「はーい!呼ばれて飛び出てジャジャジャーン!!ということでこの私!今どこにいるのかといいますと!最近なにかと話題沸騰中!なななな!なんとあの!ミューズがいる音の木坂学院前に来ております!!というのもですね!今スクールアイドルが熱い!ということでなんとゴールデンタイム!!に!特集を組もうということで!!今やあのアライズ!を凌ぐとも劣らない勢いのあるミューズに!色々と謎に包まれたプライベートな事から普段の貴重なオフショットまで!根掘り葉掘りインタビューしていきたい所存でございますよー!!」
「いやなげええええええよ!!」
ディレクターの悲痛な叫びが、澄んだ青空に響き渡った。
三月。澄んだ空気が気持ちよく、過ごしやすい春の中で、今日は特に穏やかだ。
そんな穏やかな日に、穏やかではない一行が。ストールなんかを羽織ったインテリ風のディレクター。ちょっと太ったカメラマン。そして眼鏡をかけたややウザのリポーターの三人が。音の木坂の校門前で騒いでいる。
「なげえんだよ!うるせえんだよ!そんな長尺オープニングで使えるわけねえだろ!」
「でもでも!私のアイデンティティを発揮するには」「発揮しなくていいの!!」
「アンタねえ、リポーターが目立っちゃダメでしょうが。そんだけアイデンティティを発揮したいんならねえ、他の局のリポーターになんな!」
「オカンか!?」
堪えきれずずっと見ていただけだったカメラマンがツッコんだ。
「とにかく、撮影始めましょうよ。こんなところで騒いでいたら・・・・・・」
「?どうした?」
黙り込むカメラマンにディレクターが不審がる。
「あのー、何を校門の前で騒いでいらっしゃるんでしょうか?不審者ということでしたら、然るべき機関に相談しなければなりませんが」
そこには、真後ろに真っ黒いオーラを従者のように携えた一人の女性。もとい音の木坂の理事長がいた。
「「「す、すいませんでした」」」
そのオーラに、三人ともビビッて体を震わせていた。
「って、いや、違うんです。我々は不審者ではなくてですね」
おろおろと額の冷や汗を拭きながら、ディレクターが説明しようとする。
が。
「あわわわ、あ!」
テンパったリポーターが何とか仕事をしなきゃという使命感に駆られてしまった。
「おばさん!おばさんは、ミューズというスクールアイドルをご存知でしょうか!?」
使命感、完全に空回り。
「お、おば」(白目)
スパーンと、リポーターの頭をはたくディレクター。
「すいません。こいつテンパってて」
ずるずると、気を失ったリポーターを後退させるカメラマン。完璧な連携だった。
「私たち、フ〇テレビのものです。連絡したように一週間ほど、密着取材を申し込んだのですが」
「・・・・あ。ああ、聞いています。生徒たちの邪魔にならない範囲でしたら。どうぞ」
「よかった。ありがとうございます」
後ろの黒いオーラが消え理事長たる落ち着きを取り出した理事長は。
「それでは、どうぞ。ああ、校内にいるときは許可証をぶら下げていて下さいね」
というこで、取材が開始された。
「まずは、ミューズのメンバーと近しい人たちから取材しよう」
ディレクター、リポーター、カメラマンの三人は許可証を胸にぶら下げ校内を散策する。
周りの生徒は昼休みなのか、廊下や中庭などに散らばっていた。
その誰もが、見慣れないカメラやリポーターという非現実に好奇の視線を送っている。
「あの!ちょっと聞いていいですか!?」
いつの間にか復活していたリポーターは相変わらず声を張り上げていた。
「は、はい」
その大きな声に困惑しつつも、カメラを気にしながらその生徒は答えてくれる。
「ミューズについて一番近しい人っているかな?」
