アルドノア・ゼロ、最終回を迎えてしまいましたね。でもこの話はやってくつもりです!!……相変わらずの亀更新になると思いますが……
それではどうぞ!!
「ふぅー……」
月面近くにあるザーツバルム伯爵の揚陸城。そこでは部下からの報告を受け終わったザーツバルム伯爵が疲れた表情で深い溜息をつき虚空を見つめていた。
「お疲れですか、伯爵?」
そんな彼の後ろから凛とした声が発せられる。声の主が誰なのか分かっている彼はゆっくりと振り返り声の方向に顔を向けた。
「いや何でも無い、セレーネ。ただあちらで少々問題が起きたようだ」
そこにいたのは黒い騎士服を身に纏った幼さの残る顔立ちの女性であった。小柄な体躯やくっきりした目鼻立ち、絹糸のようにサラサラとした漆黒の髪が宙に靡いている姿など所謂美少女という部類に入るのだろう。ただ堅苦しい騎士服や鋭い眼光がそれらとはあまりにミスマッチしており近寄り難い雰囲気を放っている。
その少女セレーネは嫌悪感を包み隠さずに口を開いた。
「……ネズミを取り逃がしたようですね」
彼女も伯爵の協力者の一人だ。彼の様子から報告の内容を察したのだろう。
そう、彼が受け取った報告とは姫暗殺の実行役の抹殺に失敗したという実に不愉快な報告だったのだ。手筈も整え失敗などする余地が無いように組まれた計画でのミス…………最早怒り心頭を通り越して若干呆れてしまうほどの失態だ。
「あぁ、実に耳の痛い話だ。任した役目すら完遂出来ぬとは……我は人選を間違えたかな?」
「……大方ゲームか何かと勘違いしていたのでしょう。戯れに興じて役目を果たせぬとは…………使えない」
心底嫌そうな声色に思わずザーツバルムは苦笑する。
「今日はいつも以上に辛辣だな?それほどまでに今の状況は不満か?」
「…………」
彼女は何も答えない。しかしそれが逆に無言の肯定を意味していた。彼は一つ溜息をつくと彼女の方に歩みを進めながら語りかける。
「セレーネ、貴公の考えはよく分かる。だがしかし、今はまだ我々の出る幕ではない。地球の征服など所詮は我らが目的の第一歩でしかない」
「…………はい」
そう――彼らの目的は地球征服などではない。それはただの手段でしか無いのだ。彼らの真の目的――――それこそが彼らが姫の暗殺などという火星に対する大罪を犯した理由なのだ。
「肝心なのはその先、その先にこそ我らが宿願が存在するのだ。その邪魔をする者がいれば容赦無く潰す。その折には貴公の力、存分に頼りにしておるぞ」
「…………了解しました。しかしならばこそ早々にネズミを始末するべく動かした方が良いのではないでしょうか?後方の憂いは絶つべきです」
だからこそこんな所で足踏みなんてせず対処した方が良い……彼女らしい尤もな言い分にザーツバルムは先程まで通信を行っていたモニターの画面を睨みつけながら答える。
「確かに奴はネズミを取り逃がした。だが問題は無い、奴には隕石爆撃を行うまでの監視を命じた。それで町諸共ネズミを始末出来る」
「お言葉ですが伯爵。すぐにでも隕石爆撃を行うべきではないでしょうか?」
「何故かな?」
「簡単な事です」
その疑問に彼女は何の感情も孕まずにあっさりと答えた。
「ネズミと使えない駒の両方を始末出来ます」
常人なら背筋が寒くなるような冷酷な言葉……だが最早彼ザーツバルムはその程度では何も感じない。そのような物はとうに捨て去ったのだ、十五年も前に……
「このような簡単な仕事すら出来ぬものはただの邪魔です。後々裏切られても面倒ですし……実行役には消えて貰うべきだと考えます」
志を共にした仲間に対するものとは思えないほど冷淡な言葉……だが少女にとってはこれが普通なのだ。彼女にとって彼らは仲間などでは無く目的を果たすための道具に過ぎない、自分も含めて……
そんな彼女らしい冷徹な答えに彼は心底愉快そうに口元を小さく歪める。
「見事な考えだ。だがな、セレーネ。残念ながら貴公の意見は受け入れられないのだよ」
「……何故ですか?」
彼の言葉を聞いて不服そうに顔を顰めるセレーネ。そんな彼女に彼はまるで教え子に教鞭を振るう先生のようにその理由を告げる。
「まず隕石爆撃の軌道調整には数時間はかかる。あの周辺はクルーテオの揚陸城の近くだ、軌道調整には細心の注意がいる」
