守りたい、ただそれだけ(本編完結)   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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第20話

「この野郎がっ!!」

 

ピットに戻るなり、俺はあの自称天才の顔面を殴りつけていた。いや、死なない程度には抑えてるぞ。本気で殴ったら顔面陥没くらい普通にするわ。

まぁ、俺がキレている理由なんてわかるだろ? さっきの事しかねえんだから。あそこでこいつの乱入さえなければ、事はもう少し安全に行えたはずなんだ。蒼龍が謎の粒子放出モードに入ってダメージを与えてからなんとかなったものの、そんなことがなければ死人だって出ていたに違いない。だからよ、こいつだけは許せそうにねえ。

あ、一夏はラウラを医務室へ運んでいった。面倒ごとは俺の得意分野だしな。

 

「なんなんだいきなり!? 僕が何をしたっていうんだ!!」

「んなもん、自分の心に聞いて見やがれってんだよ、自称天才がぁっ!!」

 

もう一発殴りつける。そして、襟をつかんで無理やり立たせる。反省する気すら見せてねえ。なんなんだよこいつは…………ひとでなしじゃねえの?

 

「なんであの時勝手に飛んできやがった? 天才なら余裕を持って見てんじゃねえのかよ! あ"ぁっ!! なんとか言ってみやがれよ!!」

「あの剣は千冬姉さんだけのものなんだ!! 真似することは許されない!! 唯一許されてるのは僕だけだ!! あの銀髪はそのタブーを破った!! だから、僕が倒そうとしたんだ‼︎」

「ほざけよっ!! てめえの出すぎた行為でこちとら命がけだったんだからな!!」

「そんなこと知るか!! 僕は天才なんだ!!あんな出来損ないの事なんか考えるわけないだろう!!」

「うるせえっつってんだよ!! 三下ァッ!!」

 

一本背負いの要領で床へと叩きつける俺。骨の一本二本折れても問題ねえだろう。それに、ここには織斑千冬もいねえ。いるのは一部始終を見ていた山田先生に応援に来ていたセシリア、鈴、簪だけだ。

 

「がはっ!! な、なぜだ!? なぜ僕がこうならなければいけない!? 僕は正しいことをしたはずだ!!」

「役に立たねえトーシロが戦場にしゃしゃり出てくんじゃねえ!! 邪魔なだけだ!!」

 

容赦なく蹴る。そこに躊躇いなんてものはない。怒りが向かう矛先が定められている今、ガトリングのように次から次へと出される。俺を止める術などない。

 

「ふざけるなよ!! 僕が役に立たないってどういう意味だ!?」

「まんまの意味だクソッ!! そのお花畑な頭で考えやがれ!!」

 

ついでにそこへラフレシアでも咲いていてほしいわ。その悪臭で意識でも失いやがれ。

 

「これはもう擁護のしようがありませんわね」

「どうせ勝手に蒔いた種よ、自分でケツくらい拭きなさい」

「…………自業自得」

 

三人も助ける必要はないと考えているようだ。それもそのはず。代表候補生は非常時における対応なんてモンをみっちりと叩き込まれている上、一応軍属だからな。このような反応をしてもおかしくはない。

 

「…………どういう状況だ?」

 

そこへやってきたのは織斑千冬だ。あーあ、面倒なことになりそうだ。ただでさえ身内贔屓の激しい奴が来たんだ、面倒なことにならないはずがない。

 

「紅城、お前は何をしている?」

「あぁ? ロクな思考もできねえ奴に説教的なモンをしていただけだが?」

「それでなぜ殴る必要がある? 到底私には理解できんな」

 

…………はぁ? どの口がそんなことをほざきやがる? ちょっと失敗しただけの生徒を致死量レベルの打撃で指導するてめえにだけは言われたかねえわ。マジで。本当、こういう奴の思考回路を考えた奴は誰なんだよ。とっとと配線変えやがれってんだ。

 

「まぁいい。お前には然るべき措置を受けてもらう。その程度は覚悟しておけ」

「——その必要はありませんよ」

 

変に権力を振りかざす織斑千冬の後ろから来たのは

 

「更識…………なぜ貴様がここにいる? ここは一年の会場だぞ」

「あらぁ、学園長からの通達を受け取ってきたんですけど、それじゃ報告できませんね」

「…………言え」

 

