クロスアンジュ イレギュラーと熾天使の輪舞   作:ヌオー来訪者

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(´神`)は言っている、すべてを(ガチタンで)焼き尽くせと。

 さてさて、新作スパロボでガガガとナデシコ再参戦にAGE初登場と盛り上がってまいりました。通常のAGE-2使えると良いなぁ……と思ったり。
 ただ、残念ながらマクロス30はオリジナル勢しか出ない模様。まぁ、オーガス的な接着剤のような役割になるのでしょう。原作が原作的に。


第23話 未踏査地区-ロスト・フィールド-

 久々の風呂だった。これまで数日間風呂には入っていなかったので風呂に入れるという事は非常にありがたいものだった。

 風呂上りにてリオスは、廊下に座ってから大きく溜息を吐いた。

 ホテル内で動いた部屋は2室だけ。まぁ2室だけ動いただけでもめっけものと言うべきか。リオスとタスクという男性陣は其々の部屋の廊下で眠る事になった。これについては二人とも少々不満でもあるが、まぁ致し方あるまい。一部屋に一つダブルのベッドがあるのだが、今のサリアとアンジュを同室にさせるのは危険なのだから。

 さっさと眠ってしまおう。これ以上あまり何か考えると気が滅入る。そして明日もいつも通りに振る舞ってしまえばいい。

 リオスは床に横たわって眼を閉じ、眠る体勢に入ったが、中々落ち着かなくて寝付けなかった。まぁ、実質廊下で眠る事なんてあまり無いし、やはり割り切ったふりをしても自分には嘘を吐けないらしい。……と言うか若干寒い。

 

 コックピット内は狭くてストレスがたまるがこちらも此方で狭さによるストレスは無いが硬い床は背中が痛くて辛い。

 

 古びた天井と睨めっこしながら、自分が眠りにつくまで待つ。待ち続けていると、近くの部屋の扉がガチャリと音を立て、経年劣化した扉特有の軋む音を立てながら開き、ここに備え付けのバスローブを纏ったサリアが顔を出した。

 

「そこで寝ていたら風邪引くわよ。それに毛布も掛けないで―――」

 

 気持ちこそ有り難いのだが、申し訳ないがこちとら男である。リオスは首を横に振って拒否の意を示したが―――

 

「自意識過剰よ。別に一緒の布団で寝ていいとは一言も言っていないわよ」

 

 溜息を吐いてそう言われたので、リオスは、少し申し訳なさそうにサリアの居る部屋に入る事にした。部屋の中は、少々かび臭いものの暖房で温まっており、廊下よりずっと居心地の良い部屋だった。

 

「―――悪い。しっかしこの部屋暖かいな……」

「風邪を引かれたら私たちが困るのよ。但し、怪しい動きをした場合は頭を撃ち貫くわよ」

「……あっはい」

 

 若干殺気を込めた目で睨まれてリオスは肩を竦めつつ頷いてから、サリアから投げ渡された枕を受け取り、片隅で毛布に包まった。

 真っ暗な部屋の中、サリアはベッドの上で横たわり、リオスは肩隅の床に横たわって寝付くのを待っているとふと、サリアが口を開いた。

 

「少し―――昔話していいかしら?」

「あ、おう。構わないけれど……」

 

 リオスは少々困惑しながら頷くと、サリアはぽつぽつと語り始めた。

 

 ジルは嘗て、ヴィルキスの前任者だった。幼い頃のサリアはそんな彼女の後ろ姿に憧れていて何時か彼女と共にドラゴンと戦いたいと思っていた。だが―――一度目のリベルタスにて―――彼女は片腕を失い、ライダーとして戦えない程の大きな傷を負った。

 その頃サリアはリベルタスの詳細を知らなかったが故に、ジルがドラゴンと戦って傷を負ったのだと勘違いして、「仇は討つ」と彼女の前で誓ったのだと言う。

 それからだった。サリアは血の滲むような努力を費やした。他の誰よりもずっと、沢山努力してきた。ジルの乗っていたヴィルキスを受け継いで、後でジルの口から知らされた『リベルタス』を完遂させるべく。

 

