

 

「…な、なによ」

 

「いやなに、大した事じゃない。同じ代表候補生でもこうも違うもんか(・・・・・・・・)と思っただけだ」

 

「???」

 

出会った当初のイギリスのお嬢様を思い出しながら、士は特にそれ以上説明することもなくそのまま歩き続けた。

 

 

 

「………」

 

 

 

「………」

 

 

 

「………………」

 

 

 

「………………」

 

 

(き、気まずい……)

 

 

そのまま微妙な間が空く。不機嫌なまま勢いでほとんど一方的に話していた彼女だが、ひとしきり鬱憤を晴らし終えると会話が途切れて話すことが無くなってしまった。

実際彼らは今日知り合ったばかりなので、この友達の友達的な距離感(実際言葉通り)が拭え切れていないのは当たり前といえば当たり前なのだが、この鈴という少女はこういうモヤモヤした空気を好まない性格らしい。

 

(…ていうか今日知り合ったばっかの奴になに不満聞いてもらってんのよあたしは!?)

 

なんなら引かれてしまっても文句なしの条件を割とクリアしてしまっている事に頭の中で後悔しつつ、新たな話題の切り口を見つけるため必死で目を泳がせる。

 

ふと、鈴は士の手に握られる写真の存在に気が付いた。

 

「なによ、それあんたの撮った写真?ちょっと見せてみなさいよ!」

 

「なっ、おい!」

 

士が制止する間もなく、小動物のような素早さでしゅぱっ!と写真を強奪。

 

話題のないこの状態を打開するための好機とみて1つ写真いじりでもしてやろう、という軽い気持ちで奪い取ったのだが。

 

 

 

 

 

写真を見た瞬間―――――鈴は思わず小さく悲鳴を上げてしまった。

 

 

 

 

「なによ……これ……」

 

 

 

「………………」

 

 

 

歪んでいる(・・・・・)――――それが最も近いニュアンスだろう。

 

 

映されているのはIS学園の校舎、教室、運動場(グラウンド)闘技場(アリーナ)。生徒達の何気ない日常や、夕焼けの中に佇む一人の女の子と、さまざまな風景が小さく切り取られている。

 

 

しかし、どの写真もどこかピントが合っていない。不自然な焦点、うねり、明暗。談笑するクラスメイト達は顔がグニャグニャとなり誰が誰なのか判別もできず、夕焼けの中佇む女の子には2つの影がダブって見える。

 

特に写真を撮ることに対して知見が広い訳でもない、言ってしまえば素人の鈴でもこれだけは分かる。

 

 

 

これは手振れだとか、構図を意識していないだとか、光のバランスが悪いだとか、そういうレベルの話ではない(・・・・・・・・・・・・・)

 

建物も風景も光も人も、まるで向けられたレンズから逃げていくように。至って平凡な写真をあるはずのないモノへと捻じ曲げてしまっていた。

 

 

 

「おい、もういいだろ」

 

「あっ…」

 

ぴっと士が写真を摘みとる。

 

「あ…その……」

 

「別にカメラやレンズの故障ってわけじゃないんだがな。俺の撮った写真はいつもこうなる」

 

士は表情を変えず、取り返した写真を適当に見返しながら呟くように言う。

しかしその無表情が、無神経なことをしてしまったんだと鈴に強く再認識させた。

 

 

 

「その……ごめん…」

 

 

 

「……」

 

 

 

そして、驚くほど素直に彼女は謝った。普段の明瞭快活振りからは想像できないほど声が小さく、頭を垂れてしゅんとしてしまっている。

 

しかし、士から何も反応がない。やはり怒らせてしまっただろうか。

 

鈴は顔色を窺うように、恐る恐るゆっくりと士の方を見上げた。

 

 

 

 

カタンッ、と。

 

 

 

 

鈴の顔が正面を向いた瞬間、士はマゼンタの二眼レフカメラのシャッターを切っていた。

そのフィルムには、驚いて目が点となりポカンの口の開いた1人の女の子が映っていることだろう。

 

 

 

士はいたずらが成功した子供の様に、口元をニヤリとさせていた。

 

 

 

「………って、人が素直に謝ってんのに何撮ってんのよ!?」

 

「そーゆうしおらしい顔も出来るんだなあ?随分と猪突猛進気味なやつだと思ったが、意外とセンチな一面も持ち合わせているらしい」

 

「な、なによバカにしてんの!?人がせっかく悪かったとおもって―――」

 

