守りたい、ただそれだけ(本編完結) 作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)
「まさか初戦がお前らだとは思っていなかったぜ」
「それは私も同じだ。できれば最後の楽しみに取っておきたかったんだがな」
学年別トーナメント当日。第三アリーナにて俺と一夏、ラウラとデュノアは向かい合っていた。初戦の相手がこいつらだ。近距離も遠距離も隙のねえコンビだぜ。まぁ、だからと言って諦める気はさらさらねえんだけどな。
というか、相変わらずだが観客多いなー。アリーナのほとんどの席が埋まってしまってるぞ。挙句、各国の視察団が来てるし、面倒なことになったねえ。各国の視察団が来るのは構わないんだが、なにも女性権利団体まで来る必要はねえだろ。あのエゴイストどもが。お前らみたいなやつらのせいでどれだけの人が苦しんでると思ってるんだ。一夏もその被害者の一人だからな、お前らの勝手な思想を押し付けた結果だぜ。
「今日は絶対勝つからね!」
「僕だってそれは譲れないよ」
一夏とデュノアはいい感じに火花を散らししている。うん、ガチの対立とかじゃなくていいねえ。戦場基準だが、あの対立はドロドロして汚ねえもんだぜ。互いに牽制し合うのはわかるが、何も榴弾砲の撃ち合いや、擬似コアISを投入しての侵攻戦まで発展するからな。
「そういえばお前とは模擬戦を一度もしたことがなかったな」
「ああ。まさか実戦で相手とは…………戦場での相手がどんなのかわからない感覚が蘇ってきたな」
「傭兵としてのか?」
「当たり前だ。生き残るための能力とでも言ってくれ」
さて、試合もそろそろ始まりそうだし追加ユニットを選択するとしますか。今回は後方支援が主な仕事だからな、やっぱり射撃特化になるあのユニットを装備するか。
『開始まで残り五秒』
アナウンスが入る。俺たちは姿勢を前傾させいつでも試合を始められるようにスタンバイしておく。
『残り四秒』
俺は追加ユニットを展開する。今回選択したのはG型。バックパックに接続されたこのユニットとショルダーモジュール、ライトアームモジュールが展開される。両肩には三連装ミサイルポッド、右腕には105mmオートカノンが接続される。オートカノンとは大口径の砲弾を高速射撃できる装備だ。ちなみに105mmとは米軍のガンシップに積んである榴弾砲と同じ口径。両肩の三連装ミサイルポッドには各種弾頭を任意で装填可能。通常弾頭からバンカーバスター、ある時はクラスターまで装填できるぜ。クラスター禁止条約? そんなもんすでに形骸化してるわ。戦場でボンボンとクラスター爆弾は撒かれるしな。
『残り三秒』
視線操作でオートカノンに弾薬を装填させる。対IS用APFSDS弾で十分か。ミサイルは普通にHEAISーー対IS用成形炸薬弾で問題ねえ。というか半ばオーバーな火力かもしれんがな。背部60mmガトリングには通常の徹甲弾、レールキャノンにはオートカノンと同じ対IS用APFSDS弾でいい。機動性はギリギリ追加スラスターがあるからホバリングで移動可能だ。
『残り二秒』
空いている左手に武装を展開。牽制用にツインガトリングガンを装備する。流石に連射可能な武装が背部ガトリングとオートカノンだけでは少々心許ないわ。弾幕さえ張れればなんとかなる。
『残り一秒』
全銃火器の安全装置を解除。視線操作によるロックオンをラウラとデュノアに掛けた。初撃で使用するのは三連装ミサイルポッド。別に当たらなくてもいい。当たってくれたらそりゃ楽なんだがな。まぁ、そうそう当たることないんだけどな。二発しか撃たんし。所詮牽制だ。あとは一夏が突っ込んでくれるさ。
