守りたい、ただそれだけ(本編完結)   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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第19話

「ほら、こいつでも貰ってくれよ!!」

 

俺は連射モードへと切り替えたレールキャノンを撃つ。連射モードにおける威力は低下率二十パーセント程度。狙撃とか以外は基本的に連射モードの方がいいんだがな…………排熱の関係上、一分以上の連射は控えるべき。排熱自体は五秒程度で済むから特に問題はないが、その隙もできるだけ減らしたいのが俺の思い。ガトリングによる弾幕もいいんだが、威力が高ければ高いほど精神的に与えるダメージも高くなる。それを考えると、ガトリングに装填可能な劣化ウラン弾、レールキャノンの対IS用APFSDS弾、その辺りくらいになるんだろうな。まぁ、劣化ウラン弾なんざそう簡単に使えるもんじゃねえけど。てか、控えたい。

 

「いや、貰ったら即撃破みたいなものだよね!? 連射可能なレールキャノンなんて聞いたことないよ!?」

 

そう言いながらも、デュノアはかすめる程度で被害を抑えている。いや、音速の弾に反応できるお前は何なんだよ。普通の人間なら直撃しててもおかしくねえんだが…………フランスって人外でも生産してんのか? というか、あのリヴァイヴの反応速度がやべえ。およそ第二世代機のそれじゃねえぞ。どんだけカスタマイズしてんのよ、全く。

右手のツインガトリングガンを一旦格納し、オートカノンの砲身を展開させる。榴散弾を装填、ガトリングの斉射に織り交ぜて放った。

 

「くうっ…………散弾を連射してくるなんて…………!」

「榴弾の雨も降らせられるが? そっちの方がお好みだったか?」

「どっちもお断り‼︎」

 

デュノアは散弾を受けながらも俺に向けてアサルトカノンとサブマシンガンを撃ってくる。俺は回避をしつつも、榴散弾とガトリングによる弾幕形成を続けていた。アサルトカノンに装填可能なのは対IS用成形炸薬弾や榴弾の一種である爆破弾とかだな。闘蛇龍の装甲は物理、爆薬等に耐性がある。食らっても大したダメージにはならないんだが…………やっぱり生き残るにはできる限り回避する事を忘れてはいけないんだよな。

 

「そろそろIS一機ほど落ちてもいいくらいの銃弾を撃ったと思うけど、なんで当たらないの!?」

「普通に考えて、銃口から体を外すくらいはするに決まってんだろうが!!」

 

左のツインガトリングガンが少しオーバヒート気味になってきたため格納。代わりにショットガンを取り出す。高威力の散弾を装填してある上に、フルオート射撃が可能なシロモン。裏では鉄の嵐とかと呼ばれる、GEWの傑作品だ。本当、あのメーカーの武器は変態じみているぜ。まぁ、実用性からして見ればポンプアクションとかリロード遅延の原因にしかならんのだけど。そう考えると実戦向けの仕様なんだと実感させられる。

サブマシンガンサイズまで小型化されたショットガンを一マガジンフルオートで放つ。散弾自体反動が強いため、フルオートなんてしたら重心がぶれるだろうが、俺はそうはならない。闘蛇龍のトルクが高すぎるからな。だって、片腕でオートカノンを連発するようなもんだぞ。ショットガン程度余裕で押さえつけられるわ。

 

「なんでショットガンがマシンガンみたいに連射されるの!? チートなの!?」

 

デュノアは実体シールドを右腕にも呼び出し、散弾の雨を防ぐ。シールドに直撃するたびに甲高い音が鳴り響く。トタンの屋根に雨が打ちつけるような、そんな音みたいだ。あながち鉄の嵐ってのも間違ってはいねえな。

 

「チートって言うなよ。これ一応純正品なんだからよ。開発陣営が泣いちゃうぞー」

「いや、欧州のショットガンと比べるとどう考えてもチートなの!? だって、セミオートでしか撃てないんだよ!?」

「そんなもんなんか。まぁ、フルオートショットガンなんてそうそう使わんか」

 

まぁ、向こうの使っているショットガンはセミオート発射だしな。そりゃ発射速度も少々遅いわ。でもよ、セミオートって使い勝手が悪いんだよな。だって、バースト射撃できねえし。まぁ、ライフルに限る話なんだけど。

