守りたい、ただそれだけ(本編完結) 作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)
時が経つのって意外に早いもんなんだな。だってもう五月なんだぜ。入学したのが四月の頭だから、既に一月は過ごしているわけだ。昨日の臨時休業を含めても時間が経つのが物凄く早く感じている。特に以前と比べるとな。ただ擬似コアをぶっ壊して、それと同時に人の命を刈り取っていくような血生臭い日々を過ごしていたから、時間がどのくらい過ぎたのかほとんどわからなかったもんな、悪い意味で。そこから考えたらいい方向へ俺は変わってきているのかもしれない。
と、まあシリアスな思考はここでやめるとしよう。これ以上入ると五月の頭からへこんだ気分で過ごす羽目になりそうだ。
「それにしても、今朝は何やら騒いでいるような気がすんな」
実際女子達が自分の机の上にカタログを広げて色々と話し込んでいる。
「あ、それってきっとISスーツの注文だと思うよ。ほら、今月末ってキャノンボール・ファストがあるし」
ISスーツ。ISを操縦する上で必要なスーツの事だ。強化合成繊維によるある程度の対弾性に防刃性、筋電位伝達の高効率性など多くの機能を備えた専用装備だ。防弾性や防刃性は各企業ごとに変わってくるようだが、基本的なところは変わらない。ただな…………その見た目が野郎共には毒なんだわ。スク水にニーソのようなもので、その、なんていうんだ、色々とキケンなものだ。まぁ、その辺を考慮すると、俺の戦闘用装備とは遥かに劣っているだろ。ISスーツの平均対弾性は9mmパラベラム程度だ。一方の俺の場合、12.7mm弾は余裕で防いでくれる。防弾アーマー付きのとこに限るが。一般的なISスーツよりも実戦向けにカスタマイズされた結果だから仕方ねえ。戦場でスク水なんて自殺行為もいいとこだ。あ、一夏はその一般的なやつだ。ただ、専用機持ち仕様のカスタムだがな。蒼を基調としたカラーリングだ。ちなみに俺のは黒基調でアーマーの部分に赤いディテールラインが走っている。
それと、キャノンボールファストだが、ISでのレースだ、妨害行為ありの。本来は九月の後半に行われるらしいんだが、今年はこの時期に設定してある。何故か? 束さんルートの情報なんだが、各国の視察団が見に来ようとしても本来の時期では視察に来れないとのことだ。そういう背景もあってこういう事になっている。そのため、各国では専用機の高機動化パッケージの開発が進められている。情報開示が無いため詳細は不明だ。さすがに専用機と訓練機での差文化はされているぞ。じゃなかったら、アンフェアな試合になるからな。戦場でそんなこと通じるのかは知らんけど。あそこ、レギュレーション無しのデスマッチだし。
「そういや、そうだったな。完全に頭から抜けていた。だが、ISスーツの注文となんの関係があるんだ?」
「それはね、なんだか自分のスタイルを確立するためなんだって。支給されているものだけじゃ、足りないものも多いらしいからね」
なるほどな。確かに支給されるものの品質とか性能とかたかが知れているしな。いつか限界とかくるもんなんだろうよ。
「ねー、やっぱりミスルギのインナーモデルが一番よね?」
「えー? ミスルギって見た目だけで、性能良くないって話聞いたよ。それよりもジーライトのストレートモデルはどう?」
「いやいや、そこはやっぱりGEW——じゃなくて、ゼネラル・エレクトロニクス・ウエポンズのアーマーモデルがーー」
「「「それはない」」」
「えー、じゃ、プロミネンスのTSFモデルで」
「「「お前天才か!」」」
…………ただな、社の選択がカオスすぎないか? ミスルギは確か日系イギリス人が立てた多部門企業、ジーライトは欧州で最もISに関する技術を持っている企業、プロミネンスはアメリカの中で一番デカイIS産業企業、そして安定のGEWは実弾兵器に一定の評価があるISの武装や装甲専門の特化企業だ。プロミネンスとGEWは元から兵器産業のトップだしな。GEWの武装は俺も好んで使うし(武装の四割はGEW製)、GEW推してた奴もガトリングとか好きなんだろうか? 俺は特に好きな武装とかはないぞ。使えるものはなんでも使うからな。