織斑千冬が睨みを効かせた視線を生徒会長へと向けるが、当の本人はどこ吹く風といった感じでスルーしてる。そりゃな、全然殺気も何も感じねえし。そよ風みたいなもんだわ、これ。

 

「織斑春十、貴方に一週間の自室謹慎を命じるわ。これは決定事項よ」

「な、何故ですか!? 僕は正しいことをしたまでですよ!? 専用機持ちとしての責務を果たそうと——」

「——そんな事はどうでもいいの。貴方が介入した事により、あの異形がどんな行動を取るかわからなくなった。会場の避難もできていない中で、そんな勝手な行動は多くの人命を危険に晒したのよ。その辺り理解できる?」

 

生徒会長が言うことは最もな事だ。今回は俺たちを狙ってきたからいいものの、もしあれが殲滅を最優先としたキルモードで起動していたら、恐らく大惨事になっていただろう。

 

「織斑先生、貴女も貴女ですよ。避難指示も出さずに、織斑君も無断出撃を見逃した。とても有事における統括管理官とは思えない態度ですね」

 

生徒会長は毒を混ぜた言葉を次々と放っていく。それを聞いて若干たじろぐ世界最強と自称天才。しかも、生徒会長は未だににこやかな笑顔。…………あの人、サディストか?

 

「織斑先生、貴女には特に何もありませんが今後このようなことはないように、との言付けです。では織斑君、行くわよ」

 

そう言うと生徒会長はどこからか手錠を取り出し、自称天才の両手にそれをかけた。

 

「な、なぜ僕が!?」

「うだうだ言わないの」

 

そしてそのままピットを後にした。織斑千冬もそれを追うように出て行く。俺たちの周りにはなんとも言えない空気が漂っていた。

 

「…………やっぱりお姉ちゃん、かっこいい」

「って、生徒会長ってあんたの姉かい!」

 

ふと呟いた簪の何気ない一言に突っ込む鈴。それを見ていたら少し空気が柔らかくなった気がする。というか、シスコンかよ。まぁ、姉が目標とか言っていたから仕方ねえのかもしれんが。

 

「それにしても紅城君、私達もその気持ちはわかるんですが、どうしてあそこまで怒りを露わにしていたんですか?」

 

山田先生がそう聞いてくる。そんなの、答えは一つに決まってるさ。

 

「守りたい奴が近くにいたから、ですかね。守りきれなかったら俺は絶対死ぬほど後悔しますよ」

 

 

 

 

 

 

その言葉を聞いた私は、とても衝撃を受けた。まさかこんな思いを持っている人がいるなんて…………それも私よりも年下で。私も生徒を守りたいという思いはありますけど、それよりも強い、誰か一人だけを守るという思い。その思いはきっと私よりも強い。

 

〔そんなことないのです。あなたの思いも十分大きなものですよ〕

 

胸から下げている私の髪と同じ緑色の石を飾ったネックレス。そこからたまに聞こえる声は、私の弱い心をいつも支えてくれる。

 

(ありがとう)

 

心の中で私はそう呟いた。勿論、宛先はその声の主。

 

「そうですか。とりあえず、今日のところは解散としましょう。皆さんゆっくり休んでくださいね」

「了解したっす」

 

紅城君がピットから出て行くのを見届け、私は少しため息を吐いた。原因はあの人、織斑先生や織斑君、それとこの場にいない篠ノ之さんです。あの人達の行動は少し目に余ります。恐らく反省などはしてないでしょう。できれば、あの人達の手から皆さんを守りたいものです…………。

私は画面に向き直り、資料を作成し始めた。今日の件、しっかり纏めないといけませんからね。

 

 

 

 

 

自室に戻った俺は一気に疲れが押し寄せ、ベッドへとダイブしていた。あー、疲れた。というか腕にかなり痺れが残っている。恐らく原因はあの初撃をバスターソードで受け止めた時。あの時、かなりの衝撃を受けたからな。骨の一本二本イカレるかも思ったわ。まぁ、なんともないけど。

 

「あ、悠助。帰ってきてたんだ」

「お、一夏。おかえり。ラウラの容態は?」

「今はだいぶ落ち着いているかな。目も覚ましたし」

 

どうやらラウラは無事みたいだった。いやー、よかったわ。死なれていたら胸糞悪い気持ちになる。最近の俺はこんな感じに考えられるようになってきていた。一昔前は誰が死のうと関係なかったんだけどな…………やはり、そうなったのは

