ラブライブ!~輝きの向こう側へ~   作:高宮 新太

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試行錯誤をした結果、前より悪くなることってあるよね

「一緒じゃん!μ'sと!音ノ木坂と!」

 なぜかテンションの上がる千歌ちゃん。

 先ほどこの浦の星女学院が統廃合されるっていう情報を聞いたばかりなのに、そのポジティブさには舌を巻く。

「で、でも千歌ちゃん!統廃合されるなんてもし本当だったら・・・」

 桜内さんは至極まっとうな意見を述べる。いや、桜内さんだけじゃない。

 この部室にいる皆、同じ不安げな表情を抱えていた。

 それもそうだろう、自分たちの学校が統廃合されるなんて聞かされたら、悪い冗談だとしか思えない。

「そこのところ、どうなんですか?海田先生?」

 ジトリと、いやーな目線でそう尋ねてくる渡辺さんに僕はうっと言葉が詰まる。

 だってそうだろう、今朝の職員会議で生徒には慎重に伝えるよう口を酸っぱくして言われたのに。

 もうさっそく僕がばらしたなんてことになったら職員室での地位は地の底に落ちる。いや、元々そんなものないんだけど。

 だけど、書記さんに失望したような瞳で見つめられるのは、もう二度とごめんだ。

 

「・・・・さあ、どうだろうね」

 

 だからこんな白黒ハッキリしない中途半端な僕が出来上がってしまったわけだけど。

「はぁ?アンタそれでも教師?」

 田舎のヤンキーのような首の曲げっぷりで渡辺さんはメンチを切ってくる。

 そうですよ、これでも教師です。ほんと、自分でもなんで教師になれたのか不思議ではあるんですけどねー。

 あははは、と形作ったような笑顔で渡辺さんの追求を躱していると。

「いいんだよ!曜ちゃん!これから巻き返していけば!だってμ'sもそうやって学校を存続させたんだし!」

 対照的に瞳をキラキラさせた千歌ちゃんは、渡辺さんを宥めてくれる。よかったそろそろ首の閉まり方に限界を感じてたところだったんだ。

「で、でも、今から何をどうすればいいのか・・・・」

 黒澤ルビィさんは、不安げに声を震わす。差し迫った窮地が目の前にあって怯えるなというほうが無理だ。

「・・・もっと活動をしていくためには人気アイドルになるしかないずらか」

「そうだよ!やっぱりスクールアイドルだよ!そのためにもほら!ちょっとずつだけどサイトにアップした動画を見てくれてる人も増えてるよ!」

「ああ、今日はそのために呼ばれたのね」

 国木田さんや千歌ちゃん、桜内さんなんかもパソコンの前に集合してサイトを一心に見つめている。

 なんだかその後ろ姿を見ていると、若かりし頃のあの頃と重なったりして。

「先生、何にやけてるんですか?」

「え、にやけてたかな?津島さん」

 一人、その輪に加わっていなかった津島さんにそう言われて、僕は顔を確かめるように撫でる。

 気付かなかった。けれど津島さんの顔を見る限り本当ににやけていたようだ。

「いや、なんだかな。僕も年を取ったなあ、なんて思っただけだよ」

「なんだか先生、おじさんみたい」

「・・・うん、クリティカルヒットしたなあ今の」

 笑顔を取り繕っては見るものの、吐いた血は隠せない。

 おじさんじゃないやい!まだまだ若いやい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?なんで僕まで屋上に駆り出されているのかな?」

 そんな話をしていた部室から、あれよあれよという間に連れてこられた屋上で僕は一人愚痴を垂れる。

 会話の流れはもっとスクールアイドル活動を頑張ろう、そういう話になっていた。

「だって!カメラマンがいないんだもん!先生にも手伝ってもらわなきゃ!」

 千歌ちゃんは一人、大きな声でそういうが、約一名僕の参加に納得いってない人が。

「千歌ちゃん、なんでそれが先生なの?他に手伝ってくれる人を探せばいいじゃん」 

「そんなこといわないで曜ちゃん。先生が一番暇そうだったんだから」

 わー、そんな理由なら僕もう帰っていいかな。てか千歌ちゃん?そういうの本人の前で言うのはどうかと思うよ?

