ラブライブ!~輝きの向こう側へ~   作:高宮 新太

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絆の色

 三日以内に家を退去しろと言われ、今日はその二日目。

「はあ!?なんだそりゃ!?ちょ、お前それ呑んだのか!」

 朝、たまたま会ったお隣さんにお隣さんなのだし一応状況を説明したところ、大変憤っていらっしゃるようだ。

「ええ、もともと悪いのはこっちですし」

「だからって―――――――――――!」

「いいんです。家なんてまた探せばいいし、それよりかばってくれた大家さんに迷惑かかる方が嫌ですから」

 お隣さんのきつい目つきがいつもより三倍増しできつくなって行くのを宥める。

「・・・・・・・大家んとこに文句言ってくる」

「うわ!ちょ、待って!言ったでしょ?大家さんはかばってくれたんだって!」

 今にも乗り込んでドアを蹴破りそうなお隣さんを腰に手をまわして必死で引き留める。

 この人意外と向こう見ずだな。

「むぅ。お前は納得してんだな」

「さっきからそう言ってるじゃないですかー」

 それでも納得いかないのか、膨れた面のまま。

「ならいい。・・・・・・遊びに来いよ」

 最後に放った言葉は小さかったけど、でもちゃんと聞き取れる。

「えー、別にお隣さん家面白いもんないし、いいです」

「てめえ・・・・・お姉さんと呼べと言ってんだろ」

 あ、怒るとこそこなんだ。

 頭をはたかれて、ゴシゴシと乱暴に撫でられた?のかな?見上げるとお隣のお姉さんは、照れたようにそっぽを向いた。

 そんでもって、そんなことより重大なのは今日はラブライブの最終予選だということだ。ミューズと、アライズの。

 家の事なんか、それが終わってからで十分。

 とにかく今日はめいいっぱい応援しよう。どっちも。どっちが勝っても悔いがないように。

「じゃあ、僕これから大事な用があるんで」 

 階段を下ると、そこには一面真っ白な雪景色。道路の両脇には珍しく雪が積もっていた。

「おお、こりゃ昨夜相当降ったな」

 お隣のお姉さんが見上げると同時、また空から白い結晶が降り注ぐ。大丈夫だろうかと一抹の不安を掲げながら。

「ふぁー」

 しまった、あくびが出てしまう。いまいち緊張感に欠けるなー。

「寝れてないのか?」

「あー、まぁ」

 だって最終予選の事もあるし、自分の事もいろいろあるし、家の事とか。本当にどうしよう、こんな良い物件なかなか見つかんないぞ。って思ってたら朝になってたんだからしょうがない。

 考えたらまた憂鬱になってきたので頬をはたき思考を中断させる。

 と、寒さに身震いしていると、同時に携帯も震えていることに気づく。そこに表示されているのは希の文字が。

「はい、もしもし?」

「あ、雪君!?」

 なんとなしに取った電話であったが、向こうの声は相当に切羽詰まっている。

「あのね!千早さん、飛行機の今日の便で福岡に帰るって聞いた!?」

「・・・・・・・え?」

 姐さん。僕の姉だと昨日やっと気付いた人。今まで忘れてしまっていた人。

 会いたいと、思わないわけじゃない。会っていろんな事を聞いてみたかった。僕が弟だって気づいていたのか、もしそうならどんな思いで中学の時を一緒に過ごしていたのか、なぜ教えてくれなかったのか。

 他にも色々聞きたいことが山ほどあって、でもそのどれもがシャボン玉みたいに、浮かんでは消えた。そのどれもが、高い空に昇る前に消えた。

「ん?つーか、希はなんでそんなこと知ってんの?」

 姐さんと接点なんてあったのか?あ、お父さんが捕まった時に会ってるのか。でもそれだけで?弟の僕にも教えないことを、希には教えたのか。

「そんなんどうでもええやん!!今どこ!?」

 いや、僕にとっては結構重要なことなんですけど・・・。

「家の前だけど・・・・」

「なら早く!!空港に!!九時の便だから間に合わなかったらどうすんの!?うちらも行くから!」

「え!?いや、希達は最終予選があるでしょ!?」

「そんなん見送った後で十分間に合う!!」

 間に合うか!?空港から会場は近いとはいえ、今現在、時計を見ると八時。を考えるとギリギリ間に合うかどうかってとこだろうけど。 

 ていうか、何もそんな一か八かしなくても・・・・。

 そのような旨を告げると、ひと際大きな声が帰ってくる。

「何言ってんの!雪君一人で行かせるわけないやろ!そんな寂しいこと言わないで!」

「ご、ごめんなさい」

 あまりの剣幕に電話越しに謝ってしまう。

「とにかく!!早く空港に行くこと分かった!?」

「うん・・・」

 希ってあんなに押しが強かっただろうかと首をかしげながら、空港に行く算段を整える。家からじゃ、バスか電車だけどこの雪だ。止まっている可能性も十分ある。もしも止まってたら確実に間に合わない。かといって歩いて行くのは論外だ。車なんかがあればまた違うんだろうが、残念ながら今回はそう都合よく行かない。

