守りたい、ただそれだけ(本編完結)   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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第17話

朝だ。日光がクソみてえに眩しいぜ。てか、ここまで寝てることもあるんだな、俺。現在時刻は七時。今日は日曜だし、学校自体はない。ただな、食堂で飯食うのはダメだ。あと三十分ほどしかない上に、今の時間いっても混んでいて飯を食えそうにはねえよ。それに、面倒くさそうな連中がいたりしたら厄介だ。ただでさえ一夏が巻き込まれたってのによ…………これ以上されたら本能むき出しでブチ切れる可能性大。装薬済みの実弾を発砲する危険性アリ。俺の中でそう何かが警告していた。自分で言うのもなんだが、どんな警報だ…………。

 

「すぅ…………すぅ…………」

 

その一夏だが、俺の真横で気持ちよさそうに寝ている。夜に繋いだ手はまだ離れていない。離そうにも一夏がしっかりと握っているから離せない。いや、俺が離そうとしていないのか? どっちでもいいか。どのみちこいつを起こす気にはなれねえんだよ。

 

「ふっ…………」

 

気持ちよさそうに寝ている一夏を見ていたら、なんだか笑みがこぼれてしまった。それに、楽しい夢でも見てるのか口元が少し緩んでいる。どんな夢でも見てんだろうな。

 

「…………け…………す…………」

「…………消す?」

 

訂正。中々に物騒な夢でも見てそうな気がしてきた。何を消すつもりなんだ、何を。織斑千冬か? 自称天才か? モップか? 何れにせよ一夏の安寧を妨げるものだがな。早期に潰した方がいいとは思うんだが、殺すという手段は簡単すぎる。どうせ過去の事をネタにしてもシラを切るだろうし、現行犯で記録して尻尾掴むしかねえな。

というかあからさまにいつもとは違う言葉に、俺は驚くほかなかった。いや、だって一夏の口から普通消すなんて出てくるか?そりゃ、消しゴム使う時とかはあるだろうけど、それ以外で使うときなんかあるか、一般人が。ねえだろ、絶対。

 

「……………………」

 

こいつの考えていることが、今ひとつよく分からなくなった瞬間だった。

 

「ちょっと、悠助に一夏? 食堂しまっちゃったわ…………よ…………」

 

俺の返答もなく部屋に入ってきたのは鈴だった。って、この状況をがっつり見られてんじゃねえかよ⁉︎ どう弁明すればいいんだ⁉︎ 俺は社会的に殺される‼︎

鈴は口を開けたまま固まってしまっている。あー、どうすりゃいいのこれ。言っておくが、俺は何も間違いを起こしちゃいねえぞ。本当だからな。

 

「…………ご、ごゆっくりどうぞー」

「まておい、誤解するんじゃねえ」

 

このままではあらぬ誤解を生み出す恐れがある——というか、もう生んじゃってるけどよ、拡散だけは防ぐため鈴を呼び止める。

 

「…………な、何がどうしてこうなっているのよ? 明らかにナニをナニした後みたいな感じじゃないの」

「言っておくけどよ、俺はベッドウェー海戦もシュラバヤ沖海戦もしてねえからな。マジで。ただ一夏がここに潜り込んできただけ」

「じゃなんで出てこないのよ? もう食堂しまった時間よ」

「ああ、それはだな、夜中に一夏が怖いっていうから手をつないだんだけどよ、朝になっても離してもらえなくてな…………それに、この寝顔見て起こせるか?」

「…………無理ね」

 

鈴は一夏の顔を覗き込んで納得したようだ。しかもやれやれといった感じでため息もついてな。

 

「あんたらねぇ…………朝っぱらから見せつけてんじゃないわよ」

「いや、お前が入ってきただけだろ」

 

冤罪じゃんかよ、まったく。言っとくがよ、お前がノックさえしておけばこうはならなかったと俺は思っているんだがな。

 

「ふあぁ…………」

 

少し気の抜けたような声を出しながら一夏が起きた。目が開いてないところを見ると、完全に寝ぼけている模様。今日はアホ毛は出てないようだ。

 

「おはよう、一夏」

「悠助〜、おはよ〜」

「完全にあたしは空気ね…………」

「おはよ〜、鈴〜…………鈴?」

 

一夏は鈴の名前を呼んだことに疑問を持つ。目をパチパチとさせて視界がはっきりしたであろうとき、自分の置かれている状況を確認し、周りを見渡す。そして、状況を理解した瞬間、顔を紅潮させた。