 ……だが、現実は非情だった。

 

 どんなに努力してもヴィルキスはサリアを拒絶し、ジルのように上手く扱う事は出来なかった。もう一度やってみせると、ジルに言っても「諦めろ」と言うばかり。

 そんな失意の中に現れたのが、アンジュとリオスだったのだ。

 アンジュは身勝手な行動でリベルタスの概要を知っていた人間の一人だったゾーラ隊長を殺し、のうのうと生き延びた挙句ヴィルキスまで与えられた。ジルの行動が解せない上に不可解だったが、ジルの目論見通りアンジュはヴィルキスを動かしてジル以上に使いこなした。

 

 ジルの決定だから逆らう事はしなかったし、無理矢理己を納得させる事で何とかしようと思いはしたのだが、結局彼女は一度脱走し、アンジュは所詮生まれた場所も立場も何もかも違う事を思い知らされた。その上ジルからいち早くリベルタスの概要を知らされた挙句に没収した筈のヴィルキスをアンジュに返したりと、ジルはサリアそっちのけで肩入れしていた。まるでそれはサリアの努力は無意味だったと言わんばかりに。

 リベルタスの為に自分に出来る事を探すべきだったのだが、サリアにとってはヴィルキスが全てだったのだ。そしてヴィルキスに乗ってジルに認められるという事も。これまでの血が滲むほどの努力も。だから、そう簡単に切り替えられない。これでは一時期頑固に自分がノーマである事を認めたがらなかったアンジュを嗤えはしないと、サリアは自嘲するように語った。

 

 リオス自身、彼女の半生に立ち会った訳でもないし、偉そうな事は言えはしない。これまでの努力は無駄じゃないとか、そんな事を言ってもきっと彼女の心には響かない。

 ある程度無理な物は無理、出来る事を探すと割り切って生きているようなリオスだ。何か気取ったような言葉は思いつかなかった。

 

「―――迂闊に同情しないのが貴方の良い所……なのかも知れないわね」

「口下手なだけだよ。口が上手い奴なら腐るほど居る」

 

 リオスは軽く不貞腐れ乍ら、ベッドに背を向けて壁と向き合う。こんなんだから彼女居ない歴=年齢なのだ。こういう事はアムロ大尉ならそれなりに上手くやれるのだろうが(彼の恋人であるチェーン・アギとのやり取りを見ていると猶更そう思う)。

 

 サリアは、はっ、と彼の置かれている状況を思いだした。彼の場合取り戻しようも無い程に沢山の物を失ったのだ。完全平和という自分たちノーマの言うリベルタスのような『光』を追い求めた結果何もかも無意味と化して。

 それでも尚、彼は甘えるなとも言わずに黙って聞いてくれている。

 こちらには希望が残されている可能性がある(タスク曰く転移に掛った時間が分からないのでリオスの転移の際に時間を越えたのか、今回の転移で時間を越えたのか、それとも両方か、微妙な所だとか)と言うのに。

 一方リオス自身はそれを、ただ何もかもを他人事として見る事で自分が傷つくのを避けているだけだという自覚があった。それが賢いやり方かどうかは別として。

 

「それに―――偉そうに他人に説教したり導いたり出来るような人生なんて歩んじゃいないからさ。やれる事は……一緒に考える事ぐらいか」

 

 それをやれるだけの余裕が自分にあるのかと問われれば首を傾げてしまうが、何時もの自分なら多分そう考えている筈だ。結果的にどうなるか、それで他人が救われるのかどうかは微妙なのだが。それで切欠になってくれればありがたい。

 少なからず、サリアがそうしたい相手ではあるのには間違いない。

 

「勘違いさせるような発言よ。そう言うの―――」

 

 何を思ったか、サリアはそう言い、沈黙がこの場を支配したその時――――――

 

 勢いよく玄関扉が音を立てて乱暴に開かれた。

 

「!?」

 

 驚いたリオスとサリアは飛び退く。部屋の扉を乱暴に開いたのはタスクだった。

 

「リオス! サリア! 武器を持った機動兵器がここに!」

「なにっ」

 