「近しい人?ああ、それなら”雪君”が一番近いと思いますよ」
「雪君?」
そのワードにリポーターは首をかしげる。なんかずっと前に聞いたようなデジャヴに襲われていた。
「その子は今どこにいるかわかるかな?」
急に首を傾げうんうん唸りだしたリポーターを使い物にならないと判断したのか、ディレクターが質問する。
「いや、私も本物はちらっとすれ違った程度なので。ごめんなさい」
「いえいえ、ありがとうございました」
ディレクターはお礼を言って生徒はパタパタと廊下の向こう側に消えていく。足音から少し浮かれていた様子がうかがえた。
「ミューズに近しい人、ですか?」
「そう、誰か知らない?」
なおも、リポーターの代わりに取材するディレクター。
「雪君だよね」
「そうだね、一番って言ったら」
二人組の女の子は、考える暇もなく即答する。
再度出てきたその名前。
「へー、その雪君に取材したいんだけどどこにいるかわかる?」
「いや、私たち喋ったことないし」「遠目でしか見たことないので」
「・・・そっか。ごめんね。ありがとう」
その後も取材を続けるが、新たな情報は得られなかった。
「おいこら」
プシューっと知恵熱で湯気が出ているリポーターを現実に引き戻す。
「”君”って、ことは男だよな。でもここ女子高だよな。どうなってるんだ?」
「男らしい生徒なんじゃないですか。ほら、女子高って他の生徒からモテモテな女の子とかいるんでしょ?」
どうやらカメラマンは女子高に対して特別な感情を持っているらしい。
「にしては、情報が少なすぎるだろ」
「それか!先生ってこともありますよ!」
「先生を君づけでよぶか?普通」
「あんま聞かないっすよねー」
「よし!まずは、雪君とやらから調査しよう」
どうやらディレクターの取材魂に火が付いてしまったようだ。
そして。
「ああ、雪君!知ってますよ!」
「うわー!テレビだ!本物だ!」
「ミューズもついにテレビ取材かー、嬉しい反面なんか寂しいような」
ついに、雪君なる人物を知っているという三人娘に辿り着いた。
「雪君はどんな人物なんですか!?」
「雪君はねー、女ったらし!」
「あと天然!」
「そんでもってトラブルメーカーだね」
まさに三者三様。だが今のところいいところが一つもない。
本当にミューズと一番近しい人間なのだろうか。
「ほほう!では雪君に取材したいのですが!どこにいるのかわかりませんか!?」
「あー、今は無理だよ。だって雪君UTXだもん」
UTX学院。これまたスクールアイドル『アライズ』で有名な高校だ。
「他校の生徒なんですか!?」
こればっかりは、リポーターの反応も頷ける。ていうか、今日で一番リアクションが比例していた。
取材班はミューズに一番近しい存在として雪君なる人物を探していたそれが、まさか他校の生徒だったとは。
「ますます興味が出てきた。新勢力ミューズの陰に一人の男それも他校の生徒だなんて」
「視聴率とれそうっすね」
「よし、まずはミューズ本人たちに取材だ」
「「「取材!?」」」
「そう、聞いてないかな?」
ミューズの部室。正確にはアイドル研究会という部活の部室らしい。
そこに、ミューズ九人が勢ぞろいしていた。
「取材といっても、君たちの自然体を撮りたいと思っているんだ。だから、いつも通りの日常を送ってくれたら嬉しい」
「いつも通り、ですか」
それでは、画面の向こうのミューズのことを知らないという君たちに簡単に紹介しよう。
二年。園田海未。弓道部にも所属している皆のストッパー的役割と同時に作詞を担っているらしい。
「ちょっとドキドキするね穂乃果ちゃん」
二年。南ことり。何を隠そうこの子は理事長の娘。ほんわか癒し担当だ。
「うん!頑張ろうねことりちゃん!」