 

「はわぁぁぁぁぁっ!?」

 

朝っぱらから至近距離で悲鳴を聞いた俺の耳は、小一時間ほどその機能を低下させていたのだった。

 

 

 

 

 

さて、学年別トーナメントが行われるまで残り二週間となった。ここまで、一夏との連携訓練を行ってきたが、なかなかにいいプレーを出すことができている。俺が中距離から遠距離を担当し、一夏が近距離から中距離を担当する布陣だ。まぁ妥当な判断だろうよ。たまに入れ替わって俺が近接戦闘、一夏が援護射撃を行うパターンもやってみたが、一夏の射撃があまり当たらないため、本当の意味での牽制になっている。だが、有効打を与えられないもんだからサブプランとして保留。

そして今もまた第二アリーナで仮想ターゲットドローンを用いた訓練をしているところだ。ちなみにこれも仮想空間で行っているもの。敵機が大破してもプログラムポリゴンに変わるだけだから、金とか必要なくていいわ。

 

「一夏! 右側に回り込め!」

「うん! 悠助はそのまま撃ち続けて!」

 

現在使用しているドローンは近接戦闘型と中距離射撃型。どっちも近接武装持ち。一夏はその近接攻撃をビームサーベルで受け流すと、右側へ回り込む。俺はそのままアサルトライフルとバズーカを撃ち続けて牽制。バズーカには散弾をセット、ドローンの移動範囲をそれで押さえつける。

 

「てやぁぁぁっ!」

 

一夏は側面から一気にドローンへ急襲を仕掛けた。両手にはハンドバスターソードが握られている。振り抜かれた二本のバスターソードはドローンの腕と脚をそれぞれ吹き飛ばした。このような表現になるのは仕方ないことだ。あっちにはコアも積んでないから、シールドバリアみたいな便利なもんはないんだよ。

だが、中距離射撃型がマシンガンを残された右腕で一夏へと放った。一夏はそれを軽く回避すると、アームカノンで牽制をしていく。

 

「悠助! お願い!」

「ほいきた!」

 

俺はバズーカの弾頭を対IS用成形炸薬弾へと変更する。散弾は軟標的にはもってこいの弾だが、硬標的に対しては大して効果がない。精々ISでならエネルギーを一気に削れる程度。だが、それよりも対IS用成形炸薬弾のほうが与えるダメージは大きい。

俺は照準を中距離射撃型のドローンに合わせ、三発放った。む? 近接戦闘型? あれなら一夏が今相手してる。一夏って、遊撃手みたいな才能でもあったりするのか?

とりあえず着弾した弾は盛大な爆発を引き起こし、ドローンを爆煙で包み込んだ。煙が晴れた中から出てきたのは胴体から真っ二つにちぎれ飛んだドローンの無残な姿であった。

 

「せいやっ!」

 

どうやら向こうも終わったようだな。ハンドバスターソードで頭から両断していやがるぜ。見事な一刀両断だ。

 

『ターゲットドローン、大破。仮想状況を終了』

 

そのアナウンスと共にドローンはプログラムポリゴンとして消えていった。

 

「ふぅ、大分良くなってきたんじゃねえの?」

「そうだね。でも、やっぱり後半になると一つずつ倒す事になっちゃうよ」

「各個撃破は重要だからな。以前やった時、二機纏めてやったらお前が攻撃するときに俺は撃てないし、俺が撃つ時お前が攻撃できなかっただろ?」

「うぐ…………そ、そうだけどさ」

 

そうなんだよな。いくらISの方でリコイルコントロールをしているといっても、反動はあるからな。精密射撃が分野じゃない俺には同時攻撃なんて難しいぜ。それに、俺の機体に積んである火器の多くは重火器だ。ガトリングに始まり、バズーカ、グレネードランチャー、ミサイル、手持ちの榴弾砲とか色々吹っ飛んでいるぜ。

 

「で、でも、連携は取れてきたから、大丈夫だよね」

「まぁ、そうだな。よし、もうちっとやっておくか」

「うん! 訓練はたくさんした方がいいもんね」

 