いくら誰がやったのか分からないようにやるとはいえ、揚陸城に隕石を直接落とすのには時期早々……クルーテオやその部下達にはまだ地球侵攻のために働いて貰わなければならないからだ。まああの堅物な城主には最終的には消えて貰うつもりだ、懐柔出来る余地が欠片も無い奴なんぞ邪魔になるだけ……彼はそう考えている。
「それに奴の機体《二ロケラス》…………そのバリアがある限り隕石爆撃などでは傷一つ付かぬだろう」
「《次元バリア》……それほど強力なカタフラクトを持ちながら失敗するとは…………本当に使えない道具ですね」
「フッ、そう責めるな」
その答えに一瞬納得した素振りを見せるも再び毒を吐くセレーネ、どうやらこの状況と使えない同志に相当ご立腹の様子……この瞬間を待ち望んでいた彼女にとっては前座でこのような問題が起きたのだから分からぬ事も無いが……。そんなセレーネを諫めつつもザーツバルムは頭の中では違う事を考えていた。
おそらく地球の占領は滞り無く行われるだろう。たった一機で一個師団以上の戦力を保有する、それほどまでに火星の――アルドノアの力は強大なのだ。双方に相応の被害は出るにしろ地球軍に勝ち目など端から無い。
『ようやく我らの宿願が叶う、か……』
そんな事を考えながら、彼はあの青き忌まわしき星に思いを馳せるのであった。
『クリム卿。あと十分程で新芦原市中央部に到着します』
「分かった。悪いがもう少し高度を下げてくれないか?街全体の様子を把握したい」
『了解しました』
その頃新芦原市から数十㎞離れた上空ではクリム駆るオルティスがスカイキャリアで移動していた。眼前の真っ白な雲のせいで実際の街並みを見れない彼はパイロットにそんな命令を下しそれに従いスカイキャリアが高度を下げる。覆い尽くすような真っ白な雲を突っ切った先には幻想的な光景が広がっていた。
先ず目に入ったのはどこまでも続くような広大な海だ。その色は揚陸城から見下ろしていた時の青いものでは無く闇のように暗い色だった。だがその闇の中に映る星々の輝き、闇と光のコントラスト……それはあまりにもうっとりするような見惚れる光景だ。思わずずっと見ていたいと思うような光景……しかし、クリムの視線は既にそこにはない。その視線はそこより手前の市街地に向いていた。
『道が入り組んでいるな……』
というのが彼の所感だった。高さも大きさもバラバラな建物が所狭しと並んでいる様子……これほどまでに障害物が多いと重力下での飛行能力を持たないオルティスでは街中に着陸しても視界を確保しづらい。下手をしたら味方機に出会い頭で会って攻撃をされる可能性もあるのだ。
だから彼は探す、視界を確保でき町からそれほど離れていない場所を――――
『あそこだな……』
モニターから彼が探し当てた場所は正面にある小高い丘だった。緑の芝生に覆われた小さな場所……それでもオルティス一体が降りるスペースは余裕である。彼はスカイキャリアのパイロットに命令を下した。
「あそこの丘で降ろしてくれ」
『新芦原市の中心部までは六十㎞ほど距離がありますが……よろしいのですか?』
「構わぬ。降ろしてくれ」
『了解しました。オルティス、ディスコネクト』
その言葉と共にスカイキャリアのカーゴから飛び出すオルティス。バーニアを噴かし芝生を揺らしながらゆっくりと地面に着陸した。
『それでは、御武運を』
踵を返すスカイキャリア、それを見送りながら彼はコックピットハッチを開けて外に身を乗り出した。夜空には沢山の星々が瞬き、その光が海面に映る。まるで鏡合わせのような美しい景色に感嘆の声を上げてしまいそうになった。
確か姫様は地球の青い空と海を大変気に入られていた筈だ、教育係の青年にどうして空も海も青いのか、と尋ねていらしたのを今でも思い出せる。確か「大量の空気と水が光りを屈折させて青く見える」だったか?きっと姫様はあの想い焦がれていた青い空と海を見れただろう、だがこの美しい景色は見れなかったに違いない。
姫様……地球はこれほどまでに美しい場所です。あなたにも見て欲しかった……
