クロスアンジュ イレギュラーと熾天使の輪舞   作:ヌオー来訪者

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 ゲシュちゃんの亜種登場。

 22話にてエンブリヲがサリアの尻を叩くのを見て何故か面倒が嫌いな人のBGMが脳内再生された。何故だ。ケツドラムの所為なのか?


第8話 亡霊の、亜種

 

「ココが転属!?」

 

 給料受け取り後、給料受け取り場でサリアとばったり会ったミランダは驚愕のあまり声を上げた。ココが別の部隊に転属するのだとサリアは言うのだ。

 偶々居合わせていたリオスもそれを耳にしていたのだが、リオスとしては仕方のない事なのかもしれないと少し納得していた。

 ココの脱走(未遂)はアンジュの脱走(未遂)が居なければ起きなかった事だし、引き離すのが得策だと上が思ったのだろう。仕方のない事とは言え、ココとは小さい頃から一緒に居たというミランダには少し気の毒な話ではある。

 

「えぇ。第二中隊にね」

 

 サリアが肯定すると、ミランダは沈んだ表情で俯いた。何とかならなかったのかとリオスは問うも、サリアは黙って首を横に振った。

 まぁ、当然ではある。これでも相当温情を掛けているのは分かるものである。

 

「部屋、一緒なんだろ? 死んだわけじゃない」

「……うん」

 

 足りない頭で考え付いた慰めの言葉を吐いてから、リオスは大きく溜息を吐いた。

 

 そしてその後、下着が明らかに見えるほどにボロボロの服を着たアンジュが更衣室から出て来るのを見て更に溜息を吐いた。出撃直前まで綺麗な制服だったというのに。シエナの言う事が本当ならば、犯人が誰なのかは直ぐに分かるのだから頭を抱えずには居られなかった。

 

 

 リオスはやる事がなく暇を持て余している際は基本的に少し離れた場所に配置された自分の部屋か図書館、第9番格納庫に籠っている。この数週間の経験則上それ以外に安息の地は無いと判断したのだ。

 図書館は人が少ないし、知り合いであるシエナとかエルシャ(何か料理や栽培関連の奴を持って居る事が多い)、サリアと比較的まとも(?)か温厚な人物が多い。

 鼻息荒くして追って来る人物が全く居ない訳では無いが、不特定多数の居る食堂や廊下、休憩所よりは圧倒的に少ない。

 

 だが、女性たちのネットワークは凄まじいものだ。一ヵ所にとどまっていると、いつの間にかリオス目当てで現れる人間が増える増える。それ故に、様々な場所へとちょくちょく移動する。

 男が貴重な世界だから仕方ないとは言え辛いものだ。視線も、ひそひそ話も。女同士のあけすけな会話も。

 

 ヴィヴィアンのように気兼ねなく話せる人間は少なからずいるが、男程ではない。断じてホモでも何でもないが、同性の存在のありがたみというものをひしひしとここ最近感じつつある。天国と地獄は紙一重と誰が言ったものか。

 最初は視線かひそひそ話で、周囲から恐れられていたのに、今となっては質問攻めの毎日だ。

 

 それが性関連のものが地味に多いので気が滅入る。開き直ってあわよくば一線を越える……という選択肢はリオスには無かった。ヘタレと笑いたければ笑うが良い。だが、何だかズルをしているような感じがして―――今日もリオスは格納庫か退屈なだけの自分の部屋、シュミレーター内等に引きこもるのだ。

 小さなプライドで己を保っていると思うと些か滑稽であるのには違いない。

 

 

 ぶっ通しでシュミレーションをやるのは多少体力を使うが、何も考えずに済むという点では気が非常に楽だ。リオスはシュミレーターから出ながら、相手をしてくれたシエナに感謝した。

 

「さんきゅ。相手してくれて」

 

「まぁ、辛いだろうしね……他に男の人居ないから。でも結構リオスさんの動き、結構参考になるからお互い様よ」

 

 シエナから差し出された水の入ったペットボトルを受け取り、それを一口。アルゼナルに存在するシュミレーターは大分完成度が高く、Gや景色を忠実かつ正確に再現している。それ故に消費する体力は実際に出撃した際に消費される体力とさして変わりがない。その為、連続で戦ったようなものであるリオスは既に体力は残っておらずへとへとである。

 リオス同様疲れ切ったシエナも水を飲もうと、自分のペットボトルのふたに手を掛けたその時だった。

 

「あ」

 

