守りたい、ただそれだけ(本編完結)   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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第26話

遡ること数分前…………

 

「束さんよ、俺に見せたいものってなんだ?」

「いいからついてきて。おーちゃんも手伝ってね」

「おーちゃん…………俺なのか、それ?」

「だとよ、おーちゃん」

「…………悠助、テメエ…………!」

「傭兵の威厳も何もねえじゃんかよ」

「ウルセェ!」

 

束さんに連れられ俺とオータムは旅館から離れた場所に向かっていた。その途中、オータムがなかなかにツボに来るあだ名を付けられていたみたいだがな。そして連れてこられたところは丁度、深みのある岩壁だな。こんなところに何があると言うのだろうか。

 

「くーちゃん、浮上してきて」

 

束は海に向かってそう言った。くーちゃんとは一体誰なのだろうか。それに浮上って…………そう考えているうちに、だんだん振動が生じてきていた。それは次第に大きくなっている。

 

「な、何が起きているんだ!? 地震か!?」

「この揺れ方は違う!! 揺れ方がデタラメだ!!」

 

俺たちが立っている岩壁も小さな欠片が落ちていったりして、不安が残る。だが、ここにいるしかないしな…………。

その時だった。海水の天井を突き破って、何かが海中から出現した。あのフォルムは…………艦なのか? 一度垂直まで上がったその艦は海面へとその底を叩きつけて水平になる。それによって生じた波が俺たちのいる岩壁のところへとくる。幸いにも海水をかぶるようなオチにはならなかったが、あの波、三メートル以上は確実にあった。おそらく十メートルクラスか?

 

「こいつは…………戦艦、か?」

 

飛び散った海水による霧も晴れ、俺はその艦の全てを視認することができた。前方と後方に二連装砲がそれぞれ二基、艦橋の付近には多数の対空兵器が装備されている。しかし、あの主砲…………口径いくらなんだ? 明らかにアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の127mm砲よりもずっとでけえぞ。しかも、対空兵器も夥しいほど積んでいやがる。何より、後部甲板にあるカタパルトユニットが気になって仕方ない。主砲の射線とは重ならないように配置されているそれはどうもリニアカタパルトに見える。

 

「そう。ちょっと昔の戦艦の図面を防衛省へハッキングした時に見つけて」

「おい、ここにとんでもねえA級戦犯がいるぞ」

「おーちゃん、落ち着く。それを元にゆーくんの家にあった図面を再設計したものだよ」

 

よりによって俺の家にあったものかよ…………何があっても驚きはしないけどさ。今度は戦艦かよ…………俺の家の者は何をしたかったんだ、何を。…………今更となっちゃ知る機会なんぞないけど。

 

「超弩級IS運用戦艦、その名も天海龍。主砲51cm連装アクティブ・カノン四基八門、副砲35.6cm三連装アクティブ・カノン二基六門、40mm対空レーザー砲片舷三十二基、VLSセル180、艦底部魚雷発射管24…………初期設計から手を加えたけど、こんなの正気じゃないよ」

 

聞いてて頭がイカれそうになったぜ。…………51cmかよ!! 大和型ですら46cmが限界だったはずだぞ!! 挙げ句の果てにVLSまで積んでいるしさ…………親父たちは世界を消し炭にするつもりだったのか?

 

「しかも建造理由がこれだよ、『戦艦作ってみたかった』」

「親父たちはマッドサイエンティストかよ…………」

「お前の両親って何者だ…………?」

 

黒龍や蒼龍、緋龍を建造するような人だから建造していてもおかしくはないが…………これは幾ら何でもぶっ飛びすぎだろうよ。世界に喧嘩を売れるレベルだぞ。

 

「とりあえず、ゆーくん達は私についてきて」

 

束さんにそう言われ、艦の内部へと入っていく。見た目に反して内部はいたってハイテクな作りになっていた。廊下もそこそこ広いしな。何よりライト関係が全て天井にはめ込まれたタイプだ。かなり明るいぜ。

そうして連れてこられた先は何やら格納庫のようなところだった。

 

「こいつは一体…………戦艦に格納庫の余裕などあるのか?」

 

