愛って何だろうか。
恋って何だろうか。
最近よく考える。と、いうわけではないのだけれどふとした瞬間に疑問が沸く。
答えなんて一度も出たことなくて、だというのに飽きもせずに考えている。
甘い恋愛漫画を読んでも、淡い青春映画を見ても、結局僕にはその真髄とやらを得ることはできなさそうで。
きっと思春期特有の意味もないものに意味を見出そうとする、それなのだろうとは思いつつ。
僕は、今日もまた考える。
恋って、
愛って、
なんなんだろうか。
と。
高校二年生。
新入生でもなく、新鮮なわけでもない。
とはいえ、最上級生というわけでもないし、勿論最下級生というわけでもない。
将来のことを考えなければならない時期ではあるものの、誰もまだ切迫感は持っていない。
一番中途半端な時期、それが高校二年生なのだろう。
中だるみで非行に走る人や、勉学が疎かになってしまう人などこの学年には多いのではないかと個人的には思う。
そんな、高校二年生になった僕はというと正に今現在。
飛行に走っていた。
飛行機に向かって、走っていた。
「はっ・・・はっ・・・あ、アブねぇー」
飛行機というのは大抵離陸時間よりも大分前にラウンジについていなければならない。
そこで自身が乗る飛行機の行き先き番号と一致する場所で待っているのだが。
僕は飛行機に乗るのは初めてではない。
が・・・二度目だ。
しかも一度目は不法入国での搭乗だったため、正規の手続きで乗るのは初めてと言ってもいいのである。
だから、しょうがないのだ。
番号を間違えて、全然違う場所で飛行機の離陸を待っていたとしてもそれはもうしょうがないのだ。
「いやー、まさか番号を間違ってるなんて思わなかったよー、雪ちゃんのドジ」
「うぐ・・・、現に間に合ってるんだからいいじゃんー」
まさか”穂乃果にドジを指摘される日がこようとは”。
そう、今僕は飛行機の中にいる。
成田空港発、福岡空港行。
隣には飛行機に乗るということでニコニコと嬉しそうな穂乃果が一人。
そして僕の二人で、今まさに東京を離れ福岡に飛ぼうとしている。
まあ、国をまたいだことのある僕らにとってみれば東京から福岡なんてさして感動することもない。
「わーみてみて!雪ちゃん!雲の中だよ!!」
・・・うん、まあ、何事も新鮮に感動できるってある意味長所だよね。
「雪ちゃん。やっぱり元気ない?」
穂乃果は心配なようで僕の顔をまっすぐに覗き見る。
「そんなことないよ」
穂乃果のまっすぐな顔に僕もまっすぐに返す。
もしも、僕がそう見えているのなら。
それは、きっと—————————————。
「じゃあテンション上げていかなきゃ!」
「うん、でも機内だから。周りの人の迷惑になるから」
なんだか海未のいつもの苦労がわかってしまう。いつもご苦労様です。
「そっか、それもそうだね」
握ったこぶしをパッと開いて、穂乃果はようやく落ち着きを取り戻したようだ。
僕も、穂乃果も、いつもの自分じゃない。
なぜなら————————。
「でも、楽しみだね。”お姉さんに会いに行く”の」
そう、なぜなら。
僕たちは今から福岡の教会に住み込みで働いている姐さんのところに行こうとしているのだから。
時は一週間ほど前に遡る。
「ふー」
「お疲れ様」
額に汗を浮かべ、ネクタイを緩める僕にあんじゅは優しくねぎらってくれる。
桜吹雪が舞う四月。
慣れていないであろう制服に身を包んだ新入生が緊張した面持ちで体育館に集まる入学式。
それが今日だった。
式自体は既に終え、体育館は閑散としている。
残っているのは片付けをしてくれる有志の皆と生徒会くらいだ。
「大変だったかしら?」
「ツバサさん」
その有志代表を、なぜかツバサさんが務めている。
「まあ、未だに慣れないですよ。人の前に立つのは」
生徒会長という立場になって、もう随分と立つ。それなりに人前に立つ機会も増えたし、最初よりは緊張というのも和らいだ気がするけど。
「ふふ、いいんじゃない?緊張しているあなたは可愛いもの」
「むぐ///」
ツバサさんは最近何かあったのか、僕をからかう回数が増えている気がする。
どうしていいかわからなくて、僕は顔を背けることしかできない。
笑顔で楽しそうに僕をからかうツバサさんを見ているとそう悪い気はしないのだが、それでも男の子のプライドというものも少しは傷ついたりして。
・・・まあ、今更な話ではあるが。
ふと、過去のことを振り返って乾いた笑いが漏れる。
「ツバサ?あっちで有志の子が呼んでるよ?」
なんてことを考えていると、ドキリとするようなあんじゅの冷えた声が聞こえた。
「・・・・・・・仕方ないわね。はーい!今行くわ!」
ツバサさんはどこか不服そうに頬を膨らませながら、呼ばれた有志の集まりに加わる。
「もったくもう、ツバサは本当にしょうがないんだから」
隣を見るとあんじゅも同じく頬を膨らませている。ふとした瞬間にどことなく似ていると感じるのはこれまでのアライズとしての年月がなせる業だろうか。
あんじゅとツバサさんは家族というわけではないけれど、それでも長く濃密な時間を過ごして友情以上の絆があるのだと最近気づいた。
そんなことを考えながら体育館を見渡せば談笑しながら片づけをするものや、現場を指示する先生も。どことなく緩やかな雰囲気に包まれている。
(ふ、二人っきりだ~~~~///)
そんな緩やかな雰囲気に似合わずにあんじゅはちょっと緊張しているようで。
「ゆ、雪君は昨日のテレビみた?」
どこにその要素があるのか僕にはわからなかったけど、あんじゅと会話を続けていた。
その時だった。
”それ”が僕のもとにやってきたのは。
「あー、海田雪ー!お前に手紙が届いてるぞー!」
体育館に先生の大きな声が木霊する。
「手紙?」
なぜ学校に?
