クロスアンジュ イレギュラーと熾天使の輪舞   作:ヌオー来訪者

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 やはりアスランはおもちゃだったんだなぁ……と原作16話のクレーンゲーム見て思いました。


第17話 アナザー・センチュリーズ・エピソード

 リオスがレオナの墓を見ながら長考に入っていると、アラートが鳴り響いた。何事かと3人とも驚いて、ふと空に異変を感じて上を見上げると、ゲートが発生し無数のドラゴンが姿を現し、アルゼナル上空を舞っていた。

 

―――拙い。

 

 これがどれだけの緊急事態か分からない程3人は愚かでは無い。半ば反射的に格納庫に向かって3人とも走り出した。その道中でジルが総員にスピーカーを通じて司令室から指令を飛ばす。

 

『司令官のジルだ。総員聞け。第一種戦闘態勢を発令する。シンギュラーが基地直上に展開。大量のドラゴンが降下接近中だ。パラメイル部隊は全機出撃。総員は白兵戦用意。対空火器、重火器の使用を許可する。総力を以てドラゴンを撃破せよ』

 

 

 

 

 リオスは第9番格納庫に真っ先に向かい、ナインボール=セラフのコックピットに乗り込んで、各計器を起動させてから操縦桿を握った。

 

「第一中隊所属リオス、ナインボール=セラフで出ます!」

 

 水中カタパルトに押されてリオスが駆るナインボール=セラフは発進。そのまま水中から勢いよく浮上した。この感覚も中々久しいものである。纏い付く水をはじき飛ばし、ナインボール=セラフは両腕パルスを手近なドラゴンに放った。

 

【ドラゴンとの久々の戦闘だ。戦い方は忘れていないだろうな?】

「どうだろうねぇ!」

 

 問いかけるH-1を適当にあしらいながらリオスは機体をブーストさせた。その時―――ナインボール=セラフは赤い流星、若しくは弾丸となった。

 驚異的な機動力を以て、すれ違いざまにエネルギーブレードを以て切り裂く。肉眼では必死に追いかけなければ機体の姿を鮮明に捉える事は不可能だ。

 

『リオス、お前は第二中隊と第三中隊と連携してドラゴンを討て。第一中隊は落下した破片とドラゴンの死骸が発着場を塞いでいる事により出撃が出来なくなっている。撤去まで持ちこたえろ』

「了解!」

 

 ジルの命令を受けつつエネルギーブレードでドラゴンを一刀両断のもとに切り捨て、パルスガンで撃ち落とす。今回での撃墜ペースは何時もより速いものだった。部隊隊員としてでは無くワンマンアーミーとして動く方が危険はあるが撃墜速度は速いという事を久々に実感した。だが、兵士としてはあまり褒められたスタイルでは無いのには間違いあるまい。

 

【下からの奇襲だ、注意しろ】

「チィッ!」

 

 ドラゴンが下から高速で飛ぶナインボール=セラフの目の前に現れはしたが、リオスとH-1の対応は早かった。貫手をドラゴンの胴体に打ち込み、ナインボール=セラフの右腕がドラゴンの胴体に刺さった状態でパルスガンを発砲。奇襲してきたドラゴンは胴体に大穴を開けてから海の藻屑と消えた。

 

「さてと……」

 

 リオスは機体を動かしつつ他部隊が苦戦していないか見回すが、見た所心配する必要は無いようだ。第一中隊に限らず他の部隊も充分に練度が高い。非常に手際よくドラゴンを叩き落としていく姿が見えた。部隊の中には数機ゲシュペンストの姿もあり、どうやらアレの性能の高さも手伝っているようだ。

 ある機体はスプリットミサイルを放ち、ある機体はメガ・ビームライフルを放ち、ある機体はリッパーを投げつける。

 

―――流石ゲシュペンストだ。良い働きをしてくれる。

 

 これならばどうにかなる。そう、リオスが思った矢先だった――――――歌が、聴こえた。

 

「ん?」

 

 歌が聴こえたと同時にドラゴンはパタリと攻撃を止めた。そしてゲート近辺へと戻って行く。一体何事か。それはリオスに限らず他のメイルライダーや、司令部も呆然として歌を耳にしていた。戦闘中に歌など歌っているのは一体誰なのだ。

 

 その答えは――――――ゲートからゆっくりと足からゆっくりと地上界に降り立つ天女のように降りて来る。降りて来たのは、赤い人型機動兵器だった。

 

