守りたい、ただそれだけ(本編完結) 作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)
「全機、作戦領域に到達。未だ会敵せず。本部どうぞ」
『敵機との距離はまだ三千はあるからね。もう少しはかかるかも。けど、油断はしないでね』
「「「「「「了解!」」」」」」
私達は現在海岸から二キロ離れたところの洋上にいた。というのも、現在進行形で無人機が迫ってきているから、それを迎撃するため。
みんなの装備も今日試験稼働するためのパッケージに換装済み。私はキャノンボール・ファストで使った高機動モジュールとブレードライフル・トライバレットを装備。ブレードライフル・トライバレットは現在格納していて、手に持っているのはバスターソード一振りのみ。今信頼を置けるのはこの武器だけ。紅い刀身が蒼い機体に対をなす存在を放っているが、どこかで一体化しているように思える。
「これだけ重武装すれば問題ないでしょ。早くボコボコにしてやりたいわ」
そう言って意気込むのは鈴。火力増強パッケージを装備している。ただでさえ強力な衝撃砲を四門も積み、大型の青龍刀を主武装、腕にも連射型衝撃砲を内蔵した機体は以前よりも攻撃的なフォルムをしていた。
「アドレナリンを抑えてくださいまし。それでは敵に落とされますわよ」
鈴を鎮めるのはセシリア。強襲狙撃パッケージへと換装しており、機動性はかなり上がっているみたい。背中のウイングに取り付けられたビットが特徴的。ビットのエネルギーも使っているから火力は下がっているけど、狙撃主体のセシリアにはあまり関係ないね。むしろ、適任なのかな?
「…………アドレナリンより、エンドルフィン撒き散らしそう」
若干物騒な事を言っている簪の緋龍も強化されている。背中には大型のミサイルコンテナが二個、脚部にはこれまた大型のブースターユニットが付けられている。武装もビームブラスターやツインビームライフル、左腕のシールドクローと機動性と攻撃性を重視した機体へと変貌していた。というか、クローシールド大きすぎない? あれ、捕まったら終わりだよね?
「脳内麻薬だよね、それ!? 無駄に興奮して特攻とかやめてよ!?」
簪の発言に振り回されてばかりのシャルロットの機体はそんなに大きな改修は行われてない。けど、防御特化パッケージの装備により、実体シールドが四枚、腰にエネルギーフィールド展開装置が二基搭載されている。もとより防御力のあるリヴァイヴに防御特化パッケージの装備、最早盾としての役割を果たすためだけの機体に仕上がっただろう。
「落ち着け。冷静にならなければ敵も倒せんぞ」
そう言って締めるラウラは砲撃戦特化パッケージを装備している。いつものレールカノンより一回りもふた回りも大きいレールカノンを二門構えており、四枚の物理シールドが前面と側面を守るように配置されている。機動性は格段に下がってはいると思うけど、ラウラなら使いこなせそうだね。
「どう、敵は見えた?」
「いや、まだ見えないよ…………」
『もう少しで会敵する可能性があるから警戒はしていてね』
「了解しまし——っ!?」
束さんに返答しようとした時だ。先行していた私の横をビームが掠めた。幸いにも当たっていないからいいけど、撃ってきたということは向こうの攻撃範囲に入ったの!?
「一夏!!」
「セシリア、ラウラ!! こっちも砲撃を開始して!!」
「任せろ!!」
「狙い撃ちますわ!!」
私はすぐにセシリアとラウラに指示を出す。現場での判断は束さんから私に任されたから、やっているだけだけど…………この際なんだってやるよ! みんなを守るために…………!