本来戦艦とは火力による殲滅戦を行う艦だ。日本には航空戦艦なるものも存在していたらしいが。それでも、その役に変わりはない。だからこそ大量の弾薬を詰め込まなければならないはずなのだが…………ここに至るまで弾薬庫ブロックらしきものは見ていない。その付近を通っていないだけなのかもしれんが。

 

「あ、心配いらないよ。弾薬の貯蔵や格納の類はISコアがしているから」

「戦艦にISコアを積むのかよ。アメリカの海兵どもが聞いたら泣くぜ」

「そのことはいいだろ、今は。何故俺をこんなところに連れてきたんだ? 俺はすぐにでも行かなけりゃならないんだが…………」

「それはゆーくんに託したいものがあるからだよ」

 

そう言うと束さんは指を鳴らす。すると、ハンガーデッキがせり上がり、何やら得体の知れないものが見えてきた。一言で言うなら武器の塊、フルアームズユニット。そういうのが正しいような武装だ。

 

「RATX4-00 支援装備。当てられたコードは、[Dアームズ]」

 

Dアームズか…………。そのDの文字に課せられた意味とはなんなんだろうな。

 

「ゆーくん…………DアームズのDは破壊(Destoruction)災厄(Diserster)のDだよ…………殲滅することしか出来ない。本当は託したくなんてないんだよ…………それに、闘蛇龍の追加ユニット、G型ユニットのGだって虐殺(Genocide)のG…………ゆーくんにはそんな強大な力を使う事に躊躇いはないの…………?」

 

そういうことか…………確かにこれは強大な力を秘めていると同時に、多大な危険性も含んでいる。大隊だって相手に取れるだろう。そんな力を使う事に不安がないなんてわけけねえだろ。

 

「躊躇いはあるさ…………こんなもんを使うのは怖えし…………でも、それ以上に守らなきゃいけない奴がいる。こいつやG型ユニットに課せられた意味だって、そんな物騒なもんも含んでいるだろうが、守備(Defense)恐れ知らず(Dreadnought)守護者(Guardian)といった風にも取れるだろ? なら、尚更俺はこいつを使わなきゃならねえんだ」

 

俺は黒龍を展開した。全身が装甲に覆われていくのを感じ、最後に空気が締め出される感触を得てから、目を開いた。ディスプレイには闘蛇龍の時よりもより一層クリアな映像が入ってくる。機体のレスポンスも格段に速い。

俺がDアームズに近づくと、そいつは形状を変化させた。上部二基のモジュールは上に上がり、左右のモジュールは展開される。それによって生じた隙間には丁度黒龍が収まるスペースがあった。そういうことなんだな…………俺はそれに躊躇いなく乗った。背中の追加ユニット接続コネクタにケーブルが接続され、Dアームズと繋がったことが表示される。武装の一覧も増え、視線操作による選択も楽じゃなくなったぜ。

 

「仕方ないね…………カタパルト、四番ハンガーと接続、射出急いで!!」

 

束がそう言うとともに俺はカタパルトデッキへと運ばれる。カタパルトランチャーに接続された俺の前には射出レーンが見える。

 

「いつでも行けるぜ!」

「よし!! 射出!!」

「黒龍、出るぞ!!」

 

カタパルトの推力で射出され、そこにDアームズの推力が加わり、一気に空へと上がる。なんなんだ、この圧倒的加速力は…………緋龍の比じゃねえぞ。

 

「俺が随伴機で行くぜ。無人機に関してはそこそこ情報あるしな」

 

俺の隣にオータムが並ぶ。その機体は本当の意味で純白。余計な飾りなどほとんど存在していなかった。

 

「今回の奴らはわかるか?」

「ゴーレムだけで済むといい方だな。…………アレが持ち出されている可能性微レ存だし」

「なんか言ったか?」

「いや何にも」

「そうか——って、ん!? あの機体は…………一夏!!」

 

距離は残り二キロ。その位置で一夏が無人機に斬られかけている。なんでもない状況なら対IS用大型誘導弾アルバレストを叩き込めるんだが…………ほとんど密接状態だ。爆風でやられる可能性だって否定できねえ。ミサイルによる援護は不可能…………ならばこいつしかねえな。あのスクラップを一気に冥土に送ってやるぜ。

 

「アクティブ・カノン、一番二番、フルバースト!!」

 

