合宿一日目、列車の乗り間違い、度重なるTO LOⅤEる。メンバーの内輪もめ。などにより、日は傾きかけていた。
「夕飯はどうするの?」
その用途を満たすことなかった水着から着替え、リビングにいる真姫ちゃんに訪ねる。
「そうね、急だったから特に用意してないし、買いに行ってくるわ」
「じゃあ穂乃果も行く!」
ついさっきまで水着だったはずの穂乃果は、私服に着替えて俺の背中に貼りつく。
「いいわよ。私しか場所わかんないし、一人で行ってくる」
「それは駄目よ。先輩禁止なんだし、こういうところはみんなで助け合わないと。それに、この人数の量、一人じゃ無理でしょ」
脱衣所から今まさに出てきた絵里先輩が
「それじゃ、うちがお供する♪たまにはいいやろ?こういうのも」
「・・・好きにすれば」
くるくると毛先を弄びながら、顔をそむけて言う真姫ちゃんはいつかの、まだミューズになる前の、
「じゃあ、俺も行くよ。男手はあったほうがいいでしょ」
それは、かつての絵里先輩の面影を見たからなのか、はたまた本心でそう言ったのか、俺にはどっちかわからなかったけど真姫ちゃんは嬉しそうな顔をしていたので、良しとしよう。
「それにしても、意外やったね。海田君がこっちに来るなんて」
「そうですか?」
スーパーまでの道すがら、ふいに東條先輩が話しかけてくる。
「てっきり、穂乃果ちゃんたちのところに引きとめられると思ったけど」
引きとめられる?別に穂乃果達は普通にいってらっしゃいしてくれたけど。
「そんなことより、なんでついてきたの?」
俺が、頭に?を浮かべていると真姫ちゃんが怪訝そうに尋ねていた。
「・・・似てるんよ。うちの知ってる人に。とってもよく」
「・・・・」
「素直じゃないその人の事も、真姫ちゃんも、ほっとけないから。だから、ついつい世話を焼いてしまう」
「東條先輩・・・」
そう言った、夕日に照らされた東條先輩の表情は、とても穏やかで。だからついつい、みんなも甘えてしまうのだろう。
「さ!早くせんと日が暮れてまうで?」
「ちょっと、道わかるの?」
「・・・そうやった」
数十歩は先に進んだであろう先輩のあとを、真姫ちゃんと顔を合わせ、笑いつつ早足で追い付いて。きっとこの合宿の意味も、とうに果たされているのだろうと気付きつつ、この三人も悪くないのだと思った。
「ふぅ。みんな、雪ちゃんはもう行ったよ」
「そう、ならようやくあの話ができるわね」
「ええ、あの!話ですね」
海田が、買い出しに行っている頃、・・・今のダジャレじゃないから!偶々だから!
