小さいころから、アイドルになりたかった。かわいくて、きらきらしてるアイドルに憧れた。
「かーっよちん」
「凛ちゃん」
さらさらのショートヘアにくりくりとした瞳。一目で活発だとわかるわたしの親友は、わたしの周りでぴょんぴょんと跳ねる。
「もう部活なに入るか決めたかにゃ?」
部活?部活は―――――。
「――――――アイドル部」
わたしの脳裏に焼きつくのは、先日あった先輩たちのライブ。名前はミューズ。すごく素敵なライブで、昨日のように思い出せる。
「アイドル部?」
「い、いやなんでもないなんでもないの。忘れて///」
思わず口走っている自分に恥ずかしくなってしまう。
「そっか、かよちん、アイドルになりたいって言ってたもんね」
「ち、ちがくて//」
わたしが、アイドルなんて、絶対無理。かわいくないし。
「大丈夫だよ、かよちんかわいいし、絶対出来るって」
わたしの心中を察したのか、凛ちゃんがいつものように応援してくれる。
「わたしなんか無理だよ、それより凛ちゃんのほうがアイドル向いてるよ」
わたしよりかわいいし、運動神経いいし。
「え!?り、凛は向いてないよー///ほら、女の子っぽくないし、髪だってこんなに短いし」
凛ちゃん。きっとまだ、小学生の頃の事引きずっているんだ。
凛ちゃんはいつも、わたしを応援して、背中を押してくれる。そんな凛ちゃんのために、何かできないだろうか。
答えは、結局でない。いつものように。
「そ、それより今日は秋葉原、行くんでしょ。はやくいこうにゃー」
「うん」
凛ちゃんに手を引っ張られて、わたしたちは教室を後にした。
アライズの新曲、買わなきゃ。
「あーきはーばらー、だにゃ」
目的のアイドルショップまでの道すがら、何やら凛ちゃんが叫んでいた。
「ちょ、ちょっと凛ちゃん、はずかしいよ~///」
道行く人たちが、何事かとこちらをちらちら見る。
「あ、あれ?あの人って確か」
先輩たちのライブを手伝っていた人だ。
「どうしたのかよちん?」
凛ちゃんも、わたしの視線を追う。「だれだにゃ?」こちらの視線に気づいたのか、あの人がこちらを振り返った。
「あ!君は、ライブに来てくれた人!」
「は、はい」
ぎゅっと手を握られ、ちょっぴり動揺してしまう。
「ちょっと、かよちんが困ってるんですけど」
「?ああ!ごめん」
凛ちゃんが割って入り、さっと離れる手。
「いえ、それよりライブ凄かったです!感動しました」
あの日からずっと伝えたくて、でも学校にはいないからこんな偶然に頼る。
「それは、穂乃果達に言ったほうがいいと思うけど」
「それはそうなんですけど、伝えたくて」
先輩たちにはもう言ってるし、ミューズに誘われた時にはびっくりしたけど。
「そっか。そっちの子も来てくれたよね?」
「ああ!あの時のライブ!あれすごかったにゃー」
そういえば凛ちゃんも来てたっけ。ライブに夢中だったからかあまり覚えてない。
「そうでしょう、そうでしょう。凄く頑張ってたからね」
「それで、えーっと・・・」
このときようやく、名前も聞いていないことに気づく。
「ああ、海田雪だよ。多分同い年じゃないかな」
「そうだったんですか。わたしは
「
「小泉さんに星空さんだね。よろしく。ところで何やってたの?」
「今からアイドルショップに行くんだにゃ」
「へー、好きなの?アイドル」
その何気ない一言で、私の中のドルオタの火がついた。
「好きなんてもんじゃありません!今やスクールアイドルは知名度も全国的になりプロ顔負けの人気、歌唱力、顔。たとえばアライズ!彼女たちは本当にすごいんです!何がすごいかというと「かよちん」」
あ、しまった。やってしまった。昔からどうも、好きな事を語ると周りが見えなくなってしまう。
は、恥ずかしい。顔から火が出そう。
「ご、ごめんなさい」
「ああ、気にしないで、面白かったし」
面白い?わたしの話が?