 慌てて、リオスとサリアは別の場所で眠っていたドラゴンのヴィヴィアンを叩き起こし、急いで下へと降りて雪を踏み締め乍ら歩きづらい地面を機動兵器が立っている場所まで走る。そして、全員の瞳にパラメイルクラスの大きさの機体の姿が映った。

 

 

 それは――――――赤と黒の二足歩行型機動兵器だった。形状からして可変機構は無いと思われるが、背中に長い砲身を二つにたたまれたキャノン砲に、右手にはライフルと思しきものを持っている。

 そいつは右手に装備されたライフルを、ホテル前まで運んでいたリオスのセラフに突きつけた。

 

「拙い!」

 

 機体とリオスの距離は100M程離れていてもう間に合わない。リオスの叫びも虚しく、赤い機動兵器が突きつけたライフルの引き金に指を掛けてから

 

叛逆者(イレギュラー)を発見。排除を開始する】

 

 そう、声を出した。それは無機質で生気を感じない、そんな声。まるで黒いセラフと対峙している感覚に似ていた。機体を失うまいとリオスが全力疾走している中、他のメンバーもそれぞれの機体に乗ろうとすべく走るも、起動に掛る時間などを考えればどう考えても間に合わない。無論、セラフに限ってはどう考えても間に合わないだろう。それに駆動系が破損している為に機体そのものが動かない。喩え間に合っても動かないのでは自分ごと消し炭にされる事間違いなしだ。

 

「くそっ!」

 

 ままならなさに悪態をつくリオス。そして引き金が非情にも引かれかけたその時だった―――

 

 耳をつんざく砲撃音が響いた。リオスは咄嗟に耳を押さえていると、赤い機動兵器の胸部が爆発を起こした。爆発による熱気が肌を舐め、顔を顰めつつ、砲撃のした方向を向くと、そこには―――巨大な戦車が居た。

 

 いや、戦車というには少々歪か。下半身は確かに戦車そのものでキャタピラがこの雪が積もったアスファルトの上を力強く踏み締めているが、そこより上は人型機動兵器のものだった。人型機動兵器特有の胴体と顔と胴体が有り、背中にはグレネードキャノンを2丁背負っている。腕はバズーカ砲型になっており、腕そのものが砲身となっていた。

 だが、あれだけの爆発を喰らったというのに赤い機動兵器は一部装甲が抉れるだけであったが、胸部に装備された対人機関銃が破損しており最早撃てない状態になっていた。

 

 半人半戦車で武器と化した腕というその姿に、リオスは一年戦争で活躍したMSの一機であるガンタンクを思い出した。腕が武器になっていたり物騒な物を背負っているという点では結構似ていなくもない。

 

「ガンタンク系列……なのか?」

 

 リオスの声が聴こえたのか、その全身火器の物騒な戦車ロボのスピーカーを通じて渋い男の声が発せられた。

 

『ガンタンクなどとこの迅雷を一緒くたにしないで貰おうか。しかしまぁ未踏査地区(ロストフィールド)まで足を踏み入れるとは随分な命知らずな事だ。まぁいい。土竜の諸君、How do you like me now(パーティはお開きだ。死ね)

 

 男がそう言うと再びグレネードキャノンの砲口が轟音と共に火を噴いた。撃たれた赤い機動兵器はグレネード弾が爆発して、爆煙に包まれるが、それでもなお、赤い機動兵器は大破しておらずフレームが歪んでいながらも爆煙を突っ切って、戦車ロボにブーストを吹かせながら右手のライフルの引き金を引いた。銃口から青く丸い弾丸が1秒で大量に戦車ロボに放たれて、弾丸は全て装甲に命中してしまう。

 あれだけの重装備でこの市街地。躱す事も困難だし、強度が尋常でない赤い機動兵器相手に勝てるのか。リオスが思っていると、戦車ロボは無言でバズーカ腕を構えて、赤い機動兵器の脚を狙って発砲した。

 

 狙いは正確無比。赤い機動兵器の脚の命中して弾丸と爆発の衝撃で怯んでいる隙に、斜め上から飛んできた一条の閃光が赤い機動兵器の胸部を撃ち貫いた。誰が撃ったのか。それをリオスたちが確認する前に、再度戦車ロボはグレネードキャノンを起動。バズーカ腕も構えて一斉砲撃を放つ。