というわけでもう一戦する事となった。使用するドローンは全距離対応型。装備はブレードからグレネードまで色々揃っている、ドローンの中では一番厄介なやつだ。だが、その方がやりがいがある。俺たち専用機持ちは一部を除けばそれぞれの得意な戦闘距離がある程度わかっている。だが、訓練機の連中はどの装備を使ってくるかわからない。だからこそこの全距離対応型で訓練する必要があるんだ。それなら、いきなり布陣が変わってもある程度は対応できるからな。ちなみにここまで操縦者の技量は一切考慮していない。

ドローンが姿を現わす。装備には実体シールドが付けられている。手には一般的なアサルトライフル。他にも何か隠し持っていそうだが、何を持っているかまでは判別できない。

 

「よし、行くぞ!」

「了解っ!」

 

一夏は先程同様に先行していく。あの機動力は本当に化け物じみているぜ。瞬間的な加速力では何者の追随を許さないだろう。

さて、俺も武装を展開するとしますか。この間GEWに裏から発注した武装が届いたしな。ハンドミサイルランチャーの代わりだ。

ツインガトリングガン。

その名前のままだ。口径30mmガトリングが二連装になった、以上。しかも片手で扱うことが可能なほどだ。まぁ、俺の機体出力で無理無理持っているようなものだけど。装填弾数はガトリング一基につき2500発。だから、ツインガトリングガンだけを見ると5000発という脅威の弾数だぜ。俺はそれを両手に装備する。中々の重量がかかってくるがパワーアシストによってそれも大分軽減される。

 

「一夏! 射線上から避けろ!」

 

一夏は機動力を生かしてドローンの後方へまわる。成る程、それで射線上から避けたわけだな。しかも切り結んで押さえているぜ。これは最高のアシストだ。

 

「一斉掃射!」

 

俺はツインガトリングガンのトリガーを引いた。直後、俺の目の前はマズルフラッシュで埋め尽くされる。それと同時に聞こえてくるモーター音と発砲音。これは中々にいい武器だ。この圧倒的な弾幕にドローンはシールドを構えて防御する。

 

「えぇぇぇぇぇっ!? ど、どれだけ撃ってるの!?」

「ドローンの牽制はこっちに任せろ! 一気に切り込め!」

 

シールドを構えているやつはその隙間からアサルトライフルを覗かせ、撃ってきた。俺はそれを回避するも、射線がぶれてしまう。もう一機は切り込んだ一夏にブレードで対応している。

 

「オラオラッ! まだまだ食らっていけ!」

 

俺はとにかく弾丸を叩き込む。いっそ弾切れになってもいいわ。その時はその時で近接戦に持ち込むし。次第にドローンの表面はボコボコになっていく。残弾はまだ半分近く残っているぜ。…………破壊力やベー。

 

「えいっ!」

 

一夏はブレードライフルに装備を切り替え、その重厚で長大な刀身をドローンに突き刺した。うわ、エグいわ。しかもブレードまで砕いているし…………ほんと何なのあの機体の武器は。どんな技術詰まってんだよ。

 

「ゆ、悠助? もう、ドローン動き止まっているよ?」

「あ、本当だ」

 

一方の俺は気がついたらドローンが鎮座していた。しかも蜂の巣で。…………つい買ってしまったツインガトリングガンだが、予想以上の破壊力を持っていたぜ。GEWも十分変態の域に足を突っ込んできたな。ガトリング以外は普通の実質剛健的な武器なのによ。

 

『ターゲットドローン、大破。仮想状況を終了します』

 

プログラムポリゴンとしてドローンは消えていく。

 

「今の連携って、なかなか良かったんじゃないかな?」

「多分、な。このガトリングでの牽制が効いたのかもしれん」

「あはは…………その武器で相手にはされたくないよ」

 

だろうな。まぁ、擬似コアISが束になってかかってきたらこいつをつかって相手にしてやろうか。大量のスクラップが生産できるぜ。

まぁ、今はそんなこと考えるよりも

 

「動きまくったから、腹減ったわ…………」

 

飯を食いてえわ。時刻は午後六時。飯の頃合いには丁度いい時間であった。

 

 

 

 

 

「今日も飯が旨え」

 

食堂にて晩飯。まぁ、当たり前だけどな。今日は特盛唐揚定食を注文した。特大サイズの唐揚が山のように積み上げられている光景はそうそう見ることができないぞ。まず、周囲の女子が驚いている。一夏は見慣れているからな、このくらい。前はカツ丼特盛注文したらカツが三枚、米が四合の大食い選手権クラスの奴が出てきたしな。まぁ、しっかりと完食したが。

