「ま、真姫ちゃん・・・!」
前回のラブライブ!
普通の生活に慣れていない雪、突然時間が出来てしまいどう暇を持て余そうか考えていたところなんと競馬に手を出してしまったの!
自分はなんてダメなんだろうと自己嫌悪に陥っていたその時!雪は三連単をなんと見事的中させた!
その事でわかりやすく調子に乗った雪はもう一度お金を賭け、そしてまたまた天文学的確立で500万をあっ、という間に直ぐ沸かせてしまった。まさにお金のティファールだわ。
そんなこんなで今。500万の馬券を手にした状態で目の前には真姫が。
さあ、どうなるの?どうするの?雪!(cv矢澤にこ)
「雪、何やってるの?こんな所で」
暗い路地の隙間。振り返ると通りには太陽の光に照らされている真姫ちゃんがいた。
どきりとした。心臓が飛び跳ねた。
だって、僕の胸の内には今、500万円の馬券が握られている。変な汗でしわくちゃになったそれがでも確実に握られていた。
「な、なにって・・・・・」
とっさに僕の頭はいい言い訳を思いついてくれない。バカバカ!もっと勉強しておくんだった!なんの!?
混乱しすぎて一人で突っ込んで一人でボケる始末だ。これは手に負えない。
「???」
真姫ちゃんが首を傾げる。そして段々とその瞳が、人を訝しむときのそれとなっていく。間違いない。だって、あの瞳には何度もお世話になったもの。最早旧知の仲ともいえるもの。
「雪、あなたまさかまた面倒なことに巻き込まれてないでしょうね」
ピンポンパンポン!正解!!大正解!!
これがクイズ、雪の現状を当てましょう!のコーナーだったら真姫ちゃんに一億ポイントくらい入っている。後のバラエティにありがちな最終問題でのポイントインフレですら敵わないレベル。
なーんて、言ってる場合じゃない。
本当に、どうしてこう僕の周りの人たちは僕の事を僕以上に理解しているのだろうか。もう本当に勘弁して欲しい。そんなに顔に出やすいかな僕。
ペタペタと自分の顔を触っていると、不意にその手が掴まれる。
いつの間にか、真姫ちゃんの顔がすぐそこに。
「ま・き・こ・ま・れ・て・な・い・で・しょ・う・ね~!」
「一字一句をはっきりと!流石真姫ちゃん!言い発声だね」
なんとか言い逃れしようと張り付いたような笑顔と、薄っぺらい賛辞のことば。
「巻き込まれたのね!?」
「確定事項ですか!?」
ついに巻き込まれた前提にされた。いえ、まあ、事実ですけどね。
でも正確に言うとちょっぴり違う。いつもはそうだけど、今回ばっかりは自分で巻き込まれに行ったというか、そもそも巻き込んでいったというか。
「だから真姫ちゃん、とりあえず手を放して?痛いよ」
「駄目よ!どうせ放した瞬間、あなたは空気のようにするりと逃げていくんだから!知ってるんだから!」
僕そんなイメージ!?ていうかダメだ、興奮して頭に血が上っている真姫ちゃんはまともに話を聞いてくれそうにない。
「わかった!わかったよ!もう言うよ!」
観念した僕は真姫ちゃんにのみ、秘密を話すことにした。だってこのままじゃ真姫ちゃんに射殺されそうだったもの。それくらい鋭い視線だったもの。
・
・
・
「なるほど、そういうことだったのね」
かくかくしかじか。事の顛末を僕は真姫ちゃんに話した。
結果。
「・・・・・このクズ」
訝しむ目線が、蔑む目線にレベルアップしたよ!ヨカッタネ!
いや、良くない良くない。
心の中でかぶりを振る。
ていうかすいません、結局僕、射殺されそうなんですけど。蔑む目線のほうがダメージでかいんですけど。このまま飛び降り自殺とかしそうな勢いでガリガリ削られちゃってるんですけど!
「ニューヨークでカジノ、こっちで競馬?あなた気づいてる?今順調に人生転落していってるわよ」
「言わないで!わかってるから!自己嫌悪に殺されそうになってるから今!」
目の前の現実から逃げるように目の前を両手で隠す。
「で、どうするのよそれ」
真姫ちゃんは深い深いため息と共に、僕にそう問いかける。依然として侮蔑の視線は変わってない。
「どうするって・・・換金?」(ハート)
できるだけ軽ーく、できるだけ了承してもらえるように僕は笑顔と共にそう答える。
「はぁ」
ため息つかれた!今日何度目かのため息をつかれたよ!まるで頭の痛い子を見るようにこめかみに手を当てているよ!