 渡辺さんの鋭い訴えかける視線がなければ僕だって手伝うのはやぶさかでないのだが。

 ま、可愛い生徒のためだ。多少の針のむしろは我慢しよう。

「それで?頑張るって言っても具体的にはどうするんだい?」

 統廃合はもうほぼ決定的なものだろう。

 だけど僕は知っている、そこからだってできることはあることを。

 諦めることが悪いことだとは僕は思えない。だって世の中にはどうしたってひっくり返せないことがある。例えば、僕が大金持ちになって貧乏なんてしらない生活を送ることはどうやったって不可能だ。

 だけど、やっぱり諦められないことがあって、それに向かって頑張ることを僕は無駄だとは言えないんだ。

 それは無駄であってほしくないというただの願望かもしれないけれど。

「さっきパソコンで見たんだけど!津島さん!」

「・・え?な、なに?」

 スクールアイドル部ではない彼女は、多分国木田さんの付き添いでここにいるんだろう。

 そんな彼女はあまり居場所がないようでさっきから僕の横にくっついて皆を眺めていた。

 だからだろう、急に名前を呼ばれてびっくりしたように口を開いた。

「動画投稿サイトで動画、投稿してるよね!」

「な、なぜそれを・・・・」

 ああ、僕が何回か手伝わされたあの堕天使ヨハネの動画。あれを千歌ちゃんも見たらしい。

「すっごく可愛かった!だから!あれをやろう!一緒に」

 勢いとノリだけで喋っているなあ、千歌ちゃん。

 けれどそんな勢いに津島さんは動揺している。一緒に、その最後の言葉に。

「な、ななんで!?」

 そもそもアレを津島さんは卒業しようとしているのに、まったく千歌ちゃんってばタイミングが悪い。

「衣装だってないし!設定はどうするのよ!?」

 あれあれ?なんだろう、乗り気のように聞こえるのは僕だけかな?

「衣装はほら!善子ちゃん持ってないの!?」

 そこで津島さん頼りなのがなんとも行き当たりばったりなのだが。

 大体、そう都合よくこの人数の衣装なんて持ってるわけが・・・。

「あるけど!」

「あんのかい!」

 しまった、思わず声を出してしまった。あるんだ。そっか、確かにあの衣装何着かバリエーションがあったような気がする。

 全部似たような感じだったから忘れてた。

「設定は・・・今決めよう!」

 津島さん、凄い嬉しそうな顔が隠せてないよ?

「大丈夫かなぁ?」

「うーん、善子ちゃんが嬉しそうだからいいじゃないずらか?先生」

 自分が好きなものを可愛いと言われて、そりゃ嬉しくないはずがない。

 ・・・ま、国木田さんの言う通りいい顔してるからいっか。

 それに津島さんの動画はあれで結構人気がある。実際に可愛いし。

 案外本当に起爆剤となりえるかもしれない。

 

 と、いうことで。

 

「堕天使ヨハネ、降臨よ」

 

 津島さん、ならぬヨハネちゃんは自宅から持ってきた衣装と共に学校の屋上に爆誕した。

 すっごい生き生きとしているので僕はこれ以上何も言えない。止めてくれと頼まれてはいたけれど。

「よ、ヨハネ様のリトルデーモン、黒澤ルビィです」

 僕はといえば言われた通りにカメラを構えて皆の自己紹介動画を取っていた。

 カメラアングルや日差しなどを考慮しながら順調に動画を取っていく。

 そういえばこのメンバーになってから僕は、彼女たちを初めて見る。

 正直まだまだ恥ずかしさや荒削りな部分は見え隠れするものの、中々どうして誰かを惹きつけるという部分は持っていると思う。

 なんて素人の僕の意見なんて露程にも役には立たないだろうが。

「よし!これをアップすれば人気急上昇間違いなし!だよ!」

 千歌ちゃんはテンションアゲアゲで、ノリノリだ。

 着てる衣装がそうさせるのか、それとも元々これくらい気が大きかったのかその瞳は爛々と輝いている。

「でも確かに、堕天使アイドルって見たことない・・・かも」

「ね!梨子ちゃんもそう思うよね!?」

「それよりも先生、ちゃんと撮れてるんですか?」

「うん、ばっちし皆可愛く映ってるよ」

 だからほら、そんな疑いの目を向けないでよ渡辺さん。

「じゃあ早く動画をアップしようずら」

 堕天使アイドルとしてのその第一歩、それが今まさに、歩まれようとしている。

 

 

 

 

 

 

