クロスアンジュ イレギュラーと熾天使の輪舞   作:ヌオー来訪者

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約3行で分かる第7話(嘘)
リオス「ドラゴンめ、この鋼鉄、じゃなくてNBSが相手だ。死ねぇ!(A氏リスペクト)」
アンジュ「死ぬの嫌ぁぁぁあぁぁぁ(ステラ並感)」
セラフ「デストローイwwデストローイwwデストローイww」


 初戦闘は第9話からでも良かったかも。まぁ、ヴィルキス覚醒が7話というタイミングも悪くないのかも知れませんが。

 平行世界について結構深く掘り下げるかも。


第7話 天使は、戦う

 サリアの目の前に水上から勢いよく浮上し、襲い掛かる2体のスクーナー級の行く先に立ちふさがった。

 スクーナー級は吠えながら、構わずリオス機を吹っ飛ばそうと襲い掛かったその瞬間―――ライトアームによる右ストレートがスクーナー級の腹に勢いよく直撃した。

 

「落ちろよォッ!」

 

 リオスの叫びと共にめり込む拳。そして苦しむスクーナー級の傷に塩を塗り込むように腕部に付いたパルスガンが火を噴いた。数発発砲した所で、リオス機はライトアームをスクーナー級の腹から離し、パルスガンの銃口から光の刃を形成。

 

 そして横に一閃。スクーナー級の胴体に大きな一文字の傷を作り、蹴りを満身創痍のスクーナー級に叩き込んで、海に叩き落とした。

 そしてもう一匹はシエナが改造されたアサルトライフルで弾丸と銃剣のように装備されたナイフを射出し、ハチの巣にしてスクーナー級を撃墜していた。

 

『生命反応あり。チェーンガンによる追撃を提案』

「だったら……撃つさ!」

 

 リオスはAIの提案に従い、さらに追い打ちとして水没したスクーナー級目掛けて胸部に固定された武装、チェーンガンを発砲した。

 発砲音と水に弾丸が落ちる音が響く。暫くすると、曇天でやや紺色に見える海が黒く染まった。

 

 だが、これで終わりでは無い。

 

 残り一匹がリオス機に迫る。だが、リオスの対応は冷静だった。両腕にブレードを形成させて、通り抜けざまにスクーナー級を切り裂いたのだ。焼き切られたスクーナー級は身体をばらばらに分解させて海へと落ちる。

 完全に一方的だった。

 

『現在、味方機がガレオン級と交戦中』

 

 だが、勝利に浸っている暇は無い。リオスはAIのアナウンスを聞き、ガレオン級に機体を向けた。既にガレオン級は尻尾で捕えていた筈のヒルダを離していた。

 そしてガレオン級と対峙する白いパラメイルがリオスの視界に映る。

 まるで新しく拵えたような白と青の装甲に、金色に輝くフレーム。頭部には女神像のようなオブジェが付いている。こんな機体第一中隊に居ただろうか?

 

「何だ……アレは」

『ヴィルキスです』

「ヴィルキスだとォ!?」

 

 AIの返答を聞いてリオスは眼を見開き驚愕の表情を浮かべた。ガレオン級と互角以上の戦闘を繰り広げるヴィルキス。ナインボールもびっくりなその性能に開いた口が塞がらない。

 飛ぶことすら覚束ないような欠陥も甚だしい機体だとジルの口からきいていたのだが、気のせいだったのか。いや、外見が錆びていてボロボロな機体だった事は格納庫にて自分の眼で見たではないか。それに彼女は死のうとしていたではないか。

 

「一体……何が起こっているんだ」

 

 リオスが驚いている内に戦いの決着は付いた。

 ガレオン級が青白い弾丸を発射するが、それを装備していた実体ブレードである程度減らし、ガレオン級の頭目掛けてブレードを突き刺す。そして弾丸のホーミング性能を逆に利用してぎりぎりの所で弾丸の雨から回避。自滅ダメージを受けさせる。

 ガレオン級が多少ダメージを受けていたとは言えこうも戦えるものなのか。もしかしたら彼女はニュータイプなのではないかという考えが浮かんでしまう。若しくは―――純粋に天才か。それに機体の機動性もグレイブとは段違いのようにも見えるのだが、その高機動性に振り回されていない。それどころか完全とは言い難いものの支配している。

 

 アンジュの駆るヴィルキスは泣きっ面に蜂のような自滅をしたガレオン級に駄目押しの一手として凍結バレットをゼロ距離で叩き込み、突き刺したブレードを回収。再度ガレオン級から離れた。

