それでは、映画泥棒はすっとばして、本編へ。
どうぞ。
昔の話をしよう。
子供の時のことだ。雨上がりのその日、いつもの公園で、僕とことりと海未とそして穂乃果がいた。
穂乃果は何を思ったのか水たまりを飛び越えようと、何度も何度も挑戦して、そして、失敗していた。
泥だらけになったその姿を見て、もう止めようとことりが諭す。
けど、その忠告なんて穂乃果は意にも返さない。
何度も失敗して、けれどその瞳は諦めずに前を向いている。
なーんていうとちょっとばかしかっこいいけれど、穂乃果はただ失敗することを考えちゃいないだけ。馬鹿だからね。
頭にあるのは、成功した時の快感だけ。いつだって穂乃果はそういう奴だ。未来も過去も、現在だって変わらずに。
そして、何度も失敗したくせにその失敗を思わせないような軽やかな助走。
やがて、穂乃果はその水たまりを———————————。
「た、大変です・・・・」
「ってあれ?花陽?」
今日は卒業式、色々あって今僕は部室で伸びている。
その元凶たる一人である花陽が今さっき部室から出て行ったのに、深刻な顔をして戻ってきた。
「げぶ!!」
僕のことなんて眼中にないのか、それともやっぱりまだ怒っているのか。(俄然、後者の方が確立は高いが)僕の頭を見事に踏んづけて、花陽はパソコンに向かった。
「どうしたの花陽ちゃん!?」
そしてその花陽を追いかけるようにみんなも続々と部室に帰ってきた。
丁寧に僕の頭を踏んづけて。
「・・・なんであんた伸びてるの?」「に、にこちゃん」
最後に帰ってきたにこちゃんに手を貸してもらいながら、なんとか僕も立つ。みんなひどいや。僕がなにしたっていうんだ。最終回もう半年前だぞ、そんなの読者だって覚えてないよ。
「ど、デゥームです」
「「「「「「「デゥーム?」」」」」」」
口を揃えて花陽の言葉を反芻します。
「ドーム大会です!!」
「「「「「「「ドーム大会?」」」」」」
「秋葉ドームです!第三回ラブライブが秋葉ドームでの開催を検討しているんです!」
「秋葉ドームって、いつも野球やってる所かにゃ?」
「あんな大きな会場で?」
絵里先輩同様、皆驚きを隠せない様子だった。
「にこたち、出演できるの!?」
特に反応していたのがにこちゃん。
「いやいや、うちらもう卒業したやん?」
「今月まではスクールアイドルよ!」
うわー、都合いいー。
僕がにこちゃんの理論に苦笑いを浮かべていると、後ろからぞくっとした寒気。
「あら、やっぱりここにいたわね」
その寒気の正体は、理事長だった。
「お母さん!」
「その顔は、聞いたみたいね」
「本当にやるんですか!?ドームで!?」
「まだ、確定ではないんだけれどね」
理事長のその顔は、心なしか穏やかで誇らしげだ。
「だから、その実現のために前回ラブライブ優勝者のあなたたちに協力して欲しいって知らせが来たわ」
そういって差し出すのは一つの便箋。
「それって、まさか・・・・!!」
「え?なに?」
真姫ちゃんの驚愕に見開かれた目。僕はイマイチピンと来ずに聞き返す。
「まさか・・・・!!」
「だから何?」
穂乃果にも、同様に聞き返す。
「「「「「「「「まさか・・・・!!」」」」」」」
「だから何だっていうんだよ!・・・・あれ!?もしかしてわかってないの僕だけ!?」
どうやら僕だけだった。
こうして、僕らの終わりが始まる。
テレテンテッテッテテレテンテッテッテ♪テーテーテーテーテー♪
ラブライブ!ーThe School Idol Movieー
原作 矢立肇
原案 公野櫻子
脚本 花田十輝
「いやちょっと待ってえええええ!!!」
「もう!なんですか?雪?もうすぐ飛行機出る時間ですよ」
キャラクターデザイン
アニメーションディレクター 室田雄平
「いやその前にちょっと待ってお願いだから!あとスタッフロールいらないから!」
監督 京極尚彦
「スタッフロールはいいっつってんだろーが!!止めろ一回!ウゼーから!!劇場版っつても小説じゃ何ら変わりないから!いつもと同じだから!」
「いやほらやっぱり監督は出しといたほうがいいでしょ?」
「いや絵里先輩!どこに対しての気遣いよそれ!関係ないからこのssには!」
「他の細々としたスタッフはともかく、やっぱ監督は特別やん?」
「細々とかいうんじゃねえよ!皆ラブライブを作ってくれてる大事なスタッフさんだぞ馬鹿野郎!」
いったん深呼吸。
「どうしたの?雪君、そんなに慌てて」
