「……これは」
博麗神社についた。が、今俺の前には長い階段がある。
「………飛ぶか」
楽をしよう。そう考え、力学制御装置を起動する。
推進力を使って、浮く。
「へー、お兄さん飛べたんだ」
とルーミア。
「まあな」
階段にそって斜めに上昇する。
歩けば苦労するであろう階段も、飛べば楽だ。すぐに上についた。
石畳に降り立つ。正面には木造の建物。ごく一般的な神社の様相だ。
「さてと、巫女とやらはどこかね」
とりあえず建物に近づく。参拝でもするか。
御手洗があったので、作法にしたがって手を洗う。
その後、拝殿へ歩き、軽く礼をしてから、賽銭を投入する───
ふと左から気配を感じて、そちらを見る。
「……は?」
赤い服をまとった少女が猛スピードで迫っていた。
「ねぇあなた!」
「ひぅ」
俺に触れるか触れないかの距離で急停止し、声をかけてきた少女に、若干驚く。
「な、なんだ」
「お賽銭を入れたのよね?」
「あ、あぁ」
そう返事すると、少女はおもむろに賽銭箱の中身を見た。まさか、こいつが博麗の巫女か?
「い、一円……これで一ヶ月、いやもっと持つ……」
「おいいま聞き捨てならないこと口走らなかったか」
いくらここの一円は価値が高いとはいえ、そこまで持たせるってどんな生活だ。
全体的に細い体はもしかして栄養不足か?
「とりあえず聞こう。あんたは、博麗霊夢か?」
「そうよ」
やはりか、なら。
「よかったら、これを」
「……こ、これはお饅頭……しかも十二個……だと……?」
「え、えぇ……?」
動揺すごいな。饅頭ってそんなに貴重か?
「な、なにが……?」
状況にまるで追い付けていない様子のルーミアを見て、とりあえずこの恐らくキャラがブレブレであろう巫女を何とかする方法を考える。
「……何これ」
どうにもならなくて、試しに斜め四十五度から軽く頭をコツンとしてみたら、巫女は正気を取り戻した。古いテレビかよ。
巫女は神社の裏の生活スペースと思わしき場所へ上げてくれた。
それで、巫女が出してくれたお茶を飲んでいるのだが……。
「……色、ついてるよな」
お湯だった。味が無かったのだ。微かにおぼろげに香りはあるが、それだけだ。見た目はお茶なのに。
客に出涸らしを出さなければいけない経済状況って何なんだよ。
当の巫女は俺が持ってきた饅頭を一つ、幸せそうに食べている。
というか凄く大事に食べてるな。話しかけづらい。
「………」
左を見るとルーミアが饅頭を頬張っている。
「………巫女さん」
饅頭を食べ終わったのを確認して、話しかける。
「何よ?」
「俺がここに来た目的なんだが……」
「ああ、外に戻りたいの?」
外、とは恐らく幻想郷の外のことだろう。
「いや、違う。幻想郷についてと、スペルカードルールについてを聞きに来たんだ」
「あら、そうなの?」
「ああ」
「なら、説明してあげるわ。まず、幻想郷についてだけど」
巫女の説明を要約すると、まず幻想郷は、外で存在できなくなった、妖怪や神、人間などの住む場所だという。幻想郷と外は、博麗大結界というもので仕切られていて、往き来する手段は限られているらしい。
「なるほどな………」
あのとき、すでに俺は外で存在できなくなっていたのだろうか?だから、ここに吸い寄せられた?
「理解できたなら、次はスペルカードルールについてね」
巫女が再び説明を始める。
説明によると、スペルカードとは、あらかじめ決めた技の名前を記したカードのことだと言う。
そして、スペルカードルール、弾幕ごっことも言われるそれは、歴然とした力の差がある妖怪と人間が対等に戦う、または強い妖怪同士が力を出しすぎないように戦うための決闘ルールだとのこと。あらかじめその戦いで使うスペルカードの数を決めておき、お互いにスペルカードを使って撃ち合うのだそうだ。スペルカードは基本的に、相手を殺さない程度の威力で作る、とも言っていた。
勝敗は、どちらかの体力が無くなる、またはどちらかのスペルカードが全て攻略(つまるところ回避しきる)された時につくらしい。
「ふむ」
戦闘という形式を取りながらも、いちおうの平和的解決手段になっている、ということか?
「あと、スペルカードは技の美しさも競うの」
「技の美しさ、ねぇ」
遊びや競技の類だな、まるで。
「スペルカードとやらは、俺でも作れるのか?」
「そうね。相手を殺さなければだいたいどんな技でもいいから、貴女でも作れるわね。………貴女は霊力もあるみたいだし」
「霊力か」
「人間が弾幕を作るなら、普通は霊力を使うわね。貴女は結構な弾幕を作っても大丈夫なくらいは持っているわね」
「そうか」
話を一度終える。左を見ると、ルーミアが机に突っ伏して寝ていた。
「………ところで、二つ聞きたいことがあるのだけれど」
「なんだ?」
「まず、貴女の名前は?」
「ああ、言っていなかったな。俺はルート・フォンクだ」
「ルート、っていうのね。ならルート。何故ルーミアを連れているのかしら?」
一瞬理解ができなかったが、すぐに、人間が妖怪、それも人を喰う類いを連れているのはおかしいことに気づいた。
「こいつが襲ってきたから、気絶させたら何かなつかれたんだ」
「気絶?」
「こいつを使った」
ホルスターからパターを抜いて、霊夢に見せる。
「………何これ?」
「レーザーを撃つ道具だ。非殺傷モードもある」
「そんなものがあるのね、外には」
「この星のじゃないけどな」
「え?じゃあ、月?」
「月?ああ、ここの衛星か。いや、そこよりも恐らく何億倍は遠いな」
空間跳躍でなければ、まず行けはしない。
「なにそれ。想像つかないわね」
「普通に行ったらつく前に死ぬな」
「そう」
「それにしても、どうやって当てたの?」
「早撃ちしただけだ」
「こともなげに言うのね……。霊力量もあるし、普通ではないわね、貴女」
「そうだろうな」
それにしても、さっきから巫女の『あなた』に違和感を感じる。
「ところで博麗」
「何?」
「一応言っておくが、俺は男だからな」
「……そう」
目を丸くしていた。やはりか。ああ面倒臭い。
「意外すぎて驚いたわ」
そうだろうな。本当にこの容姿には困らされる。
「それはさておき、貴方、霊力を使えるのよね?」
「ああ、そうらしい」
「具体的に何が出来るの?」
なるほどな、それなら。
「外で見せる」
「わかったわ」
そういえば、さっきからルーミアが静かだな、と思ったので見てみると、ルーミアは机に突っ伏して寝ていた。そっとしておくか。