そろそろマガジンの残弾も切れかかってるな。オートカノンも少々心もとねえし。なら、やるしかねえな。

 

「オラァッ!」

 

俺は火器を全て後方へ回し、バスターソードを取り出し、一気に接近した。銃火器が少し心もとねえんなら、こいつに世話なるしかねえ。

俺はバスターソードを横薙ぎに振るった。

 

「くうっ!! 武器が!!」

 

デュノアは間一髪でかわすものの、アサルトカノンの銃身が切り裂かれる。おぉ、中々の切れ味だな。さっきまでプラズマブレードをこいつで防いでいたとは考えられねえほどだぜ。デュノアはすぐに武器を捨てると、空いた手にアサルトブレードを取り出す。ナイフよりも長く、通常のブレードよりも取り回しの良い、いい意味で中途半端な近接武装だ。意外とナイフより普及してんだよな。

アサルトブレードでバスターソードを受け止められるが、ここまで接近すれば後は力勝負だぜ。短剣如きに大剣が負けるはずはねえよ。

 

「中々、耐えているようだな! 一夏とのやつで攻略法でも覚えたのか?」

「まぁ、ね! でも、一夏の大剣よりも威力が高いよ!」

 

だろうな。向こうは速度特化みたいなもんだから、パワーはそんなにねえ。並みのISよりはあるとは思うけど。

 

「悪いが、ここで落ちてもらうぜ!」

 

俺は上段から一気にバスターソードを振り下ろした。だが、その攻撃は突き出されたシールドに防がれてしまう。

 

「それはこっちのセリフだよ!!」

 

そしてデュノアが突き出した手にはショットガンが。ゼロ距離射撃でもするつもりなんだろうけどな、そうはいかねえぜ。

 

「そうもいかねえぞ。俺はまだ、負けたくないんでね!!」

 

向こうのトリガータイミングを見極めて、俺は左手にバスターナックルを装備、ショットガンの銃身へとアッパーをかました。跳ね上がった銃身はデュノアの頭を捉えており、引かれたトリガーはすでに信管を叩いていた。

 

「きゃあっ!?」

 

放たれた散弾は俺を捉えることなく、武器の所有者の頭へと直撃し、デュノアは大きく吹き飛んだ。今の一撃で、相当なエネルギーが削れただろう。地面へと叩きつけられた彼女へ、俺はバスターソードを振りかぶる。

 

「とどめだな、楽しかったぜ」

 

そして、躊躇いなく振り下ろした。それと同時に俺のディスプレイにはデュノアのシールドエネルギーが枯渇した事を知らせる表示が出ていた。

 

「あはは…………負けちゃったよ」

「それでも、中々いい試合ができたんじゃねえの? 俺は楽しかったしよ。そんじゃ、一夏の援護でもしてくるぜ」

「うん。次は絶対負けないよ」

「それは俺のセリフだ」

 

さて、一夏はどうなったかねえ。援護に回るとしますか。

 

 

 

 

 

切り結び、打ち付けあい、時々撃ち合う。私とラウラとの間ではそんな攻防が繰り広げられていた。私はハンドバスターソードを、ラウラはプラズマブレードで、それぞれ近接戦をしていた。下から切り上げるように振るうけど、ラウラもそれに合わせてうまく防いでくる。逆に、切りかかられても、ハンドバスターソードを使って受け流す。

 

「楽しいな、一夏! 此処までの戦いはしたことがないぞ!」

「ラウラってバトルジャンキーなの!?」

「違う。単に訓練で此処までの相手がいなかっただけだ!」

 

え、えー…………ラウラって軍人なんだよね? それなら、もっと相応しい相手とかいなかったらまずいんじゃないのかな?