 トドメの一撃を受けたガレオン級は海へと墜落したその瞬間、巨大な氷の柱が形成され、周辺の海水も凍結してしまった。

 

 

 

 今回の戦闘にて、多少損害はあったものの戦闘は無事に終了した。死亡者はゼロ。大金星を挙げたアンジュは大量の報酬を得る事となる。

 

 

 

「数回の出撃でこの撃墜数。結構結構」

 

 深夜、ジルの執務室にて数人のアルゼナル職員が集まった会議をしていた。ジルの近くにはよくそばに居るエマの姿は無い。ジルは提出された戦闘結果の資料に目を通して満足げにしていた。

 

「今までまともに動かせなかった機体をこうも簡単に動かすとはねぇ……NBSの後継者のあの漂流者の坊主も絶好調な事だ」

 

 何時もならば医務室で軍医をしているマギーというウエーブの掛った紅い髪の女性も感心したように言った。

 この会議(?)にはジャスミンや、サリア、整備士のメイの姿もあった。序でにジャスミンが何時も連れている犬、バルカンも居る。

 つまり、各部門で働く代表的な人間が集まっているのだ。

 

 長らくパラメイルに触れて来た整備士の少女のメイは少し考えてから口を開いた。

 

「恐らく、ヴィルキスがアンジュを、ナインボール=セラフがリオスを認めたんだと思う」

 

 少女ながらパラメイルの事に関してはプロフェッショナルであるメイでも、ヴィルキスの事は完全には分かっていなかった。無論、ナインボール=セラフもだ。

 そもそも、ナインボール=セラフに限ってはパラメイルですらない異端(イレギュラー)たる存在である。

 

「それではあの二人が……?」

 

 サリアがジルに問う。あれを始めると言うのか?

 その表情には若干不満気なものを持って居た。ジルはそれに薄々感づきながら、サリアの問いに肯定した。

 

「そうだ。では、始めるとしようか……『リベルタス』を」

 

 ジルのその言葉にサリアの表情が一気に曇った。

 何故、アンジュという我儘で滅茶苦茶をやる人間がリベルタスの要になってしまったのか。ヴィルキスを扱える人間は非常に貴重である事は重々承知の上だったが、それでも彼女の性格が不愉快なので認めたくも無くなる。

 

「不満か? サリア」

 

 ジルの問いに、自分の考えを読まれたサリアはばつの悪そうな表情で答えた。

 

「……すぐ死ぬわ。リオスは兎も角、あの娘は」

 

 リオスはアンジュとは違いこちらの命令を聞く分、規格外の兵器に乗ってようとも運用のしようがあるが、こちらの指示を無視し続けて独断専行するアンジュは機体が規格内(パラメイル)であろうとも運用し辛いし指揮の邪魔である。

 それに、アンジュは周囲から憎悪の対象となっている。彼女の妨害でゾーラは死んでしまったようなものであるが故、それを恨んだロザリーやクリスが戦闘のどさくさに紛れて故意のフレンドリーファイアを行っており、部隊内での雰囲気は険悪だ。

 ヒルダも今は表だって動いてはいないが、何をしでかすか分からない。

 リオスもアンジュを中途半端に庇っている為、ロザリーやクリスから嫌悪の対象となっており、ヒルダとは初見の時点で喧嘩をやらかしている。

 

 こんな部隊内での和がガタガタだというのに、リベルタスの完遂は出来るのであろうか。アンジュさえ居なければと時として思う。アンジュさえ居なければリオスとヒルダが多少仲が悪くともここまで険悪な雰囲気になる事は無かったのだ。

 

「私なら……上手くやれる。私ならもっとヴィルキスを上手く使いこなせる! 使いこなして見せる! なのにどうして……」

 

 不満を爆発させたサリアはジルに問う。

 

「適材適所という奴だ」

「でも、もしヴィルキスに何かあったらリベルタスに影響が……!」

 

 それでもサリアには納得がいかなかった。唯でさえフレンドリーファイアが多発していると言うのに、それで大破されたら困る。

 メイはそれに力強く返した。

 

「その時は―――メイが直す! 命を懸けて。それが私たち一族の使命だから!」

「メイ……」

 

 そんなメイがサリアには眩しくも、頼もしくも見えた。アンジュの生死は兎も角、ヴィルキスが無事ならばやりようはある。今は今を呑み込もうと、サリアは思うのだった。多少の不安はあれど、だが、敬愛するジルの期待に応えたいという気持ちもあったのでその不安もやや無理矢理乍ら呑み込む事にした。