「ところで、一夏ちゃんや紅城君のISスーツってどこ製のものなの? 紅城君のはこのカタログでいうGEWのフルプロテクトモデルに近いけど」
「私の? 私のは天兎社の試作品らしいからよくわからないや」
「俺のはそのプロテクトモデルを改造した奴らしいぞ」
はい、俺たちのは真っ赤な嘘です。一夏は束さんがそう吹き込んだらしいがな。俺のやつはプロテクトモデルなんかじゃねえ。ただそう見えるだけで、中身は別もんだ。実戦向けと競技用じゃ性質も違うっての。
「へー、そうなんだ。なんだか特別って感じで素敵だよね」
「そうなのかな? 私はいつまでたっても強くなれないから、そんな気はしないんだけどね」
「ま、搭乗者を守るって意味じゃあ特別なもんだけどな」
「あ、そろそろ先生が来るよ。みんな席に座ろ」
「「「はい!」」」
一夏がそう声をかけると皆は直ぐに席に着いた。一組の奴らは皆一夏の言うことをちゃんと聞き入れてくれている…………一部を除いてなんだがな。でも、それだけ一夏を信頼してくれているってことなんだろう。そういうものを見ていると俺は自然と安心したような気がする。ちなみに一組以外じゃほぼ敵のようなもんだが。どうも『身内の七光り』とかほざいた奴がいるようで、いずれ粛清せねばとか思っているんだわ。人の気にしている地雷原に踏み込んだわけだし。
あとどうでもいい話なんだがな、自称天才とモップは時間ギリギリで来たぜ。毎度毎度思うんだがあいつらは何をしてんだろうかね。『僕のような天才は時間にゆとりがあるんだよ』とか言い出しそうだな。あー、めんどくせ。
「さて、SHRを始めるぞ。今月末にキャノンボール・ファストが行われる。それについては明日詳細を話すとしよう。あと、ISスーツの注文は今日の放課後までとする。決して遅れるなよ」
織斑千冬が比較的まともに仕事をしていた。へー、ちゃんと仕事をするときもあるんだ。俺のイメージでは持てる権威を振りかざして暴君のような振る舞いをしてんじゃないかと思ったんだがな。いつものアレとか見ているとそうとしか思えなくなるからよ。
「最後に山田先生から連絡がある。山田先生、お願いします」
「はい。実は皆さんに嬉しいお知らせがあります。実はこのクラスに転校生が来たんです! それも二人です!!」
「「「よっしゃ、きたぁぁぁぁぁっ!!」」」
て、テンション高えなおい。そこまではしゃぐことなのか、転校生が来ることって?
「では、入ってきてください」
「失礼します」
「失礼する」
山田先生の声に反応して入ってくる影が二つ。一人は、眩い金髪を首のあたりで束ね、少し華奢な感じを与える
「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。皆さん、よろしくお願いします」
男だった。って、どう見てもあの体つきは男のそれじゃねえだろ。どっちかといったらあれは女のそれに近い。ってか、まんまそれだわ。そもそも、新たな男性操縦者が見つかったとかという情報が開示されていねえし、どう考えてもガセでしかないだろ。それに、デュノアといったらIS産業の一角じゃねえか。なんかきなくせえな、おい。
「お、男…………?」
「はい。此方に同じ境遇の人がいると聞いて、本国から転入を…………」
あかん、これはキケンな予感しかしねえ! 俺は慌てて耳を塞ぐ。この間学園の購買で買った百円ものの耳栓だが、あるとないとでは全然違うからな。
「「「きゃあぁぁぁぁぁっ!!」」」
「来たわ! イケメンが来たわ!」
「金髪にアメジストの瞳…………たまらないよ!」
「しかも、紅城君や織斑君とはちがう守ってあげたくなる系の!」
うおぉぉぉっ…………耳栓してもかなりのダメージが鼓膜にやってくるぜ…………一夏は耳を押さえて悶えている。そりゃそうだよな、なんだって窓ガラスにヒビが入るレベルだからな。って、音響兵器なのか…………? 女子の悲鳴ってそんな威力秘めてんの?
