クロスアンジュ イレギュラーと熾天使の輪舞   作:ヌオー来訪者

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 そろそろセラフの強化も近い。主に劣化したパルスが。

 エンブリヲどうしようかねぇ……何故あのようになったか多少掘り下げるか、原作のように同情無用のド外道としてゲームオーバー(退場)させるか。
 そんな事を思いついたのは多分ゲーム版のせい。


第28話 デストロイ・9

 一番真っ先に先陣を切ったのはリオスとセラフだった。

 アナザーセラフに向かって一直線に、驚異的な速度でブーストしライトアームを振り上げてそのまま頭部目掛けて右ストレートを叩き込み、そのまま押し出した。

 

「潰れて貰うぞ! 黒セラフ!」

 

 リオスは吠えながらアナザーセラフを押し出しながら、腕部パルスを発砲。9発命中させてから膝蹴りを叩き込んだ。再び吹っ飛んだアナザーセラフは変形して逃げ出すがそうは問屋が卸さない。リオスもアナザーセラフを追うべくセラフを飛行形態へと変えてそのまま追撃に向かう。

 

「くっ……うっ」

 

 Gが掛り、リオスは歯を思いっきり喰いしばる。そんな中H-1が使用できる武器をサブモニター画面に表示した手持ち武装はパルスガン、エネルギーブレード、エネルギーウェーブ、オービット。そして垂直ミサイル。

 どうやら、ずっと金がかかるので積まれていなかったミサイルが漸く搭載されたらしい。だったら早速使わせて貰おう。

 リオスはミサイルの発砲用コードをコンソールに打ち込み、間もなくしてセラフが背負った大型ブースターから垂直ミサイルが放たれる。

 

 放たれたミサイルの数は8発。アナザーセラフはそれを機体の速度を上げてあちこち飛び回る事で振り切ろうとする。無論、リオスもこれを見ているだけでは無い。チェーンガンを発砲してアナザーセラフの動きを制限する。

 漸く折れてアナザーセラフは変形して、ミサイルが追いすがって来る後方に機体の向きを変えてチェーンガンを放ち、ミサイルを悉く撃墜した。

 

「行けよッ オービット!」

 

 リオスの合図により、バックパックから6基のビットが放たれアナザーセラフに向かって飛来して、ビットが爆炎を突っ切ってレーザーを四方八方から放つ。アナザーセラフはそれを最低限の動きで躱しつつ、ビットをパルスキャノンで撃墜する。

 

「でやあああああああああっ」

 

 オービットに気を取られている隙に雄叫びを上げ乍らセラフがゼロ距離まで迫って両腕にエネルギーブレードを形成して×の字に振るった。無論、相手は機械が操作する機体だ。人間離れした反応でアナザーセラフもエネルギーブレードを両腕に形成してセラフの斬撃を受け止めた。

 

 だが、これで終わらない。鍔迫り合いの中でセラフはアナザーセラフに膝蹴りを叩き込み追い打ちにチェーンガンとパルスガンを発砲。放たれた弾丸が一通りアナザーセラフを傷付けた所でセラフは再度急接近して掴み掛って、レフトアームでアナザーセラフの胸部装甲目掛けて貫手を放った。

 

 腕が突き刺さり、アナザーセラフは必死にチェーンガンを発砲して抵抗する。リオスはそのチェーンガンによるダメージを厭わず、何もない地面目掛けて両者は落ちていきながら、突き刺したレフトアームでゼロ距離パルスを発砲し、ライトアームはエネルギーブレードを形成してアナザーセラフのレフトアームと大型ブースターの左側ごとを切り飛ばしてから、そのまま墜落。大きな土煙を上げた。

 

 それでも尚、チェーンガンを放ち残ったライトアームの武器を使って抵抗を試みるもそれはセラフが引き抜いたレフトアームに引きちぎられて、機能を失い、更にトドメを刺すようにセラフ両腕を突きだしゼロ距離でパルスガンをありったけ叩き込んだ。

 

【全く相変わらず色々無茶苦茶だな】

「それを咎めなかったお前も同類な」

 

 リオスは悪戯っぽく笑うと、H-1は【よく言う】と呆れていた。まぁ、怒っている風には聴こえなかった。寧ろ少し面白がっているようだった。

 

 他の味方たちが護衛部隊と交戦している中で、サラは荒れ狂う竜巻に再度向かいビームライフルを竜巻目掛けて発砲したものの、やはり全く通用しなかった。

 

