ラブライブ!~輝きの向こう側へ~   作:高宮 新太

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はじめの一歩

「フルーツ盛りとドンぺリ」

「かしこまりました」

 執事風のスーツに身を包み、お客様のご注文を承る(うけたまわる)。新宿にあるこの秘密めいたお店はお客も従業員も理由有り(わけあり)の人たちが多い。

 たとえばこのお客様は、娼婦らしい。またその相手をしているのはヤクザを追われた人。

 そんな環境だからか俺のちっぽけな事情なんて、いともたやすく呑み込んでくれる。

 

 

 

 

 

「ふぅ」

「おい、もう休憩入っていいぞ」

「はい」

 休憩室に入る。パイプ椅子に腰かけながら、先ほどあった出来事を振り返る。

 穂乃果達がスクールアイドルをやるというあれだ。

 正直どうなるか想像はつかない。でも、心配はあまりしていない。どちらかというと心配しているのは俺より海未だろう。

 バイトまでの道のり、海未と一緒に歩いていたときに言っていた事を思い出す。

「穂乃果のあれ、どう思います?」

「どうって?」

「本気でスクールアイドルをやろうと思っているのでしょうか」

「俺には、そう見えたけど」

「たとえスクールアイドルを結成したとして、失敗したら。その先の事を考えているのでしょうか」

 海未はいつだって賢い、無計画な穂乃果の、そして自分の未来をいつだって考えている。

「考えてないだろうね」

「ですよね」

 海未の顔が暗くなる。

「だから穂乃果にはそんな頭を使うことは無理だから、海未や俺が、考えていればいいんじゃないかな。先の事は」

 穂乃果にできないことは、他のみんなで。他のみんなにできないことは穂乃果がカバーすればいい。そうすればきっと、できないことなんて何もない。

「そう、ですね。やっぱり話してよかった」

「そう?そう言ってもらえるとうれしいな」

 ようやく笑顔になった。やっぱり海未には笑っていてもらいたい。もちろん他のみんなも。

「それはそうと、さらっとひどいことを言いますよね、雪は」

「ひどいこと?」

 結構自分ではいいこと言ったつもりなんだけど。

「ふふっ。雪らしいです」

 その言葉を最後に、海未とは別れた。

「おっと、やべもう時間だ」

 明日も早い。さっさとバイトを終わらせて、ゆっくり寝よう。

 

 

 

 

 

 

 

 明朝。時計の針は、六時を過ぎていた。神田明神にいるのは海未、ことり、そして俺。明らかに一人足りてない。

「まさか言いだしっぺが遅刻とは」

 さすがに、想像できなかった。こんな形で俺の想像の上はあまりいってほしくないなー。

「あはは、穂乃果ちゃん。朝は弱いから」

 ことりが困ったように笑う。

「もう無理です。待てません、ちょっと呼びに行ってきます」

 海未がしびれを切らして階段を下ろうとした瞬間。上ってくる人影が。

「はぁはぁ、お、遅れてごめーん」

 たはは、と笑う穂乃果に海未の説教が続く。

「穂乃果、これはあなたが言いだしたことなんですよ!なのに当の本人が遅れてくるとはどういう了見ですか!」

「し、仕方ないでしょ。昨日遅くまでスクールアイドルの事調べてたんだよー」

「そんなの、言い訳になりません」

「まぁまぁ」

 ことりが割って入ると海未は多少落ち着いたようで。

「まぁ、あまり怒っても、時間を無駄にするだけですし。早く練習しましょう」

「そ、そうだよ。海未ちゃん、ファイトだよっ!」

「穂乃果は罰として、階段ダッシュ10本追加です」

「そ、そんな。海未ちゃんの鬼!悪魔!般若心経!」

 般若心経?何か一つだけ違うけど、きっと難しい言葉使おうとして間違えたんだろう。

「ところで、俺はいったい何をすればいいの?」

「雪君は、私たちの練習を見てくれればいいよ、たまにアドバイスとかくれるとうれしいかな?」

「そっか、わかった」

「とはいえ雪も忙しいですし、毎日じゃなくてもかまいません。来れる時だけで」

 俺のバイトの内容は、みんなは知らない。とはいえ、きっと良くないことなのだということは薄々気づかれている気がする。だってこの話題の時いつも、悲しそうな顔をするから。

「うん、でもなるべく来るようにするよ」

 この話題はこれでやめ、三人は練習に移っていく。練習といっても、曲も振り付けもないので基礎体力をつけるべく、階段ダッシュや筋トレが中心になってくるのだが。というか、ここで踊りや歌の練習はさすがにできない。別の場所を探させよう。そして一つ気になることがあった。

「ねぇ、一つ思ったんだけどいっていい?」

「なに、雪君」

「アイドルって、歌ったり踊ったりしながらそれでも、笑顔だよね?」

 うちの学院のアイドル、アライズといったっけ、その人たちも汗だくになりながらも、それでも笑顔を絶やさなかった。

「笑顔で運動する練習をしたほうがいいってこと?」

「うん」

「確かに、運動しながら笑顔というのは難しいものです」

 海未は、昔から運動神経良かったから多少はわかるのだろう。

「よし、じゃあこれからは常に笑顔、だねっ!?」

 にぱーっと笑う穂乃果にうなずきを返して、練習を見守る。練習を見守る間、少し楽しかったと思うのは不謹慎だろうか。

 

 

 

 

 

 