照準を無人機ギリギリに合わせ、俺は二門ある460mmアクティブ・カノンを放った。禍々しい黒と紅の光の奔流が無人機を飲み込む。や、やべえ…………これは強すぎる。粒子砲モードで放ったから反動はほとんどないが、内心誤射した時の被害を想像して焦った。無人機は光の奔流に耐えることができずに爆散する。

む? 鈴と簪もまずいな…………アクティブ・カノンは発射直後だから再装填が間に合わん。なら、今度はVLSを使えるな。VLSセル1番から8番までに対IS用大型誘導弾アルバレストを装填、無人機にロックをかけ、放った。八発のミサイルは吸い込まれるように無人機に直撃した。アルバレストは当たりどころさえ良ければ擬似コアISを一撃で撃破する事が可能な武器だ。コストが高いんだがな。

 

「オラオラァッ!! 雑魚共はさっさとくたばりやがれってんだよ!! VLS、22番から35番、アルバレスト装填、フルファイア!!」

 

問答無用でアルバレストを放つ。傭兵ならコストも考えて撃たなきゃダメなんだがな…………この際関係ない。コストで命が守れるかってんだ。

ミサイルのシャワーをプレゼントしている間に俺は一夏の近くへと寄った。しばらく一人にさせた上に、心配かけちまった気がするからな。

 

「悪りぃ、一夏。ケガねえか?」

「悠助…………!!」

「おっと…………急に抱きついてくるんじゃねえ」

 

Dアームズの推力を下げて、一夏を抱きとめる。全く…………また涙目になっているぜ。仕方ねえやつだ。

 

「泣いてんじゃねえよ。とりあえず、一旦離れろ。あの無人機、スクラップにしてくるぜ」

「うん…………でも、気をつけてね。青いのはとても速いから」

「了解した、っと」

 

一夏を一旦離れさせ、俺は再びDアームズの推力を上げた。多数あるスラスターが唸りを上げ、俺の体は突き進み続ける。さて…………

 

「派手なパーティーといこうじゃねえか!!」

 

両サイドのモジュールにある115mmガトリングガン、七連装ロケットランチャーを放った。戦車砲クラスの砲弾が間髪入れずに連射されていく。轟音、爆音。無人機は散開し回避を試みるが、今のこいつの前じゃそんな事は無理だ。強制的に進行方向を変え、無人機を追尾する。

 

「後ろがガラ空きだな! 最高の風穴開けてやるよ!!」

 

一機に狙いを定め、ガトリングを斉射する。115mm砲弾による派手な衝撃は無人機を跳ね飛ばし、その形状を蜂の巣へと変えていく。原型をとどめぬところまできた瞬間、爆散。擬似コアもおそらく砕いたであろう。また、腕や脚部をもがれてもなお健在している敵には、220mmロケット弾が当たり、大破していく。

 

「悠助! 下に何人か落ちていやがった。俺はそいつら連れて一旦旅館の方へと戻る!!」

「あいよ!! そいつらおそらく怪我してんだろうから、すぐに運んでやってくれ!!」

「任せな! だが、あの青いやつ——ヨトゥンには気をつけろ。組織の作ったやつでは、無人機最強の性能を持っている。下手にかかると死ぬぞ」

 

そんな事はわかってるさ。オータムはそう言って旅館の方へと向かう。おそらくラウラ、シャルロット、セシリアの三人は今運ばれていったはずだ。無人機からの攻撃を受けて一撃で沈んだのか、あるいは複数発もらって沈んだのかわからんが、どっちにせよやることは変わんねえ。目の前にいる敵をぶっ潰す、それだけだ。

 

「目標、全ゴーレム、VLS再装填。1番から48番、アルバレスト装填」

 

Dアームズに搭載されているVLSセル全てにアルバレストを装填する。未だにアクティブ・カノンの砲身冷却が終わらない。それに、一気に攻めるんならミサイルによる絨毯爆撃が効率いいわ。

 

「全弾、フルファイア!!」

 

轟音とともに両サイドのVLSセルから吹き上げるかのようにミサイルが撃ち放たれていく。その一発一発が致死量レベルの爆薬だ。それが全部で四十八発。残り五機程度の無人機には十分すぎる火力だろ。

