クロスアンジュ イレギュラーと熾天使の輪舞   作:ヌオー来訪者

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 GWは終了(´・ω・`)


第19話 リミット・オーバー

 ナインボール=セラフと黒いセラフの戦闘は間もなくして開始された。エネルギーブレード同士が衝突し合い、何度斬撃を放っても全ての斬撃が受け止められてしまう。痺れを切らして、ナインボール=セラフは若干後退して少々離れた距離からパルスガンを放つ。

 しかしながら、距離が100しかないのに拘わらずも黒いセラフは軽々と回避してしまう。それがリオスを苛立たせた。

 

「落ちろよ!」

 

 相手の機動力はナインボール=セラフとほぼ互角。爆発力はこちらが上だが、一定のスピードを持って居るのは相手だ。黒いセラフが持って居る武器は垂直ミサイルや、腕部パルスキャノン、そしてエネルギーブレードとチェーンガンのみで見た所、オービットは搭載していないらしい。

 黒いセラフはこちら以上の連射力を持った腕部パルスをこちらに放って来る。その量はマシンガン級だ。しかしながら、こちらにだってアドバンテージはある。オービットをあちら側は何時まで経っても放っては来ないのだ。

 では、どうする? 決まっている。

 

「オービット射出! 黒いセラフをかく乱しつつ、ブレードで斬る!」

 

 オービットはリオスの指示を受けてバックパックから放たれて黒いセラフの周辺を飛び回り乍らビーム砲を放つ。流石曲がりなりにもセラフと同型と言った所か、軽々と躱しながら、リオスのナインボール=セラフをパルスキャノンで近寄らせない。

 

 ナインボール=セラフは咄嗟に海面を叩き、水柱を発生させた。それでパルスキャノンの威力を減衰させてやり過ごしながら―――水中に潜らせた一機のオービットを黒いセラフの背後に回り込ませて、浮上した一機のオービットが黒いセラフの背中に装備された大型ブースターを撃ち抜いた。

 イレギュラーな攻撃だったか、黒いセラフは水中に隠したオービットにまともに対処出来ずに、大型ブースターから黒い煙を上げ乍ら、機体バランスを崩す。

 

―――今ならばっ!

 

「はぁあああああっ!」

 

 そして、水柱を突っ切ってリオスのナインボール=セラフがパイロットの雄叫びと共に超高速度で迫り―――

【V-Driveシステム解放 リミット・ブレイクモードに移行する】

 リオスの意志に関わらず、赤い光を放ったナインボール=セラフが黒いセラフを掴み上げ、周囲のビットが掴まれた黒いセラフの回りに集まって一斉にビーム砲を放ち、一頻り撃ちきった後に右の手刀で黒いセラフの胴体を刺し、3連パルスガンを撃ちまくる。それからエネルギーブレードをそのまま形成させて装甲を掻っ捌いた。

 炎を上げる黒いセラフが海面へと落ちていく。そして海に落ちて暫くすると爆音と共に大きな水柱を上げた。

 

―――今度こそ……終わりだ。

 

 だが、これだけで戦闘は終わらなかった。無数の円盤がナインボール=セラフをミンチにするべく刃を出して突進をしてきたり機銃を放って来る。

 だが、今のナインボール=セラフを止められる訳が無かった。

 

「そこを―――退けぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 雄叫びと共にナインボール=セラフのブースターに火が点き、驚異的な機動力を以て円盤を撃墜かつ蹴散らしていく。一部はアームで殴り貫き、一部はパルスガンで叩き落とし、一部はエネルギーブレードで半分に叩き切る。そして残りはオービットに潰して貰う。

 

 何時も以上の追従性と機動力にリオスは違和感を覚えていたがそこまで気にするほどの余裕は無かった。円盤を100以上落とした筈なのに、全く減っていないように思われる。そんな一進も一退もせぬ戦闘の中でナインボール=セラフに向けて通信が入った。ジルだ。

 

『リオス、戦闘を切り上げろ。アンジュがヴィルキスに乗って逃げ出した。サリアと連携して奴を捕獲しろ』

「アンジュが?」

 