 まったく、自分の名前にこんなに翻弄されるとは、笑えない。

「乗ってく?」

 気づくと、お隣のお姉さんはバイクに体を預けてこちらにヘルメットを投げ渡してきた。

「いいんですか?」

 つーか、バイク持ってたのか。

「ばーか。こういうときは、ありがとう。だろ」

「―――――――はい!ありがとうございます」

 お隣のお姉さんの後ろにまたがりバイクは発進する。こんな雪の中でもお姉さんのバイクはチェーン処理でもしてあるのか、安定感がある。

「お姉さんは―――――――」

「あ!何?聞こえない」

 バイクは安定感はバッチシだが、騒音がすごかった。バイクに詳しくないのでどんな車種なのかわからないが、相当なお値段しそうな事だけははっきり分かる。

「お姉さんは、なんでここまでしてくれるんですか?」

 特段声は張らず、そのまま聞いた。

 前から聞きたかった。見ず知らずの僕、行って見ればただの隣人の僕になぜここまでしてくれるのかと。

「・・・・・似てるから」

「は?」

「故郷に残してきた弟に似てるんだ。お前は」

「・・・・・・は?」

 僕は意味が分からず、もう一度聞き返した。弟?

「もう!なんだっていいだろそんなの!」

 ヘルメットだし、そもそも顔なんて見れる状況じゃないがそれでも照れているのかということは分かった。

「似てるんですか。だから執拗にお姉さんって呼ばせるようにしてたんですね。つか、弟に似てるからって。ぷくく」

「だからうるせぇって言ってんだろ!」

「あははっ――――――」

 空港へ向けて急加速するバイクに、必死にしがみつくように強く強く、こぶしを握り締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空港に到着すると、切羽詰まったように希の姿がこちらに駆け寄ってくる。後ろには穂乃果達の姿もある。

「みんなも来たの?」

 僕の問いには答えず、希は僕の手を取って先導する。

「あと十分だよ!やばいよ!」

 表情も仕草も何から何まで余裕がなかったけど、しっかり僕の手を握って足取りは確かなものだった。年末が近いからか、人混みが凄い。混雑している人の中をかき分けて、前へと進んだ。