 

「本当に沢山食べるんだね」

「俺、身体が資本だからな。これくらいは取っておかねえと」

「…………それで痩せているから羨ましいよ」

「なんか言ったか?」

「なんでもないよ!」

 

至近距離だからバッチリ聞こえているんだがな。それにしても俺が痩せている、ねえ…………おそらく極限にまで燃費の悪いこの身体が原因なんだろうよ。食う時と食わない時の差が激しい上に、身体のほとんどが筋肉質、燃料もどか食いするわけだわ。

てか、一夏よ。お前も十分痩せていると思うぜ。俺は痩せすぎず、かといって太りすぎてない丁度いい体型の奴がいいぞ。普通が一番なんだ、普通が。

食いながら思考にふけっているときに、俺はある約束を思い出した。

 

「そういやさ、一夏」

「なにかな?」

「キャノンボール・ファストの後の約束全然果たしてなかったな」

「なんだっけ?」

「優勝したからなんか奢ってやるってやつだ」

 

実際、俺もついさっきまで忘れていた。てか、キャノンボール・ファストの翌日に一夏の優勝パーティをしたからな。その時に一夏は幸せそうにケーキ食ってたし、俺も俺で渡されたローストチキン食ってたしな…………忘れててもおかしくねえや。

 

「あ、忘れてた…………」

「お前のことだから言うと思ったわ」

 

そう言ってまた一つ唐揚を口に放り込む。お、これは皮付きか。当たりだぜ。やっぱ鶏肉は皮がついてこそいい味がでるんだよなー。なぜ、皮をはぐ奴等がいるのか俺は知りたい。

 

「ま、どうせ思い出したとこだしよ、忘れる前に頼むぜ」

「じゃ、注文してきていいの?」

「おうよ。これ財布な」

 

俺は一夏に財布を渡す。中にはさほど金は入っていない。ブラックカードは別に仕舞ってあるしな。ま、なんか追加で頼むくらいはできんだろうよ。

 

「ありがとう。注文してくるねー」

 

そう言って一夏はカウンターの方へと向かった。ん? 一夏をちょっと甘やかしすぎなんじゃないのかって? 別にいいじゃんかよ。今までの分も幸せに過ごしてもらいたいんだがら、必然的にこうなっちまうだろ。それに…………一夏の笑顔とか見れんだからこっちにしても損はねえんだ。

 

 

「ふあぁ…………幸せ〜〜」

 

唐揚定食を食い終えた俺の横では一夏が幸せそうな笑顔を振りまいていた。あ、あかん、破壊力が高すぎる。俺の装甲では受けきれんぞ。

ちなみに今回はチョコケーキを注文してきた模様。本当に好きだよな、甘いもんとかよ。それにしても甘いもんか…………どら焼きなら食いてえな。

 

「うわぁ…………この辺り甘すぎるよ」

「む? デュノア、この辺には砂糖など撒いていないぞ」

「そういう意味じゃないのよ」

「そうですわよ。人間関係でのことです」

「…………この辺は、砂糖だ!」

 

気がつくといつものメンバーが揃い始めていた。ちなみにデュノアとラウラが加わったのは、あの事件以降だ。どうやらデュノアのやつ、鈴やセシリア、簪にも素性を暴露したらひい。よくやる気出たよなー。そういうことでこのメンツはそれぞれの事情を色々と知っているわけだ。

 

「よぉ、お前らも丁度飯食いにきたのか?」

「…………違う。晩御飯は済ませた。二人を見つけたからきただけ」

「それとこの一角だけ異様に甘いのよ。砂糖生産しすぎ」

 

毎度毎度思うんだが、砂糖の生産はしてねえよ、マジで。だって俺、製糖業者じゃねえし。原料のサトウキビすらてにはいらねえんだから無理に決まってらぁ。

 

「悠助と一夏っていつも一緒にいるが、何かあるのか?」

 

ラウラが何気なくそう聞いてくる。何かあるっていうか、単にいるだけだぜ?