同じく二年。高坂穂乃果。ミューズのリーダー。元気が売り。こう見えても音の木坂の現生徒会長。
「いや、だから頑張らない自然体でお願いしたいんだけど・・・・」
「すいません。あの子たちは放っておいても大丈夫なので」
三年。絢瀬絵里。金髪碧眼ロシアっ娘。クオーターに元バレリーナという肩書き過多な音の木坂の元生徒会長。
「テレビテレビテレビ、全国ネット全国ネット全国ネット」
ブツブツと何かを口ずさんでいるのは、黒髪のツインテールがあざとい矢澤にこ。三年だ。
「にこっち。そんな思いつめんでもええと思うで?」
関西弁でまるで母親のように矢澤にこを窘めるのは東條希。同じく三年。
「そうよ。どうせすぐ本性が露わになるんだから」「なんですって!」
クルクルと赤い髪をいじっているのが印象的な西木野真姫。一年で作曲を担当している。
「にゃんにゃんにゃーん!一年の星空凛です!得意なのは運動です!」「あんた何勝手にアピールしてんのよ!」
見るからに活発そうな女の子は自分で紹介してくれたので、割愛。
「あわわわ、み、みんな。取材の人たち困っているから」
そして最後にこちらのことを慮ってくれているのは小泉花陽。一年。
これで計九名。ミューズである。
「それじゃ僕らは勝手に撮ってるけど、普通でいいからね」
ディレクターの念押しに、面々は頷く。
そして、午後の授業中、高坂穂乃果の居眠りしている風景や矢澤にこの聞いてもいない自分語り、一転して真面目な放課後の屋上での練習など、インタビューを交えながら撮って。
そして。
「さあここからが本番だよ!ミューズにとって一番重要な人物であろうということはもう裏が取れているのだ!」
ズビシ!と変なポーズで指をさすやたらテンションの高いリポーターが今日一テンションが上がっていた。
「「「「???」」」」
ミューズの面々は、どうやらイマイチピンと来ていないらしい。
「とぼけないでもらいたい!もうネタは上がってるんだよぉ!」
リポーター、ノリノリである。まるで刑事ドラマみたい。
「海田雪君という人物について、少し質問させてもらってもいいかな」
見かねたディレクターが割って入る。
「あー、雪ちゃんの事ですか?」
「雪君は・・・・・・ねえ?」
「そうですね」
うん?二年生組、海田雪という名前を聞いたとたん渋い表情に。
その反応に、ディレクターは多少面喰いながらも取材を続ける。
「そ、その雪君というのは君たちにとってどういう人物なんだろうか」
「どういう?」
「そんなの、ただの雑用よ。雑用」
「にこっち、素が出てるで」
「しまった!・・・・にっこにこにー♪」
「雪ちゃんはー、ミントンすっごい上手なんだにゃ!」「ちょっとまって!もうちょっと弁解させなさいよ!」
「雪君は・・・・なんだか、あんまり幸せにはなれない気がします」
「雪がどういう人物?ナニソレイミワカンナイ」
これはいったいどういうことなんだろうか。ミューズに一番近しいと思われた人物が、ほとんどボロカスである。
「・・・ではお次はスクールアイドルの気になる御自宅に行ってみたいと思います!」
珍しく機転を利かせたリポーター。
「家?ちょっと待ってください。家までついてくるだなんて聞いていませんが」
うーん。惜しい。あとちょっとで褒められたんだけどねリポーター。
「それに関しては、勿論強制じゃない。スクールアイドルを目指している人たちや、これから目指す人たちにとって刺激になればと思って」
「うっ・・・・・」
「えー?いいじゃん海未ちゃん!家紹介するくらい」
「あなた、『穂むら』の宣伝がしたいだけでしょう」
「どうだろう?」
「いいですよ!」
「ちょ、あんた勝手に」
「しょうがないわね」
言葉巧みにJKを誘導させる大人。まさにゲスの極み!