「鈴、簪!! 私についてきて!! シャルロットは砲撃中の二人をカバー!!」
「わかったよ!!」
「了解よ!!」
「…………突撃!!」
私を先頭にし一気に敵集団の中へと突っ込む。後方からは簪と鈴がついてきていて、さらにその後ろからは砲弾やレーザーが飛んできている。それらは無人機へと当たっており、ある程度ダメージを与えてはいるものの、大したダメージにはなっていないみたい…………。
「一夏! 前!!」
「え…………きゃあっ!!」
油断していた…………無人機がブレードを構えて切りかかってきた。咄嗟にバスターソードを構えて防御する。激しい衝撃が腕を伝わって全身へと広がり、骨が軋みをあげる。無人機は前の物とは大きく違っていた。右腕は肘から先が丸ごとブレードになっていて、左腕はそれとは反対に大型化していて先端にビーム砲のようなものが見てとれる。しんどいけれど…………こんなところで止まっているわけにはいかない。
「邪魔だよっ!!」
スラスターの出力を上げて強引に無人機を跳ね飛ばす。それによって無人機は体勢を大きく崩した。その隙を見逃すほど、今の私は甘くはない。
バスターソードを上から一気に振り下ろした。その一撃は無人機の右腕を切り飛ばすに終わり、すでに向こうはエネルギーの充填されたビーム砲の砲口を私に向けていた。
「ブレードビット、シールド展開!!」
ブースターの真ん中に装備されているブレードビットに指示を出す。すると、六基のブレードビットが私の正面で環状に配置され、その中央にはエネルギーフィールドが展開された。放たれたビームはそこへあたり、私にはダメージを与えることはできなかった。
「こいつでぇぇぇぇぇっ!!」
無人機が発砲した隙に後ろへと回り込んだ私は、バスターソードを横に薙いだ。硬いものを切り裂く手応えを感じ、そして起こる爆発。これでまずは一機…………!!
「…………沈め」
簪は無人機をクローシールドで押さえつけてから、ゼロ距離でビームブラスターを放って胴体を吹き飛ばしていた。え、エグい…………オーバーキルに近いんじゃないの?
「海の藻屑になりなさい!!」
鈴は青龍刀を無人機の頭へと突き刺し、そのまま捻じ切るかのようにむしり取っていた。そして、その空いた穴へありったけの衝撃砲を叩き込み、内部から破裂させていた。…………これ、有人機だったら即死だよね?
レールカノンの砲弾が直撃した無人機は腕や足が吹き飛んだりしていたけど、それでもまだ動き続ける。人がいないから、痛みを感じないんだよね…………。
「てやぁぁっ!!」
目の前にいた無人機をすれ違いざまに切り裂く。斜めに振り上げたバスターソードは無人機の胴体を逆袈裟斬りにし、その無惨な残骸は海中に没する前に爆発した。
「あと残り何機いるの!?」
『残り五機だよ! みんな気をつけて!』
残りは五機…………やるよ。絶対にみんなを、悠助を守るんだから!! 非才な私だけど…………今の私にならそれができそうだから!!
「お前たちは絶対に、許さないんだからぁぁぁぁぁっ!!」
バスターソードを構え、ブースターを点火して私は再び突撃した。ビットを飛ばし、目の前の無人機へと突き刺していく。
そして、構えたバスターソードの切っ先は無人機の胴体を確実に捉えた。
「俺が…………一夏の事を好きかって?」
「ああ、そうだ。実際どうなんだ?」
突如武蔵にそう言われ、俺の脳の思考回路はショートしていた。いや、突然すぎるにもほどがあるだろう。というかシリアスなムードはどこへ消えた、おい。まぁ、シリアスなんてあんまり必要ねえと思うけどさ。
「俺はあいつを守りたい、ただそれだけだぜ?」
「そう言う割には、いろいろとしてたんじゃないのか?」
いろいろと言い訳を言いまくるが、武蔵のやつに言い返されてしまう。なんなんだこのコア人格は…………俺の心をがっちり読んできてやがる。
「一応、操縦者とはつながっている状態だからな」
「だーかーらーっ!! 心を読んでも口にするんじゃねえっ!!」
もうこいつには嘘を言っても通じなさそうだしな、正直に言うか。
「…………はいはい、俺の降参。確かに俺は一夏の事が好きだ」
「やっと本音を言ったか…………で、いつから好きになったんだ?」
「…………初めて会った時」
「予想していたよりも早いな!?」
