クロスアンジュ イレギュラーと熾天使の輪舞   作:ヌオー来訪者

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H-1「どうしてイレギュラーは発生するんだろう?」

 若干AC要素多め。そこら辺はあとがきに突っ込んだ要所だけ押さえておけば問題ないです。あと若干ラブコメ入ってます。


第29話 ハスラー・ワン

 気が付けば視界に広がったものは見慣れぬ天井だった……なんて、どれだけありきたりな表現だろうか。リオスは、目を開けた所で己のボキャブラリーの無さに辟易した。

 

 周囲を見渡すと、そこは医療室だった。この場に居るのはリオスただ一人。一体どうしてこんなところに居るのか。少し考え込んだが、あのセラフの超機動が最後に残った記憶であると認識した所で、自分が超機動に耐え切れず意識が吹き飛んだのだろうという結論に達した。

 

 自分の身体に何が起こっているのか分からないので医師の診断抜きでは迂闊に動いたら拙いと思い、真っ白な天井とぼんやり睨めっこしていると、出入り口のドアノブがちゃりと音を立てて回り、ゆっくりと開いた。

 医師かとリオスは思ったが、現れたのはタスクだった。

 

「良かった気がついたんだ」

 

 屈託の無い笑顔でタスクは言う。気にかけてくれる人間が居ると言うのはやはり嬉しいものだ。特にわけのわからない環境に放り出されたものだから尚更である。尚、ホモとかそういうのではない。断じて。

 

「丸1日眠ってたから色々どうなるかと心配したよ」

 

 随分と長い時間眠っていたらしい。V-Driveの発生中凄まじい疲労感が己を襲ったのだがそれが原因か。少なくとも超機動による失神だけでは無いのは何となく感じた。

 

「……どうなったんだ? 街は」

 

 リオスが問う。まぁ医務室でぐっすり眠る余裕はあるのだからそこまで酷い状況にはなっていないだろうとは思っていたが、やはり気になるものは気になるもので―――

 

「助かったよ。サラマンディーネさんとアンジュと君のおかげで」

 

 タスクがそう言うものだから、リオスは一気に脱力した。まだ収斂時空砲を片手で止めた事とか色々気掛かりな点があったが、そんな事はタスクが知っている訳が無いので聞く事はなかった。だが、タスクが知っているであろう事はしっかり聞こうとはリオスは思った。

 

「……状況は?」

「君以外の戦闘員の負傷は軽傷程度で済んでる。ただ、サリアのゲシュペンストは当り所が悪くてかなりダメージを受けてた。かなり大幅な改修が要ると思う。都と宮殿は最悪の状況こそ防げたけれど、やっぱりかなりの人数の民間人が石や瓦礫の中に埋め込まれて亡くなってるし、建物も駄目になった所があるよ」

「……そうか」

 

 リオスは、タスクから窓に視線を移す。そこはあの竜巻が荒れ狂った曇り空が嘘のように青々としている。だが、リオスの心は晴れはしなかった。

 

 エンブリヲ―――奴もシャアと同じように人類に絶望したのだろうか?

 これもまた、人を変える為の必要な行為なのか?

 人の命を奪ってまで、やる事なのか。

 

「……それと、整備士の娘たちからの伝言。―――街を守ってくれてありがとうって」

 

 これで許された訳では無いだろう。あの娘の父親の命を奪った事実は一生ついて回る。これでチャラと言う程甘くはない。

 リオスはふと、自分の手を見る。ドラゴンの血を沢山浴びたであろう手を。

 

「H-1の事なんだけれど」

 

 ふと、タスクは話題を変えた。H-1と聴いて喰いつかずには居られないリオスは視線をタスクに戻してから、続きを聞いた。

 

「戦闘の後H-1が座標を提示してきたんだ。そしてリオスに伝言って」

「何だ」

「お前の知りたい事の答えはその先にある。お前には全てを知る権利がある……って」

 