 エンブリヲを撃つのが最良の方法なのだろうが、肝心のエンブリヲは何処に居るのか分かったものでは無い。これでは堂々巡りではないか。隣までやって来たアンジュのヴィルキスがアサルトライフルを放つも、やはり通用しない。

 有隆の指揮下による彼の采配で半ば瞬殺に近い形でフェザーアークとナインボールを片付けたアルスたちも続いてペンドラゴンをはじめとした第13番部隊の増援と共に一斉射撃を竜巻に放つが、全く通用しない。

 

 続いてヒュッケバインMk-Ⅲが現在一番高い攻撃力を持つ飛び道具であるグラビトンライフルを放ち、ゲシュペンストMk-Ⅸがスプリットミサイルを2基とも放ち、ペンドラゴンがメガ粒子砲を、クロウレイダーとウルフズ・アイはKARASAWAによるハイレーザーを、サリア機のゲシュペンストは廃棄したメガビームライフルを回収してそれを放ち、クラウドブレイカー量産型はミサイルとガトリングガンを同時に発射、迅雷は背中に背負ったグレネードと腕部バズーカを、ガンアークはフルチャージして弓状に変形したアークライフルを竜巻目掛けて放つ。そして遅れて現れる形でナインボール=セラフはパルスガンとチェーンガン、ブースターに格納された垂直ミサイルを放った。

 

 だが―――全くと言って良いほど通用していなかった。

 

「オイオイ……一斉射撃がマジで通用してねーのかよ!?」

 

 ゲシュペンストMk-Ⅸに乗ったアラタが危ないものを見るような顔で驚愕の表情をして声を上げる。

 幾ら砲撃を放っても竜巻は止まる事はおろか減速すら一切せずゆっくりとこちらに向かって進んで行く。このまま放って置けば宮殿まで辿り着いてしまうだろう。

 他の味方が救助活動をしているが、全員助けられるとは限らない。だから早めに片付けなければ犠牲者は間違いなく増える。

 

 エンブリヲが護衛機たちを突っ込んだからには何かしらの弱点が竜巻にはあるのだろうが、それが見当たらない。サラマンディーネがこのままでは都と宮殿が危ういと顔を一気に顰めたその時だった。アンジュがふと、声を上げた。

 

「……アレは使えないの? アルゼナルをブッ飛ばしたアレ! アレで竜巻は消せないの!?」

 

 アンジュの言葉にサラマンディーネは少し考え込む。恐らくアンジュは収斂時空砲の事を言っているのだろうが、アレは余りにも威力が強すぎる。この場に居る兵器の中で一番強力かつ特殊な武器ではあるのだが―――

 

「駄目です……収斂時空砲の威力では都はおろか宮殿まで消し飛んでしまいます!」

「だったらソレを3割引きで撃てばいいじゃない!?」

 

 アンジュはそんな事を平気でのたまうがそんなに制御が出来るほど柔軟な兵器では無い。エンブリヲの技術を盗用したものの、この手の技術はまだ不完全だ。

 

「そんなに器用な真似はできません!」

 

 サラマンディーネは無理だと叫ぶとアンジュは腹立たしげに荒れ狂う竜巻をみつけた。竜巻を睨む中でアンジュはある事に気付いた。そう、あの時だ。焔龍號とヴィルキスが対峙してお互いの大技を相殺し合った時の事である。

 

「そうよ―――三割引きでなくても良いのよ」

 

 アンジュの呟きに困惑したサラマンディーネは眼を見開いて彼女が一体何を言おうとしているのか理解できずに声を上げた。

 

「は? 何を―――」

「貴女が撃ったのを私が打ち消せば良いのよ!」

 

 そんな無茶苦茶な。

 サラマンディーネはこのあまりにも無茶な提案に顔を顰めた。少しでもミスればこの宮殿や都が綺麗さっぱり消し飛んでしまう事間違いないだろう。長い年月を掛けて作り上げて来た物がまたふりだしに戻ってしまうのではとサラマンディーネは恐れた。

 

「それしか無いならやるしかないでしょう!? 貴女、お姫様なんでしょうサラマンマン! 危機を止めて民を救う。それが、人の上に立つ者の使命よ!」

 

