守りたい、ただそれだけ(本編完結)   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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第2話

(いたた…………ここってどこなんだろう?)

 

現在私は状況が全然つかめていません。というのも、さっきまでいたはずの場所とは違っていたからなんですよね。確か下校途中に後ろから誰かに襲われてってところまでは覚えているんですけど、そこからは…………

 

「よぉ、嬢ちゃん、目が覚めたようだな」

「あのー、これどういう状況なんですか?」

「なに!? この状況を理解していないだと!? いいぜ、おしえてやる。お前は俺たちに誘拐されたんだよ。まぁ、兄の方には逃げられたけどな」

 

誘拐って…………ここってどこ?

 

「何が目的で?」

「決まってるじゃねえか。織斑千冬の決勝辞退だよ! 楽な仕事だから良かったぜ。織斑千冬は家族想いらしいしな、飛んでくるんじゃねえの?」

 

あー、春十に逃げられたという時点でだめだよ。

 

「あのー、その事なんですけど。多分無理ですよ…………千冬姉さんはきませんから」

 

千冬姉さん、春十にばっか構っていたからね。私なんて何もしてもらった事ないよ…………何が家族は私が守るだ、私だけ蔑ろにしていたくせに。

 

「ふん、そんな訳あるか。きっとそのうち来るんじゃないのか?」

「あのー、お取り込み中悪いんですけど、アニキ、このテレビを」

「ん? どうした——ブフぉっ!? お、織斑千冬が大会に出てるだとぉ!?」

 

ほーら、言わんこっちゃない。どうせ、千冬姉さんにとって私は家族でもなんでもない、ただの付属品なんだ…………どうせ、どうせ、どうせ、私は…………私は生まれなかった方が良かったのかな?

 

「そうか…………聞いていたか?」

 

私は残った気力でうなづいた。

 

「どうやら、そういう事らしい。お前は悪くないんだが、死んでもらうぞ」

 

そうして私に向けられるのは、無機質な殺意の塊。拳銃だ。柱に鎖で縛り付けられている私には逃れる術はない。ただ目を閉じるしかなかった。

 

「じゃあな、嬢ちゃん」

 

乾いた銃声があたりに響き渡った。

…………。

……………………。

………………………………。

…………あれ? なんで私は生きているんだろう。確かに銃声が聞こえたはずなんだけど。恐る恐る目を開けると、そこには右手を押さえてのたうちまわる誘拐犯と

 

「目標を確認した」

 

ISが一機、その手に銃を持って、そこにいた。

 

 

 

 

 

「目標を確認した」

 

ふぅー、危ねえ危ねえ。もう少しで撃たれるところだったぜ。ギリギリでハンドガンだけを狙撃したからいいものの、あと少し到着が遅れていたら、やばいな。

 

「まぁ、いい。救助ターゲットに手を出したんだ。ただで済むと思ってねえだろうなぁ?」

 

俺は狙撃に使ったライフルをしまい、代わりに別な武器を取り出す。

——バスターソード。

ぶったぎって全てを破壊する、挽肉だろうがなんだろうが生産する武装だ。今回は救助ターゲットがいるから、手加減してやるけどよ。

 

「くっ! ISが来るなんて聞いてねえけどよ…………ギッてきておいて正解だったぜ。カモン、ラマーチ!」

「ちっ、仕方ねえ、やるぞ!」

 

面倒だ…………まさか擬似コアタイプのISを持って来ているとはな…………しかも、全身装甲型。手加減なんてできねえじゃんかよ。俺はバスターソードを構える。最早、装甲とコア諸共あの世に送ってやらなきゃなんねえなぁ?

 

「やる気なんだな? っと、その前に」

「わっ!?」

 

腕部マルチランチャーより、睡眠ガスグレネードを放つ。彼女には悪いが、こいつで寝ててもらおう。当面は起きなさそうだしな。

 

「さて、ギャラリーも眠ったことだし、始めるとするかっ!」

 

各部スラスターを最大出力、敵さんの機体、ロシア第二世代ラマーチへとバスターソードを薙ぎ払う。

 

「おわぁぁぁぁっ!? 慣れてねえものはつかうもんじゃねえ!!」

「それじゃ、死んじまいなよ!」

 

回避されても、もう片方の手にもバスターソードを展開、回転して薙ぎ払うように斬りつける。

 

「ぐあぁっ!! う、腕がぁぁっ!?」

「ハッハー、ざまぁねえなぁ? ほら、もういっちょ!」

「ぎゃあぁぁっ!! や、やめてくれ! ちょっとまがさしただけなんだよ!見逃してくれ!」

 

一旦攻撃を止める。どうやら、戦意は殆どないらしい。

 

「ほう、なんだ? 戦意喪失かぁ? 根性ねえやつだなぁ? まぁいいぜ、その話乗ってやるぜ」

「本当か!?」

「ああ、本当だ

 

 

 

 

 

 

 

 

——なんてな?」

 