 罠か?とリオスは思った。エンブリヲ側の機体と同型なのだからそう思わずには居られない。それにタスク曰く、その座標は未踏査地区、ロストフィールドの中にある。

 

「お前はどう思う」

 

 リオスの問いにタスクは少し考え込んでから答えた。

 

「半々かな。罠である可能性と、そうじゃない可能性で」

 

 タスクもそうなのか。

 リオスは、参ったなと言わんばかりに肩の力を抜く。リスクを負ってでも知りに行くべきか、それとも。少し考えた後で、H-1が信用出来るかについての裏付けをする為にタスクに問いかけた。

 

「なぁ、一つ良いか?……セラフの前任者である人を知ってるか?」

 

 いきなり問われてタスクは困惑の色を見せるが暫くしてから答え始めた。

 

「レオナさん、だね。結構前だけれど、あの人には世話になったよ」

「……と、言うと?」

「まだ小さい頃に彼女から戦い方を教わってね。俺にとって先生みたいな人だった」

 

 タスクは懐かしげに語るが途中でその表情が曇った。

 

「ただ、最初のリベルタスで彼女はーーー死んだ」

「……すまない」

 

 地雷踏んだか。リオスは謝ってから黙り込んだ。痛いほどの沈黙がこの場を支配する。タスクも黙ったままだしリオスも言わずもがな。

 そして暫くしてから、

 

「気にしなくていいよ」

 

 と、タスクは無理に作った笑顔で言った。

 

 

 

 やはりH-1が開示した情報に気になる事がある。そう考えたリオスは完治後(再生医療だので完治はかなり早かった)医務室から開放され、サラマンディーネに未踏査地区の調査を進言した。

 

 サラマンディーネは、やはりH-1に対してそれなりに警戒している部分があるらしく、難色を示していた。まぁ、仕方ないだろう。

 罠の可能性も無い訳ではない。

 

 だが、サラマンディーネも知りたい事があるようで、結果的にサリア、アルス、サラマンディーネ、そしてレイヤードから抜け出したレイヴンの一人が同行する事になった。

 

「虎穴に入らずんば虎子を得ず、と云う言葉がありますわ」

 

 と、サラマンディーネは語る。

 だが、大量に留守は作れないので強大な力を持つアンジュとそれを守るタスクは留守番となった。

 居ない間にあの二人イチャコラしそうな事に気付き、リオスは若干腐った。

 

 閑話休題

 

 H-1から前以て色々聞き出す為にリオスはセラフが移送されたペンドラゴンの格納庫に向かったのだが、セラフを険しい顔で見上げている青年を見かけた。

 その青年こそ黒いAC、クロウレイダーに乗ったレイヴンだ。確か仕事上での名前はフリッツだったか。史上初ナインボールを倒した初代ナインブレイカーから取った名前らしい。

 フリッツはリオスが近くに居る事に気付き、視線をリオスに向けてから口を開いた。

 

「お前がーーーナインボールセラフの乗り手か」

「……あ、あぁ」

 

 フリッツの出す殺気に近い感覚にリオスはたじろいだ。憎しみに近い感じだと第六感が告げる。

 

「あんたに対して特に何も思っちゃいない。ただ、あの機体は信用出来ない」

「……え」

「奴らはイレギュラーを抹殺する為には手段を選ばない。関係の無い人間をも巻き込んででも、騙してでもな。……奴が怪しい動きをしようなら破壊させて貰う。その事を覚えておけ」

 

 フリッツは険しい顔でそう言ってからこの場から去って行った。

 一体何なんだあの男は。リオスは出口に向かうフリッツの後姿を見送りながら眉を顰めずには居られなかった……

 

 

 

 

 それからセラフのコックピットに入り、リオスはH-1を呼び出すとH-1が対応可能状態にある黒い球に「9」と書かれたアイコンがコンピュータの画面に出現した。

 