「ことり!どういうことかこれは!」
したのにも関わらず、僕のテンションは変わらなかった。
「どういうって、ニューヨークのテレビ局が日本のスクールアイドルを紹介したいから理事長にオファーがあったって、言ってたやろ?」
「言ってたよ!言ってた!」
ことりの代わりに希が答える。
つまりはそういうことだった。そのために、今まさに空港でミューズはもれなく全員ニューヨークへ、大都会NYへ空の旅へと旅立つために飛行機を待っている状態だった。
「けどさ!そこに
「あ、また俺になってるにゃ」
「それは、招待されてるのがこの宇宙スーパーアイドルにこにーだけ!だからでしょ!」
「私たちも入ってるけどね」
真姫ちゃんは相変わらず興味なさげに髪の毛をクリンクリンさせている。
「真姫ちゃん!!どうにかならないの!?こう!なんていうかその、お金的な部分で!」
「はっきり言ったわね。言い淀んだ割にはっきりと口にしたわね」
頼むよ、マキえもーん。財布のポケットからお金を無尽蔵に出してよー。
「無理よ、いくらなんでもニューヨークのテレビ局にコネなんてないわ」
「そんな・・・・・僕一人、お留守番?」
「仕方ないよ雪君。あっちで美味しいお米あったらお土産に買ってくるからね」
「いやいらないよ。つーか花陽今からどこ行くかわかってるの?ニューヨークだよ?」
「まあまあ雪ちゃん♪あっちでチーズケーキ買ってくるからね。帰ってきたら二人で食べよ?」
「だから要らないって」
そんな馬鹿なことをしている間に、空港にアナウンスが入る。
勿論このタイミングなら、離陸時間が迫っているとのお知らせだ。
「ていうか穂乃果は今どこで何してるのよ」
絵里先輩が呆れたように時計を見る。
「それなら、もう着いていると連絡が来たのですが」
「早くしないと本当に飛行機出ちゃうよー」
ことりの不安そうな声も、最早僕には届いていなかった。
このとき僕の頭にあったのは、いかにしてニューヨークに行くか。ひたすらにそれだけである。
勿論正規でチケットやホテルを予約する金など腎臓でも売らない限りない。
「ねえ。雪穂、腎臓ってなんで二個あるんだろうね?一個余計じゃない?」
「なに恐ろしいこと考えてるの!?捨てな!そんな考え今すぐ捨てな!」
「仕方ないですよ。大人しく私たちと留守番してましょう?」
雪穂と亜里沙ちゃん。二人とも見送りに来ていた。
「あ、雪ちゃーん!!行ってきまーす!お土産何がいいかメールしてねー!!」
どうやら無事、穂乃果も見つかったようで。ぶんぶんと両手を振っている。
「まったく。穂乃果はいつも騒動を引き起こすんだから」
まあ今回ばかりは致し方ない。招待されているのは彼女たちで、頑張ったのも、頑張るのも彼女たちなのだから。
二、三日くらい我慢しよう。
「ウチの姉が申し訳ない」
「本当だよ」
「いってらしゃーいお姉ちゃーん!」
三人でその姿を見送って。
僕は、ゆっくりと踵を返した。
制作 サンライズ
「いやまだスタッフロール続いてたんかいいいいいい!!」
僕のシャウトが、空港に響き渡った。
Fin
「って、そう簡単に諦めるわけねーだろ!」
僕、inニューヨーク。
「ふはははは!来てやったぜ眠らない町!ニューヨーク!」
空港で一人、僕は叫んだ。流石はニューヨーク。周りには多種多様な人種の人たちが往来を闊歩している。
え?僕がどうやってここまで来たかって?そんなの決まってる、チケットなんて買うお金はモチのロンでない。
「ザ!密・入・国!!」
僕はキメ顔でそう言った。
飛行機・ホテル代なんてあるわけない。ということは自然、そういうことになる。
なんとか荷物に紛れてここまで来た。いやほんと、人間死ぬ気でやれば何でもやれるもんである。密入国くらいわけない。
「あれ?なんか僕今どんどんクズになってね?国際的なクズになってね?」
とりあえず、空気を変えて。せっかくここまでこれたんだ、穂乃果たちに会いに行こう。
「ヘイ!タクシーヘイ!」
初めて来た外国の空気と、密入国による異様なハイテンションでタクシーを呼び止めた。
ホテルの名前は聞いている。理事長が言ってたのを盗み聞きしていたから。
危なげもなく、僕は目的地を告げ。車は発進する。
「待ってろよ皆!今すぐ行く!!」
そして、着いたのは。
荒廃した村だった。
「・・・あれ?」
所々から聞こえるのは銃声音。目の前に広がる光景は、特撮映画かというくらいにダイナミックに爆発している。