「いい?雪。あなたのやっている事は犯罪です」
びしりと指を突き付けられる。
突きつけられた僕。
うるうると瞳には涙が。
「しょうがないじゃーん!!悪いことだってわかってるけどー!でもこの一生に最後の幸運にすがってもいいじゃーん!」
暗い路地、通りには人通りはまばらとはいえ人っ子一人いないわけじゃない。
地べたに座り込み、うわーんとみっともなく号泣する僕を道行く人たちは何事かとこちらを見る。
「わわ、ちょ、なに泣いてるのよ」
一転オロオロしだす真姫ちゃん。
「わかんないよー、真姫ちゃんにはわかんないよー」
「わ、わかるわよ!」
「わかんないよー!」
「わかる!」
「わかんない!」
くだらない言い合い。だけど、段々とそれはヒートアップしていく。
「・・・わかんないよ」
冬の寒い日に眠る床の冷たさも、夏の暑い日の仕事のけだるさも、いつの間にか昇っていた太陽の明るさも、いつの間にか落ちていた日の侘しさも。
きっと、真姫ちゃんにはわからない。
「・・・・・・・・」
別に、真姫ちゃんにこんな表情をさせたいわけじゃないのに。こんな、悲しい顔をさせたいわけじゃないのに。
それでも、たった一言ごめんと謝ることができずに。
僕はうずくまって俯いている。
「それでも、私はわかりたい」
絞りつくしたような、か細い声。
だけど、ちゃんと聞こえた。塞いだ顔の真正面から、ちゃんと聞こえた。
ゆっくりと顔を上げる。
「・・・なんで、真姫ちゃんが泣いてんのさ」
「うるさい!」
溜まった涙が、今にも溢れそうで。
「ごめんね。真姫ちゃん」
僕は謝る。知っているから、真姫ちゃんが、みんなが、そうやって僕の事をちゃんと見て理解しようとしてくれていることを。
だって、僕はそれがなによりもどんなことよりも嬉しいんだから。
「分かればいいのよ。私も、その、分かっていくから」
恥ずかしいのか、顔を背けてそう言う真姫ちゃんに僕は「うん」と、返事をする。
「じゃあ!これ換金してきてもいいよね!?」
だから、けろっと表情を一転して、僕は努めて明るく、努めて前向きにそう提案した。
「な・ん・で!?そういう話になるのよ!」
「ひふぁいよ。まいちゃん」
あれ?おっかしーな、今の流れだと「しょうがないわね」ってなるはずなんだけど。
けれど現実、目の前の真姫ちゃんは怒ったように(というか怒っている)僕のほっぺたを引っ張っている。
「ふふ、もう怒ったわ。黙っていようと思ってたけど、雪がそういう態度に出るなら私も改めさえてもらうわ」
真姫ちゃん?真姫ちゃーん!顔が怖いよ!影が差してるよ!
なぜだか携帯を持っている真姫ちゃん。なにするつもり?ねえ?まさかと思うけど、まさかだよね?
「あ、もしもし?穂乃果?ええ、みんなを集めて今すぐきて」
うわー!やっぱりー!
ぎゃー!と頭を抱え、真姫ちゃんの携帯に手を伸ばすが届かずに。
プツリと、通話は切れてしまった。
「真姫ちゃんのバカ!なんで言っちゃうのさ!」
「ふん。たっぷりと怒られるといいわ!」
よし、逃げよう。
即効、即決、即脱出。
どんな問題も、いかに迅速に対応するかが大事だってテレビで言ってた。
「逃がすと思った?」
首根っこをつかんで、にっこりと笑っているはずのその真姫ちゃんの顔は、なんでか怖い。
まったくもって僕はいつになったらこういうパターンから抜け出せるのか、たまには褒められたいものだ。
まあ、自業自得ではあるのだけれど。
「もう!雪ちゃんってば、いくら穂乃果でも怒るんだよ?」
まるでプンスカという擬音が聞こえてきそうになるくらい絵に描いたように怒っている穂乃果。
「め、面目ない」
対して僕は暗い路地で(なぜか正座させられ)シュンとするしかなかった。
「雪、なにかつらいことがあったらいつでも頼ってきて下さいと言ったはずです。私は、あなたをそんな子に育てた覚えはないというのに・・・・!」
いや、僕も海未に育てられた覚えはないんですけど・・・。
勿論僕は今、怒られている身。そんなこと口が裂けても言えない。ただ黙って反省の意を示すのみである。
「海未の言う通りよ、雪。あなたは今までいっぱい苦労してきたんだから、もっと”私"を頼ってもいいのよ。私を」
大事なことだから二回言いましたよこの人。本当に純粋に僕を心配してます?