『試合開始』
「ランチャーR1、L1、ファイア!!」
「初撃で沈める!!」
そのアナウンスと共に俺はミサイル発射管R1とL1から対IS用に調整されたミサイルを放った。サイズ的にはジャベリンとかスティンガーくらいのミサイルだが、その中に詰まっているのは対IS用成形炸薬弾。俺と同じ考えをしていたであろうラウラも右肩のレールカノンを放ってきた。ミサイルと音速の砲弾がぶつかり、俺たちの間には爆煙が立ち込める。あかん、これは散開しねえと。
「一夏! 各個撃破に移る! 俺はラウラをやるから、お前はデュノアを!」
「わかった!」
レーダーで一夏が俺の近くから離れ、デュノアもそちらの方へと移動を開始する。なんとか思惑通りには動いてくれたようだがな…………
「おいおい、爆煙が立ち込めている間にそのレールカノンを撃って沈めねえのかよ? 随分余裕じゃねえか」
「あれでは卑怯だろうからな。正面からの真剣勝負といこうではないか」
なるほどねぇ。姑息な手段で俺を沈める気はねえんだな。ならば
「お相手してやろうじゃねえかよ!」
俺はオートカノン、ツインガトリングガン、背部ガトリングを一斉射した。レールキャノンはウエイトがきついし、ミサイルはロックを掛けるのにちょっと時間がかかるからな。こういう時はこの連射系統が使いやすいんだ。
「圧倒的弾幕だな! だがしかし!」
ラウラは回避をしようともせずにその場に留まった。そして、右手を前に突き出した、その瞬間
「お、おいおい、マジかよ…………弾が止まるなんて聞いてねえぞ」
「私のAICの前では無意味だ」
そういやドイツが第三世代兵装を開発したって話あったな。確か、物体に空間の圧力をかけて拘束する兵装、慣性停止結界、アクティブ・イナーシャル・キャンセラーだったっけか…………略称はAIC、効果範囲はどこまでかはわからんが、操縦者の集中力に関係してくるだろう。ラウラはドイツ軍のIS乗りだし、この兵装に対する知識等も秀ているはず。近接戦闘なんかで止められたらアウトもいいとこだぜ。だが、ぶち抜けないことはないかもしれんな。
「そんなもん、まだ始まったばかりだろうが!」
俺は再び連射系武器をラウラに撃ち続ける。弾丸は全て見えない障壁に阻まれ止められていく。だが、それでいいんだ。弾速は全て同じだし、紛れ込ませるには丁度いいさ。
(ランチャーR2、発射。同時にR1、2、L1に通常弾頭装填)
ミサイルポッドから通常弾頭のミサイルを放った。ISに対してもそれなりの威力はある代物だ。ただし弾速は遅い。
「こんなミサイル、余裕で止められるぞ!」
ラウラはミサイルまでをも受け止めてくれた。よっしゃ、ラッキー! というか、この弾幕の中を無事にたどり着けたこと。止められてミサイルには無数の弾丸が当たっていく。その内の一発がミサイルを起爆させた。再び爆煙が俺たちを包む。
「くっ! やるな!」
すると、なにやらジャラジャラと金属の塊が落ちていくような音が聞こえた。間違いない、止められていた弾丸だ。つまり、あれは対象に集中していないと意味がないということだな。それに、爆煙がいい感じに漂っているぜ。
俺はレールキャノンのロックをラウラへと掛けた。電力が充填され、基部から排熱が行われていく。そして、虹色の閃光とプラズマと共に飛翔体が放たれた。
「ぬうっ!! この砲弾のダメージ…………私のレールカノンよりも強い!」
