クロスアンジュ イレギュラーと熾天使の輪舞   作:ヌオー来訪者

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 暇潰しにガンブレ2でセラフもどきを造ってみたものの、あんまり強くないという罠。
 ヴィルキスもどきの方が圧倒的に性能が良いって言う……orz
 柄を金色に刀身を水色にし月光気分でGNソードⅢをぶん回す日々が今日も続く……


 もう大体本作の流れは決まりました。但し、ガンダム成分(逆シャア+α)が強くなってしまいますが。


第11話 Under the sun

「アイツもヴィルキスも見つかんないすねぇ……」

 

 アンジュ捜索を開始して数時間が経過した。もう日が沈みがかっており空は茜色に染まっていた。捜索ヘリの燃料補給も兼ねて一度捜索ヘリが帰投し、ヘリポートでエルシャとミランダで近くの壁に凭れて補給を待っていたリオスはぽつりと溢した。

 隣に居たエルシャはリオスとミランダにサンドイッチの入った籠を差し出すと、それをリオスはその中の一つを無造作に取り出して中身を確認せずに一口頬張った。中身は好物の卵サンドで、中々美味しかった。

 ミランダはハムカツサンドだったようだ。

 

「無事だと良いんだけれどね……」

 

 エルシャもアンジュの身を案じているようで、心配げに海に視線をやった。あの広い海の何処かにアンジュとヴィルキスが居る。そう思うと気が遠くなりそうだった。放っておけば間違いなく溺死してしまうだろう。だが、司令曰く、『死体でもいいから探し出せ』との事で全力を挙げて捜索に回っている。

 ハムカツサンドを頬張り飲み下して、ミランダは口をぽつりと開いた。

 

「もう、4時間経ってるし……無事じゃないかも」

 

 何処かに流れ着いていて欲しいが、そのまま海を漂っている可能性だってある。もしかしたら今頃魚の餌になっている可能性だって否定できない。

 3分の1以下の可能性を思うと気が滅入りそうである。

 

「まぁ、生きていようがいなかろうがそれでも回収するのが俺たちの仕事だしね……無事であるに越したこたぁ無いけど」

 

 ふと、夕日に当たってオレンジ色に染まる海を見てみる。そして唐突にあの海はどれだけ深いのかと縁起でもない事を考えてしまう自分に軽く嫌悪感を覚えた。

 

 

 再出動しても、アンジュ機は見つかる事は無かった。太陽は完全に沈み切っており、月灯りが天を一番高い場所から照らしている。ヴィヴィアンとミランダ、リオスは眠気と疲労と戦いながら、望遠鏡でヘリが灯りで照らした場所を覗いている。

 流石にミランダは年齢的に身体に毒だろうと思い、リオスは立ち上がってミランダに手を差し出した。

 

「お代わり。子供はもう寝なさい」

 

「ちょっ!? あたし子供扱い?」

 

 余計なひと言さえ言わなければすんなりと変わってくれたものを、ミランダは拗ねて望遠鏡を離さなかった。それを見ていたエルシャは「あらあら」と保護者の如く微笑む。

 

「座って寝とけ。その年で夜更かししていたら体に毒だぞ」

 

「……お断りします」

 

 子供扱いされた事が癪に障ったか、ミランダはリオスの要求を拒否して、望遠鏡で下を見る事に再び集中し始めた。リオスは大人気なく似合わないふくれっ面で再び席に着き意味も無く天井を見上げた。

 ミランダには意地が有った。捜索開始前に、ココから必ず助け出してあげてと言われているのだ。だから引き下がれない。諦められない。小さい頃からずっと一緒に居た親友と言える人間の頼みなのだから。それと、8ぐらい違うだけではないか、その癖偉そうにして。と言った子供扱いされた事への反感もあった。

 

 捜索開始から約12時間。水没したままならばとっくの昔に溺死しているだろう。だが、整備員のメイ曰くパラメイルは浮き上がるように設計しているはずなので何かに引っかかったままでなければ何処かで浮いたまま流れているであろうとの事だ。

 リオスは、流石に睡魔に勝てずにうとうととし始めたミランダから、望遠鏡を取り上げた。

 