ということで各々の家を取材して回ることになった一行。
まずは西木野邸。
「ほわー!豪邸ですね!!」
西木野さんはどうやらこの町有数の西木野病院の一人娘らしい。そりゃ豪邸なわけだ。
「いつもはここで作曲したりするんですか!?」
リポーターが完全に場の雰囲気に合っていないテンションで質問する。
「そうね。そこのピアノとか」
「ここには、その雪君もよく来たりするのかな?」
ディレクター、どうやら諦めきれないらしい。
「え?雪?・・・・そうね、まあまあ、うん・・・2回くらい」
「え?2回?案外少ないんですね」
「そ、そんなことないわよ!いいわ!見せてあげる!」
ディレクターの一言にムキになったのか、西木野さんはすたすたと何かを探しに行った。
「ふふ。これで海田雪の秘密が探れる」
「ほんと大人げないっすよねー。マジドン引きっすわ」
「うるせえ!仕方ないだろ。もう聞かないと気が済まないんだよ」
病気みたい、というかもう完全に病気。
そんなディレクターをよそに、西木野さんはどこからか一台のパソコンを持ってきた。
「これは?」
「ふふ。確かにあんまり雪は家に来ないけど。いつも私と一緒にいるの」
あれ?おかしい。何がおかしいって、雰囲気が、先ほどまでと一転して怖い。なんか、瞳が冷たい。
「あ!カメラさん!人!人がいますよ!」
こんな時でもテンションを崩さないリポーター。ある意味で尊敬する。
「まさか・・・・?」
パソコンを覗き込んだディレクター、どうやら何かを察したようである。
「この子が、海田雪・・・・?」
パソコンに移っていたのは、畳何畳もない部屋で一人くつろいでいる男の子。
話の流れから察するに、この子が海田雪という人物なのだろう。
いや、ということは。つまり。
これは、盗撮ということになる。
「「「・・・・・・・」」」
三人。絶句。
「あ、もう。またご飯食べてない」
西木野さんは、どうやらあっちの世界に行ってしまったらしい。こちらの事など文字通り眼中にない。
すると、西木野さんはどこかに電話をかけ二、三言葉を交わすと携帯をしまった。
画面を注視すること数分。
画面の中の玄関から黒服が数人乗り込んでいた。勿論海田雪はビビっている。そりゃ誰だってビビる。
黒服は何かを渡すと、何をするでもなく去っていった。
ディレクター一同は、海田雪が何か法定なヤバいものに手を染めていると思ったが違った。
「ちょっと!なんで食べないのよ!」
隣の西木野さんが急に大きな声をだすので、何事かと思った瞬間。それは見えた。
海田雪が、あの黒服から渡されたもの。
お弁当が。
ギリギリと画面を食い入るように見つめる西木野さんに取材班が出来ることは。
「・・・・あっと、次あるんで僕らはこれで」
退散するしかなかった。
なんだか開けてはいけないブラックボックスを開けてしまったような。そんないたたまれなさ。
それに耐えられず取材班は西木野邸を後にする。
「今の・・・・・撮ったか?」
「・・・・・まあ、一応」
「使えますかね!?」
「・・・・・・とりあえず、次行こう」
「ええ。祖母がロシア人なんです」
「そうなんですね!やっぱりそのプロポーショナルとかも保つ秘訣みたいなものがあるんでしょうか!?」
絢瀬邸。先ほどのことはいったん忘れ、今度はまともなようだ。
「ちなみに・・・海田雪君は君にとってどういう存在なのかな。さっきは結局よくわからなかったからね」
ディレクター、どうやら本当に諦められないらしい。何が彼をそんなに駆り立てるのか。
「雪ですか?雪は・・・・ちょっと天然で優しくていつも誰かに手を差し伸べてるような。けれど、特別ではない。そんな子です」
まるで、慈しむように優しい微笑みでそう返す絢瀬さん。どうやらようやくまともな話が聞けそうだ。
「あ、このタオルも雪がくれたんですよ。あとこのペットボトルとかノートとか・・・・」
・・・。
うん?