どうやら、直撃とまではいかないが、それなりのダメージを与えることはできたようだ。まぁ、レールキャノンにはリミッターがかけられているしな。フル状態で撃ったらあの時の無人機のようになってしまうぜ。
俺はホバーで移動をしながら、ガトリングやオートカノンをそれぞれ三秒バーストで撃ち続けた。バースト射撃による制限をかけないとすぐに弾切れになっちまうぜ。背部ガトリングは量子変換分の弾薬しか撃てんからな。確か最大装填数25000発だった気がする。
「だが、その装備では近接戦闘には向かないはずだ!」
ラウラはそう言ってレールカノンを撃ってきながら一気に接近してきた。俺も弾幕とミサイルで応戦するが、ことごとく回避される上に、ワイヤーブレードで背部ガトリングを押さえられてしまっている。レールキャノンは取り回しが悪いからダメだしな…………。
「貰ったぞ!」
距離が十メートルまで狭まった時、ラウラは両手のプラズマブレードを展開させ斬りかかる体勢を取っていた。仕方ねえ、こいつで近接戦闘なんかしたことないけどやってみるか。
「斬り捨て、御免!」
「させるか!」
俺はオートカノンの砲身を折りたたみ、ツインガトリングガンを格納、両手にバスターソードを展開してプラズマブレードを受け止めた。ドイツ式のプラズマブレードは武器重量を含まない腕本来の力だけで斬りかかる武装、だから少し軽い感じがするな。まぁ、実体兵器と光学兵器の差もあるんだろうけど。だがその分連続攻撃をされる可能性も捨てられないからな。軽いってことは切り返しが速いんだよ。
「軍用機であるレーゲンがパワー負けしているだと…………! その機体、どれだけの出力を誇るのだ⁉︎」
「あぁ、その気になればお前の国のレオパルドすら持ち上げられるぜ!」
「持ったことあるのか!?」
「いや、まだないぞ。精々フェルディナントくらいか?」
「それもドイツの重戦車だ!!」
いや、フェルディナントは重戦車というよりは、自走砲だろ。回転式砲塔を持たないし、何より装甲が薄いじゃねえか。というか、あれなんで運んだんだっけ? あ、確か束さんが戦車に興味示した挙句、ドイツの軍事博物館の展示品の移動を手伝う羽目になったんだった…………あれくらいか? 普通になんともない事でこいつを使ったのは。だが、流石に70t近いのはちときつかったぜ。あの後両腕が筋肉痛になったからな。
とまぁ、平然と色々話しているんだが、現状はよろしくない。プラズマブレードが短刀身のエネルギーブレード、それに比べてこっちのバスターソードは長刀身の実体ブレード。次第に刀身が磨耗し始めている。これ以上やると真面目に研ぎ直す必要が出てくるぜ。
「ここまで密着されてはその大剣は振るえないだろう? これを食らっておけ!」
「ぬおっ、流石は軍人! 隙に付け入る速さはノーマルとは違うぜ!」
頭部に向かって振るわれたプラズマブレードを刀身の腹で受け止めた。確かにこの場でバスターソードを使うには少々取り回しの悪さが目立ってきたな。デカくて重いのは破壊力十分だが、その反面このような至近距離戦闘では使い勝手が悪い。
俺はラウラを蹴飛ばし、一旦距離を取る。
「こっから仕切り直しといこうぜ! ラウラァっ!!」
「望むところだ!! ワイヤーブレード射出!!」
俺はバスターソードを構えながら、ワイヤーブレードの飛び交う中をくぐり抜け、ラウラと接敵した。再びぶつかり合う実体剣とプラズマブレード。執拗に狙ってくるワイヤーブレードを弾く背部ガトリング。戦い自体はさらに激しさを増していく。
何度も打ち合う俺たち。戦いはまだ終わりそうにない。
(一夏…………しっかりとやってろよ!)