「もう休みな。眠くて見落とされた困る。代わりに朝は頑張って貰うからさ」

「……分かった」

 

 渋々と引き下がり、機内の椅子に座るミランダを見届けると、リオスは外を望遠鏡で覗き込んだ。

 

―――さぁて、かわいこちゃんは何処へ流れたのやら。

 

 ちょっと軽薄な男を脳内で演じて気持ちを楽にしつつ闇に染まった海と睨めっこを始めた。

 

 

―――アンジュを探し始めて何日目だろうか。あぁ、3日目か。

 

 リオスは溜息を吐きながらヘリコプターの窓から身を乗り出して昇ったばかりの太陽と反射してきらめく蒼い海面を望遠鏡で覗き込んだ。サリアも疲れた表情をしてヘリを動かしているし、ミランダとシエナは一日目程の元気さは失っており諦め半分の表情で外を覗いていた。

 

「3日目……あの娘はもう生きてないかもね……」

 

 シエナの呟きは誰の耳にも届く事は無く風の音と共に消えていく。だがヴィヴィアンとエルシャだけは別だった。エルシャはいつも通り落ち着き払ったようにココアの入った紙コップをリオスたちに渡している。そしてヴィヴィアンは相変わらず能天気な様子でヴィルキスに回線を回して通信を試みていた。

 

「アンジュさん応答願いまーす。死んじゃってるなら死んじゃってるって言って下さーい」

「いや、死んでたら話せねーだろ」

 

 不謹慎極まりないヴィヴィアンのやけくそ混じりの喋りにリオスは若干苛立ちながら突っ込むとヴィヴィアンはてへぺろと言わんばかりに「あ、そうだった」と後頭部を掻きながら言った。

 通信さえ繋がれば居場所の特定も容易となるのだが、突然煙を吹いて墜落し思いっきり水没してしまった事やドラゴンと取っ組み合ったりした為それらはお釈迦になっている可能性が高いと整備員のメイは言った。

 

「……アイツにサバイバル能力が有れば良かったんだが」

 

 リオスの呟きに近くで聞いていたミランダは力なく苦笑した。アンジュが元姫である事は周知の事実だ。もし、何処かに流れ着いたとしても毒蛇にやられているか、毒キノコ食って死んでしまっているか、お上品すぎてそのまま餓死するかの3択しかこの場に居る人間には思い浮かばなかった。

 人が住む場所に漂流してもノーマである彼女に居場所は無いし、直ぐに見つかったりして御用となりアルゼナルに戻される筈なので人が居る場所に行った可能性は無いと思われる。

 この場が諦めムードに染まり切りかけたその時―――ノイズ混じりながらも通信が繋がった。

 

「アンジュさん応答願いまーす。死んじゃってるなら死んじゃってるって言って下さーい」

『こちらアンジュ。生きてます』

「え? 嘘……ほ、ホントにアンジュなのォ!?」

 

 そして返って来たのは紛れも無いアンジュの声。ノイズが入っているが間違いなくアンジュだった。一連の会話を耳にした操縦席にいたサリアとメイが眼を見開いてヴィヴィアンたちの居る後ろを向く。

 リオスたちも、窓から離れてヴィヴィアンの持って居る通信機に耳を傾けた。

 

『救助を要請します』

「了解!」

 

 ヴィヴィアンの返事の後、回収ヘリはヴィルキスの居場所を割り出した。通信が出来たのは僥倖だった。暫くしない内に砂浜で横たわるヴィルキスと、その上に乗って立っているアンジュの姿を見る事が出来た。

 沈んだ表情の面々は一気に晴れて、ほっと一息。

 

 何故生きて居られたのかリオスとしては気になる所だったが、今は彼女の生存を素直に喜んで置こう。

 

 

 

 

 

 どれだけの時間が経ったのだろうか?