「これは練習のときにケガしてしまって、雪がくれた絆創膏で、こっちは雪がくれたシュシュでこっちは——————————————」
どうやら、一筋縄ではいかなかったらしい。
先の西木野さんと同様に、瞳が絶対零度のごとき固まりを見せている。
「そ、そうですか。それでは取材協力ありがとうございました」
怖くなったリポーターが珍しく強制的に取材を終わらせた。
「これはもう徹底的に調べる必要があるな」
「もうやめないっすか?怖いっすよ俺」
「馬鹿言ってんじゃねえ。真実をありのままに伝えるのが俺らの仕事だろうが」
そういって、次に来たのは古びたアパート。団地って感じだ。
矢澤にこが住んでいる家である。
「すいませーん。先ほど取材させてもらったものですけどー」
・・・インターホンを押し、それでも反応がない。
「?」
ドアに手をかけると鍵がかかってない。
「すいません」
小声で、中を覗くと。
「ねえ、どうしよう。せっかくテレビの取材だったのに、上手くいかなかった。今から来るんだけど挽回できると思う?ねえ、”雪”」
矢澤さんが、弟と思しき幼児を慣れた手つきで海田雪に見立てて愚痴をこぼしていた。
ゆっくりと、ディレクターは扉を閉めたのだった。
「おい!まともな奴はいないのか!?どうなってんだ!」
「私にキレられても!わかるわけないじゃないですか!」
もう半ばヤケになったディレクター。
そんな一行が次に訪れたのは園田邸。
「どうも!それで早速聞きたいのは海田雪君についてなんですがね!」
若干逆切れ気味の懲りないディレクター。
「・・・・それ、なんですか?」
カメラマンが何かを見つけた。
それは人形・・・・にしては不揃い。手作り感が半端ない。
「ああ、これですか。よくできているでしょう。雪です」
我々はまず耳を疑った。
「いつも愚痴とか素直になれない気持ちとか聞いてもらっているんです。ね?」
人形に話しかける園田さんの目は例のごとく永久凍土のように冷たい。
「あの・・・・なんかすいませんでした」
涙目で謝るカメラマン。大丈夫、お前は悪くないぞ。
「雪ちゃん?ああ、凛はね寂しくなるといつも”これ”で紛らわすんだ」
やってきたのは星空邸。
そういって星空さんが取り出したのは真空パックのようなもの。
中には、服が入っている。それも男物。
「スーハースーハー。ね?」
「なにが!?なにが、ね?なの!?」
リポーターのツッコミも虚しく響く。
「次!」
「取材って言われても、ウチなんてホント面白いもんないで?」
そう言っているそばから大量の紙束がそこかしこに散らばっている。なにこれボケ?ツッコミ待ち?
「これは、婚姻届け?」
「はい、うちと雪君の。もう式場とかも決めてるんです。新婚旅行とか、どこに行くか話し合ってて」
「ああ、そう・・・・」
ディレクター、もはや最初のやる気が失われつつあった。
「くそ!次だ!」
それでもプロ根性でなんとか取材だけは続行。
南邸に行く途中。もう海田雪のことは聞かない。ディレクターはそう心に誓った。
「えっと♪これが雪君が初めて口にしたスプーンで、こっちが雪君が初めて着た体操着で、こっちが」「いや聞いてないけどぉ!?」
聞いていないのに語りだした。今季一番だなこの子。
「次ぃ!!」
「ちょっと、まだ終わってないですよ♪こっちが初めて出た運動会で」
「あれぇ!?ちょっと!?」
なんとか解放され小泉邸。
「雪君のことですか?」
「だから聞いてないって!聞いてないって言ってるじゃないですか!」
「雪君は今、お風呂に入ってるみたいですよ」
「聞きたくない聞きたくない聞きたくない!!」
ガタガタと震え、両手を耳に塞ぐリポーターにその光景が見えているのかいないのか、なおも小泉さんは口を開く。
『フンフンフーン♪』
「あ、鼻歌歌ってる。何かいいことでもあったのかな」
例によって例のごとく瞳は宇宙のように真っ暗で底が見えない。
「次!っていい加減にしろおおおお!!」
ついに、ディレクターが発狂した。