「俺は、ただ撮りたい」

 

鈴の言葉を遮り、門矢士は短く言い放った。

 

「例え撮った写真の出来が良かろうが悪かろうが、俺にはどうでもいい。自分の居場所を見つけるために、撮りたいから撮る。それだけだ」

 

「自分の……居場所………」

 

門矢士にとって、他人の評価など問題ではない。大切なのは己がどうしたいか、どうありたいのか。

 

士の言葉に、鈴は自分を重ね合わせる。

 

 

 

 

自分の居場所とは何か。帰るべき故郷とは何処を指すのか。

 

――――――自身の両親の事を、凰鈴音は思い出す。

 

 

 

 

「だからまあ、そんなに気にすんな」

 

 

 

トンッ、と鈴のおでこを指で小突(こづ)く。

 

その表情は鈴を気づかっているモノにも、代表候補生を相手に臆してご機嫌伺いを立てているモノにも見えない。

 

何物にも恐れない真っすぐなその姿勢が、彼の発した言葉に嘘偽りはないと十二分に伝えてきたのだった。

 

 

「……あっはは、なーんだ。謝って損しちゃったじゃない」

 

「人の写真を窃盗しやがった事に関しちゃもう少し反省してろ」

 

「いひひ。士あんたって、結構カッコつけちゃうタイプなんじゃない?」

 

「教室の前に仁王立ちで戦線布告する奴にカッコつけどうこう言われたくはねえな」

 

2人は軽口を言い合いながら歩みを進める。鈴は八重歯を覗かせて楽しそうに笑い、士も小さく口元をほころばせた。

 

 

 

先程までの微妙な距離感は、すっかりどこかに吹き飛んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから数分とかからず、士と鈴は目的地へとたどり着く。

 

「ほら、着いたぞ」

 

「ん。なんかその…ありがとね。愚痴とかも色々聞いてもらっちゃって」

 

士と話したことで、鈴の気持ちは大分スッキリとしていた。

一夏とタイプこそ違うが、この門矢士という男もブレない芯のようなものを自身の中に持っているのを感じる。

 

 

そして、自分にとって日本に来た最大の理由を思い出していた。

 

 

(自分の居場所……か。あたしも確かめなくちゃ。一夏と交わしたあの約束(・・・・)を)

 

「せっかくの試合が調子が出ませんでした、じゃあ興ざめだ。中国代表候補生の実力、見極めさせてもらうぞ」

 

「言ってくれるじゃない。何なら今度、模擬戦付き合いなさいよ。直接あたしの実力分からせてやるんだから!!」

 

ズビシッ!と指差す鈴に、士も不敵な笑みを浮かべながら自身の部屋に帰ろうと背を向ける(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「ああ、忘れてた。一夏の部屋はそっちだ」

 

「ん、あんがと。じゃあまたね………って、ちょちょちょちょっと待って!?」

 

「なんだまだ何か用かってうおっっ!?」

 

自然な流れで別れようとして聞き捨てならないワードを耳にし、部屋に戻ろうとして扉のドアノブを回す士の腕をガッチリと掴んで引き留める。

 

「まだ何か、じゃないわよ!!!一夏の部屋はそっち(・・・・・・・・・)ってどーゆーこと!?一夏ってアンタと一緒の部屋じゃないの!?」

 

「まてまて落ち着け」

 

「いーーーから答えなさいよーーーー!!!!」

 

そのまま士の両腕を掴んでガックンガックン揺さぶる鈴。

実際には士はびくともしておらず鈴が士を支点としてあっちへこっちへ揺れているだけなので、知らない人が見たら体を大きく使って駄々をこねる妹とその兄の様に見えなくもなかったが、当の本人はそんなことを気にしている状況ではないらしい。

 

「なんだ、一夏から聞いてないのか?手違いだか何とかで、俺だけ1人部屋になってんだよ」

 

「………は????」

 

「今あいつは――――箒と同室だ」

 

鈴は最後まで聞くことなく、バビュン!!と音が聞こえるような速度で士の視界から消え失せる。

 

そのままスライディングの要領で減速。扉を蹴破らんとする勢いで、一夏と箒の部屋(・・・・・・・)に突撃していった。

 

 

 

「いーーーーちかーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

 

「あぁ……また荒れそうだな……」

 

 

 

鈴の行く末を見届けながら、士は他人事のように呟いた。

 

___________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

廊下の曲がり角からの観察する視線に、彼はまだ気付かない。

 

 

 

 




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