「くうっ…………!」
デュノアの相手をしている私は、少し苦戦を強いられていた。相手の武装は射撃に寄った構成だけど、その中身は近距離でも中距離でも通用する攻撃だった。それに弾幕を張られているから迂闊には近づけないし…………。ブレードライフルとアームカノンで牽制をし続けるだけだった。…………まだ五発くらいしかかすめてないんだけどね。
「こっちから決めるよ!」
デュノアがアサルトライフルを構えて一気に迫ってきた。迫ってくる弾丸を避けながらブレードライフルを構えて斬りかかった。
「うわぁっ!! 一夏、強いね!!」
「デュノアの方こそ!!」
デュノアはアサルトブレードで受け止めたけど、ブレードライフルは質量と硬度が生み出す圧倒的破壊力を持った武器。その衝撃まで打ち消すことはできなかったようで、顔を少ししかめた。
だけど、そんなことになっても私が押されている状況に変わりはない。向こうは銃をしっかり当ててくるけど、私は当たる気配が全くと言っていいほどしない。やっぱり私には接近して戦うしかないみたいだ。蒼龍自慢の加速力を使って一気に懐へと飛び込もうとした。
「そこだよ!」
するとデュノアはアサルトライフルを片方しまい、代わりに別な武器を取り出した。アサルトライフルよりも大型の銃口に、これまた大きな弾倉。デュノアがそれを撃つと、私の体の至る所にダメージが入ってきた。
「しょ、ショットガンまであるの!?」
散弾。悠助がバズーカで使っていた弾だけど、本来はショットガン用の弾だって言ってたっけ。それに、散弾が本来の力を発揮するのは近距離…………私の攻撃距離と同じ。って、これじゃ近づいても攻撃がやりにくいよ!!
「まだまだ行くよ!!」
デュノアは両手をショットガンに持ち替えて接近しながら撃ってきた。私は当たる気配がしないブレードライフルとアームカノンを乱れ撃ちながら距離をとった。それでも、何発かは当たってシールドを確実に削っていく。その度に私は段々と焦り始めた。
「こうなったら…………!!」
向こうが弾切れになり武器を変えようとしている隙に、私は瞬時加速を使用、一気に懐へと潜り込んだ。この程度の距離なら、蒼龍の加速力と瞬時加速があれば一気に詰められる。
「うそぉっ!?」
「てやぁぁっ!!」
デュノアは私がここまで潜り込んで来るとは思っていなかったみたいで、少し反応が鈍っていた。私はトンファーブレードを起動させ、一気に切り上げる。その時に丁度交換しようとしていた銃を切り裂いた。鉄を切るような感触が手に伝わってくる。
「やっぱり一夏と戦うのは楽しいよ! ここまで興奮してきたからね!!」
「それ危ないよ! 聞き取り方を間違えたら、とんでもなく危ないからね!?」
ブレードライフルで斬りかかり、デュノアはシールドで受け流す。だが、体勢を崩しても、振り向きざまにウィングブレードで斬りつけた。というか、デュノア…………もしかしてナニがアレな人なの!? ねぇ、大丈夫だよね、ね⁉︎
でも、さっきまでとは違い、自分の思った通りの試合運びができている。やっぱり近距離は私の距離だからかな。悠助には射撃も格闘も負けちゃうけど、剣だけならそこそこついていける自身はあるからね。
『デュノア君! そんな『出来損ない』、さっさと倒しちゃって!!』
『こら! 『落ちこぼれ』はそれらしく、早く負けろ!!』
『『恥さらし』は退場しちゃえよ!!』
そんな時だった。どこからか、そんな声が聞こえてきた。おそらく私に向けての言葉だけど、誰が言ったのかはわからない。でも…………その言葉を聞くと、やっぱり体が震え始めてくる。春十とかから言われるのは慣れていたから仕方ないけど、それ以外の人から言われるのはまだ慣れてないし…………なにより、悪意に満ちたものだから。ブレードライフルを握る手も、トンファーブレードのグリップを握る手も、あまつさえ足まで震え始めてきている。…………痛い…………苦しい…………気持ち悪い…………。心が締め付けられるような思いに襲われた。ダメ…………嫌でも思い出しちゃう…………。
「くっ、こんな時に好き勝手言ってくれるね…………一夏、大丈夫?」
「はぁっ…………はぁっ…………」
デュノアも私の変わりように戸惑っているのか、顔を覗き込んできた。あっ…………また、心配かけてしまった…………。
『デュノア君から離れろ! この『無能者』!!』
「っ…………!!」
一番言われたくはなかった言葉。そんな言葉をぶつけられた私の頭の中は、ぐちゃぐちゃになって、何をどうしたらいいのかわからなくなっていた。ブレードライフルとトンファーブレードを握る力もなく、二つの大剣はコネクタを外れ、地面に突き刺さった。
「おい、聞こえたか? 今の雑音」
「あぁ、私にとって一番不愉快なものだな」
俺とラウラがナイフとプラズマブレードで切り結んでいる時だった。観客の方から心ねえ言葉が聞こえてきたもんだ。それも一夏に向けてだ。マジで腹立つわ。一発しばいてやんねえと学習しねえんじゃねえの?