「ちょっと待ってえええ!?」
ガンガンと今まさに降りたタクシーの窓を叩く。
「なにこれ!指定した場所と違うんですけどお!?」
勿論相手は外国人。日本語など通じないし、僕だって英語は喋れない。
目が合った。運転手と。
「運転手、さん」
にっこりと笑いかけてくれる黒人の運転手さん。
ブロロロロ。
そしてにっこりと笑いかけたまんまタクシーは走り去っていってしまった。
「あんにゃろおおおおお!!」
僕のその悲痛な叫びを掻き消すように後ろが爆発する。
熱風と熱気で焼け焦げそうだった。
そして見るからに野蛮そうな銃火器を持った男が二、三人。
あ、死ぬ。直感的にそう思った。
「まったくもう、仕方ないなー
「?」
一方、その頃。
同じ時、違う場所。
「これが・・・ホテル?ですか?」
「なにか・・・違うよう、な?」
「お化け屋敷みたいだにゃ」
タクシーに乗って目的地のホテルへと着いた海未、凛、ことり。のはずだった。
だが、そこはどう見ても寂れた今にもつぶれそうな廃墟。
「——————ああ!!」
「ど、どうしたのですか?凛」
不思議に思った凛が穂乃果に書いてもらったホテルの名前が記されたメモを見る。
「聞いてたのと名前が違うー!!」
「「ええ!?」
「うう、ひっく。ぐす」
なんとか、凛がホテルの名前を覚えていたおかげで最悪の事態は回避した三人。
「ご、ごめん!海未ちゃん!絵里ちゃんから渡されたメモ写し間違えちゃって・・・」
外国に行くということでいささかテンションが上がっていたのだろう。本来絵里が描くはずだったメモの一枚を穂乃果が意気揚々と書いていた。
今回はそれが仇となったようだ。
「だって、英語だったから」
たははとばつが悪そうに笑う穂乃果に、ついに海未の堪忍袋の緒が切れる。
「今日という今日は許しません!あなたのその雑で大雑把でお気楽な性格が!どれだけの迷惑と混乱を引き起こしていると思っているのですかぁ!!」
「まあいいじゃない。着いたんだし」
「良くありません!もしホテルの名前を忘れていたら今頃命はなかったのですよ!!」
「大袈裟だにゃ」
おーいおいおいと、枕に顔を埋めて泣き崩れる海未。
穂乃果や絵里がなんとか海未を宥めていたその頃。
あまりの出来事にホテルの名前を忘れた僕。
だが、命はない。なんてことにはならなかった。
「いやー、助かりました」
「本当に危ないところだったのよ君。わかってる?」
なぜなら、目の前にいる女性が助けてくれたから。
さらりと広がる橙色の綺麗な髪に、まっすぐに光る瞳。背は僕より少し高いくらいだろうか。
「ていうか、なんで助けてくれたんですか?」
危険地帯を通り過ぎて、比較的町並みが綺麗になってきた所を二人でタクシーから降り歩く。
この人のことを僕は知らない。僕と彼女はまったくの他人である。
「そりゃ同じ日本人が危ない目にあってたら、助けようって思うのが人情ってものでしょ?」
右腕に力こぶを示しながらにっこりとほほ笑む彼女に、僕はなんていい人なのだろうと感激した。
「それじゃ、ここらへんで私はもう行くね」
「え?送ってってくれないんですか?」
「バカ。私だって忙しいんだよこれでも」
比較的、安全だと判断したんだろう。僕を助けてくれた彼女は颯爽と町の雑踏の中に消えていった。
「いろんな人がいるんだなあ、ニューヨークって」
そんな馬鹿みたいな感想と、助けてくれたことに感謝の念を送りつつ。
僕は。
「Place your bet(プレイス ユア ベット)」
「ブラックにオールイン!!」
カジノに来ていた。
「・・・・・あり?」
そして負けていた。持ってきたお金全額。
一瞬で、一文無し。ちなみに着ていた服も全て剥ぎ取られた。今現在パンイチである。
「何やってんのぉ!!君!?」
「あ、さっきの人」
さてこれからどうしようか試行錯誤していたところ。さっきの女性が目の色変えてやってくる。
「何やってんの!?友達のところに行くんじゃなかったの!?」
「いやー、それがホテルの名前忘れちゃって。せっかくニューヨークまで来たし、とりあえずカジノでもしようかと」
「なんでよ!なんでとりあえずでカジノに行く流れになるの!?」
ギャーギャーと文句を言われながらも、僕が剥ぎ取られた服をお金を払って取り返してくれた。
「わー、ありがとうございます」
「とにかく!寄り道せずにちゃんと友達に会いに行くんだよ!?わかった!?」
「はい!」
