ラブライブ!~輝きの向こう側へ~   作:高宮 新太

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番外編 百物語は大抵最後まで行く前に飽きる

 小学生の頃の話だ。

 その頃、僕には友達と呼べる存在は三人しかいなかった。海未、穂乃果、そしてことりだ。

 みんな女の子で、僕は男の子だった。それはこの世の絶対の法則で、ねじ曲げることなんてできない。

 幼稚園までは、いや小学生になってもしばらくはそれでも良かった。 

 だけど、男女の差というものが明確に浮き彫りになってきたとき、それは突然とやってきた。

「ことり」

 その時に同じクラスだったのはことりだけで、僕はいつもことりと一緒にいた。登校する時も、休憩時間も、中休みも、給食の時間も、お昼休みも、掃除の時間も、放課後も。

 常に一緒だった。海未や穂乃果よりもその時はことりといた時間が一番長かったと思う。

「・・・・・・・・雪君」

「ことりちゃん!何やってるの?」

「あ、うん。ごめんね雪君。呼ばれてるから・・・・・」

 そうやって、徐々に僕とことりの距離は開いて行った。

 今思えば当然だと思う。僕はことり達に依存していた。ずっとことり達の後ろをくっついていた。第三者から見れば気持ち悪いことこの上なかったと思う。ていうか、今自分でも思い返してのたうちまわる。

 そんな離れて行ったことりの気持ちも共感できるし、その事について今の僕は理解している。だけど、その頃の僕には出来なかった。その頃の僕には、理解も共感もできなかった。

 もっと友達ってやつがいればよかったんだと思う。ことりたちだけじゃなくて、ツバサさんとか絵里先輩とか、いまのようにその歪さを指摘してくれる人たちがいればよかったんだと思う。

 だけど、その時の僕にはそういう人たちがいなくて、だから諦めた。なんとなく避けられているのは分かっていたし、嫌われたと思っていたから。諦めた。諦めて、諦めて、諦めて、諦めた。 

 

 そして、また僕は一人ぼっちになった。

 

 一人ぼっちは嫌だったけど、ことりに拒絶される方が嫌だった。いや、ことりだけじゃない。穂乃果にも、海未にも、そしてきっとお父さんにも。僕は誰にも拒絶なんかされたくなかった。

 自尊心が強いくせに、それを悟られたくなくて。自己承認欲求が高いくせに、それを認めたくなくて。ひとりぼっちは嫌なのに、憐みを向けられるのが嫌で。0

 ――――――――――――――――嫌われるのが嫌で。

 だから自分から遠ざけた。そういう醜い自分がばれるのが嫌で、自尊心を保つために、自分から引いたんだって、そう言う風に自分を守るために。

 そりゃそんなやつが友達なんかできるわけがない。今でも不思議なんだ。こんな僕に、見渡せば友達と呼べる人たちが、こんなにも増えた事が。こんなにも充実している事が。

 少しは変わった自覚はある。あの頃より、マシな人間になったと思うこともある。だけど、根本的には変わっていない。そういうプラスより、自分がいかにダメか、自分がどんなにクズか、マイナスな面ばかりが目につくから。

 ことりが他の女子の友達としゃべっているのを見ても、そんなことりにイライラしてるし。なぜそこにいるのが自分じゃないのか、何回も考えてはそんな考えをしている自分に辟易する。

 僕は自分が嫌いだ。大っ嫌いだ。嫌いで嫌いで――――――――――――――――――――仕方ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこまで書き終えると、僕はパタンと日記を閉じた。

「・・・・・・・・あ、えーっと、これでいい?」

「うん♪良くできました♪」 

 僕はことりの家で、ことりの机で、なぜだか自分の日記を書いていた。 

 どういう事かって?そんなの僕が説明してほしい。何度も捨てたはずの日記が、何度も燃やしたはずの日記が、何度も切り刻んだはずの日記が、なぜだか何事もなかったかのように僕の目の前に現れるのだから。

 恐ろしくてしゃーない。稲川淳二の怪談より怖い。お祓いとか言った方が良いかな。希!誰か希を呼んで!

「じゃあ貸して?」

「え?いや、でも・・・・・」

「貸・し・て?」

「はい」

 僕が日記を書いている間。ことりは後ろにあるベットに腰かけていたのだが、僕が書き終えると知ると、椅子を持って隣に座る。

 そして、強引に僕の手から日記を取り上げると最初のページから読み始める。え?何?ナニコレ?なんでわざわざ僕の目の前で読むの?