「ラウラ、そいつらの居場所はわかるか?」
「待て、すぐに特定してみる」
格闘戦(若干加減中)をしながら、ラウラはそいつらのいる場所を特定し始めた。それにしても本当に軍人なんだな。このくらいできる技能がやはり必要なんだろうなー、ってよ。
「見つけたぞ」
「場所はどこだ?」
「我々の正面のブロックにある席のところだ。だが、どうするつもりなんだ?」
「ん? ああ、ちょっとな。あーゆーのはさっさと退場して貰うのが一番いいんだわ。だろ?」
ラウラは切り結んだ状況から離脱態勢に入る。そのまま速度を上げ観客席のシールドバリア付近まで突っ込んでいき、その壁面に沿うように移動を開始した。
『その位置から私の後ろを狙撃しろ。榴弾や閃光弾を推奨するぞ』
なるほど。ラウラ自身がマーカーになることで、俺の照準を補佐するってことね。すげえな、俺から頼もうとしていたことを同じく考えているとはな、驚きだぜ。
「そんじゃ行くぜ。オートカノンとレールキャノン、ミサイルによるパーティだぜ!!」
俺はラウラの背後二メートルに照準を合わせる。あとはその位置を固定し、追尾モードにすれば問題ねえ。レールキャノンを単発発射から、連射モードへと切り替える。と言っても発射サイクルが二分の一になるだけなんだがな。オートカノンには閃光弾を、ミサイルとレールキャノンには榴弾を装填する。これで準備は問題ねえ。
『発射位置まであと少し』
俺はガトリングを放つ。だが射程的な問題もあって、ラウラまで届くことはない。だが、これでいい。下手に動いて織斑千冬に面倒な難癖つけられるのは困るからな。俺がラウラをガトリングで追撃しているように見えていることだろう。
『今だ! 撃てっ!!』
「フルファイア!!」
ラウラの合図で俺は装填済みの武器を撃ちまくる。レールキャノンが高速で到達するも、ミサイルが追尾していくも、ラウラは瞬時加速を使用し、器用に回避していく。その後ろでは榴弾やら、ミサイルやら、閃光弾やらが起爆しており、派手な花火を打ち上げたような感じだ。ちなみ俺は平然と見ているが、これはゴーグル型バイザーのお陰だ。これで視覚情報としての光量を一定値に抑えることが可能。遮光レンズのようなものと考えてくれ。
『うちーかたーやめー』
「なんだそりゃ? 急に変な言い方になったな」
『そうか? 日本の海上自衛隊の艦砲射撃時の号令を真似てみたんだが…………』
「それかよ! というか、あそこの連中はどうなった?」
「全員気絶中だ!」
ラウラは俺のところへと戻ってくるや否や、再び俺に切りかかってくる。俺は武装を後方へと回し、ナイフへと持ち替えて斬撃を防ぐ。やっぱ、近接戦はナイフじゃねえとな! 本当に便利な武器だぜ。
「さて、そろそろ決着をつけるとしようではないか!」
ラウラがそう言ってくる。試合開始から早五分。短いように思えるが、IS戦では長い方だ。短い試合なんざ一撃で決まるぜ。それに、決着をつけるほどエネルギーは減っていねえよ。かすったりなんざりはしまくっているけど、大したダメージにはなっていない。殆どバスターソードやナイフで受け止めたり、弾幕でシールド作ったりしたからな。
「いや、そうとも限らんかもな」
そうだろ、一夏?