「そっちのかよちんも凛は好きにゃ」
いつも凛ちゃんしか聞いてくれなかったわたしの話。みたところアイドル好きってわけでもなさそうだし、きっと面白くはないだろう。
「優しいん、ですね」
「ん?」
声が小さかったからか、気づいていない。そんな姿がちょっぴり面白い。
「ふふ、なんでもないです」
「そう?」
「なになに?二人して、秘密の話かにゃ?凛もまぜるにゃー」
「そ、そんなんじゃないよ//海田君は何やってるんですか?」
恥ずかしくって話をそらす。
「俺?俺はバイトに行く途中」
「バイトって何してるのかにゃ?」
「あー、いろいろだよ」
「いろいろなのかにゃ?」
「うん、いろいろ」
そんな話をしていると目的のアイドルショップに到着する。
「それじゃ、俺はこれで」
「さようなら」
「ばいばい」
海田君と別れた後、アライズの新曲を無事保存用、布教用、使用用と三枚買った帰り。
凛ちゃんには忘れ物があるといって学校にとんぼ返りしていた。
「あった」
そこにあるのは、ミューズのアイドル部部員募集というチラシだった。
入ると決めたわけじゃなくて、一応、一応もっておいてもいいかなって思っただけ。
チラシの前で、自分に言い訳してると不意に足音が近づく。なんとなく、見られたくなくて隠れてしまう。
「あ、西木野さん」
現れたのは西木野さんだった。右を見て、左を見て、また右を見て、左を向く。どうやら人がいないかチェックしてるらしい。わたしもよくやるというかさっきやったので間違いない。
私には気付かず、チラシをとっていってしまった。西木野さんもアイドルに興味あるんだ。放課後、音楽室でピアノを演奏しながら歌ってる姿はよく見るけど。
気配が完全に消えてから、一つ息を吐く。そして、すばやくチラシを一枚とった。
目的は達成したので、さっと帰ろう。なんだか爆弾をもってる気分。
少し早足で帰ろうとすると、なにかが落ちているのに気づいて、拾い上げる。
「生徒手帳だ」
ごめんなさいと、心の中で謝ってから中を見ると、先ほど会った顔が写った写真がある。つまり西木野さんのものだった。
西木野さんの生徒手帳を届けることにした。明日明後日は、お休みだし、なくても困ることはないだろうけど、渡しとくに越したことはない。それに、学校じゃ渡しづらいし。ポストにでも投函しよう。
そう思って、西木野さんの家に行く途中だった。幸い、家の場所はわかるし。近所でも有名な豪邸らしい。らしいってのは実際見たことがないから。
「小泉さん?」
「あ、海田君」
そこにいたのは、さっき会った海田君だった。ただし、さっきと違う点が一つだけ。
「なんで執事服なの?」
「これは、違うんだ!俺の趣味とかじゃなくて、バイトで!お客様が!だから仕方なく!」
「そ、そうなんだ」
バイトって、執事喫茶とか?秋葉原だし執事喫茶くらいあるかも。
「それより、小泉さんは?星空さんは一緒じゃないの?」
「あー、えっと西木野さんの生徒手帳を届けようと思って」
言った後で気づく。西木野さんって言っても知らないか。
「へー、西木野さんの。俺も行ってもいい?」
「ふぇ?」
変な声が出た。だって、一緒に行っていいなんて言われるとは思ってなくて。一人は心細かったの、見抜かれたのかな。
「西木野さんには話したいこともあるんだ」
「あ、ああそういうことなら」
なんだ、知り合いだったのか。安堵なのか何なのか、よくわからないため息をつく。
二人して歩く。か、会話がない。
「こ、ここです」
助かった。どうやら西木野さんの家に着いたみたい。表札に西木野と書いてある。
「豪邸だね。確かにお嬢様っぽかったけど、ここまでとは―――――養ってくんないかな」
「海田君、目が怖い」
なんていうんだっけ?レイプ目?みたいに目の色が暗かった。
「んんっ。じゃ、じゃあ押すね」
ピンポン。とインターホンが鳴る。ポストに投函するつもりだったけど、まぁいいや。
「はい」
大人の女の人の声。おかあさんかな。
「えっと、西木野さんの友達なんですけど」
「ちょ、ちょっとまっててね」
少しあわてたような声のあと、門が開く。自動なんだこれ。
「ごめんなさいね。友達が来るなんて滅多にないから。それも、男の子なんて」
「ああ、確かに西木野さん友達少なそうですもんね」
「ちょちょちょ、ちょっと!!」
いきなり何言いいだしたの、この人!