武蔵は俺の答えに驚いた。いや、だってさ…………あそこまで可愛い子に会ったことなかったし、こうなんていうのか、小動物みてえな雰囲気を持っていたから、一目惚れしちまったんだよ。
「そういえば初めて会ったのって…………」
「ああ、あそこのコンビニ近くの電信柱んとこ」
一夏と初めて会った時、あいつ意識失っていたよな…………あれ、下手したら命落としていてもおかしくはねえと思うんだが…………結果として命拾いしてはいるが、あそこで俺が見つけなかったら誰も手を差し伸べなかったかもしれねえ。あのコンビニあるの、一夏の元いた街の方だったしな。
「そこであいつを見つけた時は焦ったぜ。なんせ、凍死してもおかしくない状況だったからな。その後、一夏が誘拐されてドイツに飛んだことあったろ?」
「そんなこともあったな…………」
「あの時、一夏の境遇を聞いていたら、なんだかあいつにも幸せってモンを感じてもらいたくなってさ…………」
身内からは虐待、付近から差別、いじめを受け続け身体的にも精神的にもやられていたからな…………あれはひどすぎるだろ。一夏があそこまで泣きたくなるのも無理ねえ。自然とだ、いつの間にか守りたいという思いが芽生えていたんだわ。
「それで報酬として貰ったと?」
「そんなの建前。別にどんな手を使っても良かったんだ。ただ、あの場で手っ取り早いのはそれだったからな」
「なるほどな」
武蔵はうなづいて納得する。まぁ、最悪拉致ってどっかに高飛びしても良かったけどな。
俺にとってそれが本当の意味で、初めて親以外で大切な人が出来た瞬間だったよ。心の底から守りたいと思ったしな。
「はぁ…………そこまで思っているならいっそ告白すれはいいものを」
武蔵はため息まじりにそう言ってきた。なに鬱陶しそうな顔してんだよ、全く。
「し、仕方ねえだろ…………それが原因で一夏が不幸になったら元も子もねえし…………俺がヘタレだしさ…………付き合えるわけねえだろ」
「傭兵としての威厳とかそういうの、一瞬にして消えたな…………」
うるせえやい。仕方ねえだろ、こんなことになったの初めてなんだしよ…………どうしたらいいのかわからんかったし。何より、一夏にはこれ以上涙を流しては欲しくなかったからな。まぁ、すでに泣かせちまったからどうしようもないんだがな。
「…………お前、一夏が笑顔を見せているのはどんな時か知っているか?」
不意に武蔵がそう言ってきた。
「そんなん、俺が見れんのは一夏と一緒にいる時だけだから、それ以外は知らんぞ?」
「…………これは榛名から聞いたことなんだがな、お前といる時以外はあまり見せないそうだぞ? これがどういう意味か知っているか?」
「知らんわ」
「教えてやろう。お前と一夏、両想いだぞ」
マジ…………? それを聞いた瞬間、世界が止まった気がした。それと同時にやってくる謎の高揚感と空虚感。
「ははっ…………俺、最高にバカじゃねえか…………」
俺は自虐するようにそう言った。というか、本当にバカじゃんかよ。大切な人の前で勝手に刺されて落ちて、大切な人が刺されて落ちていく様を見て…………こんな思い、誰にもさせないって昔思ったじゃねえか。
『逃げろ…………悠助! ここからすぐに離れろ!!』
『あなたには死んでほしくないから…………早く逃げて!!』
『父さん!! 母さん!!』
『お前には未来がある…………将来、母さんみたいないい人を見つけなさい…………』
『生きるのよ…………生きていれば、いつか幸せが訪れるから…………』
ああ…………すっかり忘れていたじゃねえか。いつの間に記憶の奥底に沈んでいたんだ? 全く…………忘れちゃいけねえってのによ。目の前で親父とお袋が死んで、一人で恨みとかいろいろ抱えていた頃をよ。大切な人を失うのは、誰だって嫌だからな…………もうそんな思いはしたくねえし、させたくねえ。ついこの間まで殺していた俺が言うのもなんなんだけどな。
「すまねえな武蔵…………やっと本音に気づけた。お前のおかげだぜ」
「ふっ、未だに坊やのお前に手を差し伸べただけだ。気にするな」
ぼ、坊やって…………それだけは勘弁してくれよ。俺だって高校生なんだから、そう言われるのは苦手なんだよ。
そんな時、
「武蔵!!」
あの一夏によく似た女性——榛名が大慌てで来た。その様子から見てとてもまずいことが起きているに違いない。
