ストレイドで飛び立って数分。
眼下に、町、いや、里と言ったほうがいいか。
とにかく、それが見えてきた。
見たところ、壁のようなもので周りを囲われている。
入口的な物もあった。
少し離れた所に、機体を降ろす。
機体から降りて、最低限の荷物を持ち、機体の光学迷彩を作動させてから、スタンドアローンで離陸させる。
これで、呼び出したらすぐに来るだろう。
さて、行くかと考えたところで、でかい気配を察知する。
「む、近いな」
なんだ、この気配。嫌な予感がする。
この里ではなく、そっちに行ったほうが良さげだ。
取り敢えず、そちらへ進む。
まだ真っ昼間だが、変な感じだ。
その気配は、森の中にあるらしい。そのまま踏み込むと、もうひとつの気配が。人里あたりからすでに察知できた気配より弱いあたり、襲われているかもしれない。そもそも、その大きい気配も近づくにつれ、沢山の気配だということがわかった。
取り敢えず、駆ける。
すると、子供に何やら変なのが群がっているのを見つけた。妖怪、なのだろうか。
見たところ、怪我などはしていない。遊んでいるうちに迷い混み、妖怪に襲われそうに、といったところだろうか。間に合ってよかった。
駆け寄ってその子供を、抱えあげる。周りに目を走らせても、持ち物らしき物はない。
来た道を、駆け戻る。行く手を塞ぐものは、パターの非殺傷ビームで無力化する。
人里には、あまり苦労せずに戻れた。
「ふう」
抱えていた子供をおろす。
「あ、あの」
その子供が、話しかけてきた。
「ん?」
「た、助けてくれて、ありがとう」
おお、偉いな。しっかり礼を言えるとは。
「どうってことない」
そういうと、その子は、ありがとう、ともう一度言って、人里のなかへ走って行った。
「さてと、次は……」
後ろに向き直る。
さっきから、
「居るんだろう?出てきたらどうだ?」
すると、なにもない空間に隙間のようなものが開き、これまた綺麗な少女が姿をあらわす。金髪に白い肌。
「気づいたのね」
「ああ。さて、何の用かな?」
「貴方、外来人?」
「ああ、たしかにここではないところから来たな」
「どうやって来たの?」
「空間跳躍さ」
「空間跳躍?」
俺は、その女性に空間跳躍についての説明をする。
「まぁ、瞬間移動をする技術とでも考えてくれ。」
「ふうん、それは、結界に何の影響も無しにここに来られるの?」
「結界がどういった物かは知らないが、場所から別の場所への直接的な移動だからな。間に何があっても関係ないんだ」
今回は、一種の事故だが。
「つまり、出ようと思えば出られる、ってこと?」
「そうだ。最も、今のところ出る気はないけどな」
「………」
なにやら、品定めするような目で見てくる。
「とりあえず名前を聞こう。俺はルート・フォンクと言う。貴女は?」
「私は八雲紫」
少女は、素直に名前を教えてくれた。
「心配せずともいいさ。俺は、ただここに旅してきただけの人間の旅人だ」
「不老不死の人間?」
そう言われ、俺は少し驚いた。見ただけで看破されたことはないからだ。
「よくわかったな、たしかに俺は不老不死だ」
「何故、ただの人間が不老不死なのよ」
「そういう呪いをかけられたからだ」
「人を不老不死にするなんて、随分と凄いことをするものね」
「ああ、全くだ。最も、そいつは呪いをかけてすぐに死んだがな」
死ねない苦しみを味わうがいい、と言っていたな。
「貴方、霊力とか使える?」
「霊力?知らん。よくわからん力なら使えるが」
「どういうことが出来るの」
「身体能力の強化とか、かな」
後はエネルギー弾のようなものも出せる。
「霊力よ、それ」
八雲紫は納得したように言う。ここではこの力の概念があったのか。
この力、いざとなれば飛行だってできるが、そっちは個人用力学制御装置でやっているため、滅多に使わない。
「貴方、子供を助けていたわね」
「まぁな」
「貴方の武器は気絶させるだけ?」
「いざとなれば殺すことも出来る」
「そう」
八雲紫は少し考えると、こう言ってきた。
「じゃあ、私はお暇するわね」
「ああ」
八雲紫は隙間に入り、姿を消した。質問攻めだけか。何が目的だったのか。
しかし、掴み所のない雰囲気の少女だった。
老練な感じがしたから、妖怪なのは確かだろうが。
「………今度こそ、行くか」
俺は妙な疲れを感じながら、人里のなかに向かった。