さっきも言ったが、勿論それは口に出さない。心の声にとどめておく。
「ちょっとえりち?それ別の思惑が透けてるで?」
やっぱりだった。やっぱり純粋に僕を心配しているわけじゃなかった。
やっぱり口には出せなくて、でもやっぱりちょっとばかしやっぱり表情くらいにはやっぱり出てたかもしれないやっぱり。
「雪ちゃん、流石だニャー!ねえねえ!500万円でどこ行く!?デ●ズニーランド?熱海?ハワイ?この際世界一周旅行もいいよね!」
「ちょ、ちょっと凛ちゃん。ダメだよそれは。違法だよ」
あれれ?凛ってば、500万円を使う気でいらっしゃいますよこの子。まったくもう、道徳心をどこに置き忘れて行っちゃったの?
とはやっぱり、以下略。
・・・・まあ人のこと、言えないんですけど、ね。
そうだよね、違法だよね。なんかニューヨークで感覚がマヒしてきちゃった。
花陽の一言がボディブローのようにじわじわと聞いてくる。早く!早くゴング鳴らして!早くメンタルを回復させて!
カンカンカーン、と僕の頭の中ではもうとっくにゴングは鳴っているのにそれでも皆は許してくれない。
「ていうか一回こいつ警察の厄介になったほうがいいんじゃない?本気で」
「おふざけ一切なしのマジトーンでそんなことを言わないで!悪かったよ!悪かったと思ってるよ!」
我慢できなかった、にこちゃんの見たことないほど辛辣で冷え切った瞳に我慢できなかった。
K.O負けだった。人として。
「大丈夫だよ、雪ちゃん」
甘い声、甘い匂い、甘い囁き。
「こ、ことり」
ふわりとした優しさでことりは僕を包む。
そして。
「雪ちゃんがお金に困っても、大丈夫。私が全部してあげるからね。家事も炊事も仕事も、ぜーんぶ私がやってあげるから。だから良いんだよ。安心して雪ちゃんは好きなことやって」
あ、ダメなやつやこれ。この甘い誘いに乗ったら一瞬で堕落するやつやこれ。
なまじ具体的にイメージできるぶんつらい。家でスウェットでお菓子貪りながら競馬中継見て、偶に外出たかと思えばパチンコとか。それどんな僕の父親だよ。
僕がことりの神々しささえ感じる包容力オーラに気おされていると、不意に真姫ちゃんにべりっとことりとの距離を剥がされる。
「そ、それで?結局どうすんのよ!」
若干赤みがかかった頬でそう僕に問いかける真姫ちゃん。
「ど、どうするって」
「そんなもん決まってんでしょ!破棄よ破棄!捨てなさいそんなもの!」
「えー!もったいないにゃー」
「もったいないものですか。お金というのは、ちゃんと、汗水たらして自分の力で得ることに意味があるのです」
うう、耳が痛い。
そりゃ、にこちゃんや海未の言っていることが100%正しいと僕も思うけど、でもやっぱり500万円は惜しいと思う僕もいて。
僕が結論を出し渋っていると、なんだか僕をのけものに話がヒートアップしていく。
「でも500万円だよ!500万円!野口さんがいったい何人いると思ってるのかにゃ!」
「り、凛ちゃん、一万円札の人は野口英世じゃなくて福沢諭吉だよ」
「この際どっちでもいいにゃー!今は500万円をどうするかって話だにゃー」
「穂乃果はダメだと思うそんなの!見たでしょ?ニューヨークで!雪ちゃんがお金持ったらたいていロクなことにならないんだから!」
「確かにね。でも、凛の言うこともちょっとわかるわ」
「えりち?」
「だって、雪は今まで散々苦労してきたのよ?それこそ私達が想像すらできないレベルで。だったらちょっとくらいこういう偶然があってもいいんじゃないかなって」
「ほら!絵里ちゃんもそう言ってるにゃ♪」
「そ、それを言われちゃうと穂乃果もそうかなって思うけど・・・」
「穂乃果!」
「し、仕方ないじゃん海未ちゃん!それに、500万円あったら・・・結婚とか、できるかも」
「そうやね!仕方ないやんね!雪君今まで頑張ってきたからその報いとして!結婚資金として!」
「希!あんたなんで急にそっち側になってんのよ!」
「もう!みんな!仮に500万円あっても皆が好きにできるわけじゃないんだよ?」
「ことり、右手にゼクシィ持ちながら言われても説得力ないですよ?」
「・・・・けっ、こん」
「かよちーん!かよちんの脳みそがキャパオーバーしちゃったにゃ!」
その後もあーだこーだそーだそーだ言いながら、皆の熱はどんどん上がってとどまるところを知らない。
ていうか皆、いくら春休みだからってこんな平日に集まって暇なのかな?