俺はそのままバスターソードを両方とも振り下ろした。何かが潰れる音に混じって、コアが破壊される音が聞こえた。まぁ、どうせ強奪でもした機体だから扱いに慣れてねえんだろうよ。習熟期間がない限り、まともな稼働はできないと考えて問題ない。

 

「さて、と。処理始めますか」

 

俺は残骸に向かって腕部マルチランチャーからナパームを数発放つ。こんなもの、残しておくわけにはいかねえ。俺は傭兵だ、どんな手を使ってでも生き延びて、報酬を得てやるよ。

ナパームを撃ち込まれた残骸は一気に燃え上がる。束さんお手製の弾薬だしな。あり得ないことはない。このまま放置していても問題ねえだろ。

 

「そんじゃ、連れて移動するか」

 

俺は彼女を抱き上げ、場所を移す。さすがに一般人には見せられねえもんだからな。普通に考えてみろ? 人の焦げたニオイなんざかぎたくはねえだろ?

ナパームの炎の熱が届かない位置まできたことを確認すると、俺は彼女を適当なところに座らせる。さて、疲れたわ…………俺も少し休むぜ。

 

 

 

 

 

私が目を覚ました時、目の前には

 

「お? 目を覚ましたみたいだな」

 

あの、黒いISが紅くゴーグルを光らせて見ていた。

 

「ひっ…………!!」

 

私は何か恐怖を感じてすくむ。だってそうでしょ? 周りは暗いし、そんな中で血のような色の目に見つめられたら、誰だって怖いと思うよ。

 

「おいおい、そんなにビビるなよ。俺は少し悲しいぜぇ」

 

そういうと、そのISは頭の部分だけ展開を解除した。そして、そこにいたのは、

 

「久しぶりだな」

 

紅城さんだった。私は目尻に何か熱いものを感じた。そして、それは私の頬を伝って落ちていく。

 

「紅城さん…………」

「心配するな、もう大丈夫だ。だから泣くな」

 

どうやら私は泣いていたようだ。でも、しょうがないよ…………何が起きたかわからなくて混乱してたし、千冬姉さんには見捨てられたし…………もう、世界の全てが嫌になってきた。

そんな中で紅城さんだけがここにきたんだ。それだけで、私は十分救われた気がする。

 

「おいおい、なんだ。どこか痛いのか?」

「違い…ます…だだ、ゔれじいだげでずよぉぉぉ…………」

 

気がついたら私は紅城さんに抱きついていた。あ、装甲はもう解除してるんだ。

 

「まぁ、何があったかは聞かん。とりあえず、泣いてろ。俺は見てねえから」

 

その言葉を皮切りに、私の心の堰は、押さえていたものの全てを流し出した。

 

 

 

 

 

「気が済んだか?」

「…………はい、ありがとうございます」

「それならいいんだ」

 

とりあえず、彼女を一旦落ち着かせる。どのくらい泣いていたのだろうか。まぁ、そんなことはいいか。少しスッキリしたとは思うしよ。

 

「そういえば、自己紹介していませんでしたね。私は、織斑一夏です」

 

一夏か…………いい名前じゃねえか。

 

「なぁ、一夏。お前、何があったんだ? 左腕の傷は知ってるけどよ——太ももとかに見える傷はなんだ?」

 

実際こういうものはどうしても気になってしまう。俺がそれを聞くと、一夏は顔を俯かせてしまった。ゔ…………また地雷か?

 

「あの…………いつか必ず話します」

 

多分、持てる勇気を振り絞って言ったんだろう。少しだが、言葉が震えていた。

 

「そうか…………それなら仕方ねえ。それよりも、お前これからどうするんだ?」

 

俺の質問を一夏に投下した時、彼女の表情に曇りが見えた。まさか、また地雷、なのか?

 

 

 

 

 

どうするか、かぁ…………。本当にどうするかだよ。どうせ帰っても家族としては認識されないだろうし、最悪生きてることすらなかったことになってるかも。千冬姉さんのことだ、春十さえいればそれで十分なんだろうな。私なんて、私なんて…………。

 

「…………帰りたくない」

「はい?」

「…………家に帰りたくないんです」

 

本心が出た。あの家に私の居場所なんてない。生きていることがおかしいくらいだよ。私はあそこで暮らすことに限界を感じていた。

 

「理由、聞いてもいいか?」

 

突然、紅城さんがそう言ってきた。私は力なくうなづくと、その結論に至った経緯を話した。

 

「私、千冬姉さんに見捨てられたんです…………さっき誘拐されたのだって、千冬姉さんの大会出場を邪魔する目的みたいで、私がその餌になったんですけど…………千冬姉さんは春十にしか構ってないし、私に至っては外に放り出す程の扱いの差ですよ? …………そのせいか、自分の居場所がないような気がして…………挙句、今日は紅城さん以外、誰も助けにきてくれませんでした…………」

「そうだったのか…………ん? 悪い、少し通信に出る——依頼は完遂したぞ、束さん」

 

…………え? 束さん!?

