目が覚めた。
寝袋から出て起き上がり、テントの外に出る。朝の涼しい空気。
「ふあぁ。……んーーっ」
軽く欠伸が出た。
朝日を浴びながら、伸びをして体を伸ばす。
清々しい朝だ。
さて、人里に行くか。そう思いながら、ストレイドを呼び出す。
頻繁に呼び出しすぎか。荷物の出し入れは減らしたい。
テントなどを仕舞ってから再び飛び上がらせる。
見上げながら思う。あれじゃ体のいい倉庫だな、と。
「よう」
里に入って少し歩いた。現在時刻は11時。
茶屋で緑茶を飲んでいたら、突然白髪の少女に声をかけられた。見た目がいいやつが多いな、ここ。
「なんだ?」
少女を観察する。頭に紅白のリボン。裾の広いズボンのようなものを履いている。
特徴的なのは長い髪だ。不便ではないのだろうか、と思うほど長い。
「あんた?慧音が言ってた女男な外来人って」
女男、ね。あながち間違ってはいないな。
「まぁ、外来人なら、俺だな」
「へぇ、本当に男なんだ。変わってる」
「初対面のやつに、いきなり変わってる、か?」
「おっと失礼。私は藤原妹紅だよ」
「ルート・フォンクだ。よろしく」
「ああ、よろしく」
初対面なのにこれとは。気さくなやつだな。気楽でいいが。
「隣いい?」
聞いてきたので、頷く。藤原妹紅は隣に腰かけた。
「何故俺に声をかけた?」
問いかける。
「なにやら只者じゃない感じがするって慧音が言ってたからね」
「そうか」
今の言葉から察するに、こいつは慧音の友人か。
「で」
藤原妹紅は、こちらを見ながら言った。
「あんた、戦えるの?」
「は?」
「いやさ、腰につけてるそれ、武器だろ?」
パターのことか。そういえばおおっぴらにホルスターで携行していたのに、誰にもそれを指摘されてないな。
「まぁ、そうだな。戦える」
ここではどうか知らんが、腕には覚えがある。
「やっぱりか」
「そうだ。……ところで藤原」
「あ、妹紅でいいよ」
「そうか。なら俺もルートでいい。で、妹紅、貴女は妖怪なのか?」
なにやら人間離れしたものを感じたので、問いかけた。呼び捨てをしたが、不思議と抵抗を感じない。
「いや、人間さ。どうしてそんなことを?」
「ここじゃ人間と妖怪の区別が見た目ではつけられんからな」
「ああ、確かにそうかも。でも」
「む」
「私は人間だけど、不老不死だ」
爆弾発言だ。いたのか、俺以外に。
「………俺もだ」
「は?」
わけのわからない、という妹紅の顔。
「俺も、色々あって、不老不死だ」
「………本当?」
「ああ」
妹紅が、顎に手を当て、考えるような仕草を見せる。
「……むぅ、これは予想外だ」
「そうだろうな。不老不死なんてそこらにはいないだろうし」
「そう、だから驚いた」
「こっちもだ。まさか不老不死の人間が他にいようとはな」
他にいるのは俺も予想していなかった。
「まぁ、そこは大したことじゃない」
「確かに、大したことじゃないんだけどね。……歳、聞いても?」
「30だ。そっちはもっと生きていそうだな」
「あら、勘いいね。私はもう1000は生きてる」
1000か。途方もないな。
「そうか、なら妹紅は人生の大先輩、ということになるな」
「気にしなくていいよ。柄じゃない」
「わかった」
何故か妹紅とは話しやすい。共通点があるからか。あと、妹紅の気さくな雰囲気故か。
「ところでルート。夜はどうやって越した?」
「里の入口近くで野宿だ」
「ああ、ここには宿はないからね。そこでなんだけど、慧音に相談してみたらどうだい?」
「む、何故だ?」
「慧音は人間好きでね。外来人にも優しいから、言えば部屋くらい貸してくれるんじゃないかな」
「ん、人間好き?」
人間ではないような言い方だ。
「あぁ、慧音は半妖なんだ」
「なるほど」
「とにかく、言ってみれば?」
「そうしてみるよ、ありがとう」
「ああ」
茶を飲み終わった。立ち上がる。
店主に、ごちそうさん、と声をかける。代金は払ってある。
「じゃあな」
と妹紅。それに対して俺は
「ああ、またな」
そう返し、歩き始めた。