「静かにしてください! まだもう一人いますから!」
山田先生がそう言うと、皆の視線はそのもう一人へと向けられた。銀髪で背は低い、目は赤いが左目には眼帯をしている。そして何よりその立ち方だ。仁王立ちだが、どこか軍の人間のような雰囲気を持っているぞ。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。階級はドイツ軍少佐、よろしく頼む」
…………少佐? はぁっ!? あ、あれで少佐なのかよ…………うへぇ、傭兵の俺とは比べもんにならねえや。てか、ドイツっていったらあれじゃん。一夏が前に誘拐された時に連れ去られた場所じゃん。まぁ、あんなことがあったから今があるのかもしんねえけど。
「…………!!」
ボーデヴィッヒは周りを見渡すとある一部に視線を向けて止めた。その向いている先は俺…………ではない。その隣、一夏に向けてだ。その表情はどこか申し訳なさそうな顔をしていた。
「自己紹介は終わったな。次の時間はグラウンドにて実技演習を行う。遅れるなよ」
そう言って織斑千冬は退室し、山田先生もその後へ着いていった。残された俺らは次の授業へと向かうため、準備を始める。
「それじゃ一夏、また後でな」
「うん、また後でね」
さて移動するとしますか。俺ら野郎共はアリーナの更衣室で着替える必要がある。まぁ、そりゃそうか。普通に着替えたら公然わいせつ行為でムショ送りだわ。それだけは勘弁してほしいぜ。ん? デュノアと自称天才はどうするかって? 置き去りにしてエサにしますわ。だって面倒ごとには巻き込まれたくねえしな。
はふー、次は実習かぁ…………なんだか憂鬱です。だって、私才能とかないし、実際運動神経もあまりよくないから絶対失敗とかしそうなきがするし…………うぅ、どうしよう。
「あれ、一夏ちゃん緊張してる?」
「まぁね…………だって、こういうの自信ないし」
「そんなことないって! 専用機を渡されるほどの力があるんだから! それに、失敗しても誰も何も言わないよ!」
「そうだといいんだけどね…………」
相川さんに励まされてちょっと元気になる私。でも、一番はあの三人。何かとつけて文句とか言ってくるから、私の自信なんて物は直ぐに消えちゃうし。どうしたらいいんだろ…………。
「お前が織斑一夏か?」
そんな風に悩んでいる時だった。私はあの転校生のうちの一人、ボーデヴィッヒさんに話しかけられた。うわぁ…………綺麗な髪だなぁ。ヨーロッパの人ってなんでこんなに綺麗な銀髪とか金髪の人が多いんだろう? それと比べたら私の黒髪なんて…………。
「そう、だけど…………何の用かな、ボーデヴィッヒさん」
「いや、今日の放課後時間を貰えるかと相談しに来ただけだ。話があるからな」
「放課後? んー、多分空いていると思うよ」
「それなら良かった。ではヒトナナマルマルに、中庭で待っているぞ」
そう言ってボーデヴィッヒさんは自分の席へ戻って、グラウンドの方へ向かって行ってしまった。それにしても話ってなんなんだろう…………私、あの人と面識ないし…………。
というか皆、『まさか禁断の愛?』『キマシタワー』とか言わないで…………私はそっちに興味ないから。
「そろそろ行かないと遅れるよ! 先に行ってるね!」
「あ、ちょっと待って! すぐ行くから〜〜」
とりあえず、今は授業のことだけ考えてよ。それ以外のことに考えを割いたら絶対どこかでミスをしちゃうかもしれないからね。
授業なんだが、正直だるいんだよな。やる気的な問題で現在沈降中。
「これより一組二組合同で射撃及び格闘を含む実戦訓練を行う。まずは専用機持ちをリーダーとして班を作れ」
そう、専用機持ちが各班のリーダー…………俺がその役目を受ける羽目になったんだわ。そう、野郎の俺がリーダーしてんだよ。つまりをいうとな
「紅城君だ! ラッキー!」
「優しくお願いしますね」
周りが女しかいねえんだよ! それもオアシス抜きで! 俺に死ねとでも言ってんのか!! デュノアも困惑してるしよ…………本当何考えてんの。自称天才は猫かぶったような笑みを浮かべて接してるからなんか受けがいいようだが。