 

 

 

 

 

『ゆーくん、ありがとうね、いっちゃんを助けてくれて』

「おいおい、俺は依頼をこなしただけだぜ? それよりも報酬なんだがな——」

『な、何を要求するのさ?』

「——あのさ、一夏、もらっていい?」

「ふぇっ!?」

『ゆ、ゆーくんの堂々プロポーズ!?』

 

何を勘違いしてるんだ? プロポーズ? できる相手がいねえんだから、無理に決まってらぁ。

 

「ちげーよ、単にこいつの境遇を聞いていたら、放っておけなくなっただけだ。別に構わねえだろ?」

『い、いっちゃんがいいって言うなら、いいんじゃない?』

「だそうだが? お前はどうしたい、織斑一夏」

 

俺は一夏にそう尋ねた。まぁ、ある意味人生の大転換期を迎えようとしてるんだ、少しは悩むだろうな。

 

「お願いします! 私を紅城さんの家に連れて行ってください!」

 

…………決断はえーなー。そんなに環境悪かったのかよ…………いかん、そんなこと考えてたらこいつが死ぬ未来が見えてきた。それだけはさせてならない、心のうちでそんなことを思っている俺。

 

「だとよ? それじゃいいんだな?」

『勿論! 私がどうのこうのいう筋はないしね。ただし、避妊はしなさいよ〜』

 

束さんの発言に顔を紅くする一夏。その表情は、前見た時のような暗さなど一切なく、年相応のように見えた。…………それにしても、綺麗な髪だよな。腰のあたりまで伸ばされた黒髪。それに、瞳にもただの黒よりは赤? 琥珀色? そんな感じの色がかかっている感じがする。簡潔に言うぞ、美人だ。

 

「よし、じゃ行くとするか。俺らの家によ」

「はい!」

 

俺は愛機を再展開する。

形式番号RGATX3-71 闘蛇龍。マルチロール機を目指して作られたと言われている機体だ。言われている、というのも俺の自宅でこのフレームだけが眠っていたのよね。なんでだかはわからないけど。それに、適合したオリジナルコアも俺以外に反応しなかった物渡されたし。どんな運命の悪戯だ、おい。それにもう一機、眠っているやついるしよ…………。

まぁ、そのことはいいか。俺は背部の追加ユニットを選択する。といっても、長距離移動用ブースターしか選べないんだがな。だが、こいつを使うと一夏の体に負担がかかる可能性があるんだよな…………。とりあえず、闘蛇龍のPIC、パッシブイナーシャルキャンセラーの作用範囲を拡大させる。こうすればある程度はGを軽減できるはずだ。

 

「じゃ、掴まってろよ!」

「って、えぇぇぇぇっ!?」

「なんだ、そんな声を出して」

「だ、だ、だってこれ、お、おひ、お姫様抱っこだよね⁉」

「仕方ないだろ。これが一番安定してるんだから。ほら、行くぞ」

 

念の為軟質ワイヤーで固定はしてるが油断は出来ねえな。俺はブースターの出力に気を配りながら、日本への帰路へついた。さて、ルートはユーラシア回りでいいか。

 

「あの、紅城さん?」

「なんだ?」

「私の事を助けるのって、依頼だったんですか?」

「…………まぁな」

 

移動途中、一夏がそう言ってきた。うーん、実際そうだからあながち間違いじゃないんだよな。

だからといって、何も思わずに動いたわけじゃねえし。

 

「それじゃ、なんであの時、お金じゃなくて私を選んだんですか?」

「そりゃ、決まってるし、言っただろ。お前を放っておけないってよ」

「そうですけど…………」

「他はあれだな…………お前の事を守りたくなったのかもしんねえ。話聞いてたらよ、なんだかな、人並みの幸せってやつを知って欲しいなと思ったんだわ」

 

実際のところそうなんだよな。こいつ見てたらよ、なんか昔の俺を思い出してしまってさ。そんな目に会うやつは俺以外に必要ねえし。それに、こんなに可愛いやつを幸せじゃねえとかあり得ねえんだよ。あ、ナンパヤローじゃないからな?

 

「…………優しいんですね」

「まぁ、優しいかどうかは知らんがな。だけど、俺だって人間だし、手を差し伸べたくなる事はあるさ」

「…………」

 

俺がそう言うと、一夏は顔を紅くして、顔をそらされてしまった。えー、俺なんかまずい事とか言った? だとしたら、謝らなきゃなんねえんだけど。

 

「…………そんなこと言われたら…………は、恥ずかしいじゃないですか…………」

「なんか言ったか?」

「な、なんでもないです‼」

 

あからさまに否定される俺。おぉぅ…………俺、立場ねえじゃん。こんな風に否定される俺ってなんなの、全く。

そうして、だんだんとユーラシア大陸の切れ目が見え、日本の大地がその姿を現し始めたのは、それから三十分後だった。

 

 

 

 

 