 

 左右の幅がビルで塞がれた場所だ。赤い機動兵器に避ける手段は上に跳ぶことしか無かった。それを既に予見していたか、殆どの弾が赤い機動兵器に向かって吸い込まれるように命中して大爆発を起こした。そして―――追い撃ちのように放たれる戦艦クラスのオーバーキルと言われても文句は言えないレベルの砲撃。煙で着弾時にどうなったか見えなかったが、直後、機体の下半身と無数の部品と破片が落下してきた。

 そこでリオスたちは命中したのだと確信した。

 

 勝利こそしたようだが、あの機体と援護した者は何者なのか気になって、ふとリオスは援護射撃が飛んできた方向を向く。そしてそれを見たリオスは思わず目を見開いた。夜空には――――――空を覆う程の巨大な空飛ぶ戦艦。

 

「ラー……カイラム…………!?」

 

 嘗て、リオスの属艦だったラー・カイラムに形状が酷似した戦艦がドラゴンと共に飛んでいた。そして……散々こちらの邪魔をしてきたガンアークも。手持ちのライフルが変形して弓のような形になっていたが直ぐに洗濯ばさみめいた形状へと戻って行った。

 ガンアークに辛酸を嘗めさせられてきたサリアはアレを見て一気に顔を顰めた。

 

「何なの……あの空飛ぶ船は……」

 

 アンジュからすればあれ程巨大な人工の飛行物体は始めて見る物なのだろう。タスクも、サリアもまた驚愕していた。それにリオスだって―――

 

「まだ生きていた人が居たって言うのか?」

 

 文明が崩壊した筈の世界にあんな戦艦がほぼ完全な状態で飛んでいる事などとは思っても居なかったのだから。迂闊に飛べばエンジンがお釈迦になって墜落する事だって可能性としては低くはない。

 一瞬、あれににはブライト艦長が乗っていて自分と同じように転移してきたのではないかと思いはしたのだが、何となく違う気がしたので、あまり期待は抱かなかった。

 

『救難信号を出したのは、お前らだな?』

 

 戦車ロボのパイロットが問う。

 まさか、ドラゴンがこちらを助けようと言うのか。リオスたちは嘘を吐いても仕方がないと思って頷くと、戦車ロボのパイロットは続けた。

 

『ようこそ。本来の地球へ。歓迎しよう、粛々とな』

 

 

 歓迎と言った癖にあっという間に拘束されてしまった。戦車や戦艦、ドラゴンが居たのでアンジュも誰もが抵抗出来ず、ドラゴンたちにより持ち込まれた大型コンテナに4人+1匹とも放り込まれた。機体も恐らく収容された事であろう。

 

 薄暗い空間の中で、リオスは片隅で座って黙って待ち続ける。ここで脱出するにしても恐らく外部から僅かに聴こえて来るドラゴンの羽音とパラメイルや戦艦のブースト音、そして今リオスたちが閉じ込められている場所であるコンテナが揺れている事からして高い場所で吊り下げられている事は間違いない。

 

 

 無暗に脱出しようとした所で落下死してしまうだろうし、ヴィヴィアンを使おうにも乗せられる人数が相当限られてしまうので論外だ。それに自分たちの機体が取り戻せないようでは意味が無い。

 考えている内にコンテナ内が突如派手に揺れた。

 

 ヴィヴィアン以外は突如の揺れに驚きよろけてしまい、アンジュは勢いのあまりヴィヴィアンにぶつかってしまう。それにアンジュがヴィヴィアンに謝罪するのを見て、リオスは彼女も変わったものだと思うのだった。

 

「女の子が乗っているんだ! もうちょっと丁寧に運んでくれ!」

 

 タスクが乱暴な持ち運びに文句を言うと、戦車ロボのパイロットの声がスピーカーを介している為かノイズと一緒に返って来た。

 

『申し訳ないがもう少し耐えてくれ。悪いようにはせん』

「―――そう簡単に信用できるとでも?」

 