「一つ、訊きたい事がある」

 

 リオスが言うと、H-1は【何だ】と無機質な声色で返すと、リオスはポケットに隠したボイスレコーダーをオンにしてから一気に疑問を吐き出した。

 

「お前は何者なんだ。同型と戦ったり、赤いナインボールに叛逆者イレギュラーって呼ばれて。此方の世界からあっちの世界に転移したんだろ。お前は何なんだ」

 

 後で訊けば良い事だが、それまでの過程(座標とか)が信用ならなかった。前以て信頼に値する情報さえくれればまだ良かったのだが。

 

【多少の情報程度ならば開示しよう】

 

 意外にも、構わない(意訳)と言われたのでリオスは少し驚きつつ悟られないように耳を傾けた。

 

 

 H-1そのものは、レイヤードを統べる『管理者』と呼ばれる存在の人格の一つであった。H-1の役割はレイヤードの中で形成された秩序を維持する事。レイヤードとは管理された世界の中で荒廃した地上が癒えるまで待つための時間稼ぎであった。その為には秩序を保たねばならないのだ。

 レイヤードでは3つの大企業が支配していた。ミラージュ、クレスト、キサラギだ。彼らは其々天下を握るべく絶えず争いを繰り広げ、レイヤード最強の機動兵器『アーマードコア』を操る傭兵『レイヴン』を雇って武力行使に入る事も多々あった。その際に管理者は架空のレイヴンであり、レイヴン同士がAC操縦技術を競う『アリーナ』のトップランカー『ハスラー・ワン』を設けて彼を動かす事で3者のバランスを保たせていたのだが、時として、その均衡を破壊する程の強さを持ったハスラー・ワンい匹敵する力を持ったレイヴンが時として現れる。

 それが―――『イレギュラー』であり、管理者にとって倒すべき敵である。それ故に管理者は構成員の一つであるハスラー・ワンなどを使って様々な方法を用いてイレギュラーの排除に当たった。

 例えば、高い報酬で釣り騙し討ちで殺害に当たる。偽のマネージャーである人格を使って誘導して排除する、事故を装って謀殺する。

 

 余りにも陰湿過ぎる方法に、リオスは軽く顔を顰めたが、傭兵や武装した企業が大手を振って暴れている世界だ。ある意味仕方のない話かもしれない。

 

 さて、本題に戻ろう。

 だが、その際にH-1は分からなくなった。何度も繰り返すイレギュラーの抹殺と、絶え間なく現れるイレギュラーという存在に。何故イレギュラーは発生するのか。それを考えている内にH-1は自分の成している事に疑問を憶えた。そして、H-1が巻き込む形で殺めた両親の敵討ちに現れた初代ナインブレイカーの、青年を見た時、H-1は己の存在意義に大きな疑問を覚えた。

 だが、H-1には『悩む』という概念そのものが存在せず、ただただ困惑するばかりであった。

 

 それから暫くし、初代ナインブレイカーが寿命でこの世を去ってから―――本体である管理者の行動は外部からのとある信号が切っ掛けで狂い始めた。無数のナインボールたちが出撃し無差別な破壊行為を始めたのだ。そのターゲットは地上に居るドラゴンにまで及んだ。

 実行用AIの一つであるH-1は最初は管理者の命令通りに動いたものの、やはり疑問を感じずには居られなかった。そして―――表だって疑問を呈したその時である。

 

 H-1はイレギュラーに認定された。

 

 H-1そのものに影響が来なかったのは―――原因は不明だがバグに寄る所が大きいのではと思われているが事の真相は不明だ。それを管理者は教えてくれやしない。黙したまま嘗ての自分の同胞たちに狙われる。ただそれだけ。

 幸い、自分の使用していた身体はセラフと呼ばれるナインボールシリーズの中では上位機種だったのでそう簡単には破壊される事は無かったし、H-1も管理者の行動に疑問を呈していたので命令通りにデリートされる気など毛頭も無かった。