別荘の家では重々しい空気が流れていた。
「「「「「「「誰が雪君の隣で寝るか!!」」」」」」」
重々しい空気。重々しい空気?まぁとりあえず、本人たちはいたって真剣に、リビングにある大きな丸テーブルを囲いながらミーティングを開いているのであった。
まず口を割ったのは、意外なことに花陽。
「この家の部屋割は5つ、そのどれもが二人一部屋になっている」
「そして、ミューズは9人、ここに雪ちゃんが加われば、必然的に人数は偶数になるということにゃ」
「つまり!誰か一人は、雪と寝られるということに!」
勢いよく、机をたたくにこちゃん。勢いよすぎて、手が赤くなっている。
「「「「「「「ゴクリ」」」」」」」
買い出しに行っている真姫ちゃんと希と雪を除く7人同時に、生唾を飲み込む音が聞こえる。
「ふふっ♪しかも、運のパラメーターが振り切ってる希ちゃんは排除できたし、これでみんな対等だね?」
「こ、ことりちゃん。そんな考えが」
「お、恐ろしい」
ことりの真っ黒い笑顔に、思わず素に帰る凛と花陽。
「と、とにかく。問題はどうやって雪と一緒に寝る人を決めるか、よ」
ガクブルしている凛たちを片目に、絵里が話を戻す。
「トランプ、は希ちゃんが持ってるし、他に対決できそうなものと言えば――――――」
穂乃果が辺りを見回す。すると、思い出したように凛が手を上げた。
「はいはいっ!凛が持ってるバトスピで決着付ければいいと思うにゃー」
「ばと、すぴ?」
絵里はまるで異界の言葉に出会ったかのように茫然としている。
「バトスピより、カードファイトヴァンガードだよ凛ちゃん!」
穂乃果の手にはすでにデッキが握られている。
「それより、ファイブクロスでしょ!?」
「穂乃果とにこは中の人の奴ですよねそれ!」
海未ちゃんがおもわずつっこむ、おかげで事態は収拾した。
「それじゃ、ルール分からない人もいるし、みんなが分かる奴にしましょ?」
「絵里ちゃん・・・そうだよね?探せばなんかあるかな?」
「あ!穂乃果ちゃん、これは?」
ことりが持っているものはウノだった。
「あ!それ凛が持ってきたやつ!」
今しがた思い出したという風に驚く凛。
「それならルール分かるかも」
安心といったように胸!に手を置く花陽。
「そうね、これならみんなルール分かるでしょうし。これで決めましょうか」
「ただ普通にやったんじゃつまんないし、特別ルールとして最後まで残った人が勝ちってことにしましょうよ。パスは、そうね、二回までってことで」
「にこちゃんそれいいね!」
ということで、ずいぶん時間かかった末に、ずいぶん時間かかるウノで決着をつけることになった。
「ただいまー」
両手いっぱいに荷物を抱えて、帰宅の意図を告げる。今日の夕飯だけでなく、明日の朝食とお昼もまとめて買ったので結構遅くなってしまった。もうすぐ辺りが暗くなる。
「うわっ!!雪ちゃん?」
いちばん身近にいた穂乃果が驚いたようにこちらを向く。
「え?雪?」
「嘘、もう帰ってきたの?」
その穂乃果の声により、絵里先輩と花陽まで穂乃果と同じ反応をする。
「うぐぐぐぐ、ドローフォーにゃ・・・」
「ふっふっふ、残念でしたね凛。もはやあなたの手札は一枚。対して私はこれで6枚。これで私の勝利も揺るぎません」
「何してるの?」
少し後からきていた真姫ちゃんと東條先輩も帰ってくる。
「ちょっと、にこちゃん!にこちゃんが変なルール追加するから終わんなかったじゃん!」
「なによ!穂乃果だってノリノリだったじゃない!」
