ラブライブ!~輝きの向こう側へ~   作:高宮 新太

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人はみんな自惚れ屋

「修学旅行?」

「そう、修学旅行」

 もうそろそろ、冬服に衣替えしようかという季節。未だ半袖の俺は少し肌寒い。

 ことりのお母さんもとい理事長に見つかってから音ノ木坂に行くことに若干の抵抗を覚えつつ、しかしもう見つかってしまったものは仕様がないと開き直った放課後。なぜか音ノ木坂の室内プール。

 声が若干反響するこのプールで、何を思ったのか凛達一年生組に連れられてプ-ルではしゃいでいる。

「ほらほらー、かよちん達も早く入るにゃー」

「いやもう寒いよ凛ちゃん。風邪ひいちゃうよ?」

 といっても、はしゃいでいるのは凛ただ一人だけなのだが。

「穂乃果達が修学旅行で沖縄に行ってるのがずるいって凛が」

 真姫ちゃんが隣で呆れる。

 なるほど。それで少しでも沖縄気分を味わおうとプールにねぇ。なんというか、不憫だな。

「ていうかずるいって。凛も来年行くんでしょう」

「そうだけど!沖縄とは限らないにゃ!」

 いやいや、こういうのは大抵毎年一緒のところ行くもんだよ。

「それよりせっかくプール独り占めできるんだから雪ちゃん達も早く早く!!」

 そりゃ独り占めでしょうよ、もう十月なんだから。こんな時期にプールなんて行く奴はバカだと相場が決まっている。寒いのは苦手なんだ。

「ああそうか。バカなんだ」

「なにを~!」

 一人呟いたつもりだったが聞かれていたらしく、ぬるっと水面から手を伸ばし、俺の足首を掴む。

「ちょ、バカ!俺水着持ってきてな―――――――」

 言い終える前にドボンドボンと水しぶきが立つ。

「あはははは」

「何するんだこのバカ!俺替えの服とか持ってきてないんだからな!」

「その時は凛の制服貸してあげるにゃ」

「凛のって女子の制服でしょうが」

「いやいや~、雪ちゃんならきっと着こなせると思うにゃ。文化祭の時みたいに」

「忘れろ!いやお願いします忘れてください!!」

 もうかなり前の事なのに、時々いじられる。本当に消え去ってほしい記憶だ。

「ちょっと!何私まで道連れにしてんのよ!!」

 ん?と、隣を見るとどうやら引っ張られたときにとっさに真姫ちゃんの手を掴んでしまっていたらしかった。俺同様、制服を着用したまま浮いている。

「ああ、ごめん。でも大丈夫でしょどうせ真姫ちゃんなら」

「どうせって何よ!大丈夫じゃないわよ普通にびしょ濡れよ!ていうか前々から思ってたけど雪!あんたちょっと最近口が悪くなってるわよ!?」

 真姫ちゃんの言葉を背に浴びながら、プールサイドに手をつき体を持ち上げる。

「別にそんなことはないよ。最初からそんなんだったよ。真姫ちゃんに関しては」

「ほら!絶対口悪くなった!絶対最後の一言いらなかった!」

 いきなりプールに放り込まれたからか、ぷくーっといった感じで涙目になっている。

 びしょびしょになった服を絞り、プールサイドに水たまりができる。

「さてと、それじゃあ花陽、ちょっとこっちきて」

 遠くの方から心配そうに見つめていた花陽を手招きする。

「え?な、何?」

 不安そうに、こちらに歩いてくる花陽の後ろに回り込み背中に手を添える。

「いや、ほら。一人だけ無傷っていうのもねえ?」

「そうよ。みんな仲良くびしょ濡れになりましょう?」

「さあレッツスイミング!!」

 真姫ちゃんと凛が両足を掴み、後ろに引っ張る。最後に俺が軽く背中を押すだけで、プールにドボンという音が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・さむっ」