そんな会話をしている間でも、剣撃が絶えることはない。埒が開かなくなった私は一旦距離を取り、アームカノンを連発する。マシンガンみたいな勢いで撃たれるけど、かわされてしまう。

 

「こいつでも喰らえ!」

 

ラウラはレールカノンを撃ってきた。音速と同じ速さで撃たれた砲弾は、私が数瞬前にいたところを通過していた。そして、地面に当たると盛大に土煙を上げていた。あ、あんなのに当たったら…………考えただけで怖いよ。

もう撃たれるのがちょっとだけ怖くなったから、私は再び接近した。

 

「動きが直線的だ!」

 

ラウラがそう言って右手を突き出すのと同時に、私の体は何かに絡みつかれたかのように固まった。な、何が起きたの!? 腕を動かそうにも動かないし、頭を動かすことすらできないよ!! 瞬きはできるみたいだけど、ほとんど何もできないに等しい。

 

「こ、これは一体…………」

「AICだ。対象の動きを制限する武装さ。悠助の奴にはすぐに見破られてしまったがな、近接武装しかないお前には効果的だろう?」

 

確かに、動きを制限するって事は止めるってことだし、今の状態でも使えそうなアームカノンは後ろの方を向いちゃっている。あ、あれ? これって結構手詰まりみたいな感じになってない?

 

「本来ならばもう少し楽しみたいのだが、相方が倒されてしまったからな。すぐに倒して奴と対戦せねばならん」

 

ラウラの後方ではデュノアがエネルギー切れのISを身につけた状態で試合を見ていた。あ、悠助はもう倒しちゃったんだ。本当、強いなぁ…………ちょっとできるかなって私も思ったけど、あんまり結果は出せなかったよ。

ラウラの右肩にあるレールカノンがこちらを向く。その砲口が狙っているのは、多分私の頭。装甲がほとんどないから直撃するだけで絶対防御が発動して大きくエネルギーを削られてしまう。それにあの威力だ。一発で勝負なんて決まっちゃうかも。

 

「とどめだ」

 

電光がほとばしったかと思うと、その中から砲弾が飛び出てきた。だけど、その砲弾はさっきのものよりもひどく遅く見える。もし、体を止められていなかったら…………私は多分避けられていたんだと思う。けど、そんなもしもの話をしたって意味はないよ。そんなことをしたって今を変えることができないのは、私がよく知っているから。

そして、直撃する。私はこれから来るであろう衝撃と痛みに備えて、無意識のうちに目を瞑った。

 

「そうはいかんよ!」

「ふぎゃっ!?」

 

だけど、私にその衝撃や痛みが来ることはなかった。代わりに私の耳に聞こえてきたのは、ラウラの変な悲鳴と、聞きなれた大切な人(悠助)の声だった。

それと同時に私の体は自由になる。もしかして、あれってラウラの集中がないとできない攻撃なのかな? …………でもさ、なんでバスターソードで砲弾を打ち返せるの? どんな動体視力をしているのって、本気で聞いてみたくなったよ。しかも、ラウラに直撃させちゃってるし…………人間離れしているね、もう。

 

「すまねえ、ちょっと時間かかっちまったわ」

「大丈夫だよ。さっきは少し危なかったけど」

「そうか。とりあえず、援護は任せろ。できる限り支援するぜ」

 

悠助と合流できた私は再びラウラを見る。その顔に焦りなんてものはない。むしろ、この状況を待っていたかのようなそんな顔だ。

 

「ふっ、話は終わったか? なら、こっちの番だな!」

 

ラウラはそう言うと私達にワイヤーみたいなものを飛ばしてきた。その先端にはブレードが付いている。

 

「一夏、構わず突っ込め! 後ろからガトリングを撃つぞ!」

「わかった!」

 

私は悠助の言葉に押されるかのように、加速した。ハンドバスターソードは格納し、いつものブレードライフルとトンファーブレードを展開する。うん、使い慣れている分、手にとても馴染む。後ろから弾丸が飛んでくるけど気にしない。悠助の事だからちゃんと牽制していると思うから。現に私には一発もかすっていない。その代わりに、ワイヤーブレードを銃弾で弾きかえしていた。

ブレードライフルとトンファーブレードの刀身を展開し、私はラウラに袈裟斬りを仕掛けた。

 

「止めてやるさ、何度でもな!」

 

だけどあのAICに体を止められてしまう。それに加えて銃弾も纏めて止まっていた。くっ、あと少しなのに…………!