「うん・・・・・」

 走りながら、正直迷っていた。僕の本音は気まずいと、そう言っていた。

 だって、今さらどんな顔して会えばいいんだろう。今まで姉の、その存在すら忘れていた僕が、今さらどの面下げて会えばいいんだろう。

 分からなかった。自分の人生に問いただしてみても、自分のどこに聞いても答えは返ってこない。

「ねえ。希。僕は、どんな顔して会えばいいのかな」

 だから、聞いた。走りながら、息を切らしながら、自分が分からないことを、答えは返ってこないかもしれなくても、怖くても、それでも聞いた。

「そんなの決まっとるやん。家族やもん。普通でええんよ。普通に言いたいこと言えばええんよ」

 家族だから。そう言う希の顔は笑っていた。希だって、家族に対して思うことはあるだろうに。それでも、僕の為に笑ってくれた。

「そっか」

 言いたいことなんて、ぶっちゃけ分からない。この場面で言うことなんていくつもあるはずなのに、そのどれもがシックリなど来てくれない。

 結局これが、今まで本音を隠し続けてきた人間の底の浅さだ。必ずしも本音を言えばいいというわけでもないだろうが、僕の場合、本音を言うことが極端に少ないから。

 だから、言いたいときに、本当に言いたい言葉が出てきてくれない。

 広い空港を、みんなで走ってようやくたどり着いたときにはもう既に入場口に人はいなかった。

「はぁ・・・はぁ・・・・」

 あごに伝う汗をぬぐう。冷えていたはずの体は、いつの間にか大粒の汗をかくほど、熱くなっていた。

 血が巡る感じがする。血流が、体の隅々まで行き渡っているようなそんな感覚。 

 だめだったか。やっぱりそうそう都合よくはいかない。日ごろの行いが悪いせいだ。

「まだだよ!ほらあそこ!」

 諦めて、下を向いていると後から走ってきた穂乃果が声と共に指をさす。 

 顔をあげてみると、穂乃果の指さす先、空港から飛行機そのものを繋ぐ渡り廊下に、その人はいた。

お姉ちゃん(・・・・・)!!」

 見えた瞬間。そう叫んでいた。初めてそう呼んだのに自分でも驚くほど、すんなりと、良く通る声だった。

 その声が聞こえたのかどうかは分からない、でも確かに、その瞬間姐さんは振り向いた。

 希が手を取り入場ゲートを飛び越える。え?っとびっくりする間もなく、数名の警備員に止められた。

「ちょ、何やってるんだ君達!」

「雪君!!今だよ!!今しかないの!!今は、今しかないんだよ!!」

 警備員に咎められ、押しこまれるのもいとわずに希は僕にそう言った。

「いくのよ雪!!家族が会うのに理由なんか探してんじゃないわよ!!」

 後ろからにこちゃんは檄を飛ばす。にこちゃんにはいつも叱ってもらった。

「そうだよ雪ちゃん!ここで言わなかったら後悔するよ!!私みたいにならないで!!」

 ことりには後悔を。

「雪!!あなたいつも考えすぎなんです!後先考えずに全力でぶつかってきなさい!!」

 海未には欠点を。

「いっくにゃー!!雪ちゃん!!」

 凛には元気を。

「雪君!!雪君の今の気持ち、叫んでいいんだよ!」

 花陽には安心を。

「・・・・・・・・・行ってきなさいよ」

 真姫ちゃんには、素直になれないもどかしさを。

「雪!!前に進んで!!進むのはいつだって前しかないんだから!」

 絵里先輩には尊さを。

「雪ちゃん!!頑張れ!は、ちょっと違うか。えーっと、えーっと、とにかく行けーーーーー!!!」

 穂乃果には、元気を。

 みんなに教えてもらった。みんなが気づかせてくれた。僕の中にも、確かにそう言うものがあるんだと。後ろめたいだけじゃない、引きずった過去だけじゃない、そういう光、ってやつが。

 だって、僕が言ったんじゃないか。光があるところには影があるって。僕が確かに感じる闇は、光がなくちゃ生まれることすらできない。僕のこの闇のそばには、光があるじゃないか。みんなと同じ光が。

 やっと対等になれた。いや、元から対等だった。勝手に卑下して違うと言っていたのはいつだって僕だけだ。前に絵里先輩が言っていたように、僕が勝手に落としたんだ。己の価値ってやつを。

 僕は前を向いた。警備員さんがやれやれと言った様子で、頭を書きながら僕の前に立ちはだかる。

 ごめんなさいと、一度心の中だけで謝って警備員さんを押し倒す。抵抗するなんて思わなかったのか、警備員さんは呆けている。その内に少しでも前へ進んだ。

「姐さん!!俺、俺会いに行くから!!今度は俺が、会いに行くから!!だから待っててよ!!姐さんの居る世界で、姐さんが居たい世界で!!待ってて!」

 言い切る前に、後ろから迫ってきた警備員さんに押し倒される。すばやく肩を極められて動くこともままならないけど、唯一動く首を巡らせて姉さんを見た。

 相変わらず、一人称すら定まらない。僕の決意はその程度のものだ。そんなちっぽけな、心のよりどころにしようとしていた決意なんてどうでもいい。ただ、言いたい事を、ちょっと前まで一文字も出てこなかった言葉を、精一杯ぶつけた。

 姐さんは、相変わらず遠い。進んだと思ったけど、廊下の中腹にすら届いていなかった。

 それでも、それでも見える。姐さんの姿も、顔も、ちゃんと見える。遠くても、ちゃんと見える。 

『うん。待ってる』

 声なんて聞こえない。姐さんの表情は、いつの間にか流れる涙でグシャグシャだ。端正な顔立ちが見る影もない。それでも、口の動きだけでもなんて言っているのかは手に取るように分かった。

 待ってるって、そう言ってくれた。僕の言葉は、ちゃんと帰ってきた。

 

 

 

 

 

「来て良かったね」

 隣で待ってくれた千早の友達が包み込むように言う。

「うん、」 

 振り返らずに、一言だけ返すと、飛行機に乗り込もうと百八十度方向転換して、そこで機内アナウンスが流れた。

『ピンポンパンポーン。えー、お客様の皆さま。誠に申し訳ありません。吹雪の影響で東京-福岡行きの便は延期させていただきます。繰り返します。吹雪の影響で―――――――――――』

 そのアナウンスが鳴りやむ前に遮るように男の子の絶叫が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぐっ。死にたい」

 恥ずかしすぎる。あんな、あんなに決め台詞吐いといて延期ってなんだよ。

「大丈夫雪?」

「ダイジョブなわけねーだろ!この状況でよ!なんでこうなんの!」

 絵里先輩の同情も今は心に痛い。やっぱり日ごろの行いが悪いから?