「俺に出来た初めての友達は――――――――――――――――」

「声に出すなぁぁぁぁ!!!」

 なんで声に出して読むの!?声に出す必要一切ないよね!?恥ずかしいんですけど!?これ以上ないくらい死にたいんですけど!?

「・・・・・・・・まずここね」

 え?なに?ダメだしされんの?僕が書いた日記を声に出して読まれた挙句ダメだしされんの?

「漢字間違ってる」 

「ダメだしってそっち!?」

 そういうダメだしかよ!それは良いんじゃないですかね!誰に見せるでもないし!もう希とことりに見られちゃってるけどね!・・・・・泣いていい!?

 その後もペラペラとことりが日記を読み終えるのをただ黙って地獄のように待っていると、ようやく日記が最後のページを告げる。

 カーテンが揺れ、爽やかな風が吹き抜けノートやプリントもパラパラとめくられることりの部屋だったが、僕の心は反比例するように穏やかじゃない。

「まずね卑屈!」

「あ、結局ダメだしはされるんですね」

 もういいよ、大抵のはずしい事には耐えられると思うよ今の僕。

「それとね、被害妄想がひどいし言葉もひどいし周りの事考えてないしなにより私達の気持ち考えてないし」

「すいません!耐えられませんでした!全然今の僕耐えられなかったです!」

 まさかそこまで言われるとは、いや分かってるよ。そこまでいわれる程ひどい内容だということは。だけど、面と向かって言う必要ないですよね?もうちょっとオブラートに包んでもらっても良いですよね?

 あれ?おかしいな、目の前が霞んできたよ?

「・・・・・・・・あのね。雪君はね。特別なんかじゃないよ」

 椅子の上で体操座りをすることりは宥める様な声色で言う。

「みんなそうだよ。みんな自分の事なんか好きになれないし、自分の嫌いなところばっかり目につく。雪君が特別人よりひどい人間なんかじゃないんだよ。雪君は人より醜い人間なんかじゃないよ」

 そう言って笑うことりにようやく僕は励まされているのだと気付く。

「ありがとう」

 この日記が僕のすべてじゃない。この日記は多分僕の闇そのものだ。どうしようもなく汚い闇を誰にも聞かせられない、聞かせたくない闇をこの日記にぶちまける。

 どうしようもなく弱い僕だけど、こんな事をしないとすぐに人に当たってしまいそうになる僕だけど、でも僕はこの日記を受け止める。それしかできないから。闇は、見て受け止めれば、ただそこにあるだけだから。

「いやー、小学生の時のことりとは思えないなー」

「うぐ、あ、あれは違うんだよ?みんなが噂するから」

「噂?」

「わ、私達が付き合ってるって」

「ふーん」

 そんな噂されてたのか。知らなかったのは友達がいなかったからかな。おかしいな悲しくないのに、悲しくないのに泣けてきたよ。悲しくないのに。

「わわわ、ご、ごめんね?あの時の私はどうにかしてたって言うか、初めての感情だったから戸惑ってたって言うか」

「ああ、いや大丈夫大丈夫」

 そんな僕の姿に自分の所為だと勘違いしたことりが慌てて弁解している。

 ことりを宥めながら空気を変えようと扉を開けると、妙に重い感覚が。

 思いきって引いてみると、ドシャッという音と共にことりのお母さん、及び理事長が姿を見せた。 

「・・・・・・・・・」

「ゴミを見るような目だわ!」

 恐らくこの薄壁一枚隔てたところで浅ましく盗み聞きでもしていたのだろう。学校という教育理念のトップでありながらなんという所業だ。

 あれ?ちょっと待てよ?

「どこから!?いったいどこから聞いてた!?」

「・・・・・・・小学生の頃の話だ。のところから?」

 ババアぁぁぁぁぁ!!

 僕は理事長のその一言によりがっくりと膝をつく。全部じゃん!冒頭の冒頭じゃん!つまり日記の内容とかなにからなにまで全部じゃん!

「いや、でもほらことり、今日誕生日だからそれに免じて、ね?」

「いや関係ねえ!」

 ひどいよ。思いっきり娘の誕生日利用としようとしてるよこの人。親の面目丸つぶれだよこの人。本当に理事長?