 

「ビューティーフォー!!」

 

その声とともに、また電光がほとばしる音と共に空気を切り裂く音が聞こえた。

 

「くそっ!」

 

ラウラは悪態をつくと、私の右側へと回避しようとした。それと同時に私気にかかっていたAICも解除される。つまり

 

「てやぁぁっ!!」

「何っ!?」

 

振りかぶったブレードライフルを振り下ろせるということ。その刀身はレールカノンの砲身を捉えており、接続部分から綺麗に切り落とした。同時にレールカノンは爆散する。ラウラは突然のことにうろたえていたようだけど、今は関係ない。そこから横薙ぎにトンファーブレードを振るった。今度は右手の装甲の一部。

 

「やるじゃないか! 最高のコンビネーションだな!」

 

ラウラは攻撃を受けながらも、その興奮は冷めていないようだった。というか、ちょっと喜んでいるのかな? も、もしかしてそっちの気がある人なの!?

 

「さぁ、行こうぜ一夏。こいつで終わりにするぞ!」

「うん、わかった!」

 

ラウラには悪いけど、これで一気に決める。そう思ってブレードライフルを振り下ろそうとした、その時だった。

 

 

 

 

 

強い。

私は素直にそう感じている。個々の力もさることながら、二人でかかってこられた時の強さは一人の時のそれ以上だ。数の差もあるかもしれないが、私は一人で五機を相手にした模擬戦で勝っている。だがそれは、あくまで第二世代型。相手である悠助と一夏の機体は世代不明機だ。正直、勝てると思ってはいたが、現実はそうではない。

唯一の遠距離武器を破壊され、右手のプラズマブレードとAIC発生装置を破壊された私に、ロクな戦闘力などなかった。二人になるまではまだ互角に渡り合っていたはずだが、二人になってからこうだ。やはり、強さとは一人だけのものではないのだと実感させられた。

 

敗北。

 

私の頭にはそのような単語が流れた。軍にいた頃、ちょうど教官がいらした頃だ。あの時、私は負けることとは即ち死であると学んだ。だから私は負けないよう、守れるよう、強くあろうとしていた。

だけど、こっち(IS学園)に来てからは、負けても得られるものがあるんじゃないのか、そう考えるようになってきた。失敗を重ね、それを糧として次の成長に繋ぐ。かつての私もしていた事をこっちに来ても教えられるとはな…………なかなかに面白いものだ。

 

(敗北、か…………悪くはないのかもしれんな)

 

そう心の内で思った、その時だった。

 

——負ケル、ダト? ソンナコトガ許サレルト思ッテイルノカ?——

 

そんな声が聞こえた。私はこんな声を聞いたことがない。一体何者だ?

 

(どうあろうと、私の勝手だろう?)

——ソウハイクカ。オ前ハ勝タナケレバ、存在ヲ失ウ。勝テ、戦エ——

(な、何をする気だ!? 姿を見せろ!!)

——ナラ、イヤデモ見セテヤルゾ。オ前ノ歪ンダ姿ヲナ——

 

その声が聞こえた瞬間、私は頭痛に襲われる。流れ込んでくる多数の情報。それが私の思考を支配しようとして、頭の中を錯綜する。

 

(あ、あ、あぁぁぁぁぁっ!!)

 

目の前には、黒い触手のようなものが待ち構えている。そいつらが私の視界を埋め尽くした瞬間、私の意識は途切れた。

 

——Varkilly Trace System,Stand By——

 

最後に聞こえたのは、どこまでも無機質な冷たい音だった——

 

 

 

 

 

「あ、あ、あぁぁぁぁぁっ!!」

 

一気にとどめをさそうとした一夏を、突然ラウラの機体から放たれた電撃が襲った。その衝撃で一夏は吹き飛ばされる。な、何が起きてんだ? なんか明らかにやばそうな悲鳴をあげてるしよ…………。

 

「ね、ねぇ、悠助? あ、ISって、あんな風に変化するの?」

 

一夏が少し困惑したような声音で聞いてきた。俺だって答えたくても今の状況を見たらどう答えたらいいものなのかわからねえよ。だってよ…………ラウラのレーゲンが粘土細工の粘土のようにどろっと溶けたようになったかと思いきや、別の姿のISへと変形…………いや、変身したんだからな。しかも、あのISは…………

 

「くれ、ざくら…………」

 

一夏が驚きを隠せずにそう言った。確かにあれは、かつて織斑千冬を世界最強へと導いたIS、暮桜だ。頭部とかはラインセンサーになっている点とか細かいところは違うが、間違いない。けどよ、普通のISの二倍近い大きさあるんだが…………本当になんなんだよ、アレ。

 

『ゆーくん、いっちゃん!』

「「束さん!?」」

 

突然、俺と一夏に束さんからの通信が入った。その声は少し焦りが混じっている。一体なんなんだ?