「ちょっと待って、皆お金に惑わされすぎよ!たかが500万円で!」
「真姫ちゃんには聞いてないもーん」「な、ナニソレ!」
つんとした態度をとる凛に憤慨する真姫ちゃん。でも仕方ないね。500万円をたかがって言えちゃう真姫ちゃんだもんね。
その後も言い合いは苛烈を極め、どんどんと話は攻撃的になっていく。
そうした中で僕は——————————。
「うん!決めた!」
「ゆ、雪ちゃん?」
穂乃果が驚いた表情で僕を見る。
路地裏が騒がしくなってきたところで、僕はおもむろに立ち上がり。
「な、なにするにゃ!」
ビリビリと元々しわくちゃだった馬券を僕は粉々に破いた。
「よし!きれいさっぱり」
「よ、良かったのですか?」
海未が心配そうに見つめてくるけれど僕はそれに反して笑顔だった。
「良いんだ。別に」
惜しくないわけじゃないし、既に後悔し始めている僕だけれど。でも、やっぱりこれでよかったのだと思う。
「だって、僕のせいで皆の仲が悪くなるなんて、嫌だし」
過熱していく言い合いの中であれ以上、もう一歩踏み込んだら。もしかしたら、決定的な何かに、なっていたかもしれない。
皆に限ってないとは思うけど。
でも僕としてはそっちのほうが余程心配で、そっちのほうが余程後悔したくない。
「それに、海未の言う通り汗水垂らして働いて得たお金のほうがいいもんね」
「雪・・・」
「ありがとね。皆僕のために、守ってくれて」
「雪ちゃーん!!」
「うおっ」
勢いよくダイブしてきた穂乃果の体を、僕は支える。
「ごめんね雪ちゃん。せっかく当てたのに」
「いいよ別に。いい夢見たと思うことにする」
きっともう二度とできない経験だろうから、忘れない。
500万円あれば、きっと僕はもっと全うな生活が送れるのだろう。それこそ、絵に描いたように幸せになれるかもしれない。
だけどそれは海田雪の人生ではない。なくなってしまう。
僕は今まで苦労してきて、だからこそ皆に会えて、皆と今の関係が築くことができたんだと思う。
だから平気だ。例え今まで通り、苦労の絶えない人生だったとしても。
平気なのだ。
「だから、帰りにコンビニでジュースでもおごってよ」
「穂乃果のおごりね」
「ええー!私!?」
「私、お茶でお願いします」
「凛はリンゴジュース!」
「ウチはー」
「ちょっと!みんなは関係ないじゃん!」
「あはは」
・・・ああ、やっぱりちょっとだけ高級焼肉とか、行ってみたかったなあ。
最後までかっこつかないことを考えていると、不意に後ろから真姫ちゃんがクイクイと袖を引っ張ってきた。
「ん?なに?皆行っちゃうよ?」
振り返ると真姫ちゃんは立ち止まっていて、いつの間にか沈んでいた夕日に顔が照らされている。
恥ずかしいのか、はたまた夕日のせいか顔は朱色に染まっていて。
チョイチョイと手招きされたので僕は顔を近づける。
「その、どうしてもっていうときは養ってあげても・・・いいけど」
聞き取るのが困難なくらいか細い声、だけど僕の耳にはしっかりと届いた。
「うん。じゃあ、どうしようもなくなった時は、その時は真姫ちゃんに一番に相談するね」
「———————ええ」
夕日に染まった真姫ちゃんの顔は、晴れやかな笑顔だった。
どうもKey珈琲高宮です。
サンシャインアニメ始まりましたね。どうなることやらと親の目線のような気持ちで見てます。
イリヤもあるし、リライトもあるし、ダンガンロンパもある。楽しい夏になりそうだぜ!
あとなんか最近りっぴーを立て続けにテレビで見れてよかったです。さんまさんと喋ってるりっぴーに感動しました。
あと宣伝ですが、カクヨムで「花咲探偵は推理しない」という作品を投稿してます。なんちゃって学園ミステリーものです。興味がある方もない方も是非に。
一か月空くと書くことが溜まっていいね!これからは月一更新くらいにしようかしら。
なんてこと言ってるとすぐに見放されそうなので、これからも必死に頑張ります。
それでは次回でお会いしましょう。