「あ、ほら!穂乃果ちゃんたちも来たんじゃない?」

 話の途中でインターホンが鳴る。そもそも今日はことりの誕生日。それでことりの家で集まってパーティーをするということだったのだ。

 逃げるように立ち去る理事長に呆れながら、呼びかけにこたえるためインターホンのもとへ行こうとすると。

「あ!ちょ、だめ!雪君!」

「え?」

 ことりに服の裾を掴まれる。

「あ、ほら!私が出るし!だから雪君は座ってて?」

 良くわからなかったが、そういうのなら無理にでる必要もない。多少強引にその場に待機命令を出された数分後、穂乃果と海未が出現する。

「あ、雪君!ことりちゃん家はどう?」

「どうって、普通だよ」

 普通にあったかい家庭だ。他の家と同様、居心地が良くて困る。

「次は海未ちゃん家だよね?」

「え、ええ」

 そう答える海未は歯切れが悪い。まあ家に居候してくるんだ。それが誰であれあまり良い気持ちではしないのかもしれない。

 僕の家が見つかるまで僕を居候させてくれるローテンションは穂乃果⇒希⇒絵里先輩⇒ことり⇒海未となっていた。後の事は知らない。決まってないのか、はたまた教えてくれないのか。

「そういえば、そろそろ家を探そうと思うんだけど」

「え?」

「ん?」

 だから、僕としてはごく自然にそろそろ落ち着いてきたからそう告げたのだが、予想外の反応が帰ってくる。

 特に海未だ。

「な、なぜですか!?なぜこのタイミングで!?他の子の家には行ったくせに私の家に来るのは嫌なのですか!?」

「なぜそうなる!?」

 あと言い方!言い方気をつけて!なんか僕が意気揚々とみんなの家に泊まったみたいな言い草になってるから!悪意はないと思うんだけどね!ちょっと気をつけてほしいかなってね?

「いや、もともとそう言う話だったでしょ?僕の住む家が見つかるまでっていう。ていうか海未だってそっちの方が良いでしょ?」

「はぁ?なぜですか?」

「だって家族でもない人を居候させるって嫌じゃない?」

 今まで、穂乃果とことりの家には行った事があったので、今回の居候も罪悪感というか気まずさみたいなものは少なかった。希の家は独り暮らしだったし、絵里先輩の家は結局親御さんが旅行から帰ってくる前にお暇した。

 そう言うこともあって、まったく行った事のない海未の家に行くのは若干気が引けてしまうのだ。

「そりゃ、赤の他人を家に泊まらせるのは流石に抵抗がありますが、相手はあの雪ですよ。なにか粗相があるとは思えません。だからいいんです」

 それとも、と海未は言葉を続ける。

「雪は何か、女の子と一つ屋根の下で粗相をしでかしてしまうようなケダモノだったのですか?」

「あはは、そんなことするわけないじゃないか」

 僕もう高校生だよ。いくら知らない家で緊張するからって粗相(おもらし)なんてするわけないじゃん。まったく海未は子供扱いしちゃってさ。

  

 

 

 

 

 