 形状からしてパラメイルの系統だろう。そして、近くには同型機と思しき機体2機と、ガンアークの姿があった。パラメイルでは無いとは言えガンアークを既に見ていたので驚きはあまり無かったが、パラメイルがドラゴン側にあると言うのは衝撃的な光景である。

 

 リオスの見立てではドラゴンは野生で人間を喰らう怪物という認識だった。だが、あの人工物の存在を考慮に入れたら、ドラゴンには知能があるか、裏で操っている元凶が居るという事か? その元凶がガンアークや、ライダーと思われる者が歌を歌っているあの紅いパラメイルだとしたら―――アレを倒すかライダーを捕えて尋問すれば―――だが何故かあの歌を耳にしてから胸騒ぎがして治まりを見せない。

 

「攻撃を開始します!」

 

 他の機体たちがガンアークに辛酸をなめさせられたこともあって敵と判断し、謎の歌う機体に向かって攻撃する為に機体を飛ばしていく。

 

―――しかしこの胸騒ぎは何だ? これは……一体?

 

 時間が経てば経つほどリオスの胸騒ぎは大きくなっていく。それはもう抑えきれない程に。この感覚はまるで一気に人が死ぬときの前触れの感覚に似ている……まさか!

 

「いかん! そいつには手を出すな! 離れろ!」

 

 叫んでみたがもう遅かった。

 歌の元凶たる機体のカラーが赤から金色に染まり、肩が変形するや否や―――

 

 変形した肩から竜巻が発生して目の前のありとあらゆる物質を分解し、そのままアルゼナルへと竜巻が向かい―――

 

 

 アルゼナルの約半分が抉り取るようにして消し飛んだ。

 

 

 

【想定外だ。こちらの損失は80%オーバー。早期の撤退を本機は推奨する】

 

 H-1が警告する中で、竜巻が何もかもを消し飛ばした跡の惨状をリオスは茫然自失とした表情で見ていた。リオスのナインボール=セラフは咄嗟に躱す事で事無きを得たが、生存機体は殆ど居らず、先ほど赤いパラメイルが放った竜巻がグレイブもゲシュペンストも消し飛ばしてしまった。―――なんだアレは。単体であれ程の力が発動できると言うのか。

 

【ここでの戦闘は無謀だ。撤退を推奨する】

「……相手が誰だろうと構わない、アイツは俺が潰す!」

【その感情に任せた突出は非効率だ】

「うるさいよ! 人間がこれを見て何も思わない訳あるものか!」

 

 リオスはH-1の制止を振り切り機体のアクセルを踏み、変形形態で赤いパラメイルに向かって突撃する。それに赤いパラメイルの僚機とガンアークはセラフを止めようとするも、赤いパラメイルはそれを手で制してから1対1でセラフと戦う態勢を取った。

 

「やるかよっ!」

 

 リオスは吠えながら、機首で赤いパラメイルのコックピットを貫こうとすべく最大全速で己の負担を顧みず、突っ込んだ。―――だが、相手はただの案山子では無い。僅かに軸をずらして、カウンターキックを放った。

 カウンターキックを喰らい、バランスを失い機体が落ちていく。それをリオスは歯を食いしばって機首を上げて水上ぎりぎりで持ち直してから、人型形態に変形し、頭上に居る赤いパラメイルを見上げた。蹴られた事で少々冷静になったが、これを抑えなければ今度こそアルゼナルはお終いだ。それだけは避けなければ拠り所を失ってしまうだろう。だから―――H-1のいう事に従って逃げる訳には行かない。

 

「あんたが隊長機かよ……!」

 

 ナインボール=セラフのレフトアームのエネルギーブレードを展開し、ライトアームはパルスガン発砲の準備を行い、ブースターに再度火を点けた。

 風を、空気を切る音がリオスの耳に入る。アムロ・レイたちみたいな細やかな動きは出来ないので速度で圧倒するしかない。

 だが、そんなナインボール=セラフの動きを読んだかのように赤いパラメイルは背中腰にマウントされた手持ちの銃剣付きライフルを取り出して応戦した。銃剣の刃部分とセラフのエネルギーブレードが衝突し、火花を散らす。

 赤いパラメイルの出力はヴィルキスに負けず劣らずだった。反応も良い事からライダーも相当の手練れだ。幸い相手は騎士道精神もあるのか、それとも相当の馬鹿なのか、逆にこちらを馬鹿にしているのか知らないが、1対1で向かって来ている。

 しかしながらIFの話になってしまうが下手したら先ほどの突撃で反撃を喰らって殺されていた可能性が非常に高い。

 