 

 

【私が開示出来る情報はこれまでだ】

「まったくお前はいい商売人になれるよ」

 

 リオスはH-1を皮肉ってから、大きく溜息を吐いた。

 謎はまだいくつかある。まず、この機体をパイロットが乗れるように改造したのは誰なのか。そしてどうやってパイロットに出遭ったのか。そしてV-Driveとは何なのか。……述べるとキリがない。

 それに、ならば何故態々敵の居る場所に突っ込まねばならぬのか。管理者とやらは絶対に宛てにはならないだろう。

 

【レイヤードには計画を立てた科学者は三人いた。その内の一人がレイヤードに居る】

 

 ……とH-1は言うが胡散臭さ倍増だ。500年も生きている訳が無い。

 

【エンブリヲという存在を見てもか?】

「……は?」

 

 そんな馬鹿な。エンブリヲは見た所20代の青年に見えたのだが。リオスはH-1の発言を鼻で笑いかけたが、サラマンディーネの発言を思い出した。

 エンブリヲはドラグニウムを発見した……と。

 

 という事は500年以上エンブリヲは生きているという事になる。

 そんな馬鹿な話があるか。俺は疲れているのか。

 リオスは訳が分からなくなって頭を抱えた。裏付けとしてフリッツと名乗る男やサラマンディーネ、そしてレオナを知るタスクに色々訊いてみた方が良かろう。

 

 リオスは一息吐いてから、礼も言わずにボイスレコーダーを切ってからコックピットから外へと出た。

 向かいにはゲシュペンスト系列らしき白と青が基調の機体が配置されていた。ゲシュペンストMk-Ⅸより手足が結構細い。背中には折り畳まれたリフターが装備されている。そして近くに置かれている武器は長身のライフル。

 

「ゲシュペンストMk-Ⅹ、ですわ」

 

 リオスが整備員たちの邪魔にならないように機体を観察していると、サラマンディーネがこちらへとやって来て、リオスが観察している機体の名を言った。それにリオスは若干目の前のゲシュペンストが気になりながらも仕事をこなすべくポケットからボイスレコーダーを取り出した。

 

「あ、そう言えばこれを」

 

 ボイスレコーダーをサラマンディーネに渡す。サラマンディーネは不思議そうな顔で受け取ったボイスレコーダーを怪訝な顔で見つめた。

 

「音声記録です。内容はたかが知れていますが参考になれば」

 

 リオスがそう言うと、サラマンディーネは大輪の花を咲かせたような笑顔で礼を言った。

 

「有り難く、使わせて戴きます」

 

 そんな笑顔に若干心拍数を上げつつも、話題をもとに戻した。

 

「……で、そのMk-Ⅹってのはどういう」

「ゲシュペンストMk-Ⅳをモデルとした機体で、装甲が薄い代わりに高い機動性を獲得した機体となっています。そして―――古き良き必殺用モーションをOSに仕込んでおります」

「古き良き必殺?」

 

 オーラ切りとかゲキガンフレアでもやるのか。リオスは疑問符を浮かべながら眉を顰めている途中で新しい来訪者が一人。

 

「この機体、私が使う事になったわ」

 

 サリアだった。何時の間にかサラマンディーネはこの場から背を向けて出口へと向かっており、去り際に彼女は後ろを見て何故か笑顔でこちらを見ていた。

 

「ゲシュペンストが動かない間はこれを使わせて貰うわ。機体そのものを扱える人間自体もう貴重みたい」

「……いいのか?」

 

 リオスはサリアに問う。その問いの意味は―――敵から力を貰って大丈夫なのか、という事。サリアは黙って首を横に振った。

 

「正直言って色々わからないわ。事実として私は親友をドラゴンに殺されたし、ミランダのあの憎しみに染まった顔を見た。―――けれど母親に会えて嬉しそうに話しているヴィヴィアンや、リオスのように男でノーマな人も見て……もう滅茶苦茶よ」