 

「ラウラ、あんたは少し察しなさい」

 

鈴がそう言って、ラウラにツッコミを入れる。いや、察すも何も単にいるだけだっつーの。

そう思って隣の一夏を見ると少し顔を赤くしちゃってるんだよな…………毎回思うんだが、何で一夏はこういう事で顔を赤くするんだ? 俺には理解ができてないんだが…………。

 

「一夏さんの反応をみてなんとも思わないとは…………これはかなりの鈍感ですわね」

「おいセシリア、聞こえてんぞ。後で屋上こいや、オラ」

「いや、鈍感だよね? というか付き合ったらどうなの?」

 

いや、誰と付き合えと言うんだ、デュノア。俺に見合うような女はいねえんだよ。まず、一夏は俺にとっちゃレベル高すぎる上に護衛対象。不幸にだけはさせたくねえんだよな。

となると殆どの人間が俺の対象から外れんのよ。ダメじゃん。

 

「すまん、ちょっと席を外すわ」

「? どこ行くの?」

「お手洗い」

 

少々下腹部に違和感を感じたため便所に向かうことにした。おそらく水分取りすぎた可能性アリ。訓練後にスポーツドリンク一気飲みしたしな。

 

 

 

 

 

「さて〜、あの鈍感野郎が席を外したことだし〜、いろいろ聞いちゃおうかな〜?」

 

え、えーと、私は今、ある意味で危機に立たされています。というのもですね、悠助がお手洗いに行ったものだから、みんなの目つきが変わったんだよ。特に鈴からは謎のオーラのようなものを感じるし…………なんなのこれ?

 

「い、色々って?」

「あいつについてよ」

 

鈴の言うあいつとは、おそらく悠助のことだと思う。私の前では春十や千冬姉さんについての話題を決して出さないし、春十が絡んできたときはいつも助けてくれたからね。

 

「悠助について?」

「そうよ。あんたがどう思っているのか気になるしね」

 

鈴がそう言った時、私の心臓は一段と大きい鼓動をした。自分の顔が熱くなっていくのもわかる。なんでだろ、悠助を意識するといつもこうだ。

 

「そ、それは、助けてもらったから恩を感じてるし…………優しくしてもらってるから嬉しい、かな?」

 

私はそう答えた。これ以外にも感じていることはあるんだけど、なんだか形にはなってないから、うまく言えない。

 

「…………こういうと思った」

「…………結果は目に見えていましたわ」

 

だけど、その答えは簪とセシリアに呆れられてしまった上にため息までつかれてしまった。むぅ、人の思っていることをそんな風に扱うなんて。

 

「あはは…………一夏、僕たちが聞いているのはそういうことじゃないんだよ」

 

シャルロット——じゃなかった、デュノアはそう言ってきた。あぶないあぶない、心の中だけど名前で呼んじゃったよ。

というか、私にどういう答えを求めているんだろう? そう思って少し考えていると

 

「はぁ〜、この子も大概に鈍感ねぇ…………あのねぇ、あたし達はあんたがあいつの事を好きかどうか聞いてるの」

 

鈴がそう言った時、私の鼓動はさらに一段と強くなった。しかも激しく脈を打ってるし…………こころなしか顔も熱いよ…………。私が悠助を好き、か…………形になっていないのって、もしかして

 

「た、多分だけど…………好き、だよ?」

「その言い方やめてー! そして上目遣いで、手をもじもじさせて、恥ずかしそうに言うのやめてー!」

「な、なんだかいけないことをしているような気分になってしまいますわ!」

「…………ダメ、少しいじめたくなった」

「…………うん、みんながダメージをもらうのもわかるよ」

 

私が答えたらなんだか大変なことになってしまった。というか、これじゃツッコミきれないよ!? それに簪、ちょっと怖いって思ってしまったからね!? いじめないでね、ね!? いじめられたら、私、絶対に泣いちゃうよ!? てか、涙目想像した人、今すぐ忘れてぇぇぇぇぇっ!!

 

 

「それで、なんで答えが疑問系なのよ?」

 

暫くしてラウラ以外のみんなが復活し、再び質問は始まった。

 

「だ、だって…………好きとかっていう気持ちがよくわからなかったし…………」

 

私は少し手を弄ばせながらそう答えた。実際よく分からないからね。

 

「…………ヤバ、いじめたい、じゅる」

「簪!?」

「…………冗談」

「そうは聞こえないよ!?」

「簪、ちょっと落ち着こうね。これじゃ、話が進まないよ」

 

デュノアが簪を落ち着かせてくれた。ふぅ…………もしあの調子だったら、本当に私いじられていたかも…………。

 

「でも、どうしてわからなかったの? ほら、お母さんとか好きとか思ったことないの?」

「デュノア!? その質問はタブー!!」

 

