ラブライブ!~輝きの向こう側へ~   作:高宮 新太

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ミューズ

「あら、誰かいるわ」

 目の前にいるのは、アライズの綺羅ツバサ。肩までのショートヘア、前髪から覗くおでこがチャーミングだ。同じ学校だから会うことはさほど珍しくないはずなのに、嫌に緊張する。

「む、先生に教室の使用許可は取ったんだろうな」

「とったよー。おかしいなー」

 後に続く二人は、統堂英玲奈(とうどうえれな)。すらりと伸びる長い髪に、切れ長の目。女の子からの人気が高いそうだ。

 そして、優木あんじゅ(ゆうきあんじゅ)。セミロングの茶髪の髪はゆるふわしていて、スタイルもいい。おっとりしているのが感じられる。

 以上、にこちゃんから聞きかじった知識だ。

 どうやら、先生が俺に教室の場所を間違えて伝えてしまったらしい。どうりで俺の教室じゃないわけだ。

「あ、あのー。もう終わりますんで、俺は帰りますよ」

 本当はまだ結構な量あるのだが、何より緊張で胃が痛い。即刻ここから立ち去りたかった。他の教室でやればいいし。

「!そうだ、良い事考えた」

「ツバサ?」

 綺羅ツバサがにたーっと意地の悪そうな笑顔を浮かべる。

「ねぇ、あなた私たちの練習見てよ」

「はい?」

「なーんか、最近マンネリ気味で練習つまんないのよ。あなたが見てくれれば少しは緊張感も出るでしょ」

「ちょ、ツバサちゃん。何言ってんの?」

「えー、いいじゃん。アイドルは見られる仕事なんだし、良い練習になるでしょ?」

「そうはいっても・・・」

 なんだか、勝手に話が進んでる気がする。練習を見学しろってこと?

 アライズの練習風景を見られるってことか、あれ?これって結構レアなんじゃないか?

 それにミューズのみんなにも何か活かせるかもしれないし。

 課題は・・・課題は、何とかなる、なる。

「えっと、俺は構いませんけど」

「ほら、こう言ってることだし」

「君が、良いならいいんだが」

 こうして、なぜか成り行きでアライズの練習風景を見学させてもらえるようになった。

「それじゃ、まずはストレッチから」

 柔軟をし始める。ただ見てるのも何なので、手伝える範囲で手伝うことにした。たまにミューズの練習付き合ってるから、慣れている。

 丁度、2組ずつになるし。

「っん、あら、結構上手ね」

 俺は綺羅ツバサとペアになっていた。

「慣れてるんで」

 順調にウォーミングアップを済ませ、次は振り付け。

 後ろにあるカーテンを開くと、大きな鏡が。ダンス教室にあるような一面鏡張りだった。こんなふうになってたのか。

 音楽が鳴り、一つずつ丁寧に振り付けを確認していく三人。

 思わず見とれてしまう。

 やっぱりアライズは凄い、まだ練習だというのに気迫と意気込みが伝わってくる。

 ミューズは、まだ足りていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 練習が終わる。

「どうだったかしら?」

「凄かったです」

 素直に感想を告げる。「そう」綺羅ツバサは満足げにうなずいた。

 アライズの、スクールアイドルの頂点に立つアイドルの、練習を見てやっぱりミューズは足りてないと思った。歌も、踊りも。

 でもそれは、まだ伸びる要素があるってことだ。みんなに伝えよう。きっともっとミューズは上にいける。

「それじゃ、俺はこれで」

「まって」

 練習もおわったので、帰ろうとした矢先、声がかかる。

「まだ、あなたの名前聞いてないわ」

 そういえば、自己紹介もまだだった。

「海田雪、一年です」

「そう。私は綺羅ツバサ。二年よ。こっちは」

「統堂英玲奈。同じく二年だ」

「優木あんじゅ。一年生だから同い年だね♪」

「「「これからも、よろしく」」」

 こうして改めて見てみると、やっぱりオーラがある。少し氣圧される。

「よろしくお願いします」

 かろうじて、挨拶だけは返せた。

「ん?これからも?」

 三人が発した言葉に引っかかりを覚える。

「そう、これからも」

「今日の練習は凄くはかどったからな、できればこれからも時々練習を見てくれると助かる」

「そういうこと♪」

 なるほど、それは願ったり叶ったりだ。アライズの練習からこちらも何か盗ませてもらおう。

「そういうことなら、これからもよろしくお願いします」

「「「うん!」」」

 まさか、テストの赤点取って居残りしてたらこんなことになるとは、人生どうなるかわからん。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええーー!?雪ちゃんアライズの練習見たってホント?!」