「日ごろの行いが悪いからじゃない?」

「言うんじゃねーよ!本人が思ってる事を口に出すんじゃねーよ!」

 余計傷つくだろが!!

 にこちゃんの言葉に余計涙目になっていると、不意に渡り廊下から気配がする。延期となったことで、姐さんがこちらに歩いてくるのだ。

「ぎゃー!!無理無理!!今こそどんな顔して会えば良いかわかんない!!」

 がくがくと涙目で海未を揺さぶる。

「さぁ?抱きついて好きだよとか言えば良いんじゃないですか?」

「海未ってさぁ僕の事どう見えてんの!?」

「普通で良いんだよ。家族だもん」

「無理だよ!いくら家族でもこれはノー!!」

 おかしいな。希の言葉はさっきと変ってないはずなのに悪意が感じられる。

「ていうか!!みんな最終予選の事忘れてない!?」

「そうだにゃ!この吹雪の中走って行かなきゃなんだよ!?」

「リハーサルの時間とかなくなるかも・・・・」

 花陽の一言に、皆の顔色が悪くなる。うわーなんかもうごめんなさい。

「と、とにかく走ろ?」

 ことりを先頭にみんなで走る。来たときの様な疾走感はなく、みんなしどろもどろになりながら必死に走った。

 

 

 

 

 

 

「ふふ、楽しい人たちだね」

「・・・・・・・・そうね」

 渡り廊下から出てきた二人は、走って行く雪の姿を見ている。その表情は、天候とは裏腹にとても穏やかなものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空港から出ると、多少吹雪が収まっいたが未だ天候は不安定だ。 

 雪も相当積もっているのだろうと予測していたのだが、その予測は裏切られる。

「ヒデコ!フミコ!ミカ!」

 その三人以外にも大勢の人間が、雪かきをしてくれていた。そのおかげか、歩道には通行の妨げとなるような雪はない。両脇に積もった雪が、みんなの頑張りを如実に表していた。

「もう!遅いよー、なにやってんのー?」

「それはこっちのセリフだよー」

「みんなにね、駆けつけてもらったの」

 見ると絵里先輩は、片手に携帯を持ってる。

「そしたらね。来たよ!全校生徒」

 そう言われ、再度見る。皆の姿を。きっとこれが全校生徒の総意。

「行こうみんな!これで遅刻しちゃったら皆の頑張りが無駄になっちゃう!」

 穂乃果の言葉に、皆頷く。

「いや、穂乃果そっち道違ううううううううう!!」

 戦闘で勢いよく走っていた穂乃果は、勢いよく道を間違えた。バカだ、この子絶対バカだ。

 穂乃果の首根っこを捕まえて、元の道に引きずり込む。

「お前さ!ボケていい時と悪い時の区別くらいつけろよ!本気でやばいんだぞ」

「わ、わかってるよ。ちょっと間違えただけだよ」

 ホントだな!?マジで時間ないんだって。不安が付きまとうのでしょうがなく穂乃果の手を握る。

「ふふふ、大丈夫だよみんな!こんなこともあろうかと凛はローラースケート靴を着用してきたにゃ!みんな凛を褒め称えよ!」

 そう言ってる凛は、下り坂でドンドン体が重力に従って落ちていく。

「・・・・・・うわーん、たすけてっぇぇぇ」

「おいいいいいい!あっちもこっちも馬鹿ばっかか!!」

 必死で走ってようやく凛の手首を掴む。しょうがないからおぶっていくことにした。

「くそおおおおお!さっきまでの感傷カムバック!!」

「ふふ、凛。甘いわね。地面は雪で凍っている。つまりアイス。ここはローラースケートではなく、アイススケートよ!」

 見ると絵里先輩の足元にもアイススケートが。

「あれ―――――――――――――?」

 しかし、滑ったことがないのか、歩くことすらままならない。そのまま、絵里先輩も凛同様落ちていく。

「ちょっとぉぉぉぉ!?なんで絵里先輩まで乗っかってんの!?いらないから!こんな緊急時に被せてくるボケとかいらないから!!」

 仕方ないので余った左手で済んでのところで絵里先輩を掴む。あんたロシアっ娘だろ!雪とか氷とか得意じゃないのかよ!