「馬鹿じゃないのあんたら。普通に風邪ひくわよ」

 花陽をプールに落とした後。なんだかんだで楽しくなってしまった結果。水中鬼ごっごやら水鉄砲やらで遊んでしまい、もう全身けだるげである。

 一人、部室にいたにこちゃんだけがぬくぬくと暖かそうだ。いや、水着から着替えた凛も、まだ髪が湿っている事以外は暖かそうだ。

 そんなにこちゃん達を恨めしく思いながら肩にかかったタオルケットを引き寄せる。

「そうよ。穂乃果達が修学旅行から帰ってきてすぐ、ファッションショーからのイベントがあるんだから」

「穂乃果ちゃん達とすぐに合わせられるように、練習しとかなあかんのやで?体調管理は気をつけな」

 絵里先輩と希が部室に入ってくる。なぜか俺の両隣を固める形で椅子に座った。いや暖かいからいいんですけど。

天然(そっち)は素なのね・・・」

「はい?」

「なんでもないわ」

 真姫ちゃんは呆れたように溜息をつく。

「とりあえず私と希は生徒会の手伝いがあるから、しっかりと4人で練習しておくのよ」

「えー!また四人だけで練習?」

 凛が机に突っ伏し、あからさまに不満そうな声を出した。

「仕方ないでしょ?絵里達は穂乃果達のバックアップしておかなきゃなんだから」

「俺も手伝いましょうか?」

 最近はなくなったものの、ついこの間まで生徒会を頻繁に手伝っていた身だ。多少は力になることもできるだろう。

「ううん。大丈夫。他の役員達も頑張ってくれているし、資料を整理したりするだけだから」

「そうですか」

 絵里先輩は首を横に振る。若干、寂しい気持ちもないわけではないが、大丈夫というのなら大丈夫なのだろう。

「それより雪君は凛ちゃん達の練習見てあげて?」

「そうだね。そうすることにするよ」

 希が言い残して、二人は部室を後にする。

「じゃあ「じゃあ練習行くにゃ!」

 先ほどまでうだうだと机に突っ伏していたはずの凛が、俺のセリフに被せてくる形で息を吹き返した。

「厳禁なやつね・・・」

「何?」

「雪に言ったんじゃないわよ」

 にこちゃんが呆れた声を出すので聞き返したら、なぜか真姫ちゃんに返された。そんな光景を花陽は困ったように笑っている。

 そんなやり取りの中、先ほど閉まったばかりの部室のドアが再び開く。

「伝えたいことを忘れてたわ」

 そのドアからは絵里先輩だけが戻ってきた。

「伝えたい事?」

「ええ。穂乃果達が修学旅行でいない間、臨時でリーダーを立てようって事になってね。それで穂乃果達と誰がいいか相談したんだけど・・・」

 そこで一度、絵里先輩は言葉を区切る。そして部室内の一点に視線を定めてから、続きを口にした。

「凛。どうかしら?あなたにリーダーをやってもらいたいんだけど」

「・・・・・ええ!?凛が!?」

「ええ。みんな凛はどうかって」

 臨時のリーダーに凛。急な話だが確かに凛は向いていると思う。明るくて元気だし、皆を引っ張って行くときもある。本人に自覚があるかどうかは分からないが。

「り、凛は駄目だよ!リーダーとか向いてないよ!」

 見ると高速で両手をぶんぶんと振り回し、否定している。

「そんなことないわ。みんな凛に頼みたいの」

「そうだ!真姫ちゃんは!?真姫ちゃんの方が向いてるよ!」

 凛は矛先を真姫ちゃんに向ける。見ているとリーダーをやりたがっていないようだ。意外だな。こういうのは二つ返事でOKするかと思ってた。

「話聞いてなかったの?みんな凛が良いって言ってるの」

 凛に矛先を向けられた真姫ちゃんが諭す。

「でも・・・・・」

「凛ちゃん・・・」

 それでも渋る凛を花陽が心配そうに見つめる。

「まあリーダーって言っても穂乃果達が帰ってくる二、三日の間だけだし、別にそんなに気負わなくても良いんじゃないかな?」

「そうよ。それに穂乃果を見てみなさいよ。あんなんでもリーダーやれてるんだから」

 真姫ちゃんは先ほど俺に口が悪いと指摘していたのだが、真姫ちゃんも十分にひどいと思います。

「た、確かに・・・・」

 それで納得している凛もひどい。総じて皆の穂乃果に対する扱いがひどい。

「ふふっ。まあ穂乃果の事は置いておいても、凛が良いっていう私たちの事を信じると思って。ね?」

 凛の手をとり微笑む絵里先輩。そんな絵里先輩を見つめる凛の目は次第に緩やかになっていく。

「うん。分かった。凛、やってみるよ」

 その言葉に絵里先輩は軽く頷き、「じゃあ練習始めましょう」と催促した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで仕事ってあるんですか?・・・・・」