「もう次最後だよ!?残るは穂乃果ちゃんしかいないよ!?どうすんの!?ほぼ放送できないよこれ!」
「落ち着いてください!!落ち着いて編集点を探しましょう!!」
「いやお前が落ち着け!」
「とにかく!お蔵入りになる前になんとか方向修正しないと」
既に辺りは真っ暗。それでも取材をやめない。なぜならプロだから。
「やめられんならとっくにやめてるわボケエ!!」
ということで、最後は高坂邸。ちなみに高坂邸は「穂むら」という和菓子屋を営んでいる。定番のみたらしや揚げ饅頭、創作和菓子などおすすめだ。近くに寄った際にはぜひ訪れてほしい。
「えっと、雪君について語ればいいんですよね」
「いや語らなくていいです!普通に!普通に日常のことを教えてもらえれば!」
リポーター、必死である。
「雪ちゃんは、優しいんです。ずっと前に、ずっと前の事なのに。それでもずっと気にしてる。怪我をした私なんかより、ずっとずっと傷を受けてる」
そう告げる高坂さんの顔は優しくて、他の皆のように瞳の光彩を失っていない。
空気を読んで神妙な面持ちをしているディレクターだったが。
(そうそうこれこれ!こういうのが撮りたかったの!こう、なんか特別な関係みたいな!活躍しているミューズを陰で支える一人みたいな!)
内心ではガッツポーズだった。
「ああ、ダメですよねこんな話は。もっと楽しい話にします!えっと、雪ちゃんがこないだパンケーキとホットケーキの違いって何なんて聞いてくるから皆で口喧嘩になっちゃって。おかしいですよね。あと昔はもうちょっと素直だったんですよ。髪も長くて可愛かったし、あ!写真見ます?でも今の雪ちゃんの周りには私の他にも女の子が沢山いてちょっと不満なんです。一番最初に雪ちゃんと友達になったのも、一番最初に雪ちゃんと遊んだのも、一番最初に雪ちゃんを家に呼んだのも、一番最初に雪ちゃんとご飯を食べたのも、一番最初に雪ちゃんを好きになったのも私なのに」
「ストップぅぅぅぅぅぅ!!」
段々と話すたびに瞳の輝きがこぼれ落ちていく。最早残っていない。
ここが、我々の限界だった。
ミューズの謎は、我々なんぞには推し量れるものではなく。きっとその誰もが知ることができない本人たちにしかわからない不思議な繋がりなのだろう。
そういうことで、今週はスクールアイドルから『ミューズ』のピックアップでした。
来週はフランケンシュタインから『フランケンシュタイン』が登場。お見逃しなく。
「途中までは良かったんすけどねえ」
「ちくしょう」
とあるテレビ局の会社内。
沈痛な面持ちをしたディレクターとカメラマンが自分のデスクで項垂れている。
ちなみにあの取材からリポーターはノイローゼ気味に寝込んでいる。三日ほど。
あのテンションでは寝込むくらいが丁度いいが、寝込みすぎだ。
「やっぱOA無理かー」
まあ、そういうことも往々にしてある。
ディレクターは早々に諦めると、次の仕事に向かっていた。
「特集おじゃんになってるうううううう!?」
今回全く出番がなかった少年の、悲痛な叫びが響くまで。
それではまた来週。
どうも!グリムガルとグリルってなんか字面似てる。高宮です。
またまたファイナルライブの話で申し訳ないのですが、ついに機材開放されましたね。
シリアル、HP、一般と全部落ちてる僕は最早当たる気がしませんが。当たらなかったらLV行こうかなと思ってます。これも当たらなかったら?死にます。
いやいや、その前にちょっとテンション上がることがあったのですよ!
何かというと藍井エイルさんのライブ!福岡でやるライブのチケットがゲットできたのです!これで全落ちしても大丈夫だね♪
いや当たるに越したことはないんですけどね。
あ、あと話のネタも尽きたんで次回から劇場版編に入っていこうと思います。いいよね?大丈夫だよね入って?ネタバレも気にしないでもういいよね?
ということで、次回もよろしくお願いします。
なんか今日めっちゃ後書き埋まった。嬉しい。