聞こえた。あの嫌な声をかき消すように響き渡った、激しい爆音。その音が私の耳に入ると同時に、頭の中を支配していた嫌な過去や思いは全て消えていってしまった。私は恐る恐る目を開ける。すると、アリーナの観客席の一部で爆発が…………しかも、なんか誤射みたいな感じで。
「い、一夏、大丈夫?」
デュノアが心配して近づいてきた。あぁ…………やっぱり心配かけちゃったなぁ…………しかも対戦相手にだし。
「うん…………大丈夫、だよ」
気を取り直した私はそう答えた。実際、頭の中もすっきりしたし、さっきのようなことにはもうならないような気もしたしね。でも、やっぱりああいうのは慣れないや。前は毎日のように言われていたけど、それでも辛かったし、仕方ないのかな。もう、誰にも迷惑だけはかけたくない。その中心にいるのが私なら、尚更だ。
私は地面に降り、ブレードライフルとトンファーブレードを両腕に接続する。グリップを握ると共に腕のハードポイントにコネクタが接続され、武装へのエネルギー供給が行われている事を確認した。と言っても、展開するときだけだけどね。
「それにしても、あれは酷いよね…………僕も聞いててとても嫌な気持ちになったから。一夏、本当に大丈夫?」
「大丈夫だよ。一部だけど、慣れちゃったからあんまり感じないけど…………やっぱり何も知らない他人から言われるのは辛い、かな?」
「そうなんだ…………ま、すぐには無理だと思うけど、気を取り直して始めよ? あんな形で勝負がつくのは好きじゃないからね」
あのー、デュノアってやっぱりバトルジャンキーな人なんじゃないのかなー? 言っているぶんには普通のセリフに聞こえてくると思うんだけど、目つきを見ちゃうとどうしてもそう思わざるを得ないんだよ。だって、笑顔に何か含んでいる不要な気がするし。
でも、私もあんな状態で負けちゃったら、二度と立ち上がれる気もしないし、またなんかいじめられそうな気がするよ。今度も千冬姉さんの妹ってだけで…………本当、アレの私生活を見たらいいと思うよ。尊敬する気もなくなると思うから。
気を持ち直し、私はブレードライフルとトンファーブレードを構える。自分の前で両方の刀身を交差させるのが、私の構え方。昔、束さんにちょっとだけ教えてもらった二刀流。あそこの道場の師範にもなんか嫌われていたしね。私は道場の裏で一人でいるときに、束さんに初めて会った。この事はまたそのうち話すことにするよ。
私が使う二刀流は束さんから教えてもらったのを少しだけ、自分で考えて、練習して作ったもの。まぁ、練習中に生卵とか投げつけられたこともあったけど。
「そうだよね…………やるときは全力でやらないとね! 行くよ、デュノア!」
「その言葉を待っていたよ、一夏!」
その言葉を皮切りに私達は再び激突する。私は上段から振り下ろした大剣、デュノアは両手に持つアサルトブレード。私の攻撃をしっかりと受け流したデュノアは横へと滑るような動作をしたのちに、アサルトブレードで切りかかってくる。その攻撃を私はブレードライフルのシールドで受け止めた。そしてガラ空きになった足元へトンファーブレードを薙ぐ。
「やっぱりやるね! でも、これでっ!」
だけど、その斬撃も逆立ちのような姿勢をとられることで回避されてしまった。デュノアはシールドの一部を吹き飛ばした。そこから見えたのは、教科書の武器のところで見た近距離最強の破壊力を持つ武器、パイルバンカー。多分、あれをまともに受けたら、蒼龍もタダじゃ済まないよ!