「あー…………夜明けじゃねえかよ。しんどいわー、身体に響くぞー」

「あはは…………辛そうですね」

「辛いってもんじゃないんだよー…………俺、身体が資本なのに」

 

日本に無事に戻れた私は、紅城さんの家の前に連れてこられた。というのも、紅城さんが私の事を引き取ったといったらいいのかな? そんなこんなで、こっちに住む事になった。まぁ、あっちの家には愛着もなにもなかったし、あいつらと離れる事ができたから良かったのかもしれないね。というか、絶対いいって。

 

「ま、日付では今日は土曜みたいだし、学校とかも休みなんだろ? ほら、寄れって」

 

紅城さんはそう言って、私を手招きして家の中へ入れてくる。私はそれに従って、中へと入った。

 

「お、お邪魔します…………」

 

すると、紅城さんは

 

「え? なんでそんなに他人行儀なの?」

 

そう、疑問形で聞いてきた。

 

「え…………だ、だって、一応他の人の家ですし…………」

「はぁ…………あのな、俺がお前を引き取ったんだ。ここはもう、お前の家なんだ。もっと気楽にしていいんだぜ」

 

そ、そうなの…………? なら、

 

「た、ただいま」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえり、一夏」

 

その暖かく、優しい受け応えに、私は静かに涙したのだった。

 

 

 

 

 

「おいおい、泣くことはないだろ。ほら、立ってんのもなんだし、上がった上がった」

「はい…………!」

 

さて、一夏が俺の家族の一員として増えたわけだし、いっちょ歓迎会みたいな物を開きたいと思うんだよな。うーん、今家には食材とかねえからな…………よし、ここはフンパツして今晩あそこ行くか!

っと、その前に

 

「一夏、風呂入って来い。昨日沸かして結局入らなかったから、適当に追い焚きしといて」

「え、いいんですか? そんな事したら、紅城さんのご両親に…………」

「あ、心配いらねえよ。どっちも死んでっから」

 

それを聞いた一夏は驚愕の顔をしたのちに、なにやら申し訳なさそうな顔をした。

 

「その…………すみません」

「別いいよ。もう気にもしてねえし。それに何年も前の事だ、あれに対するもの以外は薄れてるさ」

「あれ?」

「ん? いや、なんでもねえ。それよりも早いところ風呂入ってきな」

「はい…………」

 

とりあえず、一夏を風呂にいかせたとして…………どうするかな、朝飯。やっぱりコンビニで調達してくるしかねえのかな。片道五分で行けるし、問題ねえか。さっさと行って、戻ってくりゃいいだけだ。という事で、俺は一人コンビニへと向かうのだった。…………あれ、一夏って何が好きなんだろ?

 

 

結局、悩みに悩んだ結果のメロンパン。あとは、甘そうな紅茶。それ以外に女の子が好きな食べ物が思いつかなかった。チクショウ…………こんな戦闘バカで肉重視の俺の頭を殴りたいぜ。ちなみに俺はいつもの弁当だけどな。安いし、量もそこそこある。いつもの報酬で生活していくにはこれが安定してるんだよ。出費的な面から見るとな。

とりあえず帰宅した俺。リビングの方へ行って、一先ず買ってきたものをおいておく事にした。さーて、気分転換がてらに髭剃りと顔洗いでもしますか。そう思って洗面所へ向かった時だった。

 

「ふぇ…………?」

「…………へ?」

 

視界に産まれたての姿でいる一夏の姿が入った。しかもちょうど風呂上りなようで、身体には少し水滴がついており、なんとも色気ムンムンな感じがする。それと同時に身体の彼方此方にある様々な傷跡も…………って、何を完全に分析してんの、俺。セクハラ同然じゃねえか。ちなみに俺の家は洗面所と風呂場と脱衣所が同じところに集中している。てか、一夏を先に風呂にいれさせたの俺じゃねーか。忘れてんじゃねーよ、全く…………。

 

「わ、悪りぃ! すぐに出る!」

 

とりあえず、その場から撤退、リビングに戻りソファに座って落ち着こうとするも、先ほどの光景が目に焼き付いて離れず、一夏が戻ってくるまで悶々と煩悩と闘っていたのだった。

 

 

「…………」

「…………」

 

一夏は制服姿で、俺は黒基調の私服で、互いに向き合って座っていた。だが、その間に会話など一切ない。原因は十中八九、さっきの出来事。完全なる事故とはいえ、原因の大元は俺にあるだろうし。それに、一夏も一夏で何か考え事をしてるし…………どうすりゃいいのさ。よし、ここはいっちょ活路を見出すためにも

 

「「あの…………」」

「お、お先にどうぞ…………」

「い、いや、そちらこそ…………」

「「…………」」

 

こんなやり取りが数分おきに繰り返し行われている。その度に表情をコロコロと変えて行く一夏。見ててとても可愛いな。

 