 シエナが、短く声を上げた。リオスは何事かと、シエナの視線の先を見ると、そこにはロザリーとクリスが、アンジュが入ったシュミレーターに置かれたペットボトルに何かを入れているのが見えた。遠くて何も見えないが、どうせ碌なものではあるまい。

 

 タイミング悪くアンジュがシュミレーターから出てきて、ペットボトルを開けて水を一口含めた。

 

「ちょ、それなんかロザリーたちが変なのを入れてて……!」

 

 リオスが叫ぶと、アンジュは興味無さそうにリオスの方を向いてから、物陰でニヤついていたロザリーを見据え、電光石火の勢いで接近。そのまま口移しで何かが入った水をロザリーに呑ませた。

 

「「「あ」」」

 

 ロザリーとアンジュ以外のこの場に居る3人が呆気に取られた。

 ロザリーはそれを呑み込んでしまうと、怒りの余りにアンジュに掴み掛ろうとしたその時―――ぐるるると腹が鳴る音がこの場に響いた。それが誰の腹なのかと問われれば答えは簡単。……ロザリーの腹である。

 

 ロザリーは無言でトイレに向かって走り出し、リオスとシエナはそんなロザリーとおどおどしながら逃げていくクリス、そして何事も無かったかのように去って行くアンジュをリオスたちは見送るしかなかった……

 

 

 

 

 ナインボール=セラフが再起動してからというもの、セラフの調査が再開させられた。噂によるとこの機体もリオス同様出自不明の存在なのだと言う。

 フレームの解析が既に終わってはいるものの、データの解析は全く持って出来ていなかったらしい。発見当初はデータの解析が技術上難しかったものの、現在の技術ならば解析も容易かったらしくかなりの量のデータが手に入ったのだとか。

 そしてそれにより通常のパラメイル用格納庫にて新たに建造され完成された新型機体を、給料受け取り直後ヴィヴィアン機の新装備追加をヴィヴィアン本人と一緒に暇潰しとして見に来た後でリオスはその新型を見かけた。

 

「げ、ゲシュペンスト!?」

 

 リオスは驚愕のあまり思わず声を上げた。視界に入っているのはゲシュペンストだった。リオスが知っているものより小型で細身だが、ゲシュペンストに瓜二つの蒼い機動兵器が立っていた。パラメイルの意匠も入っており、強いて言うならばゲシュペンスト・タイプPM(パラメイル)というべきか。

 リオスの驚愕の声を耳にした近くで機体を見上げていたサリアはリオスの方を向く。

 

「知ってたのね。ゲシュペンスト」

 

「ん?……あぁ」

 

 ラー・カイラム隊時代の同僚が乗っていた機体の一機だ。コスト、性能共に優等生である機体であり、試験的にラー・カイラム隊に一機配備されていた。戦力が不足していた頃は良く助けられたものだ。

 確か性能が本格的に評価されたものの、いざ量産しようとした所で終戦してしまった為、本格的な量産化は見送られた不遇の機体である。だが、悪い機体では決してない。

 

「……あの腕に付いた三つの出っ張りは? 背中に装備された物は何か知ってる? 特性を教えてちょうだい?」

 

 突如問うてきたサリアが指さした先は左腕に付いた白い突起物だった。言うまでもない。これはゲシュペンストシリーズの代名詞の一つである―――

 

「前者はプラズマステーク、刀剣引き抜かずとも殴って強烈なダメージを与える所謂腕に付いた電磁警棒、若しくはスタンガンだ。後者はスプリットミサイル。複数の小型ミサイルを積んでいるコンテナみたいなもんだ」

「…………成程ね」

 

 流暢にリオスはゲシュペンストの情報を語り、サリアはまるで納得の行ったように頷いた。リオスは一体何故そんな事を聞くのか分からず怪訝な表情で何かを考えているらしきサリアの顔を横目で見ていると、自分は墓穴を掘ったのではないかと思うようになった。

 

 よくよく考えれば、UCEが知られていない上にドラゴンという化け物が跳梁跋扈している世界であるので、殆ど別世界ではないか。

 もしかしたら、ここではゲシュペンストは重要機密である可能性だって充分にあり得る。そして異星だか異世界だかの住民であるリオスはイレギュラーでしかない。

 

 

「お前は知り過ぎた。死ね」

 そう言ってサリアは銃をリオスの眉間に突きつけて引き金を容赦なく引いた―――なんてものを幻視しリオスは顔を青ざめさせた。

 いかん……これは、面倒な事に……なった。

 冷や汗が滝のように流れる。

 

 

 ……とまぁ、随分と一人で大いに焦ってどうすれば良いのか考え付かず焦っているリオスを他所に、サリアは考えがまとまったか口を開いた。

 

「ゲシュペンストという名前なら兎も角機体の詳細まで……貴方、本当に何者なの? 素性調査でも全く所在が掴めないしUCE等と言う団体はこの世には存在しない」

 

 正直、知っているがどう答えたものか。

 サリアの質問にリオスは答えに窮した。私は宇宙人ですとか、異世界の住民? そんなものを信じてくれるのか?

