守りたい、ただそれだけ(本編完結)   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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第32話

学園祭当日。開始を告げる花火が打ち上がり、この日を待っていた人々はその合図をとても喜んだ。この行事には政府関係者だけでなく、学園の生徒が招待した客も来るらしい。というわけで俺も二人ほど呼んだが…………あいつら来るんだろうか。

 

「紅城君! もうそろそろ開店だから準備して!」

「あいよー。ちょっち着替えてくるぜ」

 

というわけで準備をしに行く俺。と言っても簡易設営更衣室で着替えるだけなんだがな。それくらいしか準備することとかねえし。…………まぁ、着替える装備も装備なんだから若干躊躇してんだけどよ…………。

 

だってよ、執事服だぞ。

 

いやいやいや、真面目に着替えたのはいいんだがな、今一つ着こなせているのかどうか全くわからねえんだ。まぁ、どうせ似合ってはないと思うが、こいつも仕事なわけだし、やるとしますか。そう思って更衣室を出る。

 

「あ、悠助、着替え終わったんだ。じゃ、接客の仕事始めるよ」

 

メイド服に着替えた一夏が更衣室の前にいた。今回流石にいつものカチューシャを外してはいるが、代わりに付けられているヘッドドレスとか、マジで似合ってる。うん、超可愛いです、はい。

 

「おう。だが、俺がこれ着て似合ってんのか? いまいち自信ねえぞ」

「ううん、とても似合ってるよ! だから心配しなくて大丈夫だって」

「一夏の言う通り。異常なほど似合ってるって」

「そうなのかぁ…………?」

 

一夏とシャルロットにそう言われるが…………どうにもこうにも自信の持てない俺がいる。というか、残暑が残るのにこれは流石に暑いわ。なんでよりによって長袖の執事服など着なければならんのだ。既に汗をかいていてやばいんだよ…………何による汗なのかは想像してもらえるとありがたい。

 

「さぁ、皆、これより開店するよ!」

「「「いいとも!」」」

「では、メイド&執事喫茶、開店!」

 

入り口を開けるとそこには既に長蛇の列が…………どんだけ並んでいるんだ? おそらくシフト抜けの生徒が大半だろうが…………マジで凄えこれ。だが、こうなったからにはやるしかないな。

さぁ、接客開始だ(オープンコンバット)

 

 

「紅城君! 十二番テーブルにこれお願い!」

「ほいさ、任せな」

「織斑さん! 三番テーブルにお客様を案内して!」

「うん、わかった!」

「ボーデヴィッヒさん! 七番テーブルの注文とってきて!」

「了解した」

 

開店から十五分、既に大繁盛だ。客の足は途絶えないし、きっちりと接客しなきゃならねえから本当に辛い。

 

「お待たせしました。コーヒーとシフォンケーキのセットと紅茶とスコーンのセットになります。コーヒーと紅茶にはお砂糖、ミルクは入れますか?」

「じ、じゃ、お願いします」

「わ、私も」

「では、失礼します」

 

…………自分でも思うんだが、誰こいつ? 俺が俺じゃなくなってきているような気がしなてやまないんだが…………。

まぁ、だが、これも仕事だ。というわけで角砂糖の入った容器より二つ取り出して、それぞれに入れる。また、ミルクは用意されているものがあるからそれを入れさせてもらう。あとは、これを適度に混ざり合うようにして、と。

 

「こちらのご用意はできました。ごゆっくりとどうぞ」

 

最後に一礼してその場を後にする。そんな時、誰かが倒れる音がした。よく見れば一夏が応対していた客が気を失っているようだ。

 

「一夏、何があった?」

「そ、それが、フォークを落としたみたいで、取ってあげたら急に…………」

 

念のため現場に行って確認を取る。アレルギーの警告は一応出しているからその辺のことは無いが、万が一ってこともある。だが、一夏から聞く分にはそういうことはなさそうだし、何より気絶した生徒の顔…………この世が天国みたいな幸せそうな顔だ。こうなったらやる事は一つだけ。

 

「三番、気絶者一名、回収と搬送を頼む」

『了解しましたわ…………というかこれで五人目ですわよ。どれだけ気絶すれば気がすむのでしょうか?』

「俺が知るわけないだろ…………」

 