「そうだね~。お仕事がなかったらお金がもらえないからじゃないかな~」

「二人とも。馬鹿なこと言ってないで手を動かして」

 穂乃果達が修学旅行に言ってから二日。俺は生徒会室で目の前の資料の束にうなだれる。副会長であるあんじゅと書記さんはちゃくちゃくと束を解消していく中、俺だけが手が止まっていた。

 昨日、暫定的とはいえリーダーに就任した凛がどうなっているのか心配でもあったし、普通に仕事がしたくなかった。

「あれ?メールだ」

 見ると携帯がブルブルと震えている。差出人には『星空 凛』の文字が。

 文面を見ると『今すぐ 校門 来い』

「脅迫文か!」

「え?何?」

 文面を見て思わず声に出してしまった。隣にいるあんじゅが不思議そうな顔でこちらを見ている。

「あー、いやちょっと用事思い出した。すぐ戻る」

 書記さんにガミガミといわれるのを背に受けながら、生徒会室を飛び出す。

 

 

 

 

「で、何の用?」

「あ、雪ちゃん」

 呼び出した張本人が校門を背に待っていた。

「・・・あのね。雪ちゃんは凛がリーダーに向いてると本当に思う?」

「思うよ。凛は責任感強いし、場の空気とか変えられるし。個人的には一年生の中で一番向いてると思うよ?」  

 なぜそんな話をするのかわからないが、とりあえず俺の考えを話した。

「でも、真姫ちゃんの方がリーダーっぽいし、かよちんの方が女の子らしくてかわいいし。凛なんか全然かわいくないんだよ?」

「誰が言ったの?」

「え?」

「凛がかわいくないって誰が言ったの?」

「それは・・・・・」

「確かに真姫ちゃんや花陽はかわいいけど、それとこれとは話が別でしょ?」

「別じゃないよ。かわいくない凛よりかわいいかよちんや真姫ちゃんがやったほうが絶対いいもん」

 凛はさきほどから目は逸らしたり下を向いたりとせわしない。

「・・・じゃあ凛はリーダーを辞めるの?」

 先ほどから、いや最初から凛はリーダーをやることに関して乗り気ではなかった。

「ううん。引き受けたからリーダーはやるよ。でも凛が向いてるなんてことは絶対にないの」

 言葉からは強固な想いを感じる。いったいなにがそこまで凛を縛りつけているのだろうか。

「とにかく、雪ちゃん今から一緒に音ノ木坂に来て皆を説得してよ」

「説得?」

 言葉の意味が分からないまま、とりあえず来てと凛に引っ張られ音ノ木坂へ。

 いつもの、パソコンやアイドルグッズ、皆が座るパイプいすやテーブルがある部室ではなく、扉一枚挟んだもう一つの部屋、更衣室や、やや物置と化している部屋の扉を開けると、真姫ちゃんやかよちん、三年生組がそこに佇んでいた。