「では歩行訓練をしてください。各班に打鉄が一機ずつ割り当てられているので、それを使用してください」
山田先生がそう言う。確かに打鉄は支給されている。それも駐機状態でな。てか、訓練機は専用機と違って格納とかできないんだったわ。それじゃ、駐機状態で置かれているのも無理はない。
それにしてもやる気沸かねえな、これ。ん? 前に一夏に教えたことあるだろって? あのな、そうもいかねえんだよ。というか、あれはオアシスだったからできたことだぞ。それと同じことを全く知らん奴にやれと? 俺には無理だわ。
だがやらんことには始まらんしな…………腹括ってやるとするか。
「ほらよ、最初の奴起動と歩行をやってくれ。やり方は任せる」
「はーい」
そう言って、初めの女子が打鉄へと乗り込み起動させる。が、歩行の方は今ひとつといった感じだ。体が左右にぶれて重心が安定していない。だが、こうやって実技演習をするのは四度目だしまだ慣れてない奴もいるかもしれん。まぁこれが普通のルーキーだから仕方ない。一夏の方が少し才能があっただけだ。どうしても俺は一夏基準で考えてしまうな。たまには別の人で考えてみよう。例えば束さんとか…………って、無理だ、比べたら比べたで悲惨なことになりそうだ。
「よし、いいぞ。シメに体勢を低くして機体を解除しろ」
「は、はいっ!」
いうことをちゃんと聞いてくれるから問題ねえな。ここでそのままの体勢で機体を駐機状態で解除してしまうと、機体が直立不動の姿勢で固まってしまう。そうなると、装甲の隙間に足をかけて登って搭乗するほかない。あれ下手すると足滑らせて骨折とかすんのよな。
ちらっと一夏の方を見やるとなんか普通に和気藹々と盛り上がりながら練習していた。よかったなー、変に絡まれる必要もねえし、テンポもいい感じで動いているからな。
「はい、次のやつやれ」
こうして授業自体は何事もなく平穏に終わったぜ。はー、俺としては織斑千冬の面倒な話とかなくてスッキリしたわ。だが、こんなペースで高機動レースのキャノンボール・ファストができるのかどうかと言われたら、無理ゲーなんじゃね? てか、キャノンボール・ファストで思い出した。束さんに頼んであるあの追加装備、期日までに完成するんだろうか…………?
放課後。私はボーデヴィッヒさんに言われた通りに中庭のベンチのところへと来ていた。ここは生徒たちの間で憩いの場として使われている場所。私もたまに一人でここに訪れるんだ。色々考えたいこととかもあるしね。
どうやらボーデヴィッヒさんはまだ来ていないみたいだったから、ベンチに座って待つことにした。
「すまない、待たせてしまったか?」
しばらくしてボーデヴィッヒさんがきた。何の用かな? 話があるって言っていたけど、何の話なんだろう?
「ううん、大丈夫。私もさっき来たところだから」
「そうか。それならいいんだが、言った手前、遅れてしまったらなんと詫びたらいいのかとな…………」
「そんなこと考えなくて大丈夫だよ。私はそんなに気にしないから」
「そう言ってもらえると助かる」
ボーデヴィッヒさんって、とても律儀な人みたい。普段気にしない待ち合わせの時間に少し遅れたことも、ちゃんと謝っているんだから。こういうことを気にする人ってそうそういないと思うよ。
「それで、話って?」
私は本題に入ることにした。ここにきたのはボーデヴィッヒさんが私に話があるから。私はその内容が気になって仕方ない。
「それのことなんだがな…………」
ボーデヴィッヒさんは少し言葉を濁す。え? そ、そんなに言いにくい事? というか、本当にアレがコレであんな事だったりしないよね? ね⁉︎
「すまなかった!」
私が変な方向へ思考を張り巡らせている中聞こえた謝罪の声。よく見るとボーデヴィッヒさんが頭を下げている。でも、なんで謝っているんだろう…………私、何かされたっけ? いや、面識がないからそれはない。
「あ、あの、ボーデヴィッヒさん?」
「あの日の事を覚えているか? 第二回モンドグロッソ決勝の日を」
「っ…………!」