 

「ん? どうかしたの?」

 

こいつなのかもしれんな。あの時、あそこでこいつを見掛けなかったら俺はどんな人生を送ることになっていたんだろうな。恐らく、ただ擬似コアを破壊し続け、その中で散る運命なのかもしれんし、親達の仇としてテロリストを殺戮していく運命なのかもしれん。そう考えていくと、こいつといる時間はとても掛け替えのないものなんだと実感させられる。それと同時に、守らなければならないという使命感も生まれる。

 

「いや、なんでもねえや」

 

とりあえず俺はそうとだけ答えた。しかしな、さっきから耳が痒いわ。そういや、耳かきなんざ当面の間してなかったしな、といっても一ヶ月ほどだが。まぁ、適当に取り出してみますか。そう思い耳かき棒を探し始める俺。

 

 

 

 

 

「あー、ここにあったか」

「何を探していたの?」

「耳かき棒」

 

突然悠助が引き出しを開けて何かを探し始めたと思ったら、耳かき棒を探してたみたい。という事は耳かきでもするのかな?

 

「でもよ、自分でやっても取った気しねえんだよな。なんか残留感があってよ」

 

そういうものなのかな? 私は一人でしかしたことないからよくわからないよ。結構こまめにしていたからかな?

そんな悠助の呟きを聞いた私の頭の中には一ついいことが思いついていた。

 

「じゃ、私がしてもいい?」

 

ほんの些細な恩返し。いつも悠助にはお世話になっちゃっていたから、このくらいはしてあげたい。でも悠助がどんな反応するんだろう? …………も、もしかして嫌なのかな?

 

「マジで? してくれんの?」

 

あ、なんだかいいみたい。

 

「うん。たまにはいいかな、って」

「そうか。そんじゃ、頼むわ」

「じゃあ、ここに頭を乗せてね」

「ほいさー」

 

私は靴を脱いでベッドの上に正座する。そして太ももに悠助が頭を乗せてきた。これで準備は万端。後は悠助から受け取った耳かき棒を装備して、と。それじゃ、始めるとしますよ。

 

一夏、全力でいきます!

 

 

 

 

 

「あぁ〜、気持ちいぃわ〜」

「そう? あ、大きいのあったよ、ほら」

「うおっ、デケェ…………一ヶ月でこれかよ」

「まぁ、悠助もいろいろ疲れてるからなんじゃないのかな?」

 

一夏に耳かきをしてもらっているが、すげえ気持ちいいんだわ。あー、これ最高。ちょっと不安げにやっているよう感じもあるが、いい力加減なもんで寝そうだわ。あー、極楽極楽。

 

「ふぅー、ふぅー…………」

 

これだ、これ。すげえ気持ちいいんだよ。マジでさ。耳ん中かなりすっきりとしてくわ。というか、この息を吹きかけるのがさ、すげえ可愛いんですが。それに、一夏の太もも柔らかくて気持ちいい…………って、自分で思ってセクハラじゃねえかと思う。

だがそう思えるほど気持ちいいんだから仕方ねえ。シリアス思考なんざどっかに溶けて消えていったわ。それに、ちょっと痒いところとか的確にかいてくれるし、なんなんだこのスキルの高さ。嫁に欲しいわー…………って、俺は何を言ってんのやら。

 

「こっちの方は大体終わったよ。反対を向いてもらえるかな?」

「りょーかーい」

 

なんだろうか、返事すら間延びしてきたわ。これは確実に寝るパターンのやつや。

 

 

 

 

 

悠助に反対側を向いてもらい、もう片方もしっかりとやる。左手を耳に添えて、右手に持つ耳かき棒を気をつけながら入れていく。他人にしたことはないから、ちょっと緊張してるよ。でも悠助、なんだか気持ち良さそう。

 

(あ、また大きいのあった。慎重に、慎重に…………)

 

大胆に、だけど正確に。こうしてまた一つ取っていく。取るたびに悠助の口からはため息みたいなものが出ている。でも、その顔はとても気持ち良さそうな表情。悠助ってそんな顔もするんだ。いつもなんだか考え込んでいたり、険しい表情になったりしているけど、こんな風に安らいでいるような顔もできるみたい。

 