 

 青年はとあるコックピットの中で操縦桿を握りながらそんな事を考えていた。

 

 最後に生き残った仲間であった者が死んでから、ずっと独りで孤島で燻っていた。まるで気が狂いそうな感覚を覚えながら。この世界ではマナが使えない人間を排除し、迫害している。そんな世界で青年、タスクは生きる事は出来なかった。

 タスクはマナが使えないのだ。

 

 青年は仲間と共にノーマを解放し、マナに支配された世界を破壊、変革するべく戦っていた。だが、戦力では圧倒的に不利で、じりじりと追い詰められて仲間を失っていった。そして……最終的には独りだけになってしまった。

 こんな状況でどう抗おうと言うのだ。世界は、圧倒的な力を以て自分たちを押し潰した。それだけの力を持つもの相手に一人でどうしようと言うのだ。

 

 諦めの心が支配するも自分で命を絶つほどの勇気も無く、ただ孤島で一人何もせず燻っていた。何もしない、というのも一種の自殺のようなものだ。緩やかに、少しずつ近づいて行く死。世界に抗う事もせずただ一人世界の片隅で人に知られる事無く死へと向かおうと燻って何時ものように、外を歩いていたある日の事だ。

 

 孤島の砂浜に流れ着いたものを見かけた。それは青年にとって見慣れたものであった。

 

 

 ヴィルキス。それは青年たちにとって希望の象徴たる存在であった。それに乗っていた少女は辛うじて生きており、その少女を助けたのは良かったのだが、念の為に手首を縛って、風邪をひかないように服を脱がせたのがいけなかったのか。

 突き飛ばされ、銃を向けられと散々だった。その際事故とは言え色々トラブルが有った為、彼女からの心象は最悪。拒絶されて逃げられてしまった。

 けれども、毒蛇に噛まれて雨の中でもがき苦しむ少女の姿を見かけて放っておけなかった。

 最初は微かに心の中に残っていた使命感がそうさせた。彼女を見捨ててしまえばヴィルキスに乗れる数少ない人間を失ってしまうと。けれどもそれと同時に強がっているだけのようにも見えたのだ。だから……放っておけなかった。

 

 最初は仏頂面で口をへの字にしていたが、接している内に徐々に態度を軟化させていって次第に様々な顔を見せるようになった。笑ったり、怒ったり、へこんだり。久々に人と話したこともあって彼女と言葉を交わす事は新鮮で楽しかった。

 彼女の存在は、青年にとっては大きなものになっていった。気が付けばたった一人でずっと生きてきていた青年にとって彼女は光のような存在へと変わって行った。

 

 惚れた弱み、なのかも知れない。

 

 笑えば可愛いし、怒れば怖いけどやっぱり可愛い。

 

 

 気が付けば、彼女に対する感情は好きに変わっていた。ある意味、使命感とは程遠い感情だったが、それが今の青年の起爆剤だった。彼女の為に何かしてあげたいと。彼女に必要とされたいと思うようになった。

 

「アンジュ……か」

 

 青年は出遭った少女の名前を呟く。また、会えるだろうか? いや、きっと進むべき道が同じならばきっとまた会える。だから今は―――もう一度動こう。世界を変革するために。 

 ヴィルキスがこの島に流れ着くより前に流れ着いた一回り巨大な機体、クラウドブレイカーという名の機体にタスクは乗り込んでいた。流れ着いた当時は小破していたが、有りあわせのパーツや、ここに流れ着くパラメイルの残骸を利用して改修する事が出来た。

 ピーキーな一面を持って居るものの操縦系統はパラメイルとさして変わらない為直ぐに操縦に慣れた。その上優秀な気密と、機動性と火力を持っており優秀な機体でもある。鈴のエンブレムが一体何を意味するのか分からないが、恐らくはノーマが作ったものなのだろう。

 

 後でアルゼナルに問い合わせてみよう。

 青年、タスクは操縦桿を握りしめて意を決したように呟いた。

 

「行こう、クラウドブレイカー」

 

 かくして雲を切り裂き空を駆ける真紅が、さんさんと輝く太陽の下で空へと羽ばたいた。嘗て変革者と敵対した機体が、今度は変革者として世界を壊すために。




 クラウドブレイカー量産型、パイロットと離れ離れになって見知らぬ男に寝取られるの巻でした。次回はモモカ登場回。

 最終回みましたがマルチエンディング想定していて正解だったかもなぁ……
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