なにやら後ろで言い合いをしてる様子。それはさておき、凛たち、正確には凛と海未が何をしているのか気になったので覗きこもうとすると、真姫ちゃんも全くおんなじこと思ったのか頭と頭がごっちんこする。
いま下ネタと一瞬でも思ったあなたは心が汚れています。
「い、痛い・・・」
「ごめん、真姫ちゃん大丈夫?」
真姫ちゃんのおでこを見るために髪をかきわけ顔を近づける。
「ち、ちちちちかい!///」
ドンと押され真後ろにいた海未にのしかかってしまう。
「わわわっ」
「うわっ!ごめん海未」
「い、いえ大丈夫です」
幸い、二人ともけがはないが。
「あーあ、これじゃウノできないにゃ」
どうやらふたりともウノをしていたみたいだ。さっきの衝撃でカードがばらばらになってしまっている。
「これはもうしょうがないにゃ。雪ちゃんも帰ってきたし、また別の勝負にするにゃ」
「な!それはないですよ凛!あと少しでわたしが勝つところだったじゃないですか!?」
「知らないにゃ。勝負がつく前にこんなんになっちゃったんだからしょうがないにゃ」
「うぐぐぐぐぐぐ」
なんだかよくわからないが、二人は何かの勝負をしていたらしい。海未がもう少しで勝てそうだったのに俺のせいで台無しになったと。海未は案外負けず嫌いだから納得するだろうか。
「なんか、ごめん」
どうあれ俺が勝負を壊してしまったのだから、謝る。
「まぁ、いいですけど・・・そのかわり、こんど、その、デー、ト。とか」
「あー!雪君何買って来たの?」
「見せて見せて?」
「・・・・あれ?」
海未に許してもらえたかと思うと、急に穂乃果とことりが俺の両腕に置いていた荷物とともにキッチンに連れ込まれてしまう。
「残念だったわね」「なぜそんなに嬉しそうに言うのですか!絵里!」
「カレー?」
「うん、だけど時間が時間だし、もっと簡単なものにしようか?」
もう時刻は六時過ぎ、みんなお腹もすいてるし、今から作ってたんじゃ間に合わないかもしれない。
「はぁ、どいて。ここは宇宙スーパーアイドルにこにーの出番ね」
ことりや凛を押し分けてキッチンに入ってきたにこちゃんはてきぱきと具材を並べていく。
「にこちゃんって料理うまいの?」
近くにいたことりが訪ねてくる。
「うん。小さい頃はにこちゃんのお母さん、今よりもっと忙しかったから。ほぼ毎食、にこちゃんが作ってたんじゃないかな」
いまでこそ、にこちゃんのお母さんの仕事も落ち着いて、こころちゃんも料理ができるようになったから良かったものの、当時は俺もほぼ毎日家に行ってたし、そのたんびに手料理をごちそうしてもらっていた気がする。
「ふーん。詳しいんだ・・・」
気のせいだろうか。心なしかことりの表情が一段と冷え込んだ。
「く、詳しいって言うか、まぁ昔からいるし」
「ふーん」
あれ?今度は穂乃果が出てきたぞ?右を向けばことり。左を向けば穂乃果がそれぞれ凍てつく波動を繰り出してくる。
「変なことやってないで、雪も手伝いなさいよ」
「う、うんわかった」
なんとか二人の全体攻撃から逃げ出して、俺もキッチンに立つ。
「さ、私たちも手伝いましょうか。みんなでやったほうが早いでしょ」
「そうやね」
絵里先輩の鶴の一声により、みんなが思い思いの手伝いをする。穂乃果と花陽はテーブル周りをきれいにし、真姫ちゃんがお皿やらスプーンやらの位置を教えながら並べている。絵里先輩と東條先輩、そして海未は、料理を手伝い、ことりは後片付けや料理の盛り付けなどをやった。
あと一人足りないなと思い、周りを見回すと、凛を見つける。凛はあまりのみんなの手際の良さにあたふたしている。
「凛。凛は味見してくれる?」
