人里を歩く。妹紅にはああ言ったものの、俺は慧音がどこにいるか、とかそういうことは一切知らない。
「むぅ……」
なので、適当に歩き回っていた。
途中、昨日の蕎麦屋で昼食を食べ、今の時刻は2時。
「あ、いた。おーい」
再び妹紅に声をかけられた。その横には慧音。
「妹紅か。また会ったな」
「おう。それよりルート。慧音にまだ相談してないんだってな」
「寺子屋にいるかと思ったが、場所がわからなくてな。それで、慧音さん」
「ああ。妹紅から聞いたのだが、寝床もないそうだな。部屋を貸してあげるから、うちに来るといい」
むぅ。昨日会ったばかりの慧音に部屋を借りるのも何か気が引ける。だが、慧音本人が貸してくれると言っているのだから、いいか。
「……では、お言葉に甘えさせてもらうよ。すまんな、昨日会ったばかりなのに」
「謝らなくてもいい。困った時はお互い様、だよ」
そう言ってくれた。いい人だな、慧音は。
「ふむ、なら、何か俺に手伝えそうなことがあったら言って欲しい。少しでも礼がしたい」
「わかった、そうさせてもらうよ」
頷き、今度は妹紅に言う。
「妹紅にも礼を言わせてもらう。おかげで助かった」
すると、
「いいっていいって。同じ不老不死なんだし、何かの縁ってやつだよ」
「不老不死の者同士の縁、か。奇妙な縁だな」
と慧音。まったくもってその通りだ。
「では、改めてよろしく頼む。慧音さん、妹紅」
「ああ、よろしく。私のことも呼び捨てで構わないぞ?」
「よろしくな」
慧音と妹紅にそう返された。
ようやく寝床にありつけて、安心した。やはり寝るのは屋内のほうがいい。
「では早速だが、うちに案内するよ」
「ああ、頼む」
そして俺は、慧音について寺子屋へ向かった。
寺子屋はかなり大きい建物だった。
慧音曰く、この里唯一の寺子屋だとのこと。だとすれば納得だ。
そういえば今日は休日なのかと聞いたら、そうだと言われた。
寺子屋内の部屋の1つに案内される。
そこそこ広い部屋だ。
「ここを自由に使ってくれ」
「ああ、ありがとう」
「夕食の時間になったら呼ぶよ」
「ああ、それなら支度を始める時に呼んでくれ。料理は出来る」
「わかった」
慧音はそのままどこかへ行った。
俺は部屋に入る。襖を閉めて、座布団に座る。
「ふぅ……」
まさか部屋を貸してもらえるとはな。驚きだ。まぁ、ありがたいから口には出せないが。
そういえば……
「………」
慧音の頭に乗っている帽子。見たところ本当に乗っているだけだ。
何故落ちないのか。今度妹紅にでも聞いてみるか。本人に聞くのは何か駄目な気がする。
そう結論付け、少しの間ボーッとする。
あ、そうだ。この部屋は自由に使っていいと言われたのだから、荷物を置いておこう。ストレイドをいちいち呼び出すのもあれだし。
だがまぁ、それは夕食の後でもいいだろう。取りに行っているうちに支度を始められても困る。恩返しとしては不足かもしれないが、手伝わなければ気が済まない。
やることもないので、そのままボーッと待つ。
しばらくして、慧音がきた。
「ルート、そろそろ夕食の支度を始めるぞ」
「わかった」
立ち上がり、慧音について行きながら、さて、何を作るのかな、と考えていた。