「なんですの?これは」

 はずだったのだが。

「え、えっと・・・その・・・」

 生徒会室に、彼女たちスクールアイドル部と生徒会長が対峙するように向かい合っていた。

 生徒会長、黒澤ダイヤさんのあまりの眼光の鋭さにさしもの千歌ちゃんも言葉が詰まっていた。

 用件は、そう。

「このハレンチな動画はなんですの?と、聞いているのです」

「それは堕天使アイドルというコンセプトでして」

 上手く答えられない千歌ちゃんに代わって冷や汗をかきながらも桜内さんが生徒会長の質問に答える。 

「堕天使アイドルぅ?こんなハレンチなものを、許可した覚えはありませんわ」

「で、でも!現に人気は上がって」

 千歌ちゃんの言う通り、あれから動画をアップして数時間も経たぬ内に動画再生数は伸び、ランクもアップしていた。

 特に、黒澤ルビィさんが人気だったように思う。コメントの類では。

 だがしかし。

「人気ぃ?ほぅ、本当にこれで人気が上がったと?」

 生徒会長の目の前には一台のパソコン。これを見ろと言わんばかりにAqoursのホームページが。

 そこには先ほど動画をアップした時は確かに上がっていたはずのランキングが、今はガンガンと下がっている。

 いや、元に戻っていると言った方が正しいか。

「あんなイロモノは確かに一瞬は注目されるかもしれませんが、そんなもの一過性のものに過ぎませんわ。結局、力が足りないのを見抜かれてこの結果」

 全て、生徒会長の黒澤ダイヤさんの言う通りだった。

 目の前の結果もさることながらそんな正論をぶつけられた皆は押し黙るしかない。

「とにかく、私はこんなことをするためにアイドル活動を認めたわけではありません」

 でもそれは、きっと、多分、生徒会長なりのアドバイスのつもりで。

 現にアイドル活動そのものを否定しているわけじゃないその文言を聞いて、僕はそう思った。

 皆がどう思っているのかは、わからないけれど。

「・・・ごめんなさい、お姉ちゃん」

 しおらしく、最初に謝ったのはルビィさんだった。

 姉妹だからだろう、姉の気持ちが伝わったらしい。

「・・・まあ、わかればいいですわ」

 言うべきことは言い終わったのかゆっくりと椅子に腰かける彼女に他の面々も納得したのか反省の意を込め、その場を後にしようとしていると。

「で、なぜ先生はそんなに親密そうにそちら側に立っておられるのかしら?」

 まるで集中線が引かれたかのように目元がアップになって、僕を映す。

 そんな彼女の視線に耐えられるのなら、きっと僕はもっと上手く立ち回ることができていたのだろう。

「先生は、確か生徒会顧問でしたよね?普通彼女たちの行動を諌める立場のはずですよね?」

 どうしよう、さっきから正論しか言われてない。正論すぎて何も言い返せない。本来ならば、教師が止めるべき案件だったことはわかっていた。

 だけどしょうがないじゃないか。知っているのだ、彼女たちの想いも頑張りも。

「違うよ生徒会長!私が手伝ってって頼みこんだの!」

「そ、それはどういう意味でしょうか?千歌さんが頼んだから、先生は手伝った・・・と?」

「そうだよ!」

「あ、あの千歌ちゃん?気持ちは嬉しいんだけど。僕なんか凄い嫌な予感がしてるんだ。そろそろお暇させて——————————」

「千歌さんが!頼んだから!先生はお受けになった!と?」

「うん?うん、そうだよ」

 なんだろう、僕のレーダーが知らせている。即刻この危険を排除せよ、と。

 

「ほ、ほう・・・・。禁止・・・」

 

「え?」

 

「禁止ですわ!即刻!先生とスクールアイドル部の接触を禁止させていただきます!」

 

「ええ!?こ、困るよ!」

 突然の宣言に、千歌ちゃんは慌てたように声を上げる。

 がしかし、顔を真っ赤にしたダイヤさんには届かないようで。

「禁止ったら禁止ですわ!」

「困るよ!この部活の顧問になってもらう予定だったのに!」

 

「ちょいちょいちょいちょーい!千歌ちゃん!?初耳なんですけど僕それ!」

 

「えー?だってもう皆と仲良くてー、部活の顧問を引き受けてくれる優しい先生なんて思いつかないし」

 

 てかそもそも顧問決まってなかったのかこの部活。

 

「お待ちなさい!禁止と言ったのが聞こえなかったのですか!?それに!先生はもう既に生徒会顧問の役職に就いておられるのですよ?当然、兼任なんて不可能!」

 フハハハハハと、なぜか勝ち誇ったような笑みで千歌ちゃんをこころなしか見下ろすダイヤさん。

「ぐぬぬぬぬ」

 流石に兼任は無理、という現実を突きつけられると千歌ちゃんは言い返せない。

「ま、まあまあ、二人とも落ち着いて」

「梨子ちゃん!いいの!?このままじゃ先生取られちゃうよ!?」

「それは(絶対に)ダメだけど、今日のところは帰ろう?」

「そうずら、このままじゃ分が悪いずら」

 おっとっとー、皆、僕の意見はガン無視ですね。いいですいいです、慣れてるんで。

 なんてやりとりをした後、彼女らは生徒会室を後にした。

 残ったのは静けさと。

 

「絶対に負けませんわ」

 

 と、呟いた生徒会長の声と。

 

「いや、なにに?」

 

 僕の困惑した声だけだったという。

 

 

 




どうも!三か月ぶりの高宮です!皆!元気にしてたかな!?僕は元気だったよ!
ということでね、なんか更新が捗らない日々が続いていましたがこれから!明日から!頑張るので!
次回も変わらずによろしくお願いします!
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