発射から数秒足らず、目の前には眩い閃光が迸る。無人機の散る輝き、ミサイルが直撃する輝き、擬似コアが砕け散る輝き…………端から見ればなんともお粗末な花火に見えるだろう。どこかのやつは花火より綺麗に見えるかもしれんがな。

ある程度の機体は破壊したのはいいが、やはり青いヤツだけが残っている。奴をぶっ壊さない限り、戦いには終わりはない。

 

『敵機、危険レベル最大、排除——』

 

奴は俺に向かって無数のビームを放ってきた。Dアームズの推力で強引に避けるのは無理だろうな…………。何より、奴が無防備な今、攻撃をするしかない。あいつ、攻撃の時は動きが止まるのか?

 

「強制波動装甲、展開!」

 

俺は強制波動装甲を展開させる。Dアームズをただの破壊兵器ではなく、守るための武器として言わしめるには十分な兵装だ。六角形のシールドが幾多も組み合わさり、球状に展開される。ビームはそれに当たるとともに霧散し、俺には一切のダメージは通らない。しかもこれ、作用範囲が自在に広げられるらしいしな。使い勝手良さそうだ。

 

「てめえはさっさと沈みやがれ!!」

 

砲身冷却の済んだアクティブ・カノンを実弾砲(ソリッド)に切り替え、放った。460mmものレールキャノンだ、破壊力はシャレにならねえ。現に無人機の左腕とともに胴の一部をも抉っている。対人戦では使用どころを控えるべきか。

機体バランスを大幅に崩した奴は俺に向かって突撃してくる。おそらく無人機お得意の自爆を仕掛けるのだろうな…………させるわけねえんだけど。こんな奴に俺はまだ殺されるつもりもねえし、これからも死ぬつもりはねえ。生きて、生きて、絶対に帰るさ、俺の帰れる場所へ、と。

 

「だからなぁ…………」

 

俺はアクティブ・カノンよりロックビームを照射する。突撃を仕掛けてきていた無人機はそのままの体勢で固定される。ロックビームには重力子が含まれている。強大な重力があいつの全身にかかっているからな、そりゃ動きも止まるわ。

アクティブ・カノンを支えるフレームから整流板が姿を見せる。

 

「俺の道を邪魔する奴らはなぁ…………」

 

エネルギーライフリング、異常なし。充填率、正常に上昇中…………やってやろうじゃねえの。重力子が砲口へと集まり始める。禍々しい光が俺の周りを漂い始めるが、そんな事は関係ない。自然とトリガーを握る手に力が入る。

 

「全部、焼き払ってくれるわぁぁぁぁぁっ!!」

 

迷いなくトリガーを引いた。放たれる光は禍々しい黒。無人機を容赦なく飲み込んだそれは、文字通り海を割りながら突き進んでいく。無人機は光の中で爆発の光を見せずに儚く消えていった。光がおさまった時、そこに無人機の欠片は一つたりと残されていなかった。

 

「付近に敵性反応なし…………全目標撃破を確認した」

『了解しました。それでは帰投してください…………無事で良かったです』

 

山田先生からの通信を受け俺は帰投する態勢をとる。

 

「さて——帰るか、お前ら」

 

俺はこの場に残っている一夏、簪、鈴にそう言った。戦いが終わったのなら、この場所にもう用はないからな。

 

「…………了解、先に帰ってる」

「あ、ちょっと! あたしも連れて行きなさいよー!」

 

簪と鈴は先に戻るようだ。ただ、機動力が少々低下している鈴は簪に掴まっていったが。というか、緋龍はどんだけの推力を持ってんだよ。Dアームズを使っている俺が言えた立場じゃないんだが、単機であの推力は異常だな。

 

「じゃ、俺たちも戻るか?」

「うん。でも…………」

「でも?」

 

俺が一夏に帰投するかと提案すると、一夏は少し言い淀んだ。はて、何があった?