だがそんな言葉と共に沸々と湧き上がるのはもう姫様はおられないという虚しさとその姫の命を奪った地球人への怒り……ここに来て良かった、感傷的な気分にはなったが一層自分が何を為すべきかを再認識できた。彼はコックピットハッチを閉じてモニターを見つめる。
「まずは味方と連絡を取るべきだな」
レーダーには反応は無い。出撃したばかりで故障は考えられないのでおそらくはレーダーに反応しない機体なのだろう。彼はモニター越しの風景からその味方機を探す。
辺りを見渡すとその味方は容易く見つかった。明かりが消え濃紺一色の町並みの中に巨大な影が一つ、まるで異物のように混ざり混んでいるのを視認出来たからだ。そのまま標準をあわせてオルティスの額部に備え付けられた望遠カメラでその機影を拡大する。
カメラ越しに現れたのは紫色の巨体だった。大型アームを畳み込み左右に四つずつ目を有したカタフラクト――
「ニロケラス……確かアルドノアドライブの能力は次元バリアだったな。成る程、道理でレーダーに反応が無いわけか」
ニロケラス……クルーテオ伯爵の食客であるトリルラン男爵のカタフラクトである。能力である次元バリアとは機体を覆っている《多次元変換力場》という防御フィールドであり触れた物体を多次元物質に変換して三次元空間から排斥する――という正直理解が及ばないような理論で働くフィールドだが、分かりやすく言えば触れた物は何でも吸収、消滅させる最強の
このバリアの前ではあらゆる攻撃は二ロケラスに届く前に消滅し、触れただけで相手を消滅させる……つまりこのバリアは最強の盾であると同時に最強の矛でもあるのだ。その恐るべき威力は所々に存在している抉られたような建物が物語っている。
逆に言うと二ロケラスにはこの盾以外の装備、火器は搭載されていない。その巨体を動かし、巨腕を振り回す事だけがあの機体の攻撃方法なのだ。
とにかく現状把握のためにも速やかに連絡を取るべきだ、そう判断した彼はニロケラスのパイロットに向けてレーザー通信を送るのだった。
その頃ニロケラスのコックピット内ではキノコのような特徴的な髪型の男トリルラン男爵が恨みがましい視線をモニターに散在している映像に向けていた。
彼はザーツバルム伯爵がクルーテオ伯爵の揚陸城に忍ばせていた息の掛かった部下であり、ネズミの抹殺という大任を任された人物だ。そんな彼が何故今現在何もせずに忌々しく画面を睨みつけているのか……その理由は十数時間前まで遡る。
揚陸城からスカイキャリアを駆って新芦原市に到着したトリルラント。彼はそこで待機していた”騎士の称号を得る事と引き換えに姫暗殺の実行役を買って出た同じ火星人”を予定通り自らの愛機で殺害。それによって無事任務は終了、と思われたのだがまだ一人女の子だけ残っていたのだ。
彼の機体ならその生き残りの少女をさっさと始末できたであろう。しかしその可憐な少女の姿に嗜虐心が働いてしまった彼はその恐怖で怯える少女をジワジワと追い駆け続けるだけで留めてしまった。
必死に自分から逃げ続ける少女を追い駆ける続けるという戯れ……だがその最中で彼は地球のカタフラクト部隊に遭遇。勿論そのカタフラクト隊は容易くに撃破したのだが交戦中に対象を保護、さらにはトレーラーに回収され、そのトレーラーにはトンネル内に逃げられてしまった。その上にザーツバルム伯爵からは厳しいお叱りの言葉、さらには命じられたのは残ったネズミの始末ではなく隕石爆撃までの監視…………名誉挽回の機会を与えられず屈辱を晴らせない事は彼の高すぎるプライドを大いに傷つけた。
「私の顔に泥を塗るとは、劣等人種共が……!!」
だが、はっきり言えば任務を果たせなかった理由は彼の傲慢さと嗜虐心のせい――つまりは自業自得なのだがそれを反省する気は彼には毛頭無い。怒りをバネに――――と言えば聞こえは良いが、ほとんど逆恨みに等しい感情で自分に抵抗し恥をかかせたあの連中を嬲り殺してやりたいと意気込んでいた。
「――ッチ!誰だ!こんな時に連絡を寄越す奴は……!!」
そんな苛立っている彼のコックピットに大きな音――レーザー通信の受信を知らせるアラームが鳴る。通信の相手はおそらくはザーツバルム伯爵、または形だけの上司のクルーテオ伯爵のどちらかだろう。その二人以外に自分に通信を送る人間に心当たりの無い彼はいつも通りの媚びるように上辺だけの礼に則った態度を示そうと彼は通信画面を開けた。