学校に手紙が来ることなんてあるのか。珍しいこともあるもんだと、暢気に構えてはいられない。
学校に、それも僕個人に来る手紙なんて悪い予感しかしないからだ。
「それじゃ、渡したからな」
「は、はぁ」
先生から手渡しされ、僕は困惑気味に受け取った。
茶封筒に学校の住所と、宛名と送り主の名前。
「なぁに?それ」
「さあ?」
あんじゅが覗き込んでくるものの、僕だってその正体に心当たりなどない。
宛名を見ても、その名前に見覚えなどない。
とにかく、それ以上の情報を得られない以上、茶封筒を開けて中身を確認するしかない。
ビリビリと上のほうを破いて、出てきたのはやけに目立つ赤い手紙。
『カイダ ユキ殿
ソフ キトク スグカエレ』
「いや電報て!」
何時代の連絡方法だよ。この平成の時代に。
いや、それよりもなによりも。
「こ、これ・・・」
あんじゅは驚愕に目を開き、震えている。手紙の異質さも相まってなんとなく不気味ではある。
が、一番不気味なのはその内容だ。
ソフキトク、スグカエレ。
つまり、祖父が危篤なのですぐに帰れということらしい。
その内容も十分に驚くべきものなのだが、一番驚くべきものは。
「祖父って・・・誰よ?」
「ええ!?」
あんじゅが驚くのも無理はない。
僕にとって血縁関係者というのは父と、姉、の二人しか知らない。
親戚がいるのかいないのか、新年の集まりにも、お盆に帰省したことすらない僕にはそんな簡単な事実すらわからない。
ましてや祖父、おじいちゃんなんて会ったこともない。
そんなおじいちゃんが、今なぜ手紙を送ってきたのだろう。それもわざわざ学校に。
「いや、危篤だからでしょ!?」
そんな表情をあんじゅに悟られてしまったのだろう。僕なんかより焦ったような顔で突っ込まれる。
「うーん・・・まあ、そうなんだろうけど」
正直、顔も名前も、あ、いや名前はこの宛名に書いている名前なのか。は、一旦置いておくとして。
とにかく会ったこともない爺さんが危篤だといわれても、一つもピンと来ない。
思い出も、人となりも、何もかも知らないのだから。
「すぐ帰らなきゃじゃん。えっと・・・住所は、福岡?お爺さん福岡に住んでるの?」
封筒の裏にある住所を見て、あんじゅは質問する。
だけど、そんな簡単なことにも僕は答えることができない。
福岡は、こっちに戻ってくる前にいた所だ。それに、姐さんが今現在住んでいる場所でもある。
偶然かはたまた——————————————。
僕は今までさんざん失敗してきた。自慢じゃあないけど、迷惑をかけた人たちの数は両手では足りない。
そんな僕だけど、別にわざと失敗しようとしているわけでも、他人に迷惑をかけるのが好きなわけでもない。
性分だと割り切ることは簡単だけど、でもやっぱりできるのなら失敗なんてしたくない。迷惑をかけて、心配をかけるのはもうこりごりだ。
「———————————と、いうわけなんだけど」
だから、僕は皆に相談した。
学校近くのファミレスにミューズが、いや。”元・ミューズ”が勢ぞろいしている。呼んだのは僕だけど。
もう卒業した絵里先輩や、希、にこちゃんも当然集まってくれた。
上手くやるやり方も、ごまかす方法も、僕には思いつかないし、何より、それを隠し通す自信が僕にはない。
だから肉を切らせて骨を断つじゃあないけれど、皆に相談を持ち掛けた。
たとえそれで余計な心配をさせてしまうことになるかもしれないけれど、それでも。
ただ、黙っているよりよっぽどマシな筈だから。
「「「「「「「「「うーん・・・・・」」」」」」」」」
僕の話を一通り聞いたみんなはまるで鏡写しのように腕を組んで頭を悩ませ唸っている。
・・・やっぱり失敗だっただろうか。
実のところ、この選択が正しいと胸を張っては言えない。
僕が考え付く他の選択肢よりはマシというだけで、別にこの選択肢も先につながるのはバッドエンドかもしれない。
もっと考えれば、いい方法があるかもしれない。もっと僕が悩めば、皆に心配かけずに解決できるのかもしれない。
黙って行けばいいのかもしれない。