「あ//」

「え?何恥ずかしがってんの?すげえ腹立つんだけど!その顔すげえ腹立つんだけど!恥ずかしいなら走れや!」

 くそだらあああ、とまた人一人分思くなった自分を奮い立たせていると、横ですいすいと追い越していく希。

 足元にはアイススケート靴が。

「滑るんかいいいいい!!え?何?なんで滑れんの?逆に凛達はなんで滑れないの?」

 なぜだか僕だけ二人も三人も抱える羽目になる。

「重いいいいいいい」

「ちょっと雪ちゃん!女の子に重いとか言っちゃだめだよ!!」

「言ってる場合か!状況読めよ!ちょっとでいいから読んでくれよ!」

 ちくしょう!!本当に重いな全く!!

「「「・・・・・・・・・」」」

 三人を抱え込みながらそれでも懸命に前を向いて走っていると、いつの間にか前を走っていた他の三人、ことりと海未と花陽はなにやらうずくまっている。

「足が痛いなー、どっか痛めたかなー。きっとさっき雪君の為に走ってたからかなー」

「わ、私は腰が」

「あ、テントウ虫さんだ。冬なのに珍しいねー」

「一人だけなんか違うんだけど!!」

 なんか腹立つのでそのまま捨て置く。ものの背中に浴びせかけられる視線に耐えられるはずもなく。

「ああもう!!いいよおぶってやるよ!こうなったら三人も六人も変わんねえよ!」

 やけくそになりながらそう叫ぶと。

「「「わーい」」」

「元気じゃねえか!!」

 どさどさと体重がかかってくる。最早自分がどういう抱え方をしてるのかさえ分からない。

 ああもう本当に、重いな。三人と六人は凄く変わるということを知った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 今日はなんだか疲れたよパトラッシュ。絵里先輩達をおぶりながら、ようやく会場まで着いた。どうやら時間は間一髪間に合ったようだ。

「なんだかごめんね雪?」

 絵里先輩が謝ってくるけど今さらだよ。すげえ疲れたよ。

「別にいいです。ライブで最高のパフォーマンスしてくれればそれで」

「・・・雪ってそう言う恥ずかしい事さらっと言うわよね」

「恥ずかしい、ですか?」

「そうよ、恥ずかしくて痛いほどまっすぐ。そうでなくちゃ。雪はやっぱり、そういうのが似合うわ」

 なんだかよくわからないけど、納得したようなので良しとしよう。

「あ、ここでいいわ。はい料金」

 息を整えていると不意に一台のタクシーが止まる。中から出てきたのは真姫ちゃんだった。まさかと思うが、タクシーでここまで来たのか。

「くそ!このブルジョワめ!」

「ヴぇ!?な、なによ?良いでしょ。寒かったんだし」

 真姫ちゃんを連れてきたタクシーが行ったかと思うと、入れ替わりに今度は一台のパトカーが。

「はい、じゃあもう迷子になっちゃだめだよ?」

「・・・・・・はい」

 出てきたのはにこちゃんだった。迷子だったのか。そういえば夏祭りの時も迷子になってたな。

「あ!いたいたやっと見つけましたよ!生徒会長さん」

「はい?」

 そんな若干気まずい空気の中。見ず知らずの人に声をかけられ、動揺する。首元にはスタッフの証明カードが。

「いいからこっちです」

「え?いや、ちょ」

「あら、連れて行かれちゃった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見ず知らずのスタッフに連れてこられたのは、アライズの控室だった。どうやらサポーターか何かだと勘違いされているらしい。

 アライズのみんなはどこかに言ってるのか、リハか、控室のは一人だった。

 ふかふかのソファに身を預けると、どっしりと疲れが襲ってくる。最近の寝不足も相まって、瞼が重い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪!!」

 重厚そうなドアを勢いよく開け、ツバサは自らの控室へ血相を変えて入る。

 そこには、ソファで気持ちよさそうに眠るいつもの彼の姿があった。

「良かった。雪がいるってことは、間に合ったのね」

「完全にフルハウスね」

 後ろに続く二人も、それぞれ安堵の表情だった。

 絵里からメールで事のあらましを聞いたときは慌てふためいて落ち着きがなかったものだが、無事と安心した今のツバサは、もう元の落ち着いたツバサになっている。

「ふふ、変な寝顔」「写真にとっても良いかな?」「おいおい、バレたらどうするんだ」

 ソファを覗き込む三人の顔はもう、笑っていた。




どうもなちゅやちゅみ高宮です。
書くことが特に見当たりません!どうしよう!!
書くスピードが上がる装置が欲しい!眠い!次回も頑張る!
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