「トリルラン卿、お久しぶりです」
「なっ?!ク、クリム卿!!何故貴公が?!」
だが現れたのは全く予想外の人物――同じ揚陸城に住まう騎士クリムだった。
何故?どうして?沸々と疑問だけが頭の中に湧く。全く自分とは接点が無いこの人物が自分に連絡を寄越した理由を考えて彼は自分が思い浮かべる中で最悪の想像してしまって――――
「トリルラン卿。僭越ながらこのクリム、クルーテオ卿に許可を頂いてここに馳せ参じました」
その想像が現実のものになってしまった……
この状況はマズイ、と彼は内心焦り出す。自分は一応クルーテオ卿には”当地の責任者を拘束し姫暗殺の真相を明らかにする”という任を預かっているのだ。本来預かった任であるネズミを始末するところを誰か――それもよりによって我らの企みを知らないクルーテオ伯爵の腹心の部下に見られてしまったらそれこそ取り返しつかない展開になってしまう。だからこそ彼はそんな事にならないようにたった一人でこの新芦原市を訪れたのに…………
「それで責任者の確保はどうされました?報告はまだなのですが……もしまだでしたら微力ながらお手伝い致します」
有り難い申し出……だがこの事情を知らない男は自分にとっての厄介事の種に過ぎない、出来る事なら何も言わずに立ち去って欲しいぐらいだ。そんな感情を表面上は隠しながら答える。
「心配ご無用、私一人で事足りる。クリム卿は揚陸城に戻られよ」
本心では早々に立ち去れと言いたい所ではあるが流石にそれを言うのは体裁的にマズイ。だから普段目下の者に使うような傲慢な態度ではなくやんわりとした言い方をするトリルラン。だがクリムはその言葉に顔を顰める。
「お言葉ですが、悠長に構えている暇はありません。姫様の無念を晴らす事は急務、至急任務を果たすべきと存じます。勝手ながらお手伝い致します」
ーーッチ!そんな真面目臭い言葉に思わず舌打ちが出そうになるのを必死に耐える。自分は男爵で向こうは騎士、それなのに生意気にもこの小僧は説教を垂れる…!!
……だがこの男の言い分は間違っていない。こいつの目的は自分と違い姫の無念を晴らす、ただそれだけなのだから……おそらく何を言ってもこの男は退かないだろう、ならば――――
「……そうだな」
「では、直ぐにで――」
「慌てるでないクリム卿。これほど広い場所、無闇に探しても見つかる訳がないであろう」
ならばこの男を利用すればいい。この男の忠義を逆に利用して自分の都合の良いように動させれば……最悪こちらには奥の手があるのだ、必ず上手くいく。そう決意したトリルランは自信を持って目の前の男に語り掛ける。
「我が
ニロケラスの”鷹の目”、その策敵範囲の広さはカタフラクトの中では随一だ。その事は周知の事実……だからこれを口実に奴の動きをこちらが指示すればいい、言い分としても我ながら最もらしい素晴らしい出来だ、と自画自賛するトリルラン。だがしかし目の前の男は厳しい顔をしていた。
「…………つまり私はそれまで待機していろ、という事でしょうか?」
不服か?と尋ねれば、はいと毅然とした声を返す。そのまま顎を触りながら考え込むと強い意志を含んだ目でこちらを見つめた。その姿に嫌な予感が脳裏を掠める……
「私が奴らを炙り出します」
「何をするつもりだ、クリム卿?」
思わず尋ねてしまうトリルラン。その問いにクリムはさも当然、何でも無い風に答えた。
「二ロケラスの”鷹の目”が未だ捉えないとすれば隠れている場所として考えられるのは地下、もしくはトンネル内……それらに片っ端から探りを入れます。そうすれば奴らは出て来るでしょう」
なっ?!その言葉にトリルランは思わず身を乗り出してしまう。そんな事をされてはーーーー
「待たれよ、クリム卿!焦らずとも――」
「お言葉ですがトリルラン卿。姫様が亡くなってからもう一日が経とうとしています、悠長に構えている暇などありません。例え強硬策であろうとすぐにでも動くべきです」