「はぁ?雪、あなた本気でそれいってるの?」
そんなことを何の気なしに、ポロッと口をついたのがどうやら火に油を注いでしまったらしい。
真姫ちゃんの本当に怖い顔を見てそう悟った。
「はぁ・・・少しは成長したと感心していたのですがね」
「え?え?」
「人なんてそうそう変わらないってことでしょ?」
海未とにこちゃんまで呆れたような表情で僕を見る。
「雪は私達の気持ちをこれっぽっちもわからないのね、私たちはあなたのことこんなにもわかってあげられるっていうのに」
「え、絵里先輩まで」
どういうことか、まったくわからない僕はみんなを困惑しながら見るしかない。
「どうやらみーんな、同じ気持ちやんな」
「なに?どういうこと?教えてよ」
みんなが僕をいじめる。どうやら教えてくれる気がないようで、自分で考えろと言っているらしい。
「・・・・・降参。わからない、教えてよ」
しばらく考えてみても、一向にその欠片すら掴めない。
だから両手を挙げて降参したんだけど。
「雪ちゃんはダメダメだにゃー」
「本当に雪君ってば頭悪いよね」
ダブルで馬鹿にされた。ことりと凛の両隣から言葉のダブルパンチをもらった。結構痛いんだよ?これ?
「えー、じゃあヒント!ヒント頂戴!」
いつの間にか、当てよう!皆の気持ち!のコーナーと化していたが止める者は誰もいない。
「あのね雪君、人の気持ちがわからないときは相手の立場になって考えるんだよ?」
優しく諭されてしまった。花陽にまるで幼稚園を相対しているかのように優しく諭されてしまった。
なんとなく自己嫌悪。
ともかく、花陽の言うことはごもっともなので、僕は素直に相手の立場になって考えようとした。
目を閉じて、想像する。
相手の立場、つまり僕がみんなに似たような相談をされたシチュエーションを。
似たような相談・・・・似たような・・・えーっと・・・。
カチコチと頭の中を妄想するため改変する。
よし。
例えば穂乃果たちが緊急の用事でどこか遠くに行ってしまうという相談をされたとしよう。
そして、穂乃果たちが自信なさげに「やっぱり黙って行けばよかったかなぁ」なんてことを言ったとしよう。
「うん。腹立つな」
何に腹が立つって相談を持ち掛けておいて、やっぱ黙って行けばいいかな。なんて自分勝手なことを言っていることが何よりも腹が立つ。
————————ああ、そうか。
それと全く同じ気持ちだと言いたいんだなみんなは。それと全く同じことを今まさに僕はやったんだ。
言った瞬間は気付かなかったけれど、こうして諭されてようやく気付くあたり、やっぱり馬鹿かもしれないと思った。
他人に言われるのはちょっとばかし腹が立つけれど。
「ようやく分かりましたか?」
まったくしょうがないなヤレヤレとでもいうかのようにかぶりを振る海未に僕は「ごめん」と謝った。
みんなの気持ちはわかっていたはずだったけれど、やっぱりそれは、分かったような気になっていただけだった。
きっと、その繰り返しなんだろうな。と、僕は僕を顧みる。
わからなくって、理解した気になって、間違えて、一つを知って。
でもきっと、全部はわからない。
どれだけ知りたくても、努力をしても、きっと全を知ることはないのだろう。
「じゃあ、じゃあどうしたらいい?」
全を知ることはできない。永遠にわかったふりを続けるのみで。
「それを、みんなで考えるんでしょう?」
それでも。
それでも、きっと一を知ることはできる。積み重ねることはできるんだ。
絵里先輩のそう言った優しい顔を、僕はきっといつまでも憶えているのだと思う。
「とは言っても、うちらに出来ることは話聞いてあげることくらいしかできんしなあ」
「それだって、満足にはできないわよ。なんてったってにこたち”大学生”ですから」
にこちゃんは最近やたら大学生を押してくる。そこにどんな意図があるのかはわからないけど、なんかランドセルを自慢する小学生みたいだ。
それはさておき、希の言う通りではある。
相談した本人がいうのはどうかとは思うが、ぶっちゃけ皆にしてもらうことってのはたぶんない。