デュノアの質問は確かに私にとってタブーだね。鈴や悠助は知っているけど、みんなは知らないから仕方ないか。

 

「別にいいよ、鈴。今更なことだから」

「…………一夏がいいのなら仕方ないわね」

「どういうことなの?」

「私ね、見捨てられたの、家族に。周りの受けも悪かったしね。人から嫌われるような人だったから、誰かを好きって思える気持ちがよくわからなかったの」

「「「「…………」」」」

 

私の言葉でお通夜ムード直行です、はい。でも実際そうだからね。父さんや母さんは私や千冬姉さん、春十を残して消えたし、二人については言うまでもないね。こんな環境にいたら、人を好きになるどころか疑うしかできないよ。はじめの頃は、束さん以外誰も信じられなかったし。少し信じれる人がいたから、人間全員を疑うってことはなかったけどね。そのせいで少しあやふやなところがあったんだよ。

 

「…………ごめん、なんか辛いこと思い出させちゃったね」

「いいよいいよ、気にしてないから。それに、デュノアからも前に聞かせてもらったしね。おあいこだよ」

「それで、本題に戻すけど、あんたは悠助の事が好きって事でいいのね?」

 

鈴からの問いに私は頷いて答えた。ついさっきやっとわかったことだし、その気持ちを否定することはないよ。

 

「じゃ、さっさと付き合っちゃいなさいよ」

 

そう答えたら答えたで鈴はそう言ってきた。

 

「ふぇっ!? そ、そんなのむ、無理だよ!!」

「どうしてですの? あんなにお似合いですのに」

「だ、だって…………悠助には私なんかじゃ釣り合わないし、それに非才な私じゃ迷惑ばっかりかけちゃいそうだから…………」

 

だってそうでしょ? あんなに何でもかんでもできちゃう悠助に何をしてもそれなりにしかできないわたしとじゃ釣り合いが取れないでしょ? 悠助にはお世話になりっぱなしだから…………これ以上は迷惑かけたくないなぁ。

 

「…………これは見事に擦れてる」

「…………あんたの言う通りになったわね」

「…………おそらく向こうも同じ思いですわ」

 

三人が集まって何かをヒソヒソと話している。聞こえないなぁ…………何を話しているんだろう?

 

「三人ともどうしたの?」

「な、なんでもないわよ。あんたの気持ちはよくかったわ」

「というか、悠助長くない? 男の人って早く終わるものだよね?」

 

確かに悠助の戻り遅いなぁ。何かあったのかな?

 

「うむ、やはり緑茶は落ち着くな」

 

あと、私達が話している間中、ラウラはずっとお茶を飲んでいた。ど、どのくらい飲むんだろ…………。

 

 

 

 

 

「あぁぁぁぁぁ〜、三日振りだぜ、イェー」

 

その頃悠助は、便器内に急降下爆撃で三日物を出していたのだった。

 

 

 

 

 

さて、学年別トーナメント前日だぜ。今日、トーナメント表が発表される。発表方法は自室に備え付けのパソコンにメールとして送られてくるというシステムだ。妙なところでハイテクだぜ全く。

 

「あ、メールが届いたみたいだよ」

「丁度きたみたいだな。どれ、俺たちは…………Aブロックの一回戦第一試合か」

 

かなり初めの方だった。というか開幕直後の試合じゃねえかよ。

 

「うわぁ…………相手が強すぎるよ」

 

だが試合順とかはこの際関係ない。それよりも相手がヤバい奴らだった。

 

「ラウラとデュノアのペアって…………あれ最強クラスの組み合わせだろうが」

 

砲撃に特殊兵装付きと遊撃に多彩な銃器、明らかに組み合わせとしてはいいだろう。それに高い技量だって持ち合わせている。おそらく一年の中では最強クラスの技量。正直勝てるかどうかも怪しい。

その後俺たちはどう戦うのか、その戦略について話し合っていた。全ては勝つために。




悠助「そういやさ、作者」

な、なにかな?

悠助「蒼龍の写真、どうした?」

…………課題とかありすぎて忘れてました。

一夏「さ、作者さん、忘れてたんですか?(涙目)」
悠助「…………写真、次までとは言わんから早めに頼むぞ」
一夏「や、約束ですからねっ!」

わ、わかりましたよ…………高校の新学期が始まるので、更新は遅れる可能性大です。これからもぬるい目でお願いします。
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