言いながら、僕の足はカジノに。
「言ったそばからぁ!!」「待って!あと一回!あと一回やれば掴める気がするんです!今までの負けを取り返せる気がするんです!!」
ずるずると首根っこを引っ張られながら、僕の目はグルグルと欲に取りつかれていた。
「あー!アメリカンドリームがあああああ!」
「ほら!ホテルついたから!」
「・・・・ぐす」
「いつまで引きずってんのさ」
信用ないと判断されたのだろう。ホテルの前までついてきた。ばっちり監視された。
「ほら、早く行ってきなさい」
「・・・・・・」(ムス)
「行ってきなさい」
「はーい」
なぜだろう。さっき会ったばかりなのに、この人には外面を見繕うことができない。隠し事ができない。
なんだか、何年も前から一緒にいるようなそんなフランクさ。親近感を感じる。
不思議な人だと、振り返ったときにはもう彼女は姿を消していて。
「???」
僕は混乱した。
「ま、いっか」
とりあえず、ここまで来たんだから会いに行こう。彼女らに。
あれ?そういえば、なんであの人はこのホテルの場所が分かったのだろう。僕は名前すら忘れていてここだと言った覚えはないのだけれど。
「・・・まいっか!」
細かいことは気にしないことにした。なにせここはニューヨークだ。そういうこともある・・・・と思う。
「真姫ちゃーん!!」
「ヴェ!?」
いの一番に、僕はまず真姫ちゃんに会いに行った。会いに行ったというより、偶然見つけたといったほうが正しいが。
ロビーで歩いていた真姫ちゃんは、僕を見るなり素っ頓狂な声を上げる。
「な、なんで雪!?」
「会いに来たよ真姫ちゃん!会いたかったよ真姫ちゃん!」
ガシっと、勢いよく両手を握る。
(な、なにこれ・・・!幻!?雪に会えない私の妄想が映し出したこの世の不思議!?)
あわあわと、混乱している真姫ちゃんに僕は、真姫ちゃんに会ったら言おうと思っていた一言を言う。
「お金貸して!!」
「ああ、雪だわ。紛れもなくこれは現実にいる雪だわ」
さっきまで顔を赤くして、泡を食っていたのに。急に現実に目覚めたように、すっと目が半開きになった。
「頼むよ!マキえもーん」
「だれが便利な四次元ポケットよ!」
ていうか、と真姫ちゃんは素に戻り疑問を僕にぶつける。
「雪、あなたなんでこんなところにいるのよ」
「ああ、それは————————「雪ちゃん!?」」
ここまでの経緯を説明しようとすると、後ろから名前を呼ばれる。
「穂乃果」
「な、なんでニューヨークに!?」
見ると、他にも皆いた。夕食を食べた帰りかな。
「ああ、それね。実は」
「ソーリー、チョットイイデスカ?」
またもや話そうとすると邪魔が入る。なんだ。呪われてんのか?
と思って、怪訝な顔で振り返ると。
「アナタ、アヤシイデスネ。ミツニュウコクシタトイウジョウホウノカオニイッチシマス。アヤシイヤツ、ミナゴロシデス」
屈強な、黒服の怖いお兄さんたちが三、四人ほどで囲んでいた。
「—————————————!!」
背景に雷が落ちたような、そんな衝撃。
「サア、コチラニキマショウカ」
「い、嫌だあ!!僕は、僕はこの街で成功するんだい!!一生遊んで暮らせるような億万長者になるんだい!!」
ズルズルと首根っこを捕まれて、引きずられること今日二度目。
「ゆ、雪ちゃん!?」
みんなの心配そうな表情が見える。
「ま、真姫ちゃん!せめて!せめてお金だけでも!!大丈夫三倍にして返すから!!」
だから、僕は必至の覚悟で最後の言葉を残そうとしたのだが。
「あがっ!」
帰ってきたのは、中身の入った缶ジュースが勢いよく僕の顔にクリーンヒット。
みんな、一瞬にして冷めた表情になっていた。あれ?さっきまであんなに僕のことを案じてくれていたのに。人ってここまで瞬時に評価を覆すことができるんだ。凄いや。
なんて、冷静に分析してる場合じゃねえ。
「ちょ!ごめん!助けて!待って!行かないで!置いて行かないでええええええ!!」
今日何度目かの叫びが、人がごった返すロビーで響き渡った。
どうも松竹、高宮です。
ということで劇場版編が始まりました。久々に本編だったのでなんだか楽しくなってはっちゃけました。
そしてミューズファイナルシングル発売しましたね!勿論フラゲしてきました!
めっちゃエエ曲やないか。カップリングからなにからなにまでめっちゃエエ曲や。
ということで、しばらくは劇場版編が続きます。よろしくです!
それではまた次回。