 リオスは半信半疑で問うと、男は豪快に笑った。それにコンテナ内に居る者が驚愕していると、男は言った。

 

『理由はあれど散々お前たちに迷惑かけたからな。……そんなこと思っとらんよ』

 

 理由? 理由とは何だ。その疑問をタスクが問おうとすると、別の、男とは打って変わって若い青年の咎めるような声が聴こえて来た。

 

『隊長、何会話してるんですか……」

『悪い悪い。では、また会おう。少年少女の諸君!」

 

 そう言い残して、ノイズが聴こえなくなり男の声も途切れた。妙な男であると4人は思う。だが、ドラゴン側と言葉が通じるならば色々訊けるというものだ。その点では有意義な会話だったと思える。

 彼らが動く理由とは何なのか。ジルが教えなかった事や知らない事がきっと今向かおうとしている場所にあるのだと思い、アンジュは腹を括るのだった。

 

 

 この後、急降下の際にバランスを崩してタスクがまたやらかしたというのは言うまでも無く、リオスは溜息を吐き、サリアは赤面するのだった。

 

 

 コンテナの扉が開いた先は、夜が明けたらしく空は蒼く明るかった。そして薙刀を持った殺気立った兵士らしき女性二人と、武器は持っていないように見える女性たちが外で待ち構えていた。まぁ、出た瞬間射殺されるよりはマシか。

 

「着いたわ。出なさい」

 

 万が一の事も考えて、薙刀を持った女性兵士の指示に従いつつ4人は何時でも武器を取り出せるように身構えつつ外へと出た。

 

 目の前に広がる光景。それは―――和風の神殿らしき場所と塔だった。リオス自身あまり日本の歴史に明るくないのだが、その様はまだ中国の文化の影響を受けていた頃の建物を彷彿とさせた。建物の直ぐ後ろには崖と大きな滝があり、音を立てて水が流れ落ちている。崖の上には高い塔が聳え立っており、見るからに偉い人が居そうな場所だった。

 

 そしてその前に緑色と赤色の2機のパラメイルが力を誇示するかのように立っており、それがあのアンジュと対峙した赤いパラメイルの僚機だという事に4人は直ぐに気付いた。

 

「大巫女様がお会いになる。ついて来い」

 

 二人の兵士片方の、蒼いロングの髪の女性が言うや否や、背後でずしりと音が立った。咄嗟にリオスたちが後ろを向くとヴィヴィアンが倒れており背中には麻酔弾が突き刺さっていた。

 

「お前っ……ヴィヴィアンに何をしたんだ!?」

 

 リオスが向き直って問い詰めようと吠えると、兵士の薙刀がリオスの首元に突きつけられた。リオスとアンジュが二人の兵士を睨んでいるものの、二人の女性もリオスたちを敵視しているようで一触即発の空気が出来上がっていた。

 そして暫くして―――

 

「はいはいそこまでそこまで。お前らここでドンパチやるのは止めて置け。折角の旧き良き風景が台無しになる」

 

 リオスより圧倒的にガタイの良い男が現れて二人の薙刀を下げさせた。長身の部類に入り安直ながらもごついという印象を受けるその男に気圧されて、アンジュ側も、兵士側も引き下がらざるを得なかった。

 筋骨隆々という言葉が非情に似合う外見で、180ぐらいの背。腕相撲したら瞬殺されそうだ。そしてその声が戦車ロボの乗り手の声だという事に気付き、イメージ通りでリオスは渇いた笑いが込み上がりそうだった。

 

 それに二人の兵士が溜息を吐き、男はふっと笑う。

 

「悪いようにはせん。そう言った筈だからな」

 

 リオスもタスクもただ、男の威圧感に圧倒されるばかりであった。

 

 

 兵士たちに連れられた先はやはり、目の前の神殿らしき場所だった。両脇には松明が薄暗い部屋を灯しており、奥には王座と思しき数段ある段差と幕がある。幕は合計9つあり、其々に人影があった。その真ん中で一番高い場所に居る影が言うまでも無く一番偉い人なのだろうが、周りより明らかに背が低くかった。