「そろそろ、切り上げよう」

 もうそろそろ家に帰らないと、学校に間に合わない。

「ぶはー、疲れた」

「これを、毎日」

「ちょっと、初日から、飛ばしすぎたかも、しれません」

 みんな倒れこんだり膝をついたりしているのを介抱しながら、スポーツ飲料を手渡す。

 とりあえず、初日の朝はこれでおしまいだ。

 

 

「あの子ら、確か―――――――」

 初日だったからか、この時、物陰から見ていた巫女さんには誰も気がつかなかった。

 

 

 

 

 

 

 そのあとは、バイトが忙しくなってしまいあまり行けてなかった。名前がミューズに決定したということ、踊りの練習は屋上でしているということだけは電話で聞いた。

 なので、今日はお休みを貰い、久方ぶりに放課後、神田明神に出向くことにした。

 長い石段を上っていると、一人の少女を見つける。

 あれは音ノ木坂の制服、赤い髪がなびくその人は石段の上であっち行ったりこっち行ったりしていた。

 なにやってるんだろう。ここ神社だしお参りかな?

 そう思った矢先、何かに気づいた様子で、急いで物陰に隠れる。

「あ、おーい雪ちゃん」

「あ、穂乃果」

 石段の上から呼びかける穂乃果に手を振りつつ、先ほどの人を見やると、どうやら穂乃果達を覗いているようだ。あちらから見えるかは分からないが、こちらからは丸見えだ。

「あのー」

「ぴひゃっ」

 ぽんっと肩に手をおくと想像以上に驚かれた。

「穂乃果達に何か用ですか?」

「あ、え、えーと。ナニソレイミワカンナイ!」

 そう言い残すと、急いで石段を駆けていった。

「あ、そんなに急ぐと―――――」

 ほら、こけた。危ないですよって言おうとしたのに。

「大丈夫?」

「う、ううううううう」

 みたところ怪我はなさそうだけど。

 差し伸べた手をはたかれて、走って行ってしまった。

「いっちゃった」

「今のって、西木野さんだ」

「?知りあい?」

「うん、このまえピアノ弾いてるところをたまたま見つけて、すごく素敵な歌と声だったから曲作ってってお願いしたんだけど・・・」

「断られた?」

「うーん、どうだろ。わかんない」

「わかんないって」

 笑顔の穂乃果に悲壮感は感じられない。

 というか。

「えーっと、そちらの方は?」

 さっきから気になっていた。巫女装束に身を包んだ多分バイトの巫女さん。今まで数々のバイトをしてきた俺には分かる、あれは自給がいいから。

「あー、こちらは」

「どうも、音ノ木坂の副会長、東條希(とうじょうのぞみ)、高3や」

「あ、どうも、はじめまして海田雪(かいだゆき)っていいます。高一です。よろしくです」

「海田君やな、こっちこそよろしゅうな」

 おっとりとした口調と独特の関西弁、きれいにまとめられた紫色の髪の毛が印象的な人だった。

「ところで、この子たちとは、どういう関係なん?誰かと付き合ってるとか?」

「「「な、そそんなわけ///」」」

「いや、幼馴染ですよ?ただの」

「「「っ――――――」」」

 ?なんか周りが騒がしい?

「なるほど、だいたい分かったわ。君らも難儀やね」

 困ったような笑顔を浮かべる東条先輩。

「えーっと、それで話っていうのは?」

 そう、俺が今日ここに来ることを伝えると重大発表があるといわれ、少しばかり急いできたのだ。

「あ、そうだ。あのね、私たち今度の新入生歓迎会で、ライブできることになったの!」

「講堂を借りて一ヶ月後に、手伝ってくれるという人もいるんです」

「そっか、それは、良かった」

「本当は、部活にしたかったんだけど、五人いないとだめって言われて」

 五人?穂乃果と海未とことりで三人だから、あと二人か。

 まぁ、なんにせよ、とりあえず場所と人員はクリア。そして多分、曲も。

「うん!だから雪君には、そのライブ見に来てほしいんだけど」

 ことりに顔を覗きこまれ、うるうるとした瞳でお願いされる。とはいっても。

「でも、女子高には入れないんじゃないかな。さすがに」

 女装、は無理だって。

「それなら、大丈夫や。うちが口利きして生徒会の手伝いってことにすれば」

「いいんですか?てかそんなことできるんですか?」

「うん。うち生徒会やからね。こう見えても副会長なんよ?」

 そうなんだ。確かにあんまり見えない。

 東條先輩が一呼吸置いて、その代わりと続ける。

「その代わり。ほんとに手伝ってもうらうで?」

「はい。もちろんです」

「よーっし、なんか気合入ってきたー!!」

「練習しましょうか」

「そうしようそうしよう」

 練習に移る三人をそばで見守る。横には東条先輩。

「ごめんな」

「何がです?」

「うちんとこの会長。頑固で意地っ張りやから。認めてないんよ。彼女らの事」

「・・そうなんですか」

 いた仕方ない事なのだろう。なにせ彼女らはまだ何もしていない。実績なんてない。傍から見れば思い付きのお遊びだと思われても、それは仕方ないことなのかもしれない。

 でも、俺は知っている。彼女らが本気で学校を救おうとしていることを。彼女らが本気で、アイドルになろうとしていることを。今は、それだけでいい。それだけで。

 一月後が、本当に楽しみだ。

 




どうも、ノロノロビームを受けてる気がしてならない高宮です。
というか、時の流れが速すぎる。つい昨日年越したじゃん。なんでもう三月なの?なんでもうすぐ俺の誕生日なの?早いよ!
俺別にクリムゾン先生が書くワンピのヒロインじゃないよ?!快楽攻めとか受けてないよ?
リアルに一日が27時間くらいあればいいのにって思ってしまう。
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