 

『今偵察衛星から見ていたんだけど——』

「さらっとブッとんだことを言うなぁ…………」

『あれ、早く破壊しないとまずいよ!!』

「どういうことなんですか?」

『あれはヴァルキリー・トレース・システム。モンド・グロッソ優勝者の戦闘データ、及び行動パターンを入力され、それを忠実に実行するシステムだよ! だけど、それは身体に大きな負担がかかるから、最悪——』

「——死亡する可能性もあるってか?」

『…………』

 

無言。それを俺は肯定と受け取った。まぁ、無理もねえか。人の体は無理矢理動かされるとぶっ壊れやすいしな。それにISに振り回されんだから、たまったもんじゃねえ。従来の兵器の数段上の性能、それはつまり負担も大きいわけだ。数人、あるいは数百人で制御することがある戦車や巡洋艦に比べて、ISには把握しなければならない情報がたくさんある。それを一人で処理しなければならず、精神的な負担も一人当たりでみれば高い。そこにヴァルキリーの動作が組み込まれんだ、筋繊維の断裂、血管の損傷、内臓系統の以上、脳へのダメージ、どれを取っても死につながる。

 

「早く助けなきゃ…………!」

 

一夏も俺と同じ思いのようだな。普通こうなったら速攻で撃破するもんなんだが、なかにラウラがいるとなると気がひけるぜ。それに、一夏の大切な友達だ。殺せるわけがねえよ。傭兵にしては甘いんじゃねえの? とかと言われそうだが、そんなもん俺の知ったことじゃねえよ。俺は俺の基準で生きていく、それが俺のポリシーだ。

 

「そうだな。助けねえといけねえな」

 

俺は追加ユニットを格納、バスターソードを一振りだけ取り出す。ガチの近接戦闘やるんなら、こいつほど頼りになる武器はねえ。対IS用兵器の中で、その気になればシールドバリアを破壊可能でありながらも、威力を調節することが可能な武器だ。

一夏もブレードライフルを正面に構え、何時でもやれる意思を見せていた。だが、VT野郎は攻撃をする素振りを一向に見せない。手にロングブレードを構えているんだが、その切っ先は地面を向いており、攻撃を仕掛けてくるようではなかった。なんで攻撃して来ねえんだ? 様子見なのか?

 

「とりあえず、こっちも下手には手を出さねえぞ。下手に手を出して何をされるかわからねえ。用心しろ、一夏」

「わ、わかったよ。でも、なんで攻撃して来な——」

 

「うおぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

まずはこちらも手を出さず、様子見とでも行こうかと打ち合わせをしていた時だった。ピットから飛び出す白い機影。間違いねえ、自称天才の白式じゃねえか。自称天才はVT野郎に斬りかかろうとロングブレードを取り出し、振りかぶった。

その時だった。気がつけば自称天才は壁面へと叩きつけられて意識を失っていた。よく見りゃ、VT野郎がロングブレードを振るっていた。あの動き、間違いなくヴァルキリーの動きだ。奴のラインアイセンサーが紅く輝いた瞬間、奴は俺の前に現れていた。

 

「チィッ! 一夏、下がれ!」

 

振り下ろされたブレードを両手持ちしたバスターソードで受け止める。金属塊同士がぶつかり合い、激しい衝撃が俺の全身を駆け巡る。おいおい、ただのロングブレードだろ? なんでこんな衝撃が来るんだよ…………!