 H-1は相変わらず撤退勧告をしているが、リオスは一切耳を貸さなかった。

 

 一旦距離を離して、少し離れた距離を維持しながら両者は飛び道具を発砲する。ナインボール=セラフはパルスガンを、赤いパラメイルは銃剣付きビームライフルを。

 お互い一つも引くことなく撃ち合いが続く。

 赤いパラメイルは驚異的な反応で全弾パルスを回避し、一方でナインボール=セラフは装甲に掠った程度だが数発被弾していた。

 

【無謀だと言った筈だ。今の我々では倒す事など不可能だ】

「ええい!」

 

 一定の距離が空いた事で両者の動きが止まり、お互いの出方を窺いつつリオスは不利な試合運びに悪態をついた。しかも泣きっ面に蜂でドラゴンたちがアルゼナルに再度攻撃を開始している姿がモニターに映し出されていた。対空砲でかなりの数を撃墜しているようだが、物量ではあちらの方が上だ。早く隊長機を潰して指揮系統を混乱させなければこちらがやられてしまうのは明白だった。―――リオスは焦燥に駆られて機体のブースターに火を入れようとしたその時だった。

 

【味方機反応有り。数は1。ヴィルキスだ】

「アンジュか!?」

 

 アンジュならば実力的に信頼できるので、これは有り難い増援だ。しかし―――

 

「私よ」

「たっ、サリア隊長!?」

 

 返事をしたのはアンジュでは無く、サリアだった。それにリオスは驚愕したものの、アンジュが謹慎中だという事を思い出した。

 サリアの腕は実際に何度も見て来たので彼女の腕前は信用できるのだが、何故かサリアの乗ったヴィルキスの様子がおかしかった。アンジュが乗っていた時のような高機動性が損なわれており、下手したら重装備のゲシュペンスト並に遅く見える。まるでアンジュが初めてヴィルキスに登場した時と似ていた。

 セラフと赤いパラメイルとの戦闘を見ていたガンアークが邪魔をさせまいと飛び出し、サリアの乗っているヴィルキスと交戦を始めた。それでも尚、速度が上がらずアサルトライフルと必死にヴィルキスは放つが、ガンアークの動きも大概人外染みており、アサルトライフルの弾丸を機体を小刻みに動く事で数多き弾丸を散らせて被害を最小限に抑える。

 サリアは耐えかねて機体を人型形態に変形させて近接戦闘を行おうとするも、まるで古ぼけた機体の様にまるで変形しなかった。

 

 これはヴィルキスの整備不良か? いや、それは考えづらい。もしかしたらヴィルキスはアンジュでなければ駄目なのではないか。そうリオスが考え付いた所で、ジルから通信が入った。

 

『リオス、サリアを止めろ。奴は命令を無視してでヴィルキスに出撃している』

「なっ」

 

 ジルから知らされた事は信じがたい事だった。あの優等生気質のサリアが命令無視をしたとは信じがたい事であったのだから。

 ヒルダのグレイブが戦闘機形態でヴィルキスの隣に飛来して来た。ライダーであるヒルダの背中にはアンジュが乗っており、何やら文句を言い合っていた。だが、その様は友人が軽口を叩き合うのに似ていた。少し前の険悪な関係が嘘みたいだ。反省房で色々本音を話していたのがリオスが反省房に居た時は聴こえたのでそれが恐らく切欠だろうか。

 様子からしてアンジュが自分の機体を取り戻しにここへ来たようだ。

 

「サリア、私の機体を返して! アイツらは……私がやる」

 

 ヴィルキスの横にヒルダの機体が並ぶとアンジュがサリアに向かって返すように言うものの、サリアは首を強く横に振り拒絶した。

 

「うるさいっ! 私のヴィルキスよ!」

 

 普通ならば大人しく返却するものなのだが、サリアは珍しく頑なにヴィルキスをまるで駄々っ子の如く譲らなかった。一体なぜ彼女はヴィルキスに拘るのだろうか? 