 ジルの話によると、アンジュはリベルタスに参加する気は無いと少々前から言っていたのだと言う。だが―――まぁあの跳ねっ返りに隠し事をすればああもなるというのもの。自業自得ではあるが、一応不当な命令という訳でも無いので了解した。

 既に付近ではヴィルキスとサリアのゲシュペストが衝突しており、さして遠い距離には居なかった。シエナの回収はこの慌ただしい状況下では出来ない。リオスは心の中でシエナに謝罪しながらヴィルキスのもとへとブーストした。

 

 

 アンジュが自分とは違う。

 サリアがそう改めて思い知らされたのは赤いパラメイルとの戦いからだった。

 

 まず、サリアがここまでやって来たのはジルの為に、そしてジルの代わりにヴィルキスに乗ってリベルタスを成すという決意があったからである。

 だが、いざヴィルキスに乗ったものの、ヴィルキスに拒絶された。ジルが乗っていた時の力の半分以下も発揮出来ず、墜落してサリアは大怪我を負ったのだ。

 因みに彼女にナインボール=セラフへの執着は無かった。そもそも誰が触れても動きはしなかったし、後継者であるリオスはヒルダと真正面から喧嘩したりと大人気ないものの比較的まともな人間だったので彼には任せても良いだろうという思いがあった。命令違反は滅多にしないし、出自が凄まじく怪しかったが能力も充分にあり、努力してきたのだろうと思える部分が幾つかは間違いなくあったのだから諦めは付く。

 

 

 話しを戻すが、サリアがヴィルキスの搭乗に失敗し、それから―――アンジュが現れた。彼女は命令違反はするわ報酬の独り占めをするわと非常に自分勝手で部隊内の和を乱していた。正直言って早く死ぬものかと思っていたし、それ以上に気に食わなかった。

 

 自分よりずっと高貴な生まれで、ジルには肩入れされ、自分より圧倒的に少ない量でパラメイルを乗りこなし、戦闘技術を習得して圧倒的な技術を以てヴィルキスを乗りこなした。一時期はアンジュと真正面から殴り合って彼女にヴィルキスを任せても良いだろうと思いもしたが、所詮違うものを違うと、彼女の脱走とリオスを人質にして巻き込んだ事で思い知らされた。

 その上ドラゴンのアルゼナル襲撃の後、ジルにより特例でヒルダごと釈放。没収した筈のヴィルキスをアンジュに返すという事まで。

 

―――どこまで私の周囲を引っ掻き回すのだ。

 

 正直参ってしまって何かにすがりつきたくもなった。相手がリオスだったので若干後悔したのだが。ありったけ溜めて来た毒を吐き出せたのはある意味良かったのかもしれない。吐き出せないままであったらきっと冷静で居られなかっただろうから。

 

 アンジュはジルへの信頼を得た上に、能力もある。それなのに関わらず彼女は勝手な行動で引っ掻き回す。そして自分たちの悲願であるリベルタスをクソ喰らえと吐き捨てまでした。何が不満なのだ、何が。自分よりずっと恵まれた才能を持ちながら。

 今も彼女は使命から逃げてヴィルキスで円盤兵器を破壊しつつ艦隊へと機体を走らせていく。それを追ってサリアもゲシュペンストを駆りヴィルキスを追った。

 

「戻りなさいアンジュ。戻って使命を果たして! 何が不満なの? 貴女はアレクトラ……司令に選ばれたというのにッ! 私の役目も居場所も全部奪ったんだからそれくらい―――ッ」

 

 思いのたけをアンジュに吐き出しつつ、ゲシュペンストは最近手に入れたサムライブレード月光丸を抜刀し構える。威嚇のつもりではない。逃げる様ならばブレード光波を撃つつもりだった。だがアンジュは―――

 

「……私は、ここが好きだった。最低で最悪で何食っても不味くて。好きだった。ここでの暮らしが……それを奴らは壊した。だから―――」

 

 ヴィルキスが動き出す。ゲシュペンストを突破するつもりなのか。サリアはプラズマステークをセットし、ヴィルキスが振るった実体ブレードを、サムライブレードである月光丸で受け止めた。

 

「私は―――行く! 邪魔すれば誰であろうと……殺すわ!」

「何をふざけた事を!」

 

 最初は若干ゲシュペンストが押されているだけであった。だが、ヴィルキスの白い装甲が突如として真紅へと書き換わった時、完全に押し負けた。

 白銀の刀身から真紅へと変わったヴィルキスの剣で月光丸が吹っ飛ばされ、蹴り飛ばされる。

 

―――足癖の悪い!