 

「悠助っ!!」

「俺のことは気にすんな! 隙を見て攻撃、それだけだろ!!」

 

口で言うのは簡単だが、その隙がねえんだよな…………鍔迫り合いの状態だし、いつどんな攻撃を仕掛けてくるかわかったもんじゃねえ。しかもヴァルキリー級だろ? 余計に油断も何もできねえ…………どうしたらいいのやら。

次第にバスターソードが押され始める。アカン、これ以上堪えるのは闘邪龍の出力を持ってしてでも、危険すぎる。押し切られたら最後、開きになっちまうぜ。俺は受けていたブレードを滑らせ離脱する。だが、その目を離した隙に、奴は俺の視界から完全に消えていた。索敵を開始すると、奴は…………一夏の方へと向かっていやがった。俺と一夏は念のため二百メートル近く距離を取っていた。ISでもこの距離を移動するに最大加速抜きで五秒はかかる。それを奴は一瞬で詰めてきやがった。なんでそんなことが可能なのか、この際考える必要はねえ。今考えなきゃなんねえのは、一夏の援護に向かう事、それだけに決まってる。俺は加速し、一夏の元へと向かった。

 

 

 

 

 

「きゃあっ!!」

 

悠助があの異形から抜けた後、私はその場から移動して攻撃がこないようにしていた、はずだった。なのに、あの異形は一瞬で私の前に現れて、ブレードを振るって来た。咄嗟にトンファーブレードで受け止めたけど、物凄い衝撃が襲ってきて、弾き飛ばされてしまった。

反撃したいのは山々だけど、あの中にはラウラがいるから…………助けないといけない。多分、ラウラもあんなことになるのは望んでいなかったと思う。だって、あの時の悲鳴、とても苦しんでいるような気がしたから…………それに、ラウラは強さの意味みたいなものを知っているはずだから…………だから、助けなきゃいけないんだ。

 

「ラウラっ!! ねえ、ラウラってば!!」

「————」

 

返事は返ってくるはずがない。代わりに返ってきたのは、ブレードによる攻撃。ブレードライフルとトンファーブレードを交差させて防御するけど、衝撃が強くて防げるものも防げない。次第にダメージも蓄積してきている。試合でエネルギーを消費してしまっているから、それが私の心をさらに焦らせていた。

 

「なんでそんな力を手にしちゃったの⁉︎ ラウラにはそんなの似合わないよ!!」

——ウルサイ、消エロ——

 

ふと聞こえた、何の感情もこもっていない言葉。それが聞こえると同時に私にはブレードが振り下ろされた。

 

「きゃあぁぁぁぁぁっ!!」

 

なんとか致命傷になるようなダメージは避けたけど、左肩の装甲から右の脇のお腹のところまで袈裟斬りにされた。装甲の表面には切り裂かれた跡が生々しく残されている。

異形は私のところへと歩み寄り、その凶刃を今にも振り下ろさんとばかりに掲げている。

 

「ラウラ…………」

 

呼びかけてみるけど、やっぱり返事はない。ブレードは私へと振り下ろされるが、とても酷く遅く見えた。なのに体は一向に動こうとしてくれない。いや、動けないんだ。目の前で起きていることが怖いんだ。

 

「一夏ぁぁぁぁぁっ!!」

 

あーあ、悠助ったら…………柄もなく叫んじゃってるよ。こんな姿滅多に見せないのにね。

 

(やっぱり無理だったのかな…………ごめんね、ラウラ…………ごめんね、蒼龍…………)

 

ブレードはもうすでに目と鼻の先だ。私は覚悟して目を閉じた。

 

(ごめんね、悠助…………)

 

 

 

 

 

〔諦めるのは、まだ早いです!〕

 

 

 

 

 

初めて乗った時に聞こえたあの声、その時の声が聞こえたかと思うと、私は壁面までブーストし、ブレードを回避していた。だけど、私は操作なんてした覚えないし、なにより、私の周りを蒼い粒子みたいなものが漂い始めている。こんな事は今までなかったからよくわからない。

けど、こんな私でも一つだけわかることはある。

 

 

 

 

 

——私は、ラウラを助けることができる。

 

 

 

 

 

「な、なんだありゃ!? 粒子の放出か!?」

 

一夏がVT野郎に殺されそうになった瞬間、蒼龍が蒼い輝きを放ち、ブースターから同じく蒼い粒子が噴き出していた。蒼龍にそんなシステムが積んであるかどうは知らない。というか、あんな現象は見たことがねえ。

 

「…………束さんよ、あれがなんだかわかるか?」

『…………全くわからないよ。あんなの、蒼龍以外のISで今まで発現してないもん』

 

どうやら束さんでもわからない事象らしい。というか、何が起きてるのか本当にわからねえ。しかも、なんか機動性も格段に上がってるしよ…………蒼龍はどんな可能性を秘めてんだ?