 

「ちょっとダメージとかもらっちゃって、エネルギー残ってないの…………」

 

あ、そういうこと。一応、全滅させるまで持ちこたえていたとはいえ、ギリギリだったんだろうな。無人機の荷電粒子砲、あれ確かシールドバリア突破可能だし。

 

「仕方ねえな…………ほらよ」

「ひゃあっ!?」

 

Dアームズの腕を広げ、俺は一夏を抱き上げる。あいにくこいつには掴まるような部分がねえからな。後方全部スラスターだし、両サイドのモジュールはロケラン、ガトリング、VLSの複合装備、どこに掴まれんだよ。

 

「変な声あげんなよ…………」

「だ、だってぇ…………そんな、突然すぎるよ!! というか、これってお、おひ、お姫様抱っこだよね!?」

「一番安定するのがこれだから仕方ねえだろ。それともアレストワイヤーで引きずってって貰いたかったのか?」

「…………こっちでお願いします」

「素直でよろしい」

てか、よくよく考えてみれば昔もこんなことあったな。もう二年近く前になるのか…………懐かしいな。

「Dアームズ、出力最大。帰投するぞ」

 

俺はDアームズの推力を最大まで引き上げ、元来た道を引き返すことにした。すでに時刻は夕暮れ。水平線に沈みゆく太陽が、俺たちを照らしていた。

 

「…………悠助」

「なんだ?」

「…………ありがとう」

 

 

 

 

 

「…………ここ、は…………?」

「目を覚ましたか? ナタル」

 

俺は旅館の一室に構えられた療養所にいた。丁度、福音の操縦者である、ナタル——ナターシャ・ファイルス中尉が目を覚ましたようだ。福音がどこからかの強制アクセスを受けて暴走、強制剥離システムでなんとかなったらしいんだが、それまでに体にかかった負担はシャレにならねえものだろうな。

 

「…………アーミア?」

「ああ、俺だぜ」

 

俺の名前を知ってるんだから間違いねえな。元々俺の名前はオータムじゃねえ。それは組織でのコードだ。本当の名前はアーミア・カリウス、俺がまだ米軍にいた時の名前だ。

 

「なんで、貴方が…………軍をやめたんじゃなかったの?」

「…………確かに軍はやめたさ。まぁ、まだIS乗りはやめてねえけど」

 

俺が軍をやめたのは三年前。俺は軍に入って国民の力になると、小せえ時から思っていた。だが、いざ軍に入るとどうだ? 女尊男卑の風潮が蔓延していて、俺が憧れていた戦闘機乗りや戦車乗り達は次々とクビにされていく。取って代わったIS乗り達は口しかよくねえ上に、ノロクサ動かすのにも四苦八苦していやがる。こんなんで国民の力になれるわけねえ、いっその事傭兵にでもなってテロの芽でも摘み取っていってやろうかと思ったんだわ。その時出会ったのがスコール、そして亡国機業。後は知っての通りだ。

 

「そうよね…………昔から女尊男卑が嫌いだった貴方は、傭兵になったのよね」

「そうだぜ。俺としては昔から俺に甘えていてばっかのお前が一人でやっていけるか不安だったがな」

「ちょ…………! 昔のことはいいでしょ!?」

 

そう言って顔を赤くするナタル。俺とナタルは昔からの付き合いがある。それこそ小せえ時からな。家、隣だったし。いやー、それにしてもナタルはあれだったな。甘えん坊な上にドジを踏みまくっていたからな、目が離せなかったわ。そんなこいつは、自由に空を飛びたくて軍に入ったんだがな。それでこの有様だ…………なんと言ったらいいのやら。

 

「今もそうじゃないのか?」

「違うわよ!? それよりも、貴方こそ狂犬みたいにテロなんて起こしてないわよね?」

「…………」

 

ナタルのふとした一言、それは俺に深く突き刺さる。今の俺は狂犬もいいところだ、死んだ仲間の敵討ちと言って殺して、世界の軍事力を支える擬似コアを破壊して…………テロリストも同然さ。俺には悠助のように守るなんて事はできねえ、先にぶっ壊して火の手が回らないようにする、それだけしかできねえ。

 

「アーミア…………?」

「…………ナタル、すまねえ。俺はもう人でなしもいいところだ。お前の言う通り、俺はテロリストだ」

「嘘よね…………?」

「国際指名手配くらいされてるだろ? アメリカでのIS強奪犯でよ。あれ、俺だぜ」

「…………」

 

ナタルはそれっきり黙ってしまった。仕方ねえか…………昔の知り合いが今、テロ屋なんて聞いたらそうなるか。

 