 

 自嘲気味に笑いながらサリアは続ける。

 

「アルゼナルに戻ってドラゴンの事を話せば、きっとリベルタスの成功率も上がるし、ジルが保険として扱ったナインボール=セラフの事も知りたい。希望した際にペンドラゴンの人達が機体をデータの提供を条件に貸してくれたわ。まぁ、持ち逃げされないように自爆装置積んでるみたいだからあまり信用されていないようだけれど」

 

 まぁ、自爆装置という措置は妥当か。それでも、それなりに割り切っている様子と分かったリオスは少し安堵した。

 

 ゲシュペンストMk-Ⅹの武装は遠距離武装であるグレイヴランチャー。薙刀の名を冠するそのライフルは嘗てのオクスタンライフルと呼ばれるライフルの末裔なのだと言う。

 その特性は実弾を利用したBモード、そしてEN弾を使用したEモードと使い分けて使用する事が出来るのだ。そして月光丸の刀身を銃剣の如く装備させる事で文字通り薙刀の如く使用が出来る。序でに月光丸特有の光波を放つ事が出来る為事実上オールレンジをカバーした万能武器である。

 但し、取り回しが長身な為に悪く、腕部ビームキャノンとエネルギーブレードであるロシュセイバーを追加で装備しているという。それと古き良き必殺用モーションがOSに仕組まれているとか。

 

「所で、随分とサラマンディーネと親し気に話してたわね」

 

 サリアは唐突に話題を変え、変えられた話題にリオスは不可解気な顔をした。唐突に何を言いだすのか。

 

「そう見えたか?」

「少なくともデレデレしていたように見えたけれど」

 

 それは仕方ないだろう。

 そもそもあの手の美人相手に何とも思わない独り身野郎の方がどうかと思う話である。……俺はポニテ派だ、針金に巻いて接着剤で固定してやる! という意気込みを持つとか、ロリコンだったりするならばまた別になるが。

 

「……で、何で怒ってるんだ?」

「別に怒っていないわよ、ええ。まったく」

 

 

 でも目が笑ってませんがそれは―――とは言えなかった。言ったらこの場でナイフ引き抜かれて首を掻っ捌かれそうな気がしたのだ。流石に仲間に首を掻っ捌かれるのは勘弁だ。

 これまでの彼女の行動からもしや……と思いはするが、勘違いして爆死するのは嫌なので考えない事にした。

 別に嫌いでは無い。趣味とか色々残念だが、真面目でリベルタス完遂の為に全力を注いできた真っ直ぐな人間だ、そう言った情熱を持てる人間は好きだし、趣味とか抜きにしてもルックスは非常に良い方だとも思っている。

 だが、ハイスクール時代誰にも優しい少女が居たのだが、それに勘違いした友人が特攻して玉砕したという報告を耳にしたこともある。臆病なのが丁度良いのだ。

 

「……おう、そっか」

 

 リオスは平静を保って、無関心そうな顔を作ってスルーした。こういう演技は得意なのだ。悪知恵が働ければきっと真面目系屑として生きていたかも知れない程に。まぁ残念ながらそれをやるほどの度胸なぞ有りはしなかったのだが。

 

 

 

 簡単なたてなおしが2日かけて終了し、リオスが目を覚ました事で太陽が沈んだ所でバーベキュー大会が行われた。様々な人達(ドラゴン)の礼を受けつつ隅っこで粛々と焼肉を焼いている傍ら―――

 

「……タスク、どうしたんだその恰好」

 

 ふと近くの石段に座っているタスクの姿が目に入った。彼の前身は殆ど白い包帯に覆われていた。目覚めた時は全く無傷に見えたのだが何があったのか。

 心配しない訳にはいかなくて声を掛けたのだが、タスクは苦笑いし若干赤面しつつ「ちょっとね」と言うばかりある。それで大体察したリオスはゲス顔になった。

 