 

『でも、一つだけ可能性はあるよ』

 

束さんがふとそう言う。

 

『蒼龍が、あの子がいっちゃんを守ろうとしているのかもね』

 

その事に俺は妙に納得した。確かに今まであの機体は一夏の願いに応えるためにどんなことでもしてきた。それがギリギリでの一次移行やキャノンボール・ファストでの超加速とかだ。もしかすると今回もそうだったのかもしれない。

 

(だが、あれだけのエネルギー…………そう長くは持ちそうにねえな)

 

念のため俺はバスターソードを装備し、一夏の事を見守ることに決めた。どうせあいつのことだ、困難なんて跳ね除けるさ、きっと。

 

 

 

 

 

「システム名…………限界負荷機動(オーバードライブ)?」

 

ディスプレイにはそう表示されていた。この言葉がどんな意味を持っているのか、私にはわからない。けど、蒼龍から感じる思い、ラウラを助けたい思いは確かに私へと伝わってきている。

制限時間は六十二秒。試合でのダメージや消費したエネルギーを考えると妥当なのかも。数字で見てしまえば短いけど、今はそれで十分。短い時間しかないなら、その一瞬に全てをかけてしまえばいいんだから。

 

「ラウラ…………今助けてあげるから…………だからっ!!」

 

私はブレードライフルを正面に構えた。すると、その刀身を触媒にして蒼い粒子がまとわりつき始め、そして、いつしか蒼い色は消え、いつも使っているビームと同じ濃いピンク色のビームがブレードライフルのブレードを形作っていた。その大きさ、実に刀身の二倍。だけど、不自由さなどは一切ない。寧ろ扱いやすく感じる。

正面に構えると同時に異形もブレードを構えた。どちらもまだ動かない。あの機体は千冬姉さんと同じ動きをしている。迂闊に出てしまえば、こちらが斬り捨てられる可能性だってある。でも、今はそんな事を考えている余裕はない。ならやる事は一つしかない。

 

「ラウラもそんな力に飲み込まれちゃだめだよ!!」

 

私はブースターを点火、一気に距離を詰めた。限界時間まで残り三十秒。大丈夫、まだ大丈夫、自分にそう言い聞かせながら、私はブレードライフルを握る手に力を込めた。

異形もブレードを構えて斬りかかって来ようとしている。でも、私の方が一段早い。

 

「てやぁぁっ!!」

 

手を伸ばせば届く距離に鳴った瞬間、渾身の力を込めてブレードライフルを振り下ろした。異形もそれに合わせてブレードで防御しようとしたが、こちらはビームを纏っている上に破壊力でいえば最強クラスの大剣。向こうのロングブレードを砕き、その体に一筋の切れ目を入れた。その中からラウラが見えた。

 

「ラウラっ!!」

 

力なくぐったりとしている。私はすぐにラウラの元へと向かう。あのままじゃ危険だってことは私だってわかる。

ラウラの体を掴んで異形の中から引きずり出した。ラウラの機体は大破に近い状態になっちゃったけど、ラウラには怪我ひとつないみたい…………よかった。

 

「————!!」

 

でも、安心したのも束の間。あの異形はラウラを出しても、あの一撃を食らってもまだ動いていた。応戦しようにも私の腕の中にはラウラがいるし、さっきのシステムの影響でエネルギーはそんなに残されていない。一体どうすればいいの…………!?