デュノアは左腕を後ろへ引く。その隙を狙うしかない。私はアサルトブレードを押さえている右腕を軸とし、パイルバンカーの一撃をかわした。排出される空薬莢の大きさは、悠助が使っているキャノン砲の砲弾と同じくらいありそう…………やっぱり受けちゃだめ、絶対。
「危なっ! それ受けたら、私もタダじゃ済まないよね!?」
「デュノア社って、ある意味変態の集まりだしね! フランスのGEWってよく言われるよ!」
「その例え、私にはよくわかんないよ!?」
というか、GEWって何ですか!? IS企業って事は知っているけど、変態って何!? 社員のみんなが、桃色の本でも読んでいるの!? (後で悠助に聞いたところ、単にある分野に特化した人の事を言うみたいでした)
「さ、そろそろ決着をつけよう! このままじゃ、いつまでたっても終わらないよ!」
デュノアがそう言ってきた。決着かぁ…………確かに長い事やり合っていたしね。決めるにはそろそろいい頃合いなのかも。でも、それを決めるのは私じゃない。
「いや、そうとも限らないよ?」
そうだよね、悠助?
「悠助! 交代!!」
「了解したぜっ!!」
悠助と一夏は一気に場所を入れ替わる。互いにブースターを全開にし、それぞれが相手にしていた者の前へと降り立つ。
「ラウラ! 今度は私が相手だよ!」
「デュノア! この間は不完全燃焼だったからな、完全に燃やしてやるぜ!!」
「一夏…………お前との勝負、受けて立とう!! かかってこい!!」
「今回は前みたいな事故では終わらせないからね!! 覚悟してよ、悠助!!」
そして、一夏は両手にハンドバスターソードを、悠助は両手にツインガトリングガンを取り出し、ラウラはプラズマブレードを、シャルロットはアサルトカノンを構え、それぞれの相手に攻撃を仕掛けた。一夏とラウラの間では、大剣とプラズマの剣による剣撃が幾多も交わされ、悠助とシャルロットの間では徹甲弾と爆破弾の嵐が吹き荒れている。その光景は今まで流れていた試合とは全く違うもの。観客もその光景に見入っていた。
「やるじゃねえか、デュノア! だが、弾幕は俺より薄いな!!」
「ならお望み通り、増やしてあげる!」
シャルロットはアサルトカノンから重機関銃へと持ち替え、弾幕を生み出す。それは先ほどよりも圧倒的なものであるが、悠助のそれにはまだ届いていない。悠助のツインガトリングガンから吐き出される徹甲弾はシャルロットのシールドエネルギーをじわじわと確実に奪っていった。
「一夏! お前の力はそんなものではないだろう! もっと熱くなれよ!!」
「どこの消臭剤のおじさん!? でも、本気を出さないと、こっちが負けそうだよ!!」
一夏のハンドバスターソードは一撃の威力は、ロングブレードと比較してもはるかに高い。だが、ラウラのプラズマブレードによる剣撃の手数は、一夏のそれより上回っている。よって、隙の生まれやすい一夏は少々劣勢に追い込まれていた。それでも、一夏の目には諦めはない。次第に剣撃は鋭さを増していく。ラウラも負けじと、それに対抗するが、時折ダメージをもらっていた。
興奮冷めぬ一回戦。その第二ラウンドは数瞬前よりも白熱していくが、まだ始まったばかりにすぎなかった。
や、やっと投稿できた。
悠助「おい、作者。蒼龍の写真は?」
あ…………完全に忘れてた。
悠助「…………まぁ、リアルで色々あったようだし、勘弁してやるよ。だが、載せることは絶対だからな?」
一夏「確かに、リアルで色々あったようですけど、よく生きてましたよね?」
まぁ、うちの高校、ブラック企業同然だしねー。そのうち過労で倒れそうだよ。
悠助「あんたが、応援団なんかやるからそうなるんだろ」
…………さーせん。あ、更新はこれから更に遅れる可能性が高いです。一月一話とかになりそうなペースです。
こんな作品ですが、これからも生温い目でよろしくお願いします。