御免と一言入れて丘から降り立たんとするオルティス。このままではこの男は本当にしらみ潰しに探すだろう。そうすればあのネズミに会うのも時間の問題、もしあのネズミが姫暗殺を目論んだのが火星騎士だという事をあの男に喋れば――――最悪の展開を想像するトリルラン。こうなればあの最終手段を使うしかあるまい、トリランは語気を強めて最も有効的であろう説得を試みた。
「私はクルーテオ卿にこの地を任されたのだ!我が命に従わぬとはクルーテオ卿の命に従わぬも同じぞ!!」
「そ、それは…………」
その言葉に明らかに狼狽えるクリム、思った通りの反応に内心ほくそ笑んだ。これがトリルランが考えた最も有効であろう手だ、この男は主であるクルーテオ伯爵に心酔している。正確には彼の騎士道に、ではあるが…………
ともかくそんな彼が伯爵の命に背く事はありえない、そう確信を持っていた彼の作戦は見事に成功した。それに実際トリルランは伯爵に”当地の事は任せる”と言われたので満更嘘ではないのだ。モニター向こうの男は依然不本意そうな顔はしているが自分に従うだろう。
「…………失礼いたしました」
では、とクリムが通信を切ると同時に一安心と息を吐くトリルラン。本当に扱い辛い男だった。だがこれで奴もこちらの命令には従うだろう……とは言っても自分の役目は子ネズミの監視、向こうもわざわざ地上に死に戻りに来る筈が無い。時間を確認すればザーツバルム伯爵が言っていた時間まで後数時間程……
『さて……彼奴らの命もそろそろか』
自分の手で葬れないのは残念だがこれで引き籠もっている子ネズミも刃向かった愚かな地球人共も木端微塵に消し飛ぶ……その様を想像した彼は狂気の笑みを浮かべるのだった。
「それじゃあ作戦通りに」
トリルランが覗いている画面の一つ……トンネル内には七人の男女がトレラーの近くに集まっていた。同じ新芦原市に通う高校生の界塚伊奈帆、カーム・クラフトマン、網文韻子、そして赤い髪にパーカーを羽織ったライエと名乗る少女、今時日本では珍しい北欧系の少女にその少女に付き従っている小学生くらいの少女。そして左腕を首から掛けた包帯で支えている女性、伊奈帆の姉の界塚ユキだ。
この七人、正確にはユキを除いた六人はあのカタフラクト――二ロケラスと戦うためにここに集まった。勿論ユキはそれを止めようとした、無謀だ、そんな事をする必要は無いと……
だけど伊奈帆の目が絶対に行くと言っていたから……姉であるユキはあの目をした伊奈帆は止められないと知っているから……だから不安だけど彼らをこの行動を見守る事にしたのだ。
何故?どうして?何が彼らをそこまで駆り立てるのか――その理由は――――
「オコジョの仇は必ず取ってやらねえとな……」
伊奈帆達の友達……起助が目の前で殺された。あのカタフラクトによって……
最期を見たのは伊奈帆だった。伊奈帆の姉である界塚ユキを助けようと車上に出た所を車から投げ出された。必死でその手を掴んだ伊奈帆だったが健闘叶わず手は離され後ろから追っ駆けて来たそいつに衝突すると同時に起助は消えてしまった。
あまりにもあっさりした最期……だがそれに反し、恐怖で涙を浮かべ絶叫しながら自分の手から離れ宙を舞う友達の姿が伊奈帆の脳裏にはまだ鮮明に焼きついていた。
だからこれは友達の弔い合戦――そのために彼らはあのカタフラクトに挑もうとしている。
だが相手はたった一機でカタフラクト隊を全滅させた化け物、これまで集めた情報から建てた作戦が本当に通用するかどうかは分からない……つまり彼らが今から行うのは無謀極まり無い戦いだ。
それでも彼らは絶望して自棄になった訳では無い。あいつを倒してみんな無事生きて戻る……それがオコジョに対するせめてもの手向けになると信じて、表情こそ変わらないが伊奈帆は意を決してここにいる全員に宣言する。
「僕らであの火星カタフラクトを撃退する」
だが彼らはこの時は知らなかった。この新芦原市という小さな町にあの紫色のカタフラクトとは別にもう一体の
敵が二体いる……だと(笑)原作以上に最悪な展開になる可能性が出て来ました!!果たしてどうなるのか……
でも伊奈帆がいるから何とかなる気がしない事も無いと言う……やっぱり伊奈帆君は凄いっすね!!
それでは次回の投稿も未定……ですが出来るだけ早くしたいと思います。最後まで読んで頂きありがとうございました。