「じ、じゃ、俺からでいいか?」

「は、はい」

「その…………なんだ、裸見ちまって済まん。恥かしい思い、させちまったな」

「い、いえ! そんなことないですよ! それよりも…………見ましたか?」

「裸?」

「いえ…………体にある傷の事です。正直、気持ち悪いですよね…………こんな、傷だらけの人なんて…………」

 

そう言う一夏の目からは涙が流れ出ていた。なんだか、今にもぶっ壊れそうなかんじしてるよな…………おそらく、精神的なものからくるやつ。俺には癒せるんだろうかね。でも、このままにもしておけねえか。

俺は一夏を自分の胸に抱きしめる。これくらいしかできねえからな。

 

「そんなことを、俺は気にしねえよ。それに、言えない理由とかもあるんだろ? 俺はお前の事を受け入れるさ、誰よりもな」

「ぐすっ…………あり、がとう、ござい、ます…………」

 

胸の内で泣きじゃくる一夏の背中を撫でてやるしか、俺にはできなかった。

 

 

暫くして一夏が泣きやみ、俺たちは元の位置に戻った。

 

「それじゃ、話しますね…………この傷について」

「…………ああ、わかった」

「そうですね…………私って、産まれた時から千冬姉さんや春十と比べて非才な人だったらしいんです。だから、どんなに頑張っていい結果を出しても"それが当たり前"、逆に少しでもできなかったら"出来損ない"。千冬姉さんは『私の妹ならできるはずだ』の一点張りで、春十に至っては私を嵌めてたみたいです。それが原因なのか、周りもそれに乗せられて…………全身を蹴られ、殴られました…………家でも、何かちょっとした失敗をしただけで、家の外に追い出されたり…………」

 

一夏はふぅっと呼吸を整えると、再び話し始めた。だがな…………思いっきり腕が震えてるぞ、やりたくないんなら話さなくてもいいのによ…………

 

「それから、ISが出て、千冬姉さんが世界最強になってからは、嫌がらせとかも酷くなって…………私物は盗まれ、学校に行けば居場所はなくて、テストも百点じゃなかったら先生に怒られて…………挙句、ナイフで切られ、ライターか何かで体を焼かれました。あの日、あそこにいたのも、切られて、殺されそうになったから、逃げていたんです…………」

 

辛すぎる…………というか、完全なる人のエゴが原因じゃねえかよ。確かに、身内に世界最強とかってもてはやされる人がいたら、他人は期待とかしちまうだろうけどさ…………それは違うと思うんだ。自分は自分、他人は他人、他の人にその価値とかそういうのを決めつけられる筋合いはない。そんな筈なのに一夏は…………聞いてるだけで胸糞悪くなるな。それを一人で耐えてきたんだな…………強い子だよ。

 

「そうだったのか…………辛かっただろ?」

「…………はい。でも、両手で数えられるくらいですけど、わかってくれる人はいましたので」

「そうか…………まぁ、しんみりした話はここまでにしとこうや。とりあえず、朝飯食おうぜ。ほらよ」

 

俺は一夏の前に買ってきたメロンパンと紅茶を出してやる。流石に小遣いとかで買って食ったりしたことはあるだろ。すると一夏はこう俺に訪ねてきた。

 

「あの…………これ、なんですか?」

 

…………はい?

 

「メロンパン、知らねえの?」

「はい。そもそも、これ食べたことないんで」

「えっ、小遣いとかで買ったりしたことねえの?」

「あの、小遣いってなんですか?」

 

…………あのー、これあまりにもひどすぎじゃね? 普通小遣いとか貰えたりするんじゃないの?(親のいねえ俺には関係のねえ話だが) 一夏の顔を見る限り嘘をついているようには見えねえしな…………織斑千冬、あんたなにやってんの。

 

「えー、小遣いってのは定期的に貰える金のことだ。それと、それはメロンパンっていって、パンの一種だ」

「えぇっ!? お金って貰えるものなんですか!? それに、これがパンなんですか!?」

「あ、ああ。そうだが、とりあえず食ってみろ。美味いはずだから」

「じ、じゃあ、いただきます」

 

そう言って一夏はパンを一口かじる。

 

「…………甘い」

 

そして、また一口

 

「…………美味しい!」

 

二口目で一夏は涙を流しはじめた。って、マジかよ⁉

 

「お、おい、どうしたんだよ!?」

「だ、大丈夫です…………ただ、こんなに美味しい朝ごはんを食べられるなんて、今まで考えられませんでしたから…………たまに食べられない日もありましたから」

 

…………俺は一夏の言ったことに驚きを隠せなかった。おいおい、そんな昼ドラ的なやつでありそうなことが現実で起きてるのかよ…………というか、よく死ななかったな。

てか、こんな調子じゃ夜あそこに連れて行ったら、号泣でもするんじゃねえの?