 王座の前まで4人が連れられると、二人の兵士が頭を下げ、リオスたちを連れて来た事を告げると、真ん中に居る影がリオスたち4人を見回す。

 

「異界の女に、そして男……か」

 

 その声は明らかに幼いものだった。それに傀儡政権めいたものを想像せずには居られなかったが、直ぐに止めた。別にそれはどうだっていいのだ。重要な事ではない。タスクとサリア、リオスは緊張のあまり、息を呑むが、アンジュだけが険しい顔で見上げていた。

 

「名はなんと申す?」

 

 聞かれて、誰が先に答えるか。それを装弾しようとタスクたちが思った矢先、真っ先にアンジュが口を開いた。

 

「人の名前を聞くときは、まず自分の名前から名乗りなさいよ!」

 

 すぐ隣にいたタスクとリオスは驚き、困惑し、サリアは呆れたように大きく溜息を吐いた。

 流石にお偉いさんにそのような口を利くとはあちら側も思いもしなかったか、本人以外の者たちがざわついた。下手したら自分たちは無礼だとして殺されるのではないかとリオスは戦慄し、言うまでも無く後ろで控えていた女性兵士が、あの青いロングの女性が刀に手を掛けた。

 

「大巫女様に何たる無礼ッ!」

 

 タスクは慌ててアンジュを窘めるも、アンジュは敵意を隠さず睨み続ける。そんな中で動じていないのか、大巫女が口を開いた。

 

「特異点は開いていない筈だが―――どうやってここに来た?」

 

 特異点とは恐らくゲートの事だろう。あのドラゴンが湧いてくる場所の先。

 問われたものの、はっきりとした答えが出ず4人は黙り込んだ。恐らくはヴィルキスの力だろうが、実際の所ははっきりとしていないし、それをあちら側が信じてくれるとは到底思えない。

 

「大御子様の御前ぞ、答えよ!」

 

 後ろに控えた女性兵士のもう片方であるショートカットの女性が警告しつつ薙刀をを向けて来る。そうやって高圧的にやって来るから反感を買うのだろうとリオスは思うが、まぁ言っても意味はない。寧ろこちらの命が危ない。

 

 そしてまるで釣られるように他の者達が様々な事を、訳が分からない単語を口にしながら問いかける。まるで聖徳太子に押しかけて来た人間たちのように。しびれを切らしたアンジュは舌打ちしてから怒鳴った。

 

「うるっさい! 一斉に聞いてくるんじゃないわよ! こちらだって良くわからない事ばかりなのよ! 知ってそうなこの男も分かっていないようだし!」

 

 アンジュはリオスに指をさしながら怒鳴る。タスクが窘めようとするももうアンジュを止められる者は居ない。サリアは自分の胃が痛くなるような感覚を覚えた。

 流石にそれを見かねたか、女性兵士が今にも切り殺さんとばかりの殺気を向けて武器を引き抜く。

 このままでは処刑待ったなしである。アンジュ以外の3人に冷や汗が出たその時、大巫女の左隣に座っていた者がくすくすと笑いだした。

 

「威勢の良い事で」

 

 そして垂れ幕から、笑った者は外に出て来た。出て来た者は女性だった。和服をアレンジしたような衣装を身に纏い、左手には鞘に納めたサムライブレードを持っている。黒髪ロングで清楚という言葉が良く似合うような風貌だったが、何処か底が見えない。そんな印象を受けた。

 

「貴方はっ―――」

 

 アンジュは見覚えがあるのか、敵意むき出しの表情から一転。驚愕へと変わり、そんなアンジュを檀上から見下ろしながら名乗り出た。

 

「神祖アウラの末裔にして、フレイヤの一族が姫。近衛中従、サラマンディーネ」

 

 暫くすると、アンジュの顔色は再び怒りに染まり、歯を食いしばる。一体何があったのかリオスたちには分からなかったが、ただ事ではないのは何となくながらも分かった。

 

「ようこそ、真なる地球へ。偽りの惑星(ほし)の者達よ」

 