 マナが存在せず人間同士が争いっなしの世界をこの世界の住民が信じるのか?

 

「ゲシュペンストのデータはナインボール=セラフから抽出したものよ。……貴方はナインボール=セラフと何か関係が有るというの?」

 

 問い詰めるサリアにリオスは首を横に振った。

 

「……それは俺が知りたいですよ。セラフについてるAIの『H-1』は己の素性に関して沈黙を続けているからゲシュペンストのデータを持って居るというのは知らなかったし考えもしませんがな」

 

 ゲシュペンストのデータがセラフに入っていたのは初耳だった。詳細データが伏せられているのは信用されていないが故か。いや、それ以前に一兵士が知る必要の無い情報だからか。しかしH-1の奴随分と隠し事を多く持つA1な事である。

 ゲシュペンストのデータが有る事は偶然の一致で済むとは思えない。デザインや名前、武器すら一致しているのだ。何かが……ある。

 ここが異星だとしたらUCEの技術を盗用したという可能性もある。

 その話を聞くとナインボール=セラフが随分と胡散臭いメカだと思えるようになって来た。特に現状操縦者が自分自身しか居ないとなると猶更リオスは警戒せずには居られない。だが、これまで何度も助言と性能に助けられたという事実もあるし、それに疑ってばかりだと疲れてしまうだろう。だが、H-1が何者かぐらいは知りたかった。

 何故、こちらに力を提供するのか。何故ゲシュペンストのデータを持って居るのか。

 

「……ちょっとH-1の奴に問いただして来ます」

「あ、ちょっと待ちなさい!」

 

 リオスはサリアの制止を振り切って第9番格納庫のセラフのもとへと走って行った。サリアはリオスが逃亡するのではないかと一瞬危惧したが、セラフ周辺にもスタッフは何人かいるし、そう簡単に出撃ロックは解除されない筈だと考え付き、安堵しつつも追い続けた。リオスの発言を頭に留めてジルに報告すべく内容を頭の中でまとめ乍ら……

 

 

 

 結局、リオスはナインボール=セラフのコックピット内でH-1から問いただしてみるものの碌な情報が得られなかった。 

 しかし、H-1は情報の代わりに

『私は知りたい。人間とやらを。それ故に力を託す』

 と語った。H-1の真意がリオスには分からず、もっとわかりやすく率直に言えと文句を言ったのだがH-1は分かりやすく言ってくれはせず、沈黙するだけだった。

 

 

 

 




 ココ、一時退場。後で出します故……ご了承を。そして胡散臭いセラフ回でした。

 22話見て知ったけどタスクってニンジャだったのね。アイエエエ……


 機体詳細
:ゲシュペンスト・タイプPM
 基本カラーリングは蒼。
 ナインボールにあったデータをもとに持ち得る限りの技術で制作された一機。リオスが居た世界に存在していたゲシュペンストシリーズに酷似している。ナインボールがリオスの居た世界に何かしら関係があると言う疑惑を浮上させた。
 形状は量産型ゲシュペンストMK-2とパラメイルを足して2で割ったようなもので、パラメイルとしては若干マッシブなものとなっている為か、パラメイルの平均的サイズより一回り大きいものとなっている。コックピットは閉鎖式。オリジナルとは違い可変機構有する。本格的に量産する際は気密を廃止する予定。
 グレイブより少々コスト高くつくが、相応のカタログスペックの高さと防御性能の高さ、従来のパラメイルより地上にて地形を上手く利用できるオールラウンダー。
 一部のエース級、及び指揮官に配備される方針である。。
 欠点としては機動力が従来のパラメイルより若干落ちてしまう点。要するにパラメイルの長所である機動性を殺してしまっており、良くも悪くも器用貧乏な機体である。
 標準武装は、プラズマステーク、スプリットミサイル。


 AI詳細
:H-1
 ナインボール=セラフに搭載されている高性能AI。パイロットとも対話が可能だが、自分で多くは語ろうとしない。戦闘の助言か、データの提供のみと、最終決定及び行動は基本的に人間任せ。人間を知ろうとしているようだが……
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