「え?あ、ああすいません。そういう意味じゃ」
「いいのよ、あのこちょっと素直じゃないでしょ?だからあなた達はあの子の友達でいてあげてね」
「ええ。もちろん」
「はい」
いいお母さんなんだな。
「あ、帰ってきたみたい」
「ただいま――――――――――なんでいるの?」
「あ、じゃあお母さんはお茶でも入れてくるわね」
「あ、あのこれ」
少し怯えながら生徒手帳を手渡す。
「あ、これどこで?」
「あの、ミューズのチラシのところ」
「そう。ありがと。でもわざわざ家まで来てくれなくても」
少し照れたようにお礼をされる。なるほど、少し素直じゃない。
「へー。やっぱり」
西木野さんの鞄からチラシがはみ出ているのを海田君が発見。
「や、やっぱりってなによ!!」
西木野さんがあたふたする。隠し事がばれた子供みたい。
あんなに人目を気にしていたんだから、やっぱり見つかると恥ずかしいんだろう。その気持ち、わかる。すごいわかる。
「いや、西木野さん、と小泉さん。ミューズ、入る気ない?」
「「え?」」
そっか、話があるってそういう話かって、わたしも!?
突然出てきた名前にびっくり。
「わ、わたしは無理だよ。声も小さいし」
「でも、やりたいんでしょ?」
「な、なんで」
そんなこといった記憶ないけど。
「星空さんからメール来たから」
「メール?」
いつの間に携帯番号交換してたの凛ちゃん。
「それより、私の誤解を解かせなさイタッ」
勢いよく立ちあがるもんだから、テーブルの角に脛をぶつけていた。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫よ」
「西木野さんは、アイドル向いてると思うよ?」
「なんでよ!」
「だって、歌声すごくきれいだし。音楽室でわたし聞いてたの」
西木野さんの歌う姿もっとみたい。そう思うから西木野さんをアイドルに推したい。もったいないって思う。
「そ、それならあなただって、十分向いてるでしょ」
「そんなわたし「声なら」」
否定しようとすると、西木野さんが声をかぶせてくる。
「声なら、私が練習してあげる。声出すくらい簡単よ」
「でも」
「ほら、立って」
私が渋っているのを見かねたのか、西木野さんが立ち上がる。
発声練習。やっぱり西木野さんの声は素敵。
「ほら、あなたも」
そう言われ、頑張ってみる。
「まだ」
海田君が見守る中、大きな声を出す。後半は、恥ずかしさも薄れてきた。
「やればできるじゃない」
「そう、かな」
確かに、このまま練習すれば克服できるかも。
「じゃあ、この調子でいこっか。星空さんも呼んで」
「え?いくってどこに?」
パンっと手を一つたたいて言う海田君。
「そりゃ、穂乃果の家に。入部を認めてもらうために」
「ええええええ!?」
いま?急に?高坂先輩のとこに?