もうみんなが仕事はしてくれているので、手は足りている。手持ちぶたさになるのもしょうがない。なので凛が一番得意そうなものをお願いした。
「え?凛、ラーメン以外のものはちょっと」
グリグリ。
「い、痛いにゃ!う、嘘にゃ。凛カレー大好きにゃ!だから頭グリグリはやめて!」
この娘は。人がせっかく気を使ったというのに。
「ほら、早く味見してきて」
「――――――――うん。雪ちゃん。大好きにゃ」
ガンガラガッシャーン。
「ご、ごめんなさいちょっとお皿落として・・・」
「真姫ちゃん?」
パリン。
「あ、ごめんなさいお皿われちゃった見たい」
「こ、ことり?」手には真っ二つのお皿が。
グツグツ。
「に、にこちゃん!溢れてる溢れてる」
「あ、ああ」
思い出したように火を消すにこちゃん。
「私が勝っていたんです、あれさえなければ私が」
「まだ引きずってるの海未!?」
「凛。後で話があるわ」
「えへへ。やーだよー」
「ぐっ!!」
「まぁまぁえりち。まだ合宿はこれからやろ?」
「・・・・そうね」
なんだこれは、ホラー映画のような空気に包まれたのも一瞬。すぐに元に戻り、みんなの協力もあって無事?にカレーが完成した。
「いただきます」
「花陽、なぜお茶碗にご飯をよそっているの?」
「気にしないでください」
「ねぇ、にこちゃん?俺のカレーだけ異様に辛い気がするんだけど」
「気のせいよ」
「そっか、気のせいか」
いや、気のせいじゃない。確実に辛い。ごまかされない。
それでも、にこちゃんが作ってくれたカレーはおいしくて、みんな完食してしまった。
「もうお腹いっぱい。雪穂ーお茶」
「家ですか」
「ごちそうさま。おいしかったよにこちゃん」
「あ、当たり前でしょ!このにこにーが作ってんだから///手により掛けて作ったんだから///」
「うん。ありがとう」
照れてるにこちゃんにお礼を言って、さてどうしようかという話題になる。
「花火!」
「凛ちゃん言ってたもんね」
「だめです。明日は早朝から練習するのですからもう寝ないと」
「ちょっと、海未ちゃん?あの事忘れたの?」
みんながあれこれ言っている時、ことりがなにやら耳打ちしていた。
「あ、そうでしたね///というか、ホントにやるのですか?」
「あったり前でしょ?!海未ちゃん何のためにこの合宿に来たの?!」
「・・・練習のためではないんですか?」
呆れたように言う海未。練習のためじゃないの?
「何?何の話?」
気になったのか、絵里先輩が会話に参戦してくる。そんな絵里先輩にことりがまたもや耳打ち。
「―――――――なるほど、いいわね」
「えりち、うちにも教えて?」
今度は絵里先輩から東條先輩に、そしてまたさらに凛にといった様子で、俺以外の全員に行きわたる。
「そ、そこまでやるの?!」
「そこまでやるんだよ!じゃないと、この泥沼からは抜け出せないんだよ」
穂乃果が何やら力説している。あまりの力強さに花陽はそれ以上何も言えなくなってしまう。
「馬鹿じゃないの?私はパス」
「へー、じゃあ真姫ちゃんは脱落だね」
「うっ!」
こんどはことりと真姫ちゃんが。いったいなんだというのだろう。
「雪。私たちはちょっとやることあるから、先におふろでも入ってなさい」
「え?いいけど。やることって?」
「女の子にはいろいろあるんだにゃ。いいからお風呂でゆっくりしてくるといいにゃ」
「そっか。じゃあ」
お言葉に甘えて一番風呂をいただくことにした。
「ふいー」
この真姫ちゃんの別荘には驚かされたけど、このお風呂も驚かされた。まず一つに露天風呂。広さもさることながら、露天風呂って。見上げれば満天の星空が窺える。