忘れられるはずがない。あの日、私は千冬姉さんに捨てられた。そして、悠助に拾ってもらえた日だ。あの日は私の運命を変える日となったのは確かだ。
「あの日、日本政府の一部から要請があったんだ。『織斑千冬の妹が誘拐された。救出を求む』と」
「え…………?」
「だから私達、ドイツ軍特殊作戦群が救出に向かう事になったんだ…………だが、私達が行った時には既に戦闘のあった後で、お前の姿を発見することができなかった」
多分、それって悠助に連れて行かれた後だよね? だったら、見つからないのも仕方ないよ。
「その後、教官として織斑千冬を迎えたのだが、あの人からお前の話題が出ることはなかった。私はずっとそれが心のしこりとなっていたのにな。そして今日、お前の無事な姿を見ることができて嬉しい思いになったのと、あの時何もできなかった自分へのやるせなさ、まともな護衛をつけさせなかったことを悔やんだ。だからこそ、私は一ドイツ軍人として謝罪の意を表したかったんだ。すまなかった…………」
その時のボーデヴィッヒさんはとても心がやつれているような感じがした。そうなんだ…………私の事を助けられなくて後悔している人も世の中にはいるんだ…………。
「ボーデヴィッヒさん、そこまで気にしなくていいよ」
「な、なぜなんだ⁉︎ わ、私はお前に責められてもおかしくない立場にいるんだ‼︎ なのに、何故…………」
「私はね、そういう風に思ってくれる人がいるのはとても嬉しいんだよ。でも、そこまで考えすぎて苦しんでしまう姿を見るのは嫌なんだ。それが私のせいならなおさら。だからもう、この話はおわりにしよ? ね?」
反論してくるボーデヴィッヒさんに私は優しく言う。前も言ったような気がするんだけど、私は私に関わる人が傷つく姿を見たくないの。それが自己満足だってことくらいわかっている。でも、私にはそんな姿を見ることができない。だから、守るために私が傷つくしかなかったんだ。仕方のないことだったしね。ボーデヴィッヒさんにはそんな風になって欲しくないから。
「その代わり、私と友達になってくれるかな?」
「それが償いになるのなら…………」
「だから、そんな事は考えなくていいの!」
「むぅ…………しかし、私の気がすまないんだ」
「友達になって一緒にいてくれる、それだけで十分だよ」
私がそうあっけからんもなく言うと
「お前は変わったやつだな…………だが、嫌いじゃない。よろしくな、織斑一夏」
「よろしくね、ボーデヴィッヒさん。私の事は一夏でいいよ」
「なら、私もラウラで構わん」
「じゃ、寮に戻ろ。ラウラに紹介したい人がいるんだ」
その後寮に戻って、ラウラに紹介した。その時に、あの日悠助に連れて行かれたと行ったら、ラウラ驚いていたなぁ。だって、悠助が『俺、傭兵だから』とか言っちゃうんだから。…………ところで、傭兵って何? 軍とか自衛隊とかならまだわかるんだけど、傭兵って本当になんなんだろう? 今度悠助に聞いてみようかな。
どうやら一夏はボーデヴィッヒ——じゃなくて、ラウラと親睦を深めたようだ。既にトモダーチとか言ってるし。…………つーか俺、さっき傭兵ってもろ言っちまったよ、おい。あかん、これが学園中に広まったら最後、戦争アレルギーの日本人の敵になること間違いなし。その時はその時だ、全力で国外に脱走してやらぁ! …………って、一夏を置いてそんな事はできねえな。
『あ、ゆーくん聞こえてるー?』
ちなみに言うぞ、現在午後十一時だ。こんな時間でもお構いなく通信を入れてくるのはあの人しかいねえ。
「何の用ですか、束さん」
『アレが完成したんだよー! いやー大変だった』
「マジっすか!? じゃ、少なくとも明後日までにはセッティングを行いたいので頼みます」
『もちのロン! 必ず持って行くからね〜』
どうやらアレが完成したようだ。これでキャノンボール・ファストで一夏が大暴れできるぞ。ん? 俺の追加装備じゃないのかって? 俺の追加装備はB型ユニットがあるぞ。だから、俺じゃない。
そう、蒼龍の機動性向上化モジュールユニットだ。どんな仕上がりになっているのか楽しみだぜ。