「アーミア、さっき貴方が言ったこと、波の音で聞こえなかったわ」

「は…………?」

「だから、私は何も聞いてないわよ」

 

ふっ…………昔から変わんねえよ、こいつは。俺には特別優しいんだから…………軍人としてそれでいいのかと小一時間聞いてみたいが、俺は人間としていいのかもしれねえと思っている。こいつに人を殺させるような真似だけはさせたくねえ。福音は広域殲滅武装搭載機だ。そんな機体にナタルを乗せているのは気がひけるが…………こいつ、やると言ったらきかねえからな。

 

「そうか、それじゃ俺は行くぜ。報告も色々とあるからな」

「ええ、わかったわ。——ありがとう、私の『白き隼』さん」

 

俺が部屋を出るとき、ナタルのそんな言葉が聞こえた。まぁ、俺が助けたわけじゃねえんだが。この事は悠助の奴に礼を言っておかねえといけねえな。あと…………福音を暴走させてナタルの空を奪おうとした奴ら、全部ぶっ殺してやる。

 

——落チ着ケヨ。イツカハ機会ガクルサ。ソレト、福音カラ伝言ダ。『ありがとうございます、はい』ダトヨ——

 

ふっ…………ナタルの奴、機体に愛されてんじゃねえか。あいつもそう思われていて最高なんじゃねえのか? オリジナルコアの意思、か…………ナタルがそこまで酷い外傷を負わなかったのも、そいつが守ってくれていたからなんだろうな。本当、俺の相方達には頭が上がらねえぜ。

 

 

 

 

 

「静かなもんだな…………さっきまでドンパチをやっていたところなのか?」

 

俺は夜、旅館を抜け出し海岸に出ていた。着替えんのが面倒だったから戦闘装備だがな。にしても夜の海ってものは静かなもんだ。海鳥の鳴き声がしねえからなのかわからんがな。漣の音だけってのはなんとなくのどかな感じがするぜ。全くと言っていいほど戦闘のあとなんてものは感じられねえ。若干潮風にオイルの匂いが混じっている気はするがな。

大暴れしたDアームズは拡張ユニットの一つとして黒龍に格納された。この時、他の拡張ユニットとの併用はできない。それを除いても異常な火力だがな。

 

「月が綺麗だ…………こんな事を思ったのはいつぶりだろうな…………」

 

ふと空を見上げれば三日月が上がっていた。空には雲ひとつなく、満天の星空が見える。そういや、今日は七月七日、七夕だったな。これだけ綺麗にみられりゃ最高だな。

しかし、こうやって空を見上げるなんて、少し前までは全く考えられなかったな。それまでは目の前の敵を見据えて撃つだけ、そんな生活だった。美しさとは反対の立場に位置する戦場は様々な意思が入り混じった醜い世界だ。中には戦場こそが美学とか言う奴がいるかもしれねえが、最近の俺にはそうは思えなくなってきたな。それでも、擬似コアだけは破壊する。そして、人も殺す。これだけは変わらねえことなのかもしんねえわ。

 

「あ、悠助…………」

「一夏、か…………どうしたんだ、こんな時間に?」

「少し、潮風を浴びたくなっちゃってね」

「そうか。ほら、こっちに来い」

 

一夏が来た。俺は近くに来るように手で合図を出す。俺の座っている砂浜のとこなら波もそんなに来ねえし、濡れる心配はねえからな。

どうやら一夏は制服に着替えていたみたいだ。やっぱり女ってそういうことに気を使うんだろうか? 野郎の俺にはよくわからねえぜ。

 

「じゃ、ここに座るね」

 

そう言って一夏は俺の隣に座る。前までならなんとも反応しなかったんだが、今の俺じゃ心臓の鼓動が少し強くなっちまう。弱くなったのか、強くなったのかわからねえぜ。

 

「ねぇ、悠助」

「なんだ?」

「その…………ごめんね。こんな言葉で許される事なんて無いけど…………それでも、謝りたかったから…………」

 

やはり引きずっていやがったか…………まぁ、俺が勝手に刺されただけなんだから気にすることはねえと思うんだがな…………こいつは自分の所為だと思っているのか。そう思わせてしまった俺にも罪はあるな。