 

 サリアが毒づきながら、海上へと落下しながら機体の体勢を立て直すべく機体のペダルを踏むが、海面衝突まで間に合わない。

 

―――アンジュ……勝ち逃げなんて許さないんだから!

 

 だが、落下限界点に至りこれで終わりかと覚悟したその時だった。背後から衝撃を受けて機体の落下が止まった。

 

「リオス!?」

「……何すかアレ。ヴィルキスが紅くなって赤いフィールド纏って馬鹿デカいビームサーベルぶん回していましたが」

 

 受け止めたのはナインボール=セラフだった。手には落とした月光丸を持って居る。やって来るのが遅いのだ。この男は。サリアは大きく溜息を吐きながら遅いリオスに心の中で文句を言うのだった。

 

 

 ヴィルキスが向かった先は指揮官の居る戦艦だ。護衛の円盤メカは次々と覚醒してZガンダムめいたハイパービームサーベル並の長さの剣で一振りするだけで相当の数が消し飛んだ。

 

「ヴィルキスを追うわ。……何としてでもアンジュを連れ戻す」

 

 今は隊長ではないが、サリアの言葉に慣れで反射的に「了解」と返してから変形したセラフにゲシュペンストが上に乗ってヴィルキスを追って飛んだ。戦艦さえ潰せばあの円盤は止まる筈なのだ。

 夥しい数の円盤が2機に襲い掛かるが、それは別方向から飛んできたガトリングガンの弾丸が円盤を蜂の巣にして2機への奇襲を阻止した。

 

 ガトリングガンを放つパラメイルは新生第一中隊には存在しないし、この世界の中では明らかに特徴的な機体の形状と大きさで直ぐに分かった。

 

「……クラウドブレイカー? タスクか!」

「また会ったね。リオス」

 

 タスクが駆る量産型クラウドブレイカー改だった。今回はフル装備らしく、ミサイルポッドは勿論スナイパーライフルも装備されている。小型円盤と戦うには充分過ぎる装備であった。

 

「タスク……アンジュが」

「分かっている」

 

 サリアが今の状況を説明しようとするもタスクは既に状況は掴んでいたらしい。ジルに言われてタスクもまた、アンジュを追っているようである。しかしながら―――リオスはサリアに疑問に思った事があったので問うた。

 

「サリア隊長、タスクと知り合いで?」

「……隊長は要らないわ。それに今の私は上司でも何でもない。……そうよ。彼もまた、『リベルタスの協力者』よ」

 

 サリアは若干自棄気味にそう答えた。

 どうやら世間は思いの外狭いらしい。けれど、彼が態々公開処刑を受けたアンジュを助けに来た理由が何となく分かった。アンジュとヴィルキスは恐らくリベルタスとやらを成すのには重要なファクターなのだ。それをジルたちは失いたくないようだ。

 それを証拠にヴィルキスは圧倒的なパワーを見せつけていた。

 

 円盤はまるで虫を叩き落とすようにした潰し、戦艦はまるで紙のように真紅のブレードで真っ二つにしてしまう。アンジュの動きには一切の迷いが無かった。まさに鬼神たる戦いぶりにリオスは唖然とする。

―――これがヴィルキスの……力だとでも言うのか。

 

 そして最後の一機にを半壊させてその前でヴィルキスは滞空した。一体何なのかと思い、リオスはH-1にカメラのズームを頼み、確認すると半壊した戦艦にはジュリオが居た。そしてヴィルキスのコックピットから出たアンジュに撃たれ、脅迫されたジュリオは味方に撤退するように伝えていた。

 

「……あいつ」

 

 やっている事は碌でも無いが、自業自得とも取れるその光景に複雑な気分を覚える。そしてサリアは「勝手な事を……」と険しい顔でアンジュの行為を見ながら月光丸を構えた。

 