「頼み込めば養ってくれないかな―」
そんなありえない願望も、この解放感では思わず口に出る。
て言うか広すぎだ。一人じゃ持て余してしまう。余裕で泳げる広さだ。
と、そんなことを一人思っていると、ガラガラと開くはずのない扉が開け放たれる。
「いやー、凄い広さだねー」「そうですね」「流石別荘って感じだね」
聞き覚えのある声が連続して三つほど。
「うわー、これ泳げるんじゃないかにゃ?」「思ってもおよいじゃダメだよ凛ちゃん?」「ほんとガキねー」
またまた聞き覚えのある声。
「ちょ、やっぱり無理!水着であんなに恥ずかしかったのに・・・タオル一枚じゃない///」
「うん?ここにきてそんなこと言うん?そんな素直じゃない子にはわしわしやで」
「素直とかそういう問題じゃないでしょ?!」
「真姫、もう逃げられないのよ。覚悟決めなさい」
やっぱり、みんなだ。なぜみんながお風呂に?さっき俺が入ったことは、みんな見ていたはずだ。もう上がったものと勘違いしたのかな。
(ふっふっふ。作戦成功だね)(あ、あのやっぱりやめませんか?こんなふしだらな事、普通に恥ずかしいです///)(あれ?海未ちゃんもそんなこと言うん?)(ひ、ひぃい!やめてくださいその手の動き)
「えっと、みんななにしてるの?」
「「「「「「「「「はうっ!!!!!!」」」」」」」」」
「ちょ、ちょっと見つかったにゃー!?」「ほ、穂乃果ちゃん。この場合どうすれば」「お、おおおお落ち着いて花陽ちゃん。落ち着いて海未ちゃんを身代わりに」「あなたが落ち着いてください!ていうか押さないで!」「くっ!!作戦失敗かしら」「作戦。そう題して「「「「「「「「「バッタリ!お風呂に入ろうとしたら偶然男の子と混浴状態になっちゃったテヘぺろ!大作戦」」」」」」」」」
何してるか聞いただけなのに、この反応。
「まっ、もう見つかったもんはしゃーないやん。普通にお風呂を楽しもうやない」
「それもそうね」
そういって、東條先輩と絵里先輩が普通にお風呂に入ってくる。いやいや。
「あの、俺上がりますから」
湯船からあがると、凛と穂乃果、ことりの三人が出入り口を封鎖していた。
「まぁまぁ、雪君まだ体とか洗ってないでしょ?ことりが洗いっこしてあげる」
「なんでしってるの?」
「そんなことより、早く湯船に浸からないと体冷めちゃうにゃ」
「そんなこと?結構大事なことじゃない?」
「ほらほら早く早く。昔は一緒にお風呂入ってたじゃん」
「そうだけど・・・」
ま、穂乃果達がいいならいいか。
前言撤回。やっぱり良くなかった。昔って、5年以上前の話であって、今はみんな色々と成長していたりしてなかったり。
「どこ見てんのよ!」
にこちゃんから本日二度目のアッパーカット。
「あら?雪はおっぱいは小さいほうが好みなのかしら?」
アッパーを食らい倒れたすぐそばに絵里先輩の顔が。近い近い近い。いつもより多く見える肌色につい目をそらしてしまう。
「いや、そんなことないですけど」
俺も何を言ってるんだろう。アッパーを食らったせいだ。
「ちょっと、絵里!近いですよ!」
海未がジャボジャボと湯船をかき分けながら、俺と絵里先輩をひきはがす。かと思うと。
「ほら!かよちん今だにゃ!かよちんは左腕、凛は右腕を攻めるにゃ」
有言実行。凛は右、花陽は左の腕にぴったりとくっついてきて、胸の差がよくわか―――――――「ああっつい!!」目が、目がぁ!!目にお湯がぁ!!
「凛は、今雪ちゃんが何を思ったか手に取るように分かるよ」
ホントに?みんなエスパーなの?