「どうした榛名、そんなに慌てて——」
「これを見てください!!」
榛名がそう言うと、大型の空間投影ディスプレイが表示された。そこには幾つかの光点が不規則に動き回っていた。その反応はどこかで見たことがある。ってか、まんまISのビーコン反応じゃねえか。蒼龍に緋龍、ブルー・ティアーズ、甲龍、ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ、シュヴァルツェア・レーゲン…………一年の専用機の殆どが出撃していた。となると、それ以外の光点はもしや
「これ全部、擬似コアの反応じゃねえか…………」
擬似コアだ。もしや、じゃねえ。確実だ。散々見てきたからな、なんとなくはわかる。それに、親父とお袋の敵だ、気がつかねえはずねえよ。
「はい…………実は現在、多数の無人機と交戦中で…………お願いします! すぐにこの海域に来てください!! マスターを…………一夏を助けてください!!」
榛名は涙を浮かべてそう言った。海域は旅館のある海岸から二キロ先のところだ。俺が出られれば戦況は変わると思うんだが、この状況じゃな…………俺がどこにいるのかすらわからねえし。
「行くのか?」
武蔵がそう聞いてきた。その目にはどこか頼りになる力が宿っている。最高の相棒がここにいたじゃねえか…………俺はそれに対して当たり前のように答えた。
「ああ、守りたい奴がそこにいるんだからな」
俺が答えると武蔵は待っていたかのような表情をした。少し口角を吊り上げている。全く…………お前も行く気満々なんじゃねえか。まぁ、人のこと言えねえんだけど。
「了解した。出るぞ、悠助!!」
「おうよ!! 早い所行こうじゃねえか、武蔵!!」
俺の体は光に包まれた。どこか暖かい、優しさを感じる光。
その中で俺は「ありがとうございます!! ありがとうございます…………!!」という榛名の言葉を聞き続けていたのだった。
「…………っ…………うぉっ…………」
「お、おぉ! 目を覚ました!! すぐに束のやつに知らせねえと!!」
俺が目を覚ました直後に聞こえたのはオータムのどこか慌てたような声だった。って、なんであいつがここにいるんだ? まぁ、そのことはいいか。
どうもこうも体が動かしづらいと思いきや胴に包帯が巻かれているじゃねえか。あと、点滴も打たれとる。俺は点滴の針を腕から抜き取り、包帯も外した。邪魔だしな。ふと傷を見ればすでに塞がっており、出血の類は一切ねえ。体の方もピンピンしてやがるし、出ても問題ねえだろ。
俺はとりあえず戦闘装備へと着替える。やはりこのプロテクトアーマー付きのISスーツは体に馴染むぜ。使い慣れていたからか? ヘッドギアの装備も終わり、俺は臨時作戦室へと向かう事にした。あそこなら誰かはいるだろうしな。早く行きたいところなんだが、さっき見た情報だけでは足りねえ。少しでも多くの情報が欲しいところだ。
作戦室へと向かう間に機体のチェックだけでもしておくか。俺は機体の状況をディスプレイに表示する。…………ん? 待て待て、明らかに闘蛇龍と違う型式番号があるぞ。闘蛇龍がRGATX3-71のはずだが、表示されているのがRATX4-00。蒼龍や緋龍よりも早いナンバーである上に、ゼロが二つも続くなど試作機以外に考えられん。外観も全体的に変わっているが、一番は頭部だろう。闘蛇龍のゴーグルタイプのバイザーではなく、蒼龍や緋龍のようなデュアルアイだ。その目は紅く煌めいている。側頭部には近接防御機関砲が両方に備え付けられており、何より目を引くのがツインブレードアンテナだ。頭部の形状が蒼龍などと近い。武装も若干だが変わっている。両腰の対装甲ナイフは格納され、代わりにビームサーベルのラックが装備されている。何が起きたんだ…………。
「機体名、黒龍…………武蔵の言っていた奴か」
黒龍は武蔵がボソッとだけ言った機体名だ。もしや闘蛇龍はカムフラージュで本来の姿は黒龍だったのか…………? それなら今までの高性能っぷりはうなづける。蒼龍や緋龍などのRATナンバーの機体は凄まじい機体性能を引き出している。蒼龍であれば近接格闘能力、緋龍は高機動力といった具合にな。闘蛇龍も随分と機体出力関係ではぶっ飛んでいたがそこまでではない。…………リミッターでも掛けられていたのか?