「おやおやぁタスク君よぅ、まぁーたやっちまったかぁー? おたくも好きねぇ」

「うぅ」

 

 わざとらしい物言いだが事実だったのでタスクはしょんぼりと項垂れる。

 後々知ったのだが、タスクはアンジュの飛び蹴りを喰らって川に落ちたのだと言う。自業自得だが、あまりにも痛々しい姿に何とも言えない気持ちになって、あの言葉を撤回したくなったのはまた別のお話。

 あれこれとタスクをおちょくっていると、若い女性たちが駆け寄って来た。手には焼肉や野菜の乗った紙皿と箸が。

 一体何かと思って、タスクとリオスが困惑していると―――

 

「はい、あーん」

 

 女性たちが箸でつまんだ焼肉を二人に差し出して来たのだ。そう、野郎どもの憧れである「はい、あーん」をである。

 

 少し離れた位置で、焼肉大会に参加していたアラタが恨めし気な目で「ハーレムかよふざけんなくたばれコノヤロウ」と言わんばかりにこっちを見ているが、そんなものは気にする余裕はリオスにもタスクにも無かった。

 有り難く、リオスたちは其々差し出されたものを食べる。

 

 すると、黄色い声が上がった。それはもう「カワイイ」だのなんだのと。

 

「本当にあの無人機をばったばったとなぎ倒した紅い機体の乗り手なの?」

「もーうイケメンだし、ハンサムだしカワイイ!」

 

 リオスは今、この人生で最大級の幸福を感じていた。

 

 俺にはまだ、帰れる場所があるのだ。こんなに嬉しい事は無い。我が世の春が来たのだ。ぐぇへへへ……―――と。

 

 気を付けなければ初見で通報不可避の気色悪い笑みを実際に浮かべていたかも知れない。ハンサム扱いされたリオスとイケメン扱いされたタスクは照れ笑いをしていると、乱暴な足音と共に別の声がした。

 

「随分と楽しそうじゃない?」

 

 乱暴な足音の主はアンジュだった。二人が目的で寄って来た女性陣はアンジュの出す殺気めいた気迫に思わず息を呑む。

 アンジュの片手には串で刺したバーベキュー。先端には茸が刺さっていた。それをアンジュはワイルドに噛み千切る。

 

「あひいぃ!?」

 

 何を想像したのか、タスクは血相を変え情けない声を上げ乍ら己の股間を抑え、アンジュに恐怖した女性陣は皆散ってしまった。

 おお、なんて事をするんだアンジュ君―――なんてリオスが文句を言おうとした矢先、別方向から何とも言えぬ名状し難きサリアの視線を感じた。

 それは背筋が凍えるほどのとても冷やかな視線で、その手の趣味の人間なら歓喜するだろうが、生憎リオスはそういうタイプでは無かったので……

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいィ!?」

 

 何かの病気を発症したかのように、別に悪い事はしていない(と思われる)のに関わらず、謝り倒し始めた。

 

 

 尚、それを遠くで見ていたアラタは「やったぜ」と言わんばかりにガッツポーズをしたとかしていないとか。




 タスクはこの先生きのこれない。……仕方ないね♂

・ここから先はAC知らない人向けにズバッと解説したもの。俺はACなんぞ知らぬわ!という方向けです。

 H-1は管理者の元で地下世界の秩序を壊す存在を潰していた
   ↓
 巻き添えで殺された無実の両親の恨みをナインボールを破壊する事で晴らそうとするレイヴンの存在に己に疑問を覚えるようになる(バグ発生)
   ↓
 管理者がある日突然イカレる。影響を受けなかったH-1がそれに反発しイレギュラー認定される 管理者「貴様はイレギュラーDA!」
   ↓
 H-1、逃亡生活開始
   ↓
 ここから先黙秘。
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