 まるでハンマーでガツンと殴られた感覚をサラマンディーネは覚えた。異国の言葉だがノブレス・オブリージュと言う言葉を思い出した。危機を止めて民を救う。それが姫として、力を持つ者としての役割なのだと。それにそれ以外方法が無いのだ。このまま躊躇していれば役割を放棄した事になる。それはサラマンディーネのプライドが、生き方が、性格が許しはしなかった。

 

 失敗した場合咎は受けよう。だから今は―――

 

 無数の瓦礫が飛ぶ中、決心したサラマンディーネはアンジュのヴィルキスと共に竜巻の近くまで機体を飛ばした。そんな中で、アルスのガンアークがサラマンディーネたちの行く手を塞ぐ瓦礫をアークライフルで粉砕していった。

 

「ここは自分がお守りします!」

「……感謝します!」

 

 そう言うアルスにサラマンディーネは礼を言い、そのまま進んで行き。其々所定位置へと付いて行く。ヴィルキスと焔龍號が人型形態へと移行して二人があの光を放つための歌を奏でると、焔龍號とヴィルキスは黄金に染まって行く。

 

 そんな中で、手持無沙汰の機体たちは滞空可能な機体は飛んでくる瓦礫を武器で破砕して被害を減らし、地上戦主体の機体は落ちた瓦礫の駆除をしつつ救助に専念する。

 

 

 暫くするとヴィルキスと焔龍號のパワーが極限まで上がり、いざ撃とうとしたその時だった。エンジンとラジエーターが爆発を起こした。不完全な修理とアンジュの無茶な操縦が災いしたのだろう。それとほぼ同時に焔龍號から光が竜巻目掛けて放たれた。

 胸部装甲から黒い煙を上げ乍らヴィルキスは地上に向かって一直線に落ちていく。アンジュは操縦桿を引いたり押したり、ペダルを踏むもヴィルキスは全く言う事を聞かなかった。このままでは勢い余って焔龍號が放った光でこの場が消し飛んでしまうのは時間の問題であった。

 

「アンジュ! 落ちていますわよアンジュッ!」

 

 サラマンディーネの叫びにアンジュは「見れば分かるわよ」と苛立ち乍ら返し、操縦桿を力一杯にがちゃがちゃと動かすが、うんともすんとも言わず、地上へと真っ逆さまに落ちていく。

 このままでは焔龍號の収斂時空砲を相殺出来ず都ごと吹き飛ばされてしまう。こんな自爆に近い形で終わるのか。それはあまりにも間抜け過ぎてアンジュには耐えられた話では無いし、この作戦を提案したのは自分であって自分に責任があるのだ。

 アンジュは苛立ちと怒りのままに声を上げた。

 

「この大事な時に何へばってんのよ! 世界を滅ぼすだけの力はあるんでしょう!? だったら人ぐらい救えるでしょ? シャキッと気合いを入れなさいよヴィルキスッッ!」

 

 アンジュの叫びを聞き届けたのか。それともオートで稼働する安全装置でも作動したのかは分からない。だが、次の瞬間、通常兵器としては有り得ない現象を引き起こした。

 目に見える速度で、破損したエンジンとラジエーターが修復され、ロストしたレフトアームが現れて最早ロールアウトしたての新型機のような状態へと変貌したのだ。

 

 その様を見た者たちは唖然とし、一方でサリアとリオスはアンジュが初めてヴィルキスに乗った時の戦闘を思い出した。あの時も碌に整備されなかったポンコツの状態から突然ロールアウトしたての新品の姿に変貌したか。

 

「間に合わないッ―――」

 

 体勢を立て直したのは良いがこのままでは間に合わないのは明白だった。竜巻こそ消えかけているがこのままでは収斂時空砲の余波が街を吹き飛ばすのは時間の問題だ。アンジュはままならなさに歯噛みしつつ、急いで発射準備に入ろうとする。だがどう急いでも間に合わないのは目に見えていた。――――――だが。

 

 

 

 その間にセラフのモニター画面が【V-Drive System 起動】表示されるや否やリオスのセラフが勝手に動き出して、収斂時空砲の前まで超高速でリオスが気絶寸前にまで追い込まれる速度で移動し、収斂時空砲へと向けて手を翳した。

 リオスは意識を持っていかれる寸前にまで追い込まれるも何とか持ち直して目の前の光景に唖然とした。―――自殺でもする気なのか。

 このままでは勢い余った収斂時空砲の消し炭になるのは間違いなかった。だがこちらの操作が何故か受け付けない。

 

「くそっ! なにが起こってるんだよ! H-1!」

 