「う、うん」

 想像よりオーバーなリアクションをとるのは、穂乃果。

「う、う、うらやま」

「か、かよちんしっかりするにゃー」

 花陽は涙を流しながら机に突っ伏している。

 というか、どこからその情報を仕入れてきたんだろう。つい昨日の出来事なのに。誰にもしゃべってないのに。驚かそうと思ってたのに。

「それどころか、アライズとお近づきになったらしいじゃない」

「なんで知ってるのにこちゃん」

「もう私たちの事はどうでもいいの?」

 ことりが、今にも泣きそうになって訴えかけてくる。

「や、違う違う。アライズの練習を見させてもらって、ミューズに何が足りないか教えてもらおうと思って」

「「「「「「ほんとに?」」」」」」

「ほんとだって」

 ていうかあれ、今六人しかいない。

「そういえば、海未は?」

「海未先輩?海未先輩は、近頃様子がおかしいのよ。なんか考え事してるみたいで」

 ・・・そうなんだ、気づかなかった。何か悩んでいるのだろうか。

「すいません、遅れました」

「あ、噂をすれば海未先輩だにゃー」

「あの、皆さんに提案があるんです」

「「「「「「???」」」」」」

 海未の唐突な提案とやらに、みんな?を頭の上につけていた。

「生徒会長に、絢瀬絵里先輩にダンスを教わろうと思うんです」

「ダンスを?」

 海未の提案に疑問で返すのはことり。

「ええ、彼女はバレエの経験者でダンスも私たちより何倍も上手です」

「生徒会長がにゃ?」

「・・・反対よ、つぶされかねないわ」

 真姫ちゃんが厳しめの声で反対する。

「というより、了承してもらえるかどうか。生徒会長ちょっと怖いですし」

「―――――――大丈夫じゃないかな」

 この間見た、会長がファーストライブの模様をサイトにアップしてくれていたこと。きっと、会長だってミューズの事気になっているはずなんだ。

 だから、きっと大丈夫。

「そうだよね、雪ちゃん。とりあえず駄目元でも、頼んでみようよ。きっと本気で頼めば、思いは伝わる」

「穂乃果」

「どうなっても、知らないわよ」

「まぁ、このスーパーアイドルにこに―が頼み込めばどんな城でも即落ちよ」

「それじゃ、今行こうすぐ行こう」

 言うが早いか、穂乃果はダッシュで部室を飛び出して行ってしまった。

「穂乃果ちゃん」

「私たちも行きましょうか」

 まったく、その行動力は呆れるを通り越して尊敬する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして生徒会室。先ほどまで手伝っていたので、中にいることは間違いない。

「失礼します」

「どうぞ」

 ノックをして、穂乃果を先頭に入る。そこには会長と東條先輩がいる。

「何?」

「生徒会長に頼みがあってきました」

「頼み?」

「ダンスを教わりたいんです」

「もうオープンキャンパスまであまり時間もないし」

 オープンキャンパス?

 知らない事実を海未が耳打ちで補足してくれる。

「オープンキャンパスで生徒が集まらなかったら、廃校が本決まりになるんです」

 え?まじで?悠長にしてる時間はないってことか。

「「「お願いします」」」

 三人が頭を下げる。

「考えておくわ」

「ありがとうございます」

 穂乃果がお礼を言い、生徒会室を後にする。

「えりちは頑固ものやね」

「・・・海田君は、行かないの?」

「会長はこの学校の事好きですか?」

「・・・好きよ。いやでしょ?自分の学校がなくなるのは」

「一緒ですよ。彼女たちも。自分たちの学校が好きで、なくなってほしくない。だから頑張る。自分たちのしたい事を」

 思いは一緒、なら争う必要なんてないはず。少しでも、この学校のミューズのために。

「―――――彼女たちに伝えておいて、遠慮はしないわ」

「――――――はいっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして何日か経って、練習を見に行った。

 ストレッチから会長の練習メニューになる。

 会長が考えてきたのか、ミューズのそれまでのメニューとは、効率も効果も良くなっている気がした。素人目線だけど。

「きっついにゃー」

「・・・今日はここまでにしましょ」

 会長が切り上げると、穂乃果達が整列する。

「――――――。」

「ありがとうございました」

「「「「「「ありがとうございました」」」」」」

 一斉に、お礼を言う姿に会長は怪訝な顔で問いかける。

「あなた達、毎日辛くないの?」

「きついですよ。でもそれもこれも、私たちがやりたいから。この学校を守りたいからやってるんです」

「――――――――そう」

 会長が屋上を走り去っていく。それをゆっくりと東條先輩が追う。

 俺ができることは何だろう。会長に、ミューズに、役に立てることはそう多くないはずだ。

 そう多くないはずだから、ちゃんと、役に立とう。俺ができることを、全うしよう。

 そうして、勘を頼りに会長の教室へと向かった。

 多分そこにいる。

 

 

 

 

 

 

「やっぱり」

 生徒会長が自分の机に座っている。その隣に腰掛ける。

「会長は、かわいいですよ」

「なっ///何言いだすの、突然」

「だから、やりたいことをしましょう。音ノ木坂の生徒会長としてではなく。一人の絢瀬絵里として」

「そんなの―――――」

 後ろを振り返る。ミューズが、みんながそこにいた。

「絵里先輩!ミューズの一員になってください!」

「―――――――」

「・・・えりち、きっとねホントにやりたいことはやりたいからやってみる。きっかけなんてそんなものでいいんじゃないかな」

「・・・希」

 ほら、俺の出来ることはきっともうない。あとはみんながいれば大丈夫。

 そっと、誰にも気づかれないように教室を出ようとしたとき。

「海田くん!」

「?」

 扉に手を掛けたところで絵里先輩に呼び掛けられ、ゆっくりと近づいてくる。

「ありがとう」

 頬に口づけされた。

「なななな、なにやってんのよ!絵里」

「いつの間に、そんなに仲良くなったん?えりち」

「秘密よ」

 まったくもって、絵里先輩には敵わない。

 そして無事に、オープンキャンパスは成功を納め、廃校は免れた。




どうも、ぽいぼい教信者高宮です。
明日から広島に行ってしまうので、更新遅れます、すいませんっぽい?
週明けには帰ってくるので、それまで見捨てないでくださいっぽい
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