 リオスには理解が出来なかった。

 サリアの駆るヴィルキスがふらふらとしながらガンアークのもとへと飛んでいく。それにガンアークは蠅を叩き落とすようにして手持ちのライフルでヴィルキスを殴った。

 

「拙いッ」

 

 リオスは慌てて落ちるサリアとヴィルキスを助け出そうとするが、距離が遠くて誤差で間に合わない。受け止める前に海に叩き落とされて死ぬのがオチだ。だが、一番近い位置にいたヒルダ機が落ちていくサリアのヴィルキス目掛けてアンジュを投下した。

 ヒイロ・ユイめいた無謀かつ滅茶苦茶な行動にリオスは絶句したのだが、アンジュは難なく無事にヴィルキスに捕まり、サリアの後ろから操縦ハンドルをサリアの手から離させた。これでどうにかなるのか? 否、すでに落下限界点を突破している。普通のパラメイルならば復帰に間に合わず海に墜落するのがオチだろう。――――――だが、アンジュは復帰を成し遂げた。通常のパラメイルとは一線を画す動きと出力を以て、だ。

 少々水没したが、浮上して再び空を舞う事が出来たのだから一応結果オーライである。

 

「リオス! 放るから拾って」

「えっちょっおまっ!?」

 

 アンジュに呼び掛けられるや否や、ヴィルキスの操縦席からサリアは放逐された。リオスは咄嗟に機体ナインボール=セラフの手を差し出し、サリアをどうにかセラフのアームでキャッチし、即座にセラフのコックピットに放り込んだ。

 

「アンジュめ……無茶苦茶をする!」

 

 アンジュの唐突な暴挙に腹を立てながら、サリアを狭いが空いているスペースに移動させる。彼女の目じりに涙が溜まっているように見えたが、そこは気にしている場合では無かった。

 赤いパラメイルがライフルのブレードを以てナインボール=セラフに斬りかかる。それを辛うじて躱すが、それと同時にサリアの悲鳴が耳元で聴こえた。

 

―――そうか、サリアが居たんだった。

 

 これでは何時ものスピードが出せないではないか。彼女はシートベルトもしていないし、Gへの耐性も怪しい。更に人が自分含めて1人用のコックピットに2人居るのでいつもとは狭い空間に居るので操縦をもし辛い。

 

「こん畜生!」

 

 ヤケクソにキックを放つと、想定外の攻撃だったのか赤いパラメイルは直撃を喰らい後方に大きく後退した。これでまぐれだが漸く一撃を入った訳だ。

 だが、これ以上長居は出来まい。少し離れて後退すると、入れ替わりにアンジュのヴィルキスと赤いパラメイルが対峙した。先ほどの動きが嘘のように暫く凄まじい速度での接近戦と銃撃戦を赤いパラメイルと展開する。まさに一歩も譲らぬ戦いにリオスは驚愕した。

 お互い一発も被弾していないという点では、リオス以上の戦いをしているであろう。付け入る隙は今のナインボール=セラフには無い。

 

 

 だが、このままの状況が続けば泥仕合だ。赤いパラメイルのパイロットはそう思ったのか、あの竜巻の前触れの歌を歌い始めた。

 今度アレを撃たれてしまえば今度こそアルゼナルはお終いだ。リオスは先にサリアをアルゼナルに降ろそうかと思っていたのだが、そんな事をやっている猶予は無いと判断しリオスは焦り両腕のパルスガンを構えて発砲するのだが、ガンアークに立ちふさがれてライフルの弾丸で相殺されてしまう。

 

 だが、アンジュとヴィルキスも黙っては居なかった。

 なんと、アンジュも歌いだしたのだ。

 ヴィルキスの装甲の色が驚くことに赤いパラメイルと同じように金色に染まり、赤いパラメイルも再び金色に染まっていく。そして両者とも肩部が変形してまるでそっくりな形態へと変化して竜巻を起こす砲門を解放した。

 

 まさか、ヴィルキスはあの赤いパラメイルと同型機だとでも言うのか?

 そうリオスは攻撃をせずに思考に耽っていると――――――両者とも、似たような竜巻を放った。

 

 

 

 

 それからどうなったのかはリオスは分からない。両者の放った竜巻が衝突した際に発生した光に呑まれたのは―――確かだが、それ以降の記憶が無い。光に自分は呑まれて死んでしまったのか、それとも……

 意識は、ある。だが、目の前には何もない。有るのは、まっさらな無の世界の中に立っているリオスだけ―――否。

 

 無の世界が突如として廃墟と化した街へと変わった。それはまるで良く出来たホログラム映像のようで、触れたり干渉する事は許されない。それを証拠に近くにあった破壊された乗用車に触れてもすり抜けるだけであった。

 周りには民間人と思われる者はひとりも居ない。代わりにあるモノは戦車や大破した乗用車ぐらいか。

 ふと、ブースターと羽根が動く音がした。それはどんどん大きくなってゆき、その音が最大にまで大きなったとき廃墟の中、3機の大きな影がリオスの頭上を通り過ぎた。

 