「どうだ、俺の頭重くねえか?」

「大丈夫だよ。それよりも私の太もも狭くない?」

「丁度いいくらいだ」

 

一通り取った後は息を吹きかけて、細かなものを飛ばす。あまり強く吹くのもなんだか変な感じがするから少し弱めで吹いている。これをすると悠助の体がぴくって動くんだよ。口からはなんだか気の抜けたような声がしてるし。

そんなこんなしているうちにもう耳の中は綺麗になっていた。

 

「はい、これで終了。どうかな?」

「ああ、最高に気分がいいぜ。ありがとよ」

「どういたしまして」

 

悠助はそう言うと大きな欠伸をした。

 

「すまねえ。ちょっと眠くなったわ。飯の時間にでもなったら教えてくれ」

 

確かにまだ午後四時だし、食堂があくまで二時間くらい時間がある。寝てても大丈夫でしょ。

 

「わかったよ。おやすみ、悠助」

「ああ、おやすー」

 

そう言うと悠助はすぐに寝ちゃった。やっぱり疲れていたのかな。今日も悠助はいろいろあったみたいだしね。ふわぁ〜…………なんだろ、私まで眠くなってきちゃった。ちょっとだけ寝ちゃおうかな? 別にいいよね? じゃ、おやすみなさーい。

 

 

 

 

 

「全く…………食堂に来ないなんて何があったのかしら?」

「そうですわね。いつもならわたくし達よりも早くきている二人ですもの」

「…………一足早い夜戦?」

「絶対にそれはないでしょ!?」

 

鈴、セシリア、簪、シャルロットは揃いも揃って悠助と一夏の部屋へと向かっていた。というのもだ、もう晩御飯の時間はすでに過ぎており、食堂は閉まっている。いつも早くきて異常な量を食べる悠助がいないとなると、何かが起きたに違いない、そう考えた彼女たちなのであった。

 

「あれ? 鍵をかけてないみたいだよ」

「無用心ですわね」

「…………侵入しよう」

「あんた…………別の方向へ思考が変わっているわよ。まぁ、入るけど」

 

そう言うと鈴はドアノブを捻り部屋の中へと入っていく。それに続くかのように三人も入っていく。

 

「ははぁーん、そういうことね…………」

「これでは仕方ありませんわ…………」

「…………しょうがない人達」

「ふふっ、なんだかとても気持ち良さそうだね…………」

 

四人が見たものは互いに向き合って寝ている悠助と一夏の姿だった。一夏の寝顔はいつも通りの笑顔だが、一方の悠助もまた少しだが笑顔に近い表情をしていた。四人はそれを見るなりなんだかほっこりとした気分になったのだった。

 

「僕たちは退散したほうがいいかもね…………」

「ですわね。その方がよろしいでしょう…………」

 

シャルロットとセシリアは二人にバスタオルを掛ける。その姿は優しく微笑む聖母のように見えた。

 

「撤収、撤収」

「…………ラジャー」

 

四人は部屋を後にした。

 

「というか、あんなんだったらさっさと付き合いなさいよ、全く…………」

「「「同感」」」

 

鈴のその言葉に同意しないものはいないのであった。

 

 

 

 

 

「クソッ、クソッ、クソッ!!」

 

一週間の自室謹慎を命じられた春十は、非常に荒れていた。壁を殴り続け、ストレスを発散しようにも全く意味をなしていない。

 

「何故だ!? 僕は天才のはずだ!! なのに何故、僕のことを認めないんだ!!」

 

自身のことを天才と思ってはいるものの、悠助にはぶちのめされ、IS戦では今まで見下していた一夏に負け越している。だが、自身を向上させることなど考えておらず、単に相手が卑怯な真似をした、自分は正しい事をした、としか思っていないのだ。

 

「そうだ…………あいつだ、一夏が全て悪いんだ…………あいつさえいなければ僕はこんなことにはならなかったはずだ…………」

 

あまつさえその矛先は何の罪もない一夏へと向けられていた。

 

「邪魔だからな…………絶対に殺してやる。僕たちが作る世界と秩序の礎を乱した報いだ…………ハハハ」

 

春十は不気味な笑みを浮かべてそう言った。もはや自分を中心として世界は動いている、そのような思考を持つようになっていた。

 

「おのれ、あの出来損ないが! ならば私も!」

 