 

「そ、そうなのか…………でも、ここじゃそんな心配ねえから、食いたいだけ食え。小遣いも少しならやるからよ」

「ぁありがとうございます…………!」

 

泣きながら感謝される俺であった。あのー、いうのもなんだけどたった130円で喜ばれるのもどうかと思うんだ、俺。そう思いながらも、俺は自分の弁当をつつくのだった。

 

 

その夜。

 

「ちょ、ちょっと待ってください紅城さん!」

「おっせーぞー、早くこーい」

 

俺は一夏を連れてある場所へ向かっていた。俺の自宅周辺にある、とある店だ。この辺の人間は女尊男卑を許さねえ奴らが多いし、人を誰かと比べたりするのが好きじゃない奴らだし、一夏を連れてきても普通に接してくれるだろうしな。

さて、俺らが向かっていた場所だが、

 

「着いたぞ、ここだ」

「え? でも、ここって…………」

 

居酒屋だ。店名は『鳳翔』。この辺で唯一ある食事処だ。まぁ、居酒屋と言うが、実際のところ酒も出せる料理屋だから、普通にメシも食える。ただ、ちょいとばかし値が張るんだよねー。まぁ、レベル高いから仕方ねえんだけど。

 

「うぃーっす」

 

俺はいつものように慣れた手つきで暖簾をくぐり、中へ入る。一夏はこういうところに慣れてないのか、俺の後ろに隠れてびくびくしてる。

 

「あら、いらっしゃい、悠助君」

「おう、有香子さん。久しぶりやね」

「そうね。ところで、その後ろの子は?」

 

ここの女将である有香子さんが一夏を見て聞いてきた。やっぱり気になるか。今まで一人で来てたし。

 

「ああ、一夏のこと? 俺の連れだよ、連れ」

「ふふっ、そういうことなの。私は鳳翔有香子です。よろしくね」

「お、織斑一夏です」

「ところで有香子さん、なんか席が微妙な感じにしか空いてない気がするけど、俺ら待った方がいい?」

「そうね…………ごめんなさいね」

 

有香子さんが申し訳なさそうに謝ってくる。いや、客だから待つの当たり前なんだけど…………それでも、この人は皆のオカンと呼ばれるほど良心的な人だからな…………。

 

「んんっ? どうしたんだ、有香子さんや…………って、悠助のボウズが女連れて来たぞ!!」

「「「なにぃ!?」」」

「ゲンさん声でけえよ!!」

「あのカタブツの悠助坊が」

「女の子を連れてきた」

「それもえらいべっぴんさんやで」

「「「…………」」」

 

突然静まり返る店内。というか、ほぼゲンさん(大工棟梁)のせいだよな。

 

「「「うおぉぉぉぉっ!! 悠助坊に春が来たぞぉぉぉぉっ!!」」」

「めでてえ、めでてえなぁ!!」

「ヒューヒュー! やりおったなこのマセガキ!」

「こうしちゃいられねえ! 待ってろ、今鯛を取ってくるぜ!」

 

賑やかだなぁ。まぁ、親が死んでから傭兵始めるまでの間はここに世話になってたし、皆家族みたいな感じだしな。賑やかになるのも仕方ねえか。

 

「おう、悠助のボウズに嬢ちゃん、俺の使ってた席、座っていいからな? なぁ、龍さん、俺そっちにはめてくんねえ?」

 

そう言うとゲンさんは自分のお猪口と皿と箸を持つと、龍さん(町内会会長)のとこへと行った。

 

「あらあら♪ それじゃ、二人はここに座ってね」

「あいよ。ありがとよ、ゲンさん」

「いいって事よ! ガハハハッ」

「そんじゃ、有香子さん、こいつとこいつとこれ、二人前で頼むわ」

「はいはい。それじゃ、ちょっと待っててね」

 

そう言って有香子さんは店の奥の方へと入っていった。

 

「なぁ、ボウズ」

「んあ? ゲンさん、どったの?」

「その嬢ちゃん連れてきたのはいいが、お前とどういう関係なんだ?」

「そうだったね。話してなかったもんな。いいぜ。こいつ、織斑一夏はな、いろいろ事情あって俺のとこに住まうことにしたんだよ。その祝いでここにきたんだわ」

「なるほどな。よし、お前ら聞いたな?」

 

ふと、後ろを振り向くと、片手にグラスを持ってスタンバイしてる。

 

「ほら、嬢ちゃんもこれ持って。ジュースで良かったか?」

「あ、は、はい!」

 

ゲンさんは一夏にジュースの入ったコップを渡す。

 

「ほれ、お前さんもこれ持ちな。いつものやつだよ」

「悪いな、龍さん」

 

俺も龍さんからコップを受け取る。恐らく中身は黒霧島。俺が飲む焼酎だ。ん? お酒は二十歳から? 細けえこたぁいいんだよ。

 

「そんじゃ、自己紹介も兼ねて嬢ちゃん、一言頼むよ」

「え!? え、えーと、お、織斑一夏です。そ、その…………よ、よろしくお願いします!」

「よし! じゃあ、この二人の幸せを願って、乾杯!」

「「「乾杯!!」」」

 