 ふと、それが何なのか確かめる為に空を見上げれば影の主が直ぐに分かった。それは、リオスにとって見覚えのある機体だった。パラメイル? 否―――ダンバインと、レイズナー、そしてウイングガンダム。全てロンド・ベル所属の機体だった。見間違いでは? とは一瞬目を疑いもしたがそれは紛れも無くロンド・ベルのものだった。

 

 廃墟の中で数体集まっていた量産型MSのリーオーの群れをウイングガンダムがバスターライフルで消し飛ばしてしまった。それからすぐに場面が変わり、ダンバインがハイウェイで発砲する戦車を剣で斬り捨てる。他の機体たちも様々な場所で戦っている姿が流された。

 

 それが終わると、場面が切り替わり様々な機体が要塞の中で何者かに向かって一斉射撃を行っているものへと変わった。中には旧式の赤いエステバリスや、ウイングガンダムに似た白い翼のガンダム、そして見た事のない可変戦闘機や、格闘戦主体と思しき見たことが無いガンダムも居た。

 それ以外はνガンダムやエルガイム、レイズナーなどと言った見覚えのある機動兵器の姿も映っていた。だが旧式のエステバリスの姿も有る事からどうも不可解な映像であった。

 

 

 また場面が切り替わる。この3つ目の場面にも白い翼のガンダムが居て、ブラックサレナ、可変戦闘機等が戦闘で荒れた市街地の上を飛んでいた。他にはサーフボードに乗った風変りな機体や、髪の毛の生えたマシン、果てはMSの何倍もある巨大な赤いマシンなどが、共に空を飛び、巨大な緑色の龍のマシンに向かって飛んでいく。

 

 

 最後の4つ目は、殆ど見た事のないものばかりだった。

 腕を異常なほどに伸ばす巨大なマシンもあれば、可変戦闘機の親戚と思われる機体の小隊が荒野の空を舞い、ヴィルキスに似た光の翼を形成させて恐ろしいまでの機動力で敵飛行機体を粉砕していくガンダムタイプ。胸に骸骨マークを刻んだガンダムや、俊敏な動きをする陸戦マシンや、異常な機動力を以てスピンキックを砲台型マシンに叩き込むマシンの姿があった。そして最後に仲間と思しき機体たちが集まって行き何かを見据えていた。

 

「幾つも存在する異なる歴史たちが紡ぐ物語。アナザー・センチュリーズ・エピソード」

 

 その映像にリオスが呆気に取られた表情で見ていると、何処からともなく声がした。それはまるで芝居掛ったかのような喋り方で、まるでそれは舞台で演じている役者のような声。

 何時の間にかリオスの目の前に見知らぬ金髪ロングの男が居た。声の主が彼だと何となく分かった。

 男はこの世のものとは思えない美しい顔立ちをしており、流れるような美しい髪やエメラルドグリーンの美しい瞳には、それはもう十人の女性が十人振り返るほどの美形であると、リオスはそう素直に思わざるを得ない程のものだった。

 彼は、リオスに続きを語り掛ける。

 

「どの世界にも例外は無く、人は過ちを繰り返す。地球の人間が喩え一つになろうともスペースノイドとアースノイドに世界は二分し100年以上にわたり争い合い、差別し殺し合う。それは例外と呼べる世界は存在せず、戦争・平和・革命の三拍子、終わらないワルツを有史以降変わる事無く愚かにも人間は踊り続けている。全く持って人間は愚かしくも悲しい生き物だ。そうだとは思わないかね? 偽りの革新者(ニュータイプ)君?」

「お前は―――誰だ?」

 

 男から発せられる息苦しいまでのプレッシャーにリオスは何となく感じた。この男は、危険だと。そんな恐れと恐怖を抱いていたリオスを見て男はふっと笑って答えた。

 

「私は―――調律者、とでも言って置こうか。過去の存在である君が真実を知った時、君は何を思うのだろうね?」

 

 男が挑発的にそう言い終えるとほぼ同じタイミングでリオスに見せた世界と、突如現れた男は消えていく。まるで霧が掛るように真っ白に。無に染まって行きそして―――

 

 

 

「―――っ」

 

 気付けばナインボール=セラフのコックピットの中に戻っていた。計器には一切の異常も示しておらず、まるで何事も無かったかのようだ。では、先ほどのは幻覚だったのだろうか? リオスの疑問に答えてくれそうな者は一人とていなかった。