「落ち着け……サリアたいちょ……じゃなくてサリア」

 

 サリア隊長という呼び名が定着してしまった事で思わず隊長と言いかけるも直ぐに止めた。

 

「……分かっているわよ」

 

 その割には月光丸の光波で撃つ気満々のサリアに軽く呆れつつ、離れた場所に居るアンジュと指揮戦艦に眼を向けた。アンジュは機体に再度乗ってそのまま指揮戦艦にトドメを刺そうとしていた。それを―――突如現れた黒いパラメイルが腕部に装備したビームシールドで遮った。

 

「「「!?」」」

 

 3人は驚愕した。それは突如として現れたのだ。リオスはそれがボソンジャンプではないかと思ったが、ボーズ粒子反応は何も無かった。しかも突如現れた黒いパラメイルが今の異常に強化されたヴィルキスのブレードを容易く止めたのだ。

 

 そして―――その機体の肩には人が乗っているのが見えた。金髪の長い髪の中性的な美しい顔立ちの男。それはリオスにとって見覚えのあるものだった。……そう、それはあの様々なマシンたちを見たあの時―――

 

「……エンブリヲ」

 

 タスクはアンジュのもとへと向かう途中でそう、憎々しげに呟くのだった。

 

 そうしていると、男は半壊して戦艦に向いて歌い始めた。そして黒い機体の肩が変形し、ヴィルキスと同じものらしき武器を展開し―――竜巻を放ち、半壊した戦艦を消し飛ばしてしまった。

 

「……味方、なのか?」

 

 その光景に呆気に取られてぽかんと口が開くリオス。アンジュのトドメを刺そうとするのを阻止しておいて何故、守った戦艦を消滅させたのか、彼の行動理由が分からないが、こちらに加勢したという事は味方なのか?

 現在アンジュのヴィルキスが元の白色に戻りアンジュはコックピットから出て彼に何者なのかを問いかけている真っ最中。

 リオスの迷いを断ち切るように、タスクは忌々しいものを口にするかのように答えた。

 

「アレは、あの男は、エンブリヲは―――敵だ。このマナの社会を作り上げた元凶だ!」

「本当なのか? タスク」

「嘘を……ついてどうするんだよ!」

 

 タスクは珍しく乱暴な言葉遣いで肯定した後、迷いなく量産型クラウドブレイカー改にガトリングガンを構えさせた。サリアのゲシュペンストも後に続くようにナインボール=セラフの上で月光丸を一振り、空を斬る事で光波を放つ。リオスもまた、チェーンガンを放ち、黒いパラメイルに向かって発砲した。

 

 黒いパラメイルは容易く、全て回避かシールドで防いでしまい、傷一つ付ける事は出来なかった。黒いパラメイルとエンブリヲという男は悠然とリオスたちの機体を見下ろしている。

 

「アンジュ! あの男は危険だ、離れるんだ!」」

「……無粋な」

 

 アンジュに警告すべく叫ぶが、エンブリヲは鼻で笑い再び歌を奏で始めた。再び解放される肩の兵装。そこから放たれるのは言わずもがなあの竜巻だろう。3人は窮し、撤退をしようとするが、発動速度がヴィルキスのものより圧倒的に速い。

 アンジュのヴィルキスがタスクを庇うべく全速力で接近するが、そんな事をすれば巻き添えを喰らうだけだ。

 

「来るなアンジュ! 君だけでもいいから逃げるんだ!」

 

 タスクの警告をアンジュは取り合わず、全速力でこちらへと接近していく。それを嘲笑うかのように、黒いパラメイルが何のためらいも無く竜巻を放った。もうこれは躱しようが無いだろう。渦巻く竜巻状のエネルギーが凄まじい勢いでこちらに近づいて行く。そして―――リオスの視界が白に染まった。

 

 最後に見た蒼に染まるヴィルキスがやけに脳裏に焼き付いたまま―――




 本作登場したリミット・ブレイクモードはACERのリミットブレイクに似たようなもの。
 ACERのセラフが似非トランザム状態になって敵を掴み上げて拘束した相手にオービット砲をありったけ叩き込み、トドメにアサルトキャノンをぶっ放すという鬼畜コンボが元ネタ。
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