「あ。帰ってきた」

「あれ?なんで雪君も一緒なの?」

「それは俺が聞きたいけど・・・」

 そこで、一つの違和感を感じる。その正体を探ろうと部室を見回すと、白い純白のドレスを見つけた。

「わー。凄い、これどうしたの?」

「ああ、それはファッションショーのイベントから、これを着てくれって言われたの」

 俺の問いに絵里先輩が答えてくれる。さすがはファッションショーだ。そんなことまで用意してくるとは。

「それで、それを凛が着るのよって言ったらこの子走って逃げちゃったの」

 なるほど。それで俺のところに来たわけだ。説得というのはつまり、俺が凛にこのドレスを着させないように皆を説得してほしいということだろう。

「だって、それ凛にはかわいすぎるんだもん。ひらひらしてるし、きらきらしてるし。凛には似合わないよ」

「そんなことないよ!凛ちゃんなら絶対似会うって」

 凛の言葉を花陽は否定する。

「でもこれ、穂乃果用に採寸されたものだから、凛が着るとなると手直ししなきゃいけないのも事実なのよね」

 穂乃果用に採寸?つまり、リーダーの穂乃果に発注が来て、穂乃果がいないから現リーダーであるところの凛にお鉢が回ってきたということだろうか。

 ん?まてよ。

「なんで穂乃果はいないのさ?まだ帰ってきてなかったっけ?」

「・・・雪。あなた聞いてないの?」

 真姫ちゃんが少々驚いた顔をしている。なんだというのだろう。

「穂乃果ちゃん達は台風の影響で沖縄から帰って来られへんようになったんよ」

「台風?」 

 そういえば、朝のニュースでそんなこと言ってたような言ってなかったような。だめだ、朝は記憶がぼやけてる。

「ん?ていうことは、そのファッションショーのイベント、6人で出るってこと?」

「仕方なくね」

 にこちゃんがため息をつく。確かにいまさら諸事情で出られませんとは言いづらい。現にドレスまで用意してもらっているのだから。

「そうなると、穂乃果に体系が近いのは―――――――花陽?」

「ええっ!?わ、私?」

 急に飛び出した名前に驚いている。手直しする必要をなくすとなると、そういう人選になるだろう。

 しかし。

「そうだよ!かよちんならかわいいいし、絶対似会うって」

 さきほどまで俯いていた凛が、急に元気になる。この子ったら・・・・。

「・・・・確かに、リーダーをやってもらっている凛に何もかも押しつけるのは、負担が大きいかもしれないわね」

 絵里先輩も、同意する。

「花陽ちゃん、頼んでもええ?」

「私は、構わないけど・・・・・」

 その表情は何か言いたげだ。

「凛ちゃんは、本当にそれでいいの?」

 花陽は訪ねる。目の前にいる一人の女の子に。

「――――良いに決まってるにゃ」

 その女の子の顔は、見慣れた笑顔だった。不自然なくらいにいつもの笑顔だった。

「さあにこちゃん!張り切って練習行くにゃー!」

「ちょ、あんた急に元気になるんじゃ―――――引っ張らないでよ!」

 凛はさっさとにこちゃんを連れておそらく屋上へ行ってしまった。

「・・・・・雪君」

 ひどく不安そうに花陽が俺の名前を呼ぶ。恐らく、花陽も気づいてるのだろう。この中の誰よりも凛と一緒にいて、この中の誰よりも凛の事を知っている花陽。

「きっと凛ちゃん。小学生の時にスカートをはいてきたことがあって、その時に男の子にからかわれたのを今も気にしてるんだと思う」

「・・・・確かに、凛が私服でスカート履いてるの見たことないわ」

「だから雪君。凛ちゃんを、お願い」

「・・・・任された」

 凛はかわいい。それはミューズなら、ミューズを応援している者ならだれもが知っている事実だろう。ただ一人、本人だけが分かっていないのだ。ならば分からせてあげよう。俺が、皆が、かわいいと信じている者を。

 俺はゆっくりと屋上に向かう。扉を開き、眩しさに目を細める。

「あ!雪ちゃん、皆遅いよ何してるの?」

「凛、今日の練習は終わりだ」

「え?」

「だから―――――――デートしよう」

「・・・・・・え?」

 呆けたような表情で頬を赤らめる凛。

 大丈夫。俺は一度失敗したけれど、でも、まだ誰かの役に立ちたいと思う心はなくなってはいない。今はそれがあれば大丈夫だ。

「・・・・・・へ?」

 なぜかにこちゃんまで凛と同じ表情をしていたけれど。大丈夫だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうもトリガーオン!高宮です。
いつの間にか映画公開してていつの間にかUA数5万突破してました。皆さんいつもありがとうございます。
色々とたてこんでいて映画の方はまだ見れていません。悔しいです!予定では来週の一年生組の色紙がもらえるときにいける予定です。早く観たい。
あ、あとアルバムもオリコン1位でしたね。やったね!
どんどんとおっきくなるラブライブですが、このSSも全力で乗っかって行きたいと思います。
そういえばずっと気になっていたんですがUA数のUAって何の略なんですかね。
ユニバーサルアメリカ?ユニークあんこ?
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