大して話は進んでいませんが、どうぞ。
「…ん?」
食器を片付け終え、居間でくつろいでいるとコンコン、という音が聞こえてきた。
玄関か。誰だ?
「いま行きますよー」
と言いつつ、玄関へ。
扉を開ける。
「妹紅か。上がっていいぞ」
「ああ。お邪魔するよ」
「ここは慧音に?」
「そうだよ」
とりあえず、居間へ。
「まだ家具とか買ってないのか」
「ああ」
昨日買ったのは、とりあえずの食器を数枚、今日と明日のぶんの食材だけだ。
「今日はどうするんだ?」
「今日からしばらくは、家具を揃えたりだな」
さすがに机もなにもないのでは、生活しづらいからな。
「机もないもんね」
「そういうことだ。とりあえずは机と座布団でも買いに行くかな」
外を見る。少し落ちたが、まだまだ日は高い。
「今から行くの?」
「そうしようと思っていた」
「なら私も行くよ」
ついてくるようだ。
「わかった。じゃ、すぐに行こうか」
「うん」
妹紅と共に家を出る。
「座布団はともかくとして、机はどうやって運ぶ?」
「担ぐさ。木製の机くらいならどうにかなるだろう」
「担げるのか?」
「ああ」
「そんなふうには見えないけどね」
「まぁそうだろうな」
この容姿じゃそう取られるのが普通だろう。
「とりあえず、机から行くぞ」
「どの店かわかる?」
「わからん。歩きまわってれば見つかるだろうと思っていた」
「まぁ見つからないことはないと思うけどね。私は知ってるから、案内するよ」
「そうか。ありがとう」
「いいよ。さ、行こう」
「ああ」
「ふむ…」
家具職人の店で売っている机は、いわゆるちゃぶ台のようなものだ。
大きなものから小さなものまである。
「これにしよう。幾らだ?」
「それならこのくらいだな」
金を数えて渡す。
「まいどあり」
机を持ち上げ、店を出る。
「いいのがあったみたいだな」
「ああ。とりあえず置きに帰ろう」
「さて、次は?」
「座布団はとりあえず買いたいが…。ところで妹紅、夕食は食べていくか?」
「そんなに遅くなるかな?」
妹紅の言葉に、空を見る。
日の高さから考えると、3時くらいか。
「ならないかもな。礼として食事を作ろうか、と思っていたんだが」
「ルートの料理か。食べたいな」
「なら、色々と見て回るか。そうすれば、腹も減るだろう」
「そうだね」
さて、どこへ行くか。
「そういえば、ルート」
妹紅が話しかけてきた。
「ん?」
「ルートって、森の中で妖怪に襲われてた子供を助けたんだよね?」
「ああ」
「どうやって察知したんだ?」
「あー、人里の近くで大きな気配を察知して、そっちのほうに行った方がいい気がしたから行ってみたんだ。そうしたら、子供が襲われていてな」
今思えば、何故そちらに行った方がいいと思ったのだろう?
「人里から察知できるような、大きな気配?」
妹紅が聞き返してくる。
「ああ。妖怪が集まっていて、それをひとつの気配のように感じたんだ」
それにしても、あれほどの気配はかなり珍しいが。
「そういうのは、珍しいな」
やはりそうか。
「何かある、か?」
「さぁ。どうだろう?今はまだわからない」
「それもそうか」
警戒はしておくべき、か。
「それよりさ、ここの店の団子とお茶が美味しいんだ。食べてかない?」
「ほう?ならそうしよう」
答えつつ、夕食は何を作ろうか、とも考える。
「いい甘味だった」
「でしょ?」
「ああ」
空を見る。だいぶ日も傾いてきた。
「妹紅、そろそろ俺の家に行こう。途中で食材を買っていく」
「確かに、そうした方がよさそうだ」
「何が食べたい?」
「ルートの知ってる中で幻想郷では珍しい料理、とか?」
「幻想郷では珍しい料理、か。なら…」
カレー、とかだろうか。いや、あれは手間がかかるな。
そもそも、人里で売っている食材にもよるな。
「とりあえず食材を見て決める」
「わかった」
「小麦の粉末があるのか」
幻想郷の食文化は、米が主食だ。それゆえ、小麦粉などはないだろう、と思っていたのだが。
「それに、にんじん、じゃがいも、玉ねぎと。鶏肉もあるな」
あとは米も。
「なにか思い付いた?」
「ああ。シチュー、という料理を作る」
「シチュー、か。聞いたことないな。楽しみ」
店主に声をかけ、必要な食材を買う。
「よし。妹紅、行くぞ」
「ああ。すこし持とうか?」
「いや、いい」
肩に米を担ぎ、手ににんじんなどを抱え、歩く。
近い道を通ったので、さしてかからずに着いた。
「よし。妹紅、待っててくれ」
「わかった」
さてと。久しぶりだが、美味く作れるだろうか。
「…ふむ。よし、これでいいな」
満足行く味に出来た。
皿によそいでから、焼いておいた保存食のパンを別の皿にのせ、持っていく。
「出来たの、ルート」
「ああ」
ちゃぶ台に置く。
「おお…。これは、今までにない感じだ」
「幻想郷の食文化とはだいぶ違う料理だな。ご飯のかわりに、このパンを食べてくれ」
「わかった。どうやって食べる?」
「シチューはこのスプーンですくって食べる。パンは基本は手づかみで食べるものだな。手でちぎって食べるんだが、シチューに浸けたりしても美味しいぞ」
「そうなんだ…。じゃあ、いただきます」
「いただきます」
まずはスプーンで一口。自分では美味く作れたと思うが、妹紅の口に合うだろうか。
妹紅も、俺に倣ったように一口。
「…」
もう一口。
「…うん、いいな、これ。食べたことのない味だけど、美味しい」
「それならよかった」
杞憂だったようだ。
幻想郷においては、和食とよばれるものが主流らしい。
洋食は珍しいなら、それで金を稼ぐことも出来るかもしれないな。
「御馳走様。美味しかったよ」
「こういう料理が食べたくなったら、また作ってもいいぞ」
「本当に?なら、その時はお願いね」
「ああ」
妹紅を見送った後、俺は寝袋を置いて寝転がりながら、色々と考える。
まずは、金。
今持っている分で当面は暮らせるだろうが、使うばかりではいけない。
先程、料理で稼ぐことも考えた。
妖怪退治もいいかもしれない。
そのうち誰かに相談してみよう。
さてと、寝るか。