 偽り。その言葉にリオスは異空間でエンブリヲの言った『偽りの革新者』という言葉を思い出す。だが、こちとら本来『この地球』に育ったのだ。そして自分が生きた時代にドラゴン等居なかった筈だと、若干彼らの物言いに引っ掛かりを覚えていると、大巫女がサラマンディーネに問うた。

 

「知っているのか?」

「この者たちですわ。先の戦闘で我が機体と互角に戦ったヴィルキスとナインボール=セラフの乗り手は」

 

 その言葉でリオスとサリアは察した。あの、紅いパラメイルのライダーだ。アルゼナルの半分を消し飛ばしたあの紅い―――サリアが一気に険しい顔になりサラマンディーネを見上げる。まぁ当然だ。あの攻撃で相当な被害が出たのだ。気分が悪くならない訳が無い。

 

「この者達は危険です! 生かしておいてはなりません!」

「処分しなさい、今すぐに!」

 

 幹部たちは喚くように叫ぶ。それにリオスは怒りを込めて睨みつけた。

 

「アルゼナルを戦術核顔負けの竜巻で消し飛ばしておいてよくもまぁぬけぬけと危険だとか抜かすなアンタら……やるって言うなら相手になってやるよ。その代り女だろうと俺は手加減しない。今の俺は訳有って機嫌が悪いんだよっ!」

 

 リオスが言い終えるとアンジュも臨戦態勢を取りつつ不敵に笑いながらリオスに続く。

 

「こちとら死刑には慣れているから好きにすればいいわ。但し、ただでは済むとは思わない事ね」

 

 流石に不敵なアンジュと敵意をあらわにしたリオスにたじろいだか、再びこの場がざわめきだす。こうやって敵意を向けられることが初めてなのか。

 リオスは機体を奪還する算段を立てながら立ち回りを考えていた所で、サラマンディーネが口を開いた。

 

「お待ち下さい。皆様。この者はヴィルキスを動かせる特別な存在。そして、機械仕掛けの例外(イレギュラー)を狩る者を動かす者も。あの機体の秘密を知るまで生かしておいた方が得策かと」

 

 サラマンディーネがそう言いつつ、アンジュたちのもとへと歩み寄る。武器を持っているとは言え大した度胸である。リオスはそんな彼女に底知れない恐怖を感じながら強がる。

 

「それについては僕もお願いします」

 

 そして、また別の声が背後から響いた。背後にある入り口前には、リオスやタスクと同じぐらいの青年と隣にあの女性兵士を窘めた大男が立っている。そして、今、青年が纏っている服装。それは―――若干差異こそあるが、地球連邦のものに近いものであった。しかも彼から発せられる感覚に覚えがある。そして彼の顔の面影も。

 

―――まさか……

 

 更に畳みかけるように聞き覚えのある単語をサラマンディーネが青年と男を一瞥してからクスリと笑ってから口にした。

 

「この者たちの命、この私にお預け下さいませんか? もしもの事が有れば、彼、アルス・レイ少尉と有隆(ありたか)総隊長と共に対応致します」

 

「レイ……だって?」

 

 リオスは驚愕のあまり思わず声を出してしまう。それにタスクは訝しげに問いかける。

 

「リオス、彼を知っているのかい?」

「俺の昔の上司とファミリーネームが同じだ……別に珍しくないけれど。でも面影がある……」

 

 タスクは困惑気味に「はぁ」と言いながらアルスという青年を見て、首を軽く傾げるのだった……




 How do you like me now→海外では引っ越してきたときに自己紹介を兼ねてパーティーを開く文化がある、そこで終わりの定番の挨拶が「私のことを好きになってもらえたかな?」という言葉があります。
 その為「パーティはお開きの時間です」という意味になり、最終的に「パーティは終わったから早々に帰れやボケェ」となるのです。

 意訳に意訳を重ねた結果ですね(´・ω・`)


 今回、旧ナインボールが瞬殺されてえらく酷い扱いを受けていますが、あれで出番が終わりとは旧来のファンなら思わない筈です。セラフは兎も角、奴はMOAで大量に……
 ここから結構AC要素が入ってきます。あと、フロムマジックも(全弾発射とかゲームでは出来ない)
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