「さぁ、いこうか」
「ええ、いきましょう」
両脇をがっしり海田君と西木野さんに固められ、連行される形で連れられた。
「どうでもいいけどなんであんた執事服なんか着てるのよ」
「こ、これは、バイトで仕方なく」
「ふぅん」
今のうちに逃げようとしたけど、駄目だった。がっちりとホールドされていた。
ていうか、二人ともけっこう力強いんだね。
「きちゃった」
高坂先輩の家の前。
「ほらほら、はやくはいるにゃ」
いつのまにか凛ちゃんも合流している。
「うん」
なんでこんなことに。最初はただ生徒手帳を届けに来たはずだったのに。
でも、ここまできたらしょうがない、よね?
穂むらというお店の自動ドアをまたぐ。高坂先輩の実家は和菓子屋さんらしい。
「あり、花陽ちゃんと、雪ちゃんと真姫ちゃん」
「大事な話があるから、上にあがって待ってるね」
「うん?・・・!うん!まっててすぐ店番終わらせる」
何かに気づいた風な高坂先輩。ばたばたとせわしない。
わたしたちは階段を上がった。どの部屋に行けばいいのかわからないのでとりあえず、手前にある部屋を「あ、そこじゃない」
え?
気づいた時には遅かった。妹?らしき人が必死に胸元を寄せていた。タオル一枚で。パックしながら。
ゆっくりと閉める。よかった。気付かれなかったみたい。
今度はもう一つある、奥の部屋を開ける。というか二つしかないからこっちで確定。
けど、扉を開けた瞬間。園田先輩(多分)がポーズをとっていた。多分女豹のポーズ。
またゆっくりと閉める羽目に。「あちゃー」海田君が何やら頭を抱えている。後ろ二人は位置の関係上、見えなかったみたい。
とそのときドパンと勢いよく開かれる扉×2。やっぱり気づかれてた!
「こ、こんどはあなたですか。なんでこうなんども・・・やっぱり雪もいる!」
「がるるるる」
「なんですかなんなんですか。雪あなた呪われてるんじゃないんですか!?」
「えー、俺っていうより、海未が呪われてるんじゃない?というかそろそろ学習しようよ」
「がるるるる」
「雪穂は、日本語をしゃべろうか!」
落ち着いてから、高坂先輩と南先輩が来た。
なんとなく部屋には入れずに、部屋の前で立ち往生。
「穂乃果。部員募集ってまだしてるよね?」
見かねたのか海田君が声をかける。
「もちろん」
「あの、やっぱりわたし「かよちんまだいってる」」
凛ちゃん。
「かよちん。アイドルになるの夢だったんでしょ?やりたいなら、やったほうがいいよ」
「私もそう思うわ。やりたいことがあって、それができる環境なら挑戦するべきよ」
「「おうえんする」」
とんっと、背中を押される。なにかが軽くなった気がする。
そして。
「あの、私。特別なことなんて何もありません。歌もうまくないし、ダンスも得意じゃない。けどこの、アイドルになりたいと思う気持ちはだれにも負けません。だから」
一呼吸おいて、もう一度。
「だから私をミューズのメンバーに入れてください!」
言った。言った。いままで言い訳して逃げていた。失敗するのが、嫌で。怖くて。
だけど、今の私には応援してくれる人がいる。背中を押してくれる人がいる。だからこの気持ちにもう嘘はつかない。
「もちのろんだよ!花陽ちゃん。これからよろしくね」
そう言って、手が差し伸べられる。わたしはぎこちなく、けれどしっかりとその手を握った。
その手があったかいということを、今初めて知った。
「海未、ことり、まだメンバーって募集してるよね?」
「「もちろん」」
「え、ええ?ええええええええ!?」
見ると、園田先輩と南先輩が凛ちゃんと西木野さんに手を差し伸べている。
「ほら、足りない手は俺が補うから」
私を押してくれた二人を、今度は海田君が押す。
「「よろしく」」
「「よ、よろしく」にゃ」
こうして、ミューズは無事?六人になった。
クマショーック。どうも高宮です。ゴリゴリ
更新遅れてすいません。最初の妄想というか展開をファーストライブまでしか考えてなかったつけが。これからまた頑張ります。
凛ちゃんがみくにゃんとかぶって仕方ありません。