一夏は突然の事に戸惑っているようだ。

 

「ふぅ、じゃ、ゆっくりしてきなよ」

 

ゲンさん達はそれぞれの席に戻るも、賑わいが収まる事はなかった。

 

「あら? なんだか盛り上がってるみたいですね」

「まぁ、そうみたいです」

「ふふふ。はいこれ注文の。あっちの方はまだいいかしら?」

「そうだね。様子見てもってきてもらおうかな」

「はいはい、わかりましたよ」

 

さて、俺たちの前に並べられたものだが、一夏はなんだか初めて見るような目だったり、喜んでいるような表情をしている。

 

「あ、紅城さん!? こ、この料理はなんですか⁉ す、すごくいい匂いがするんですけど!?」

「ああ、そいつは有香子さん手作りの磯辺揚げ。美味いもんだぞ、食え食え」

「え…………い、いいんですか?」

「当たり前だろ? お前が俺のところに来た祝いなんだから」

「そ、そうなんですか…………じゃ、いただきます」

 

一夏は磯辺揚げを一つ口に入れた。女性でも食べやすいように一口サイズに作られてるからな。

 

「お、美味しいです!」

 

また一つ、また一つと一夏はそれを口に運んで行く。

 

「そいつは良かったな」

 

俺もつまみがてらに一つ口に入れる。うん、この少し薄味のやつがいいんだよな。

いつの間にか一夏の磯辺揚げはなくなっていた。

 

「おお…………食欲すげえな」

「ふぇっ!? あ、いや、その…………一昨日何も食べてないので」

「お、おう。そ、そうか。ほら、俺の分も食え」

「ありがとうございます…………!」

 

おいおい、そこまで涙して喜ぶとか…………一体今までどんな事をされてきたんだ?

 

「はい、次の品よ。あれは少し準備かかるから待っててね」

 

有香子さんが持ってきたのは

 

「お、お寿司ですか!?」

 

そう寿司だ。それも、有香子さん自身が握った、ここの特上寿司だ。

 

「私、お寿司食べるの初めてなんです」

「今まで食ったことないの?」

「まぁ、千冬姉さんと春十が食べるのを見た事はあるんですけど、私が食べようと思った時にはもう無くて…………がりしか残ってなかったですね」

 

…………なんだろう、さりげなくあかん事を一夏は言った気がする。周りもなんだかしんみりしたムードになっているぞ。

 

「ほら、嬢ちゃん、これ食べていいからな? 元気にしなさいよ」

「あ、ありがとうございます」

 

仁吉さん(左官職人)が、自分の注文していた刺身を一夏に渡すという事態まで発展した。

 

「それじゃ、いただきますね」

 

一夏は寿司を一貫(恐らく鯛)を口に運ぶ。

 

「美味しい! 少し辛い感じもしますけど、とても美味しいです!」

「ふふふ、その鯛、勘助さんが持ってきたものなんですよ」

 

勘助さん(魚屋)、ありがとうございます。その後も

 

「この赤いのはなんていうんですか?」

「それはマグロだな」

「じゃ、この長くて黒っぽいのがついているのは?」

「アナゴ。黒っぽいのはタレだ」

「尻尾みたいなのがついてるのは?」

「エビだぞ」

「じゃ、じゃあ、この赤い大きなつぶつぶは?」

「イクラや」

 

次々と口にいれていく一夏。その度に見せる笑顔、それは反則だと思うんだ。可愛いすぎる。周りもなんだか微笑ましい表情で見ていた。

あと…………一夏が食いしん坊キャラに見えてきたが、それは違う。一夏が言うに、まともに食事が取れたのは三日に一回。それ以外はパン一切れだけとかザラにあったらしい。たまに何も食えない日も…………悲惨すぎるわ。てか、よく生きてたな。

 

「お寿司って、こんなに美味しいものなんですね!」

 

ご満悦な表情の一夏。余程美味かったんだろう。

 

「よいしょっ、と。この器、受け取ってね」

「あ、はい。でも、これって生卵ですよね?」

「とりあえず、それを溶いて待ってろって」

 

有香子さんは鍋敷きを俺らの前におくと、そこに湯気が立ち込める鍋を置いた。

 

「あ、これ食べた事あります! すき焼きですよね?」

「お、食った事あるのか」

「はい! 確かネギとシイタケと焼き豆腐を食べる鍋料理ですよね?」

「「「」」」

 

最早、唖然。有香子さんまでもが固まっているぞ。てか、え、聞き間違いだといいんだけど、肉入ってねえの?

 

「あ、あのー、に、肉は食ったことねえの?」

「えーと、あの時のには入ってましたけど、千冬姉さんが『すき焼きはネギやシイタケを食べる鍋だ。邪魔な肉は私達で食う』と言って、口にしたことはないですね」

「「「…………」」」

 

…………なんだ、かける言葉がねえよ。つか、織斑千冬ひどすぎねえか?