あまりの熱さに、湯船から這い出る。
「雪君。お背中お流ししますね?」
「え、ああうん」
いまだ眼が開けられない中、声だけでことりが誘導して背中を流してくれる。
「ねぇ、雪君覚えてる?昔もよくこうやって背中流したりしてたよね?」「そうだったね」「あ、ずるい!穂乃果もやる!」
穂乃果の声が聞こえて、数秒遅れて目の前に気配。どうやら前から髪を洗ってくれているようだ。なんだかむずがゆい。
「ていうか、あれ?これタオルであらってる?」
「う、ん。洗って、る、よ」
とぎれとぎれの吐息が漏れ出る。力を入れているのだろうか、あまり実感しないけど。
「ちょ、ちょっと!なにやってんの?!人のお風呂でそれどここすりつけてんのよ!」
急に大きな声がする。どうやら真姫ちゃんが怒っているみたい。
「もう~真姫ちゃん大声出さないで?」「そりゃ大声も出るわよ!」「まぁまぁ、なんだったら真姫ちゃんもすればええんやない?」「な!なによそんなのするわけないでしょ!」「もう、真姫ちゃんはほんとそっくりやな」「だからなんなのよ!」
みんなの喧騒と、シャンプーが目にしみる。一人は持て余すと言ったけれど、この状況は予想していなかった。人生何が起こるか分からないな。
にぎやかだったお風呂からあがり、後はもう寝るだけといった時間。「花火するにゃ」
「まだ言ってるんですか?」
「それに、肝心の花火はどこにあるの?」
やれやれといった様子の、海未と絵里先輩。しかし絵里先輩の疑問はすぐに解消される。
「それなら、ほら!俺買ってきたんですよ。少ないけど」
買い出しの時、そういえば花火と思いだして、一応買っておいたのだ。大したものじゃないけど。手持ちの花火と線香花火くらいはある。
「わー!雪ちゃんありがとー!」
思いっきり飛びつかれて後ろに倒れる。
「どういたしまして」
「さー!早速やるにゃ!」
早く早くと、俺と花陽を引っ張り庭にでる。
「ま、これくらいならいいんやない?」
「ま、たまにはいいかもね」
「はぁ、明日起きれなくても知りませんよ」
「わーい花火だ」
「穂乃果ちゃんもしたかったんだね」
みんなで庭に出る。ライターで、まず凛の手持ち花火に火をつける。そしてその火を、まるで聖火を移すがごとく、みんなに順番に移してゆく。
「二刀流だにゃ」
「うお!負けないよ凛ちゃん!」
穂乃果と凛は走りまわり、にこちゃんが呆れ、ことりと花陽がそれを遠くから笑って見つめる。そんなみんなを縁側で座って楽しむのは、他のみんな。もちろん俺も。
「きれいよね」
「そうですね」
花火の色は、偶然かはたまた誰かが仕掛けたのか、みんなの担当色になっていた。その光は淡く、だげど優雅に夜を照らしている。
「あ、終わったにゃ」
みんなの手持ち花火が終わりを告げる。もともとの人数と一つしか買って来れなかった関係もあり、残るのは線香花火一種類だけ。
「最後に線香花火、定番ですね」
みんなが線香花火を持つ。
「じゃあ、定番つながりでもう一個。みんなで競争しない?誰が一番長く持つか」
穂乃果、昔も線香花火するたんびに競争していた。なんだか懐かしい気持ちになる。そういや花火なんて何年振りだろう。
「いいわね。ま、どうせこのにこにーでしょうけど」「あ、落ちたにゃ」「誰よ勝手に火つけたの!!」「まだあるよ」
にこちゃんに最後の一本を手渡す。
「じゃあ、いくよーミューズミューッジックスタート!」
「その掛け声なんだ」
苦笑しつつも、みんなで一斉に火をつける。
「ハラショー」
「きれいだね」
線香花火は先端をぷっくりと太らせ今にも落ちそうになる。「あ!」最初は凛だった。落ち着きなかったからだ。「落ちた!」次はにこちゃん。どんどんと落ちてゆく線香花火を見ながら、きっとこの時は一瞬なのだろうと考える。この日が、今までがそうだったように。これからも、これからの学校生活もまた一瞬で儚いものなのだろう。だからこそ、美しく守りたいと思う。この一瞬を、かけがえのないものにするために。
「二人の一騎打ちだね」
ことりが最後に残った俺と、隣にいた絵里先輩の線香花火を見ながらそう言う。
「「あ!」」
風にあおられて、くっついて、そして同時に落ちてしまった。
そんな光景をみんなで笑いあいながら、こんな一瞬が永遠に続けばと、そう願った。
どうも、やっべっぞ。高宮です。
なんでか2話連続でこんなに長くなっちゃってやっべっぞ。もっとコンパクトにまとめるつもりだったのに。まじでやっべっぞ。
パクリたい芸人まじでやっべっぞ。
ということで次回もやっべっぞ。