そうこう考えているうちに臨時作戦室の前に着いた。さて、行くとするか。
「戦況はどうなっているんだ?」
そう俺が入ると部屋の空気がかたまった。いや、ガチで。ってか、俺を死人の亡霊みたいな目で見んじゃねえ。俺はちゃんと生きてるわ。
「ゆーくん…………?」
「紅城君、なんですね…………?」
オータム以外の面々は鳩がレールキャノンを喰らったみたいな顔をしてやがるし。そんなに驚くことなのかよ。てか、オータムの奴、束さんに知らせるとか言って何も言ってねえのかよ。
「ああ、なんとか生きてるぜ。とりあえず、戦況を教えてくれ。俺もすぐに出る」
「…………現在、ここより南東へ三キロの海域で無人機による攻撃を受けています。残存機は三機、みんな生存していますが…………」
「ゆーくん…………その体じゃ無理だよ。肝臓と大腸の一部が抉れたんだよ…………戦闘機動なんてしたら縫合したところが——」
「——束さんよ、心配するな。傷は塞がってる、それだけで十分さ。状況は理解した。俺は出るぜ」
俺はそう言って作戦室を後にしようとした。すると、
「待って! ゆーくんはどうしてそこまで戦えるの…………? 束さんにはわからないよ…………」
束さんがそう言ってきた。長年の付き合いなんだからわかるだろうに…………。そんなこと決まってんだろ。
「俺の大切な人がそこにいる。好きな女を守れなくて、傭兵である以前に男じゃねえよ」
「残りは…………あれだけだね」
「しかし、あれは速い…………この重装備のレーゲンでは無理だ…………」
「狙撃なんてもっと無理ですわよ…………」
「…………こっちも持たないかも、ミサイルが」
「近接攻撃も不可能よねぇ…………」
「というか、弾丸当たっても跳ね返されたんだけど…………」
残り一機となったところで私達は苦戦を強いられていた。残った青い無人機…………あの機体、ものすごく速い。簪でも追いつけず、ラウラのレールカノンなんて全く当たらない。シャルロットがアサルトライフルを撃ち込んだけど、表面に展開されている六角形を組み合わせたようなエネルギーシールドに全て弾かれてしまった。
なにより、その姿が異形だった。尻尾のようなものが生えていて…………なんだか龍とかトカゲみたいな印象を与えてきている。…………なにより、無機質に光る眼が私の恐怖を駆り立てる。
「…………残り30%、全弾発射」
簪がミサイルを全て放った。まるで雨のように降り注ぐが、あの無人機は全て回避していった。そして、あの無機質に光る眼の色が、水色から赤へと変わった。その瞬間だった。
『——マシナライズ・シフト、アタック』
無機質な音声とともに無人機は私達へと突然襲い掛かってきた。今まで攻撃しても何もしてこなかったのに…………!! なんで、どうして突然!?
そんなことを考えている余裕などない。私達は一気に散開した。あの無人機が狙ったのは…………動きの遅いラウラだった。
「クソッ!! 速すぎるにもほどがあるだろう!!」
ラウラはレールカノンを左右交互に速射するけど、相手はその機動性を使って有機的な動きをして回避していく。なんなの…………あれ。本当に人が乗っていないの?
『アタック、ダウンブレイク』
「ラウラ!! 避けて!!」
「ふっ…………もう遅い」
無人機がラウラに接近した直後、その右手からビームを放った。その大きさは今までの無人機とは比較にならない。直撃を食らったラウラはそのまま海へと落ちていった。そんな…………!