 

「謝る必要なんてねえよ…………俺こそ心配かけちまったみてえだ。済まなかったな」

「そ、そんな!! 悠助が謝ることはないよ!! 悪いのは私なんだから…………私がしっかりしていたら…………ぐすっ…………こんな事にはならなかったのに…………」

 

一夏は涙を流しながらそう言ってきた。全く…………本当に泣き虫な奴だぜ…………放っておけねえよ。

俺は一夏を優しく抱き締めた。

 

「気にするな。俺はこうして生きてんだ。気に病む必要はねえよ。それに、言っただろ。泣いてるより笑顔の方がいいってよ」

「なんで…………悠助はどうしてこんな私にこんなに優しくしてくれるの…………」

「好きな女が泣いていて嬉しい男はいねえよ」

 

そう言った時、俺は失敗したと思った。つい言ってしまったわ…………なんか流れ的に言わなきゃいけねえ使命感を感じちまってよ。無論、一夏はそれで泣き止み、目をパチパチさせている。

 

「悠助…………それは——」

「…………すまん、それは俺に言わせてくれ」

 

俺は一夏を離し、一呼吸置いてから言葉を放った。さあ、行くぜ。人生最大の賭けってやつをよ‼︎

 

「言葉で着飾るのもなんだから、単刀直入に言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏、好きだ。俺と付き合ってくれ」

 

そう言うと、一夏はさらに目をパチパチさせていた。あぁ、可愛いわ…………自分に素直になれたから、正直に心の内に押し込めていたものが出てきている。まぁ、悪いもんじゃねえからいいんだけどよ。てか、顔暑いわー。

 

「わ、私…………で、いいの?」

「ああ、お前だからいいんだ」

「で、でも、私はセシリアみたいに綺麗じゃないし…………」

「…………」

「鈴みたいに活発じゃないし…………」

「…………」

「シャルロットみたいに他人に気配りするのも苦手だし…………」

「…………」

「ラウラみたいに決断力もないし…………」

「…………」

「簪みたいに可愛くもないよ…………そんな私でいいの?」

 

そう言う一夏の目は少し潤んでいた。不安…………なんだろうな。今までどういう扱いをされてきていたのか知っている俺ならわかる。それよりも、周りと比べられすぎて、自分の事を卑下にしている。本当に仕方のねえ奴だ。

 

「お前は何を言っているんだ。俺からすればお前はかなり可愛いし、綺麗だぞ。別に誰かと比較なんてする必要はねえんだ。俺にとっちゃ、お前が一番なんだからな。だからよ、俺の側に居てくれ」

「本当にいいの…………? 私じゃ悠助に釣り合わないよ…………?」

「釣り合うかどうか、そんなの関係ねえ。他人がどうと言おうが、俺は知らねえ。俺は今目の前にいる女を守ると誓ってんだ。お前だからこそいいんだ」

「でも…………周りには私よりいい子なんていっぱいいるはずだよ?」

「お前じゃなきゃダメなんだ。惚れた女に一途になってダメなのか?」

 

一夏はしばし黙る。結構突然のことだったからな。仕方のねえことかもな。だが、俺は伝えたい想いは確かに伝えたはずだ。後悔はねえ。後は一夏がどうするかだ。

 

「…………悠助、私も悠助の事が好き。でも、私は何をするにもダメだから迷惑をかけちゃうかも知れない。こんな私だけど…………悠助への想いは、悠助以上だよ? だから…………こちらこそ、よろしくお願いします!」

 

返事を確かに受け取った。その時の一夏は涙を流してはいたが、笑っていた。俺は一夏を不幸にさせることはなかったようだ。

 

「ああ…………よろしくな。俺はお前を守るから、絶対に側からいなくなるんじゃねえぞ」

「うん…………悠助も、私の側からいなくならないでね?」

「わかっているさ。俺は死なねえし、お前も絶対に守り切ってやるさ」

 

互いに見つめ合う俺ら。月明かりに照らされた彼女の顔はとても美しく、俺はその瞳を魅せられていた。ああ、俺にとっての女神だ、こいつは。こいつのためなら何処までもやれる。命を捨てる真似はしねえが、それでも、守りきらなきゃならねえな。