 

「あ、あのな一夏。すき焼きは肉を食うもんなんだぜ。ネギとかはサブのものなんだ」

「そ、そうなんですか?」

「いや、それが普通だからな? てか、今日まで肉食ったことある?」

「記憶にないです」

 

はいー、一夏に肉を食わせること決定。

有香子さんのところで出されるすき焼きには米沢牛が使われている。米沢牛は、ブランド肉だ。あの肉を食ったら、他のもんは食えなくなるレベルだ。

とりあえず卵を溶き終わった 一夏の器に肉をよそってやる。いい感じに火が通っており、タレも染みている。

 

「え!? いいんですか!?」

「まだあるんだし、食えって」

「じゃ、じゃあ、いただきます」

 

一夏は肉を卵に絡めて口に入れる。まぁ、一夏は一口が小せえから噛みちぎったんだけど。

 

「!? こ、これがお肉なんですか!? とても美味しいです!!」

「喜んで貰えて嬉しいです。ささ、もっとどうぞ」

「はい!」

 

一夏は満面の笑顔で肉をどんどん食っていく。まぁ、これが初めて食う肉なんだから仕方ねえか。…………だが、俺は少々怒り気味だ。一夏をこんな状態にした織斑千冬という存在を。おそらく、存在としては最高なんだろうが、人間としては凡人以下なんだろうさ。

俺はつまめそうな焼き豆腐を口にし、グラスを軽く煽った。

 

「あ、有香子さん、焼き鳥十本追加」

「はい、ちょっと待ってて下さいね」

 

つまみとして焼き鳥を追加する。いやー、今日は加賀美さん(企業専務)来てないから頼める。あの人、焼き鳥がなぜか嫌いだからな。なんでだろ? 美味いのに。

 

「イェアーッ! 景気付けに一丁行くぞ!」

「キター! 三城原さんの一気飲み!」

 

あーあ、いつもの一気飲み始めちゃったよ。まぁ、三城原さん(自営業)曰く、鋼鉄の肝臓持ちらしいしな。それに今まで何度もしてるから、屈強なもんだろうよ。

 

「なんだか、楽しいですね。こんなに楽しいのは、初めてです」

「そいつは、よかった」

 

一夏の見せる笑顔、それが一段と輝いていたと思う。それと同時に、こいつを悲しませるような真似はしねえ、そう心に誓った。

 

 

「今日はありがとうございました」

「いいってことよ。祝いで行ったんだからな。楽しんでもらえてなりよりだ」

 

鳳翔を後にした俺たちは既に自宅に着き、布団を敷いている。ん? 一夏の着替えどうしたかって? いやー、こっそり織斑の家に乗り込んで取ってきたわ。窃盗罪? 一夏の私物取りにきただけだから問題ねえだろ。それに、傭兵なんだから法律も関係ねえ。

 

「それじゃ、私は明日学校があるので寝ますね」

「そうか、んじゃゆっくり寝な」

「はい、おやすみなさい」

 

一夏はもう寝るようだ。寝室(というか俺の部屋)を後にし、俺は地下格納庫の方へ向かった。まだ愛機の整備が終わってないんだ。ナパームの補充もまだだしな。

 

「よし、装甲の損傷もないし、駆動系も異常は無し、と。…………本当、オーバーテクノロジーもいいところだ」

 

闘蛇龍を駐機状態にし、ハンガーに機体をロックする。そして、装甲の各部を開いて中を点検。俺としてはかなり酷使している気がしているんだが、今まで故障とか引き起こしたことはないし、装甲は殆ど損傷しない。それに、損傷してもしばらくすりゃ直ってるしな。

さて、弾薬の補充を始めますか。

消費弾薬はアサルトライフル用徹甲弾一発、腕部マルチランチャー用睡眠弾一発、ナパーム弾五発というところだ。アサルトライフルは放置しても問題ないとして、マルチランチャーには補充しないとな。内蔵マガジンを取り外して、ナパームと睡眠弾を込める。量子変換している分はまだ使ってないからいいか。バスターソードも大して損耗してないし。

 

「そいじゃ、少しお前も休んでおけよ」

 

補給を終わらせた俺は、ハンガーにかけた愛機にそう告げて地下格納庫を後にした。

 

 

(さて、俺も寝るか…………)

 

寝室に戻った俺は寝ることにした。まぁ、一夏が寝ているけど問題はないよな?

俺は布団に入って、いつも通りうだうだとこの時間を楽しもうとしていた時だ。ふと、俺の布団に誰か後入ってくるのを感じた。てか、絶対

 

「一夏、おまっ」

「…………今日だけ一緒に寝てください」

「…………はいよ」

 

一夏は俺の布団の中に入ってくると、すぐに眠りに落ちてしまった。そして、気がつけば体を掴まれてしまっている。…………仕方ねえ、このまま寝てやるか。

俺はそのまま寝ようと思ったのだが、女性特有の膨らみが俺の背中に当たっていて、しばらく悶々とした時間を過ごすのだった。

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