「きたよ!! これでも喰らえ!!」
シャルロットがアサルトライフルとショットガンを撃つけど、やはり回避されている。
「援護しますわ!!」
セシリアが加勢してレーザーを放つけど、それでもダメだ。なんなのあの無人機は…………。
その時、無人機の尻尾がしなり、シャルロットを吹き飛ばした。
「きゃっ!? こいつ…………やったね!!」
シャルロットはショットガンを棄て、左腕のシールドをパージ、ほぼ一撃で決まるパイルバンカーを無人機へと突き立てた。直後、ドンッという鈍い音が鳴った。
だけどそれはパイルバンカーが炸裂する音じゃなかった。無人機がシャルロットの首を掴んで、その空いている手で単発の砲弾を放った音だった。
「こんな、ことって…………あるの、かな…………」
シャルロットもまた力無く海へと落ちていった。
「一夏!! こんなのどうやって倒すのよ!? 無理に決まっているわ!!」
「…………撤退も無理だけどね」
「ですが、対抗策がないのは厳しいですわ」
「強引に倒すしかな——って、みんな避けて!!」
数秒前まで私達がいたところをビームが通過していった。あの機体…………本当になんなんだろう。でも、倒さないと…………本当にみんなやられちゃう。自然とバスターソードを握る手に力が入った。
「一夏さん!!」
「え…………きゃあっ!? セシリア!! 一体何——」
突然セシリアに突き飛ばされて何が起きたのかと思ったら、他の無人機にセシリアが落とされていた。嘘…………あれ以外全部倒したはずなのに。
『——コールスレイヴ』
無人機は咆哮を上げる。すると海中から無人機が出現した。もしかして、あの機体が無人機を呼び集めたの!?
「一夏…………これ、最高にやばいわよ!!」
鈴はすでに無人機と切り結んでいて回避できない。そういう私もまた、無人機からの攻撃を防いでいる。執拗に攻撃を受けているがあの青い無人機からは何もこない。
「…………どれだけいるの?」
簪はビームキャノンを撃って撃破しているけど、時折あの機体が邪魔をして攻撃を防がれている。それに何機いるのかまだわからない。これからまた増えていくのかも知れないし。というか、本当に無人機なの…………あの機体は。絶対人のような思考を持っているよ。
「くうっ…………お前に構っている暇なんてないのに…………っ!!」
無人機をバスターソードで薙ぎ払い、跳ね飛ばす。すると、あの機体が右手にブレードのようなものを展開して私に切りかかってきた。咄嗟にバスターソードで受け止めるも、その衝撃からか大きく吹き飛ばされてしまった。
そして、体勢を立て直そうとした時、私の目の前には大きくブレードを振りかぶった、あの無人機がいた。青い方ではないが、それでも危険なことに変わりない。すぐに回避しようとしたけれど、体が言うことを聞かない。振るわれてくるブレードがひどく遅く見える。こんな事前もあったよね…………そういえば。
「一夏!!」
「…………早く、逃げて!!」
二人が何か言ってるけどダメだよ、もう…………ブレードはすでに目の前にまで迫っていた。ああ…………やっぱり私には無理だったんだよ…………どう足掻いたって非才なものは非才、何もできないんだ…………。心のどこかで諦めている自分がいる。
(悠助…………最後にもう一度、お喋りしたかったな…………)
そんな願いを持っていようとも、叶うことは決してない。でも、それでも
(助けてよ…………悠助…………)
自然と頼ってしまいたくなった。今、動けない人に頼るなんてどうかしていると思うけど、それでも助けて欲しかった。そんなこと、起こるはずないのにね…………。
(これが運命なら…………受け入れるよ…………ごめんね、みんな…………ごめんね、悠助…………)
そう思い、全てを諦めて目をつぶった、その時だった。
「アクティブ・カノン、一番二番、フルバースト!!」
どこかで聞いた覚えのある声とともに、私の目の前を紅く煌めく光が過ぎ去っていった。それと同時に無人機もそれに呑まれ、光の中で爆発していった。
「ミサイル!? どこからの援護!?」
「…………それより、あのビームは!?」
簪や鈴達の方にもなんらかの攻撃が来ていたみたい。向こうはミサイルみたいだけど…………。
「オラオラァッ!! 雑魚共はさっさとくたばりやがれってんだよ!! VLS、22番から35番、アルバレスト装填、フルファイア!!」
それからもミサイルの雨は降り注ぐ。簪の比じゃない。無人機はどんどん呑まれていってダメージが蓄積している。それに今の声って…………
「悪りぃ、一夏。ケガねえか?」
私の前に現れたその機体。所々変わっているけど、今は顔が見れるからわかる。
「悠助…………!!」
そう、私にとってとても大切で、とっても頼りになる人、紅城悠助、その本人だった。私の目からは、嬉しさで涙が溢れた。