「こればっかりは雪君がどうしたいかってことだけだしね」
ことりの言う通りこれは僕の問題で、僕が解決しなきゃいけないし、僕しか解決はできないのだ。
じゃあなんで相談したかというと、皆に黙っているのはいけないという妙な支配感からだったのだが。
「雪ちゃんはどうしたいんだにゃー?」
凛はドリンクバーから自分でアレンジしたオリジナルミックスジュースを吸いながら僕に問いかける。
あ、苦い顔してる。あんまり美味しくなかったのかな。
「僕は・・・」
どうしたいんだろうか。
もちろん、ずっと考えていた。もはや週休二日制で悩んでいる気がする。毎日何かの悩みに追われている気がする。そろそろ時給とか発生してもいいレベルで。
でもやっぱりどこか他人事のようで、真剣には考えられなかった気がする。
だからこそ皆に相談しようと思えた余裕があって、だからこそ、答えは出ない。
自分のことのはずなのに、今までとなにも違うことなんてないはずなのに。
今までと同じような真剣さが僕は持てなかった。
「じゃあ行こうよ!お爺さんのとこ!」
そんな僕の心の機微を読んだのか、それともやっぱりいつもの衝動なのか。
「穂乃果、またあなたはそんな簡単に」
「えー?簡単だよ?会いたいから会う。それでいいじゃん!家族なんだから」
家族だからと、穂乃果は言った。
けど、本当に僕と手紙の主のお爺さんは家族なんだろうか。
勿論、血はつながっているのだろう。わざわざこんな手の込んだイタズラってこともないだろう。
だとしても、会ったことも、喋ったことすらないその人と、果たして家族といえるのだろうか。
「そうだね、会いに行こうか。一緒に」
「ゆ、雪君!?」
僕の一言に、ことりは焦ったような表情であわあわしている。
「ゆ、雪がこんなに早く結論を出すなんて・・・・!」
見れば、絵里先輩も同じく驚愕に瞳を染めている。そんなに僕が素直なのは珍しいのか。
別に、それを成長とは呼ばないのだろうけど。
それでも、たまにはいいと思ったんだ。
あれこれ考えずに、考えなしに行動するというのも。
「やったぁ!決まりだね!早速準備しなきゃ!」
そう、まるで穂乃果のように。
————————————————と、いうような経緯で僕は今、上空一万メートルを超えているところである。
「ね、お爺さんってどんな人?」
「さあ、会ったことないからなあ」
お爺さんに会いに行くにあたり、ついでというかちょうどいいというか、姐さんにも会うことにした。
一度こっちにこいとは言われていたので、それは二つ返事でOKをもらったんだけど。
やっぱり姐さんはお爺さんについての情報はくれなかった「どうせ会うでしょ」と、必要以上に教えてはくれない。
まあ、それもこれも、あとほんの数時間でわかることではあるのだが。
そう、彼方まで続いている雲の上の青い青い空を見ながら思った。
「フフフ・・・・」
同じ機内にいた人物には、気づかずに。
どうも皆さんマシュうううううう!!高宮です。
FGOいい最後でしたね。あの、最後にマシュが盾を言論に持ち替えてダンガンロンパしていくところは涙なしでは見れませんでした。
いや、そんなゲームじゃねえよFGO。
すいません、いつの間にかダンガンロンパの話になってました。V3の話になってました。
ああはいはい、例によってまだクリアできてませんよ。ゲーティアに心おられてますよ。
あ、本編と関係ねえや。いつものことですが。
ということで、2016年最後の投稿です。皆さんこの一年はいかような一年だったでしょうか。
できればいい一年だったと晴れやかな気持ちで年を越してほしいと思います。
僕?僕は・・・ほら・・・センターあるんで。
終わればまた作戦をガンガン投稿しようぜ!に変更していくんで、よろしくお願いします。
詳しくは久しぶりに使う、最早この機能いらねえんじゃねえかと思い始めた活動報告にて。
年明けから新作投稿もやる予定ですんでそっちも詳しくは活動報告で。どうぞよしなに。
それでは皆さん。よいお年を!