 

「オラァッ!! 手を出そうとしてんじゃねえよ、贋作野郎がっ!!」

 

けど、心配は杞憂に終わったよ。だって、一番心強い人が来てくれたんだから…………。

 

 

 

 

 

「一夏! ラウラを連れてピットに戻れ!! そこに転がってるスクラップ野郎も持っていけ!!」

「わかった!!」

 

一夏に撤退の指示を出し、俺は異形と向き合う。あいつの攻撃もあってか結構にダメージが蓄積しているようだ。だが、逆にあんなビームバスターソード的な攻撃を食らってもピンピンしていやがるとか、どんだけタフなんよ、全く。

バスターソードを肩に担いで俺は攻撃態勢へと入る。あいつに手を出そうとしたんだ。それに教師部隊もなんか信用なんねえしな。被害が拡大する前に始末させてもらうぜ。ラウラが取り出された今、手加減せんでもいいしな。

 

「おいお前、さっさとかかって来いよ」

 

軽く挑発を仕掛けるが、一向に反応は示そうとしない。ならばな!

 

「じゃねえと、こっちから行かせてもらうぜ!!」

 

ブースターを最大出力で点火、バスターソードを構えて一気に接敵する。だが、こんな単調な攻撃は奴が新たに作り出したブレードで防がれる。

 

「うおぉ、なんて反応速度だ…………けどな!!」

 

俺は左手にもう一本バスターソードを呼び出し、横薙ぎに振るう。その攻撃は奴の右足に直撃し、脛から下のあたりを斬り飛ばした。

 

「そのくらいの考えてることは読めんだよ!!」

 

バランスを崩したVT野郎の顎の下あたりを思いっきり蹴り飛ばした。衝撃で地面へと叩きつけられた奴だが、まだピンピンしてやがる。いい加減潰れてくれねえかな。

 

「いい加減、くたばりやがれ!!」

 

奴の直上へと回り、バスターソードを突き立てる。だが、狙ったはずの頭を外れ、左腕を吹き飛ばすだけに終わる。クソッ、せめて右腕を吹き飛ばせればいいのによ。

未だ抵抗を見せるVT野郎。バランスもろくに取れず、ブレードもまともに振れていないが、それでも奴の戦闘能力は六十パーセント強は残っているだろうよ。まぁ、両腕吹き飛ばせばいいだけの話なんだがな。

奴のブレードをバスターソードで弾き返し、代わりにボディへと攻撃を叩き込む。深い傷を一本刻むことはできたが、まだそれだけだ。おそらくだが、あの頭部を吹き飛ばせば終わりそうな気もするんだよな。なら、やってみるか。

 

「チョイサアァァァァッ!!」

 

右で横薙ぎに振るい、左脚も奪っていく。そのダメージによりバランスを取れなくなった奴は地面へと落ち、うつ伏せに倒れる。俺はそのガラ空きな背中を踏みつけ、しっかりと固定する。散々手こずらせやがってよ…………こいつを作った研究施設でも殲滅してやるか。

 

「手こずらせやがってよ…………だが、こいつで終いだ!! あばよ、名もなき贋作野郎!!」

 

俺は躊躇いなく首へとバスターソードを突き立てた。衝撃で首から上が飛び散り、黒い粘土質のもんが散らばるが、次第に黒い霧となって消滅していく。

黒い霧が消えた後に残ったのはレーゲンのパーツらしき物だ。ワイヤーブレード射出ユニットや、腰の排熱装置、後は何やら怪しげな六角形のパーツ。そいつの裏面にはVTSドライバと刻印が押されている。

 

「散れ」

 

俺はそいつを握りつぶし、何の意味もなさない破片へと変り果てさせた。こいつで二度とVTシステムなど発動させてたまるか。処理がめんどくせえからな。というか教師部隊、てめえらの仕事を放棄してどうするんだよ。お前らこういう事態の対処の為にいるんだろうが。抑止力もなんの意味もねえお飾り部隊じゃねえか。日本の自衛隊や俺らの傭兵部隊の方がまだいい仕事するわ。

さて、ひとまず俺もピットに戻るとするか。これ以上ここにいても意味がねえ。それに、ラウラの容態も気になる。あの異常な機動に振り回されていたんだからな。内臓とかやられてんじゃねえのか?

とりあえず、俺たちの学年別トーナメントはこんな形で幕を閉じた。途轍もなく後味の悪い内容だったがな。




悠助「…………なぁ、作者よ」

…………言うな。現在進行形で用意はしてあるけど、もうちょいだけ時間ちょうだい。

悠助「…………一夏にバレんなよ」

お、おぅ…………こんな調子ですが、この作品を生温い目でよろしくお願いします。
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