 お茶を入れていたことりが戻ってきたところで穂乃果と海未がいったん他のみんなをことりの家へと案内するため席をはずす。

「さっき何を話していたの?」

「うん?いやー、海未がさ、僕が女の子と一つ屋根の下で粗相するんじゃないかっていうんだよ。あるわけないじゃんかね?」

 笑いながら先ほどの会話を説明する。

「ふーん」

 すると、ことりが突然僕を押し倒す。

「・・・・・あるわけないの?」

 何を言っているのか。僕の目の前にあることりの顔は笑っている。笑っているのだが、眼だけが、その瞳だけが笑っていなかった。

 ことりの長い髪の毛が重力に従って僕の頬を撫でる。くすぐったくて甘くていい匂いがして、おまけに押し倒されているというこの状況。 

 まだまだ冷たい風が吹き抜け、ごくり。と思わず生唾を飲んでしまうくらいには緊張してしまっていた。

「・・・・・なーんてね♪冗談だよ?」

 数秒間見つめあい、僕がからかった仕返しか、ぺろっと舌をだしその場から飛び退く。

「えへへ。あ、私も穂乃果ちゃん達のお手伝いに行ってくるね」

 僕が一言も言わないうちに、そのままことりは玄関から立ち去ってしまった。

「ひゅーひゅー、我が娘ながら大胆でお熱い事でー」

 静まりかえることりの部屋で突然声がしたかと思い振り返ると、案の定そこには理事長がドアに張り付いてニヤニヤしている。

「なにしてんのさ!」

 僕が声を上げると、すぐに退散した。なんなんだいったい、程度の低い市原悦子かあんたは。

 そうこうしているうちに、インターホンが鳴る。どうやらことりたちが絵里先輩他、を連れてきてくれたみたいだ。

 インターホンでお迎えしようとすると映っているのはなぜかことりただ一人。

「あ、お母さん?穂乃果ちゃん達もうすぐ来るって」

 どうやらお母さんだと勘違いしているようだ。

「いや、僕――――――――――――」

「あ、雪君には絶対にインターホンに近づけないでね?」

 そう言われてしまうと、なんだか訂正できない。仕方ないので無言でキーを開ける。

 すると、キーの隣に不自然なボタンがある事に気がついた。警報ボタンでも、呼び出しボタンでもない。もちろんキー解除ボタンでもない。

 気になる。ものすごく気になる。

 なので押してみた。

 躊躇いなく、躊躇なく押してみた。

 ・

 ・

 ・

 のだが、特別何かが起きる様子も、どこかに連絡する様子もない。不思議に思いつつもことりの部屋へと戻ると。

 扉を開けると、そこにはおびただしいほどの写真があった。

 壁一面、三百六十度、写真だらけ。

 一瞬部屋を間違えたかと思い、再度確認するもやっぱりそこはことりの部屋で。ていうか部屋なんてここ一つしかない。

 意を決して入ってみると一つだけ分かった事があった。

 それは。

「これ、僕だ」

 そう、その写真はすべて、一枚残らず全部僕だった。幼稚園の頃の僕から、今現在の僕。通学している僕、学校で授業を受ける僕、お昼を食べている僕、ミューズの練習を見てるとおぼしき僕まで。

 ありとあらゆる僕の写真だった。

「あ、これ」

 デジャビュを覚え、その正体を探ると、机に置いてあった一枚の写真に気づく。それは、先ほど押し倒されていた僕だった。視点は見下ろすような形で。

 ダラダラと冷や汗が噴き出る。写真を持つ手が震える。

 さらによくよく見ると、給食のスプーンが何十個。卒業と共にいつの間に消えたリコーダー。こちらも卒業とともに行方知らずとなった体操服。はては何か見覚えのある学校の椅子まで。

 ありとあらゆる僕のグッズとも呼ぶべきものが溢れかえっていた。

 ザーっと吹き荒れる風で写真たちが靡き、舞う。先ほどまで爽やかだった風は、いつの間にか雨を含んだ暴風雨となっていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・雪君?」

 ビックぅ!!

 と、体が飛び上がるほど驚き、後ろを恐る恐る振り返る。

 そこには案の定ことりがいた。その表情は笑っていたが、やっぱりその眼だけが、瞳だけが笑っていなかった。

 ―――――――――――――――――そこから先は、記憶がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・ふっ」 

 少女は目の前にあったろうそくの灯を消す。傍には火の消えたろうそくが九十九本。どうやらそれが最後の一本だったようだ。

「怖いなー、怖いなー、その後彼と彼女がどうなったのか。いやー、怖いなー、怖いなー」

 その後も彼女は怖いな怖いなと呟きながらその場を立ち去った。

 甘いにおいを漂わせながら。 




どうもグランドオーダー高宮です。
いやー風邪をひいてしまいましてね。こんなに遅くなってしまったんですが、でもこれはしょうがないんじゃないでしょうか。誰だって気をつけてたって風邪をひくときゃひきます。ナポレオンだって風邪をひく。ミミズだって、オケラだって、アメンボだって風邪をひきます。
ならもう俺が風邪をひいたってしょうがないじゃない。だってナポレオンだって風邪ひくんだもの。アメンボだって風邪ひくんだもの。
だから誰にも俺を責める資格なんてないはずだ!そうだろ!そうだっていってくれ!
え?なに?あー、はいはい。そうですよ嘘ですよ。風邪なんて引いてないですよ。超健康ですよ。びんびんですよ。ふっつうにネタに詰まってふっつうにここまで時間がかかったんですよ。
すいませんでした。
ことりちゃん誕生日おめでとう!!
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