そしてそれを同じ部屋で聞いていた箒(なお、名前が出たのは数えるほどしかない)は、携帯電話を取り出し、普段は決して使わない番号を入力した。その宛先は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

——篠ノ之束(実の姉)だった。

 

 

 

 

 

「あ、この番号は!」

 

一人ラボに籠もりっぱなしの束の携帯電話が約三ヶ月ぶりに鳴った。ちなみに三ヶ月前にかけてきたのは一夏である。

束はディスプレイに表示されている番号を見るなりすぐに応答した。

 

「もすもすひねもすー? ハァーイ、皆のアイドル、束さんだよー!」

『お久ぶりです、姉さん』

「うんうん、私も楽しみにしていたんだよー、箒ちゃーん!」

 

相手は(実の妹)だった。束本人としてはかけてきてくれたことはとても嬉しいはずだ。

 

「ところでさー、今日はどんなようなのかなー? 束さんは興味津々!」

『はい、実は専用機が欲しくて…………』

「専用機ー? ぶぅー、そんなの早く言ってくれなきゃ! 箒ちゃん用にもう準備してあるんだよ!」

『本当ですか⁉︎』

「束さん、ウソつかなーい。じゃ、最終調整とかしておくから臨海学校のときにでも持ってくねー! ばいびー」

 

束はそう言うなり電話を切った。すると、

 

〔あれでよろしいのですか?〕

 

胸に下げている翠色のペンダントから声が響いた。束はそれに特に反応することもなく返事をした。

 

「いいのいいの。まぁ、試験的に作ったあれでいいでしょ。コアだけはオリジナルをはめるわけだしいーじゃん」

〔ですが、貴女は確か…………〕

「うん、あんなの嫌いだよ。というか、いっちゃんの敵は嫌い」

 

束はきっぱりと言い切った。その言葉にはさっきの態度とは打って変わって喜びとかそう言った類のものは見受けられない。代わりにあるのはどこまでも冷たいものであった。

 

〔ならいいです。あの子を出すのは少し嫌ですが…………〕

「まー、そうだよね。一応強制排除(パージ)システムは積んでるから許して」

〔…………仕方ありませんね〕

 

声の主はそう言うと後は何も言わなかった。

 

「そう思われても仕方ないよね。ところでくーちゃん」

「お呼びですか、束様」

 

突然束の背後に現れたのは銀髪の少女。白の海軍帽に同じ色の上着が特徴的だ。彼女はくーちゃんと束に呼ばれている。

本名はクロエ・クロニクル。ラウラと同じ遺伝子強化試験素体である。彼女は束がある時に拾った子だ。束は彼女を自身の娘のように大切に育てている。

 

「どうかな? あの機体は?」

「機体よりも船体に近いですが。しかし、思考制御によるRATシリーズ運用戦艦、非常に扱いやすいです」

「そう? それなら良かったよー。多分、まだ出番はないから慣れていてね」

「了解しました。束様もあちらの解析を進めてください」

 

クロエはそう言うとラボの奥へと消えていった。彼女がいなくなったラボで束は一人つぶやいた。

 

「あれねー…………できれば使う機会がないといいものだけど、解析が必要なんだよね。というか、どうやったらこんなものを作れるのか知りたいよ…………」

 

束はそう言って背後にある物へ目を向けた。そこには大型のユニットが鎮座していた。複数のモジュールへと分けられており、上部のモジュールには大型のカノン砲が左右一門ずつ、両サイドのモジュールには複数の武装が搭載されている。

 

「こんなの何に使うつもりだったんだろうね…………」

 

束がディスプレイに表示していたデータ。その物へ与えられていた役割が、そこに書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[RATX4-00 Support UNIT]と。




悠助「よう、作者。準備はできてんだろうな? 今回やけに文字数少ねえんだしよ」

おうよ、今回はちゃんと準備してるよ。まぁ、機体センスは期待しないで。

悠助「ギャグいらん。はよ見せ」


【挿絵表示】


これでええんやろ? まぁ、合わせ目消しも塗装もしてない素組み状態で、ほぼあれなんだけどさ。

一夏「ガンプラで再現ですから仕方ないですね。でも、私はこの機体が好きですよ」

一夏よ…………その言葉だけで救われるぜ。
こんな調子ですが、これからも生温い目でよろしくお願いします。
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