 

「お前は、お前の使命を果たすんだ。良いな?」

「…………はい」

「フッ……良い娘だ」

 

 そう―――尊敬するジルの役に立ちたいのだ。

 ジルに肩を軽く叩かれ、サリアはやってみせると言わんばかりに、不満も不安も呑み込むように拳を固めた。

 

 この『リベルタス』の事については関係者以外内密である事を再度この場に居る者にジルが再確認させてからこの会議はお開きとなった。サリアはジルに己の気持ちを利用されている事も知らずに……

 

「良い娘だ、か。狡い女だね」

 

 解散後、ジャスミンとジルと犬以外執務室から去ると、ジャスミンは軽く呆れたように言った。だが、それはジルも自覚はあったようで―――

 

「何だって利用してやるさ。気持ちだろうが命だろうが、異端者(イレギュラー)だろうが。……地獄にはとっくに落ちている」

 

 ジルはそう言うと、右手の義手で吸っていた煙草を握りしめた。

 

 

 

 リオスが戦線に参加し、1週間が経った。

 本日は給料日なのでサリアを除く第一中隊は銀行に相当する場所にて受け取りを行いに来たのだが……

 

「チッ……これっぽっちかよ」

 

 ロザリーは給料である16万キャッシュ受け取り、金額の少なさに毒づいていると、クリスが自虐的に口を開いた。

 

「充分だよ。私なんて一桁だよ……」

 

 アルゼナルでは、一週間置きに給料の支払いが行われる。給料は戦果と弾薬消費や修理費などによって決まるので、上手く戦える人間は多くの給料を手にする事が出来るのだ。

 その為、弾薬消費があってないようなものである規格外のロザリー曰く『搭乗者に似て色々おかしい』性能の機体に乗っているリオスにとっては特に引かれる給料は少なく、100万キャッシュオーバーはざらである。

 ヒルダも非常に高い技量を持っており、リオスとほぼ同等の給料を手に入れている中、アンジュが得た給料は―――

 

「550万キャッシュです」

 

 この場に居る者全員が唖然とした。アンジュがぶっちぎりでトップだった。リオスやヒルダを大きく突き放すほどの。それも当然か。獲物の横取りを何度もやらかしており、リオスとヒルダも何度かドラゴンにトドメを刺そうとした所で邪魔をされている。それ故、被害の多いヒルダたちの表情は曇った。

 

「す、凄い……」

 

 クリスと同じく一桁であったミランダは感嘆の声を上げる。ほぼ同時期に参入した新人同士なのにどうしてこうも差が付いたのか。恐らく機体性能によるものだけでは無い筈だ。

 

「アンジュやるぅ」

「大活躍だったものねぇ」

 

 比較的被害が少ない、と言うか寛容だったヴィヴィアンとエルシャはアンジュを褒めていた。一方でシエナは少し複雑そうな表情であった。

 比較的シエナと仲が良かったリオスは彼女の今の表情が気になり話しかけた。

 

「どうしたんだシエナ」

「ちょっと……ね。ヒルダさんたち……最近アンジュさんに嫌がらせしているみたいで」

「…………」

 

 シエナは少し暗い顔をしてから、元の綺麗な笑顔に戻った。

 ……ゾーラ隊長の死による怒りと憎しみは仕方がない事とは言えど、看過できる事でもない。リオスは定期的に彼女らの嫌がらせは兎も角、フレンドリーファイアの件については定期的にサリアに報告していた。アンジュの性格が歪み切っているのは承知だが、幾らなんでもやり過ぎだとリオスは感じていたのだ。

 ゾーラが苦手で付き合いが短かったから何とでも言える、と反論されればぐうの音も出ないが。自分がヒルダの立ち位置に居たらアンジュを憎んでいたかも知れない。

 

 だが、生憎リオスはヒルダたちがどういう人生を送り、ゾーラをどれだけ敬愛していたかなんてわかりはしなかった。……知れる訳も無かった。

 

 

 リオスは、収入を預けて無言で去りゆくアンジュの後ろ姿を憎々しげに睨みつけるロザリーたちを見乍ら、溜息を吐いた。




 本作のNBSは弱体化していますが、それでもキチ○イレベルの性能は維持している模様。
 ナインボールのゲーム上での攻撃力やAPの数値はあくまで基準、参考程度ですので、ブレードの威力が弱い事についてはノータッチでお願い致します。
 ゲームの通りにしてしまったらもうこいつ一人でいいんじゃないかな状態になりかねませんので。

 次回『亡霊の、亜種』
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