【エネルギーチャージ完了。V-Driveシステムの状況、オールグリーン】

 その代わり、不可解な言葉をH-1が吐き出すだけである。まぁ、どうせ答えてくれないのは目に見えているのでメイたちに報告する為に内容だけは頭に記憶してスルーしておく。

 気付けばドラゴンと赤いパラメイルたちとガンアークはゲートに帰還していくのが見えた。そして時間も経たない内に全てのドラゴンと機体が帰って行くとゲートは閉鎖されて先ほどの騒がしさが嘘みたいな静寂さを取り戻した。

 

【ヴィルキスが赤の所属不明機の攻撃を同質の力で相殺。無効化した】

 

 リオスの呟きを聞いたH-1は事も無げに答えたが、それは二人が欲しく思っていた返答では無かった。ふと、肩に重さと柔らかい感触を覚えた。振り向くとサリアがリオスの肩に顔を埋めていたようだ。普通ならばギョッとする所だったが、泣き顔で有るのを見ると、どうも驚く気も失せてしまった。

 

「アンジュも貴方も違う……私とは……まるで」

 

 アンジュ乗っていた時のヴィルキスとサリアが乗っていた時のヴィルキスが動きもまるで違う事を思い知らされてショックをうけているようであった。それに対し自分がどうすればいいのか分からず、拒絶せずにそのまま機体を第9番格納庫にまでオートで飛ばした。もうこれ以上操縦する体力はリオスには残されてはいなかったのだ。

 そう言えば、とリオスはふと思いつき、リオスの肩に顔をうずめていたサリアに通信機の電源を落としてから問うた。

 

「……隊長。どうしてヴィルキスに拘るんです?」

 

 弱っている人間にそれを訊くのは死体蹴りに等しい行いだったが、気になって仕方が無かった。優等生タイプのサリアが命令を無視してまで何故あのようにヴィルキスに異常なまでに執着するのか? それがただ知りたかった。

 その問いにサリアは少し間を置いてから、埋めた顔を上げてからゆっくりと答え始めた。

 

「私にとってそれが全てだった。ヴィルキスに乗って、小さなころからずっと憧れていた人の役に立とうと思ってやれる事は何でも沢山やって来た。――――――けれど、ヴィルキスは動かせなかった。それなのに命令違反は日常茶飯事でそれを反省もしなければ脱走もするような、ちょっと操縦が出来て器用なだけの奴が軽々と動かして圧倒的な力を見せつけて! 私は一体これまでに何のためにやって来たのか……分からなくなった」

 

 ぶちまけられる感情にリオスは口を噤んで、最後まで彼女の話を黙って聞いた。彼女に人生のアドバイスをしてやれるほど人間は出来てはいないし、能力もありはしない。ナインボール=セラフに選ばれた人間が何者にも選ばれなかったサリアに何かを言っても逆効果なだけ。だから、最後まで聞いてやる以外してやれる事は無かった。

 生れついた才能に限ってはどうしようも無いのだ。自分がシャアたちに勝てない事と同じように。シャアとアムロは、そしてアンジュはスペシャルだったのだ。

 

「…………落ち着いたら呑みます? 愚痴を叩き合うというのも有りでしょう」

 

 溜まった鬱憤や辛さは酒の肴にして吐き出すに限る。サリア自身未成年だが、ここアルゼナルではそこら辺の制限は掛けられていない。緩すぎるというかなんというか……まぁその緩さにリオスは感謝していた。

 

「発想がまるで仕事に疲れた中年サラリーマンね。まぁ……悪く無いかも知れないわね」

 

 呆れられたが、まんざらでも無くサリアは泣き笑いで返した。だがリオスは―――

 

「お……俺が中年だと……俺が中年……俺が中年……俺が中年……嗚呼、永遠の窓際族……」

「めんどくさっ! というか最後の何!?」

 

 中年サラリーマンと同列の扱いを受けて落胆して虚ろな目でうわ言か壊れたラジオのように同じ言葉を呟き始めた。それにサリアはそんな面倒くさいリオスに呆れながらも、少々気が楽になった事に内心感謝するのだった。




※お酒は日本では二十歳になってから
 因みにドイツではお酒は16からでも良いそうですよ。

 今回はACEOPラッシュ回でした。ACEP? 知らない子ですね……(そもそもフロム特有の変態OPがないしストーリーも無いのにどうしろと)
 ACEシリーズのOPは何度も見たくなる不思議。

 次回は原作13話ラストまで行けたらいいなと、思っております。
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