 

(親父、お袋…………俺、大切な人できたよ。こいつだけは守り切るから、見守っててくれ。絶対に幸せにしてみせるさ、きっと)

 

この夜、俺と一夏は結ばれた。そして、軽くだが唇を重ねた。余りにも緊張しすぎて何が何だか覚えてはいねえけどな。ただ月明かりが優しく俺たちを照らし続けていた。

 

 

 

 

 

〔ようやく結ばれたのですね〕

〔そのようだな。ならば、私もお前のことを守らなければならないな。悠助の意思に背く謂れもない〕

〔あら、私や一夏だってただ守られるわけにはいきません。私達で二人をしっかり支えていきましょう!〕

〔そっちの方がいいな。とんだカタブツな奴だがよろしく頼むぞ、榛名〕

〔こちらこそ、ちょっと気の弱いマスターですけど、よろしくお願いしますね、武蔵〕

 

 

 

 

 

「あ、あのカタブツな悠助が、自ら告白した…………!?」

「天変地異の前触れですわ…………!!」

「…………大袈裟すぎない? でも、無事結ばれてよかった」

「そうだね。…………これからさらなる糖分地獄だけど」

「それよりも、私達は二人の結婚式に出なければならないのか?」

「展開速ぇーな…………まぁ、俺も薄々思っていたんだが」

「これが、告白の現場…………なんだか凄いわね」

「というより、みんな集まりすぎだよー。あと、ゆーくん、いっちゃん、おめでと〜」

 

岩陰より二人を見つめる者達の姿があったが、お熱い状況の二人は全く気づいていなかったのだった。




悠助「さて、作者」

ど、どうした?

悠助「黒龍の建造はどうだ? 進んでいるか?」

あー…………現在資材集め中。もうちょっとかかりそうだぜ。

悠助「そうか。しかし、そろそろ機体解説とか入れないと読者がイメージしにくいんじゃないのか?」

それもそうなんだよな…………よし、やるか。

悠助「ということだ。流石に二機以上はキツイと作者がほざいたため、一機ずつになるのは勘弁してくれ」




闘蛇龍

所属:なし
操縦者:紅城悠助

紅城家の地下格納庫に保管されていたパワードスーツの一機。コアを嵌められた後に悠助の専用機となり、傭兵活動に従事した。追加装備の換装を現地で行える特性より高い汎用性を誇る。戦闘距離は全距離。どの範囲においても戦闘を有利に行えるが、反面操縦者にかかる負担は大きい。
臨海学校における戦闘で損傷、以降黒龍へと姿を変えその役目を全うした。

固定武装
[腕部マルチランチャー]
両腕に装備されているランチャーユニット。ナパームからアレストワイヤーまで多様な装備を射出することが可能。
[対装甲ナイフ]
IS装甲を破壊・貫通可能な近接武装。両サイドの腰アーマー内に収納されている。
[脚部三連装ミサイル]
キャノンボール・ファスト直前に改装を受けた際、追加された武装。小型ミサイルを三発ずつラックすることが可能。

射撃武装(多すぎるため、使用頻度の高い武器のみ)
[アサルトライフル]
30口径36mmの汎用ライフル。中遠距離では安定して使用可能。
[ガトリングガン]
12.7〜38mmまで多種多様な種類を所持。弾幕形成には最も効果的な武装。
[バズーカ]
220mm砲弾を運用する、ISを一撃で大破に追い込める手持ち火器。

近接武装
[バスターソード]
身の丈ほどもある刀身が特徴。その厚さより、レールカノンの直撃ですら防ぐことが可能。
[バスターナックル]
ナックルガードに二本のブレードを装備させた超近接戦闘武装。

追加装備
[B型ユニット]
大出力ブースターを三基と大型ウイングを備えた長距離・高速移動用ユニット。武装は上部のガトリングにマインレイヤーユニット、両翼のミサイル。
[G型ユニット]
重火器とそれを支える補助スラスターを備えた、拠点防衛・殲滅戦用ユニット。武装は上部のガトリングガンに160mmレールキャノン、右腕の105mmオートカノン、両肩の三連装ミサイルポッド。




悠助「こんな感じで進めていくぜ」

では、これからも生温い目でよろしくお願いします。
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