 操縦桿を乱暴に動かしているも全く反応せず、リオスの顔色がどんどん青ざめていく。あれこれしている内に竜巻が完全に消滅し、いざ勢い余って飛んで行こうとする収斂時空砲にリオスのセラフは光に呑まれて消し飛んだ――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 という事は無かった。それどころか受け止めてしまった。それも片手で、だ。

 

「収斂時空砲を受け止めた!?」

 

 サラマンディーネが驚愕の表情を浮かべる。だが目の前で起こっている事は事実だ。ナインボール=セラフは片手で力場らしきものを発生させて収斂時空砲を受け止めたのだ。なんなんだこれは、無茶苦茶だ。

 アンジュは戸惑いの色を見せるも、セラフが収斂時空砲の動きを止めている事を察してそのまま光―――ディスコード・フェザーを放った。セラフは被弾をしないようにリオスの負担を無視して超高速で退避。

 収斂時空砲とディスコード・フェザーは相殺しあってこの都と宮殿に害を成す危険な物は今、この場から消え去った。

 

 

 その光景を茫然とサラマンディーネはコックピット内で見下ろしていたのだが、このまま安心できる心境では無かった。まさかあのセラフに積まれているV-Driveというものはヴィルキスたちと同質の力だとでも言うのか?

 

 これは後で可能な限り調べてみる必要があるだろう。サラマンディーネは地上に着地して動かなくなったナインボール=セラフに眼をやりながらそう思うのだった。

 

 

 

 収斂時空砲を片手で力場らしきものを作って受け止めた等と言う滅茶苦茶な行動をやらかしたセラフは、異常と言って良い速度で退避した後、地上に降り立ち動かなくなった。それにサリアは慌ててゲシュペンストを飛ばすも、ゲシュペンストも先ほどの戦闘で無茶をさせたか、あまり思い通りに動かなかった。ふらふらとした飛び方でセラフの近くに降り立つと、ゲシュペンストから飛び降り、自動で開かれたセラフのハッチからサリアは覗き込むと、リオスはコックピットシートに凭れて目を閉じていた。―――気絶しているのか。

 

【こいつはGに耐え切れず気絶した。命の別状は無い。多少骨にダメージが入ったがそこまで重度のものでは無いだろう】

 

 まぁ見るだけでも人間が乗った機体でやってはいけないレベルの速度を出したのだから当然か。

 H-1の報告で命に別状がない事を知ったサリアは安堵しつつ、竜巻が消え失せて徐々に晴れゆく空を見上げた。そこには焔龍號と完全復活したヴィルキスが宮殿前まで降りていく姿が見える。

 ふと、サリアはあのサラマンディーネに向けた言葉とサラマンディーネとアンジュのゲームによる勝負の際に見た楽しそうなサラマンディーネとアンジュの顔を思い出した―――アンジュもアンジュなりに色々思うところはあるのだろう。まぁ、彼女が一体何を考えているのか自分にはさっぱり分からないし理解は出来ないが。

 

 今でも彼女は気に食わないし、自分がヴィルキスに乗れたなら今すぐにでも奪ってやろうかと思うが、まぁそれは現実的には無理だ―――アルゼナルに戻るまでに見極めさせて貰おう。彼女が一体何を成そうと言うのか、彼女はその先に何を望むのか。サリアは次に視線をセラフに向けた。

 

 それにしても、このナインボール=セラフは一体何なのだろうか。一体どれだけ隠し事をしているのか。自分たちが疑問に思っている事をH-1はまるで話さない。

 あのアルゼナルを吹き飛ばした収斂時空砲を受け止める等と言う滅茶苦茶な事をしたのだが、ジルの言う通り保険になり得る機体というのは本当のようだ。サリアは上空を飛ぶペンドラゴンに救助要請を出してから大きく溜息を吐いた。

 

 全く謎は深まるばかりだ。―――だが、その答えは意外に早く出る事になるとはこの時のサリアは、いや誰もが思ってもいなかった……




 V-Driveがラムダドライバめいてきた……若干やりすぎたか。まぁ収斂時空砲と張り合える力なのは一応理由があるんですが。
 一応、収斂時空砲を受け止めるだけのぶっ壊れが使い放題という訳では無いです。あれだけやったら本機に掛る負担は尋常では無いですし。人間が使う事前提のものではありません。


 次回からレイヤード篇。セラフ関連について。そしてこの世界について色々回収していく予定。……多分そんなに長くは有りませんよ。
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