回収と搬送に限る。念のためセシリアがその任を請け負っている。まぁ、厨房は出禁、接客は人数が多い上にセシリアのシフトがあと十数分後だ。よってこういう仕事をしてもらっているわけだが…………なんで喫茶店でこんな事態が起こるわけ? ちなみに俺の前で二人気絶したのは確認済みだ。

 

「うぅ…………やっぱり私のやり方じゃダメなのかな…………もう三人も気絶しちゃったし」

 

ひとまず裏方の方に行くと一夏がそんなこと言ってた。え? お前のところだけで三人もかよ…………何をどうしたのか気になるが、こいつの事だ、特に何もしてないだろう。だって、やる動機とかないだろうしな。

 

「何をしたらそんなに気絶するんだ…………?」

「ふ、普通にお砂糖を入れたりするのか聞いたりとか、さっきみたいに落ちたフォークを拾ってあげたりとか、だけど…………?」

「…………どんな風にしたんだ?」

 

俺がそう言うと一夏は突然しゃがみこみ、先ほどの様子を再現してくれた。

 

「お客様、すぐに新しい物とお取り返しますね」

 

…………ああ、気絶するのもわかる気がするぞ。あまりにも仕草が可愛すぎて、別の世界へと開いてはいけない扉を開いてしまいそうになった。というか、なんでこんなに可愛いんだよ、一夏は。

 

「こ、こんな感じだけど?」

 

…………あかん、それはあかんよ、一夏。気づいてないだろうが上目づかいになっているんだよ。あ、意識飛びそう…………。

 

「ゆ、悠助?」

「あ、いや、なんでもねえ。別に問題はないぞ。そのままで頼む」

 

下手に言って自信を無くさせるわけにもいかんしな。だが、あれはマジで大量破壊兵器にも等しい威力を持っているな。

 

「あ、紅城君、五番テーブルにお客様を案内してね」

「へーいっと。じゃ、一夏頑張れよ」

「うん!」

 

一夏の笑顔を背にし、俺は五番テーブルへと案内するべく入り口へと向かう。

 

「ブッ、お、おまっ、その格好…………!」

「おーおー、珍しいもん着てるな」

「お、お前ら…………ちょ、止めて、マジで。結構深く刺さってるから…………」

 

入り口にいたのは俺が招待したオータムともう一人見知った顔がいる。こいつは伊達渚。俺達と同じ傭兵だ。歳は俺と変わりない。この間、中東の紛争地帯にいたのはこいつである。まぁ、喧嘩レベルの小さなものでも血をたぎらせて突っ込んでいって暴れてくるほどの狂狼だがな。というか、こいつが強制的に終わらせたのかもしれねえ…………主に政府の陥落で。いやだってこいつ、女尊男卑とか差別とか大がつくほど嫌いだし。

 

「まー、そう拗ねるなって。アーミアだって悪気はねえんだからよ」

「渚もそうっぽい!」

 

あ、しかもなんか二名追加されてるし。オータムの後ろにいるのは天龍で、渚の前にいるのは…………誰? いや、詮索するのは後回しでいいだろ。何より客が詰まる。

 

「とりあえず付いて来い。話はそれからだ」

「うーい」

「へいへい」

 

ひとまずオータム達を連れて五番テーブルへと案内する。しかし、よりによってこんだけの人数が集まるとは…………俺も想定外だ。というか、何故にコア人格を具現化させたし。

 

「じゃ、俺はブラックコーヒーな」

「ああ、俺もそれにしよう。かなり濃いやつで」

「それじゃ、俺はタピオカプリンの黒豆添えにすっかなぁ」

「夕立はカフェオレがいいっぽい!」

「あ? 天龍、さっきお前腹減ってねえとか言ってなかったか?」

「…………気のせいだろ。それに、どうもこれを頼まなきゃいけない使命感があってな」

「注文は以上か? なら、少し待ってろ」

 

全員分のオーダーを取った俺はそれを厨房の方へと持っていく。というか、タピオカプリンの黒豆添えなんてめんどくさいものを用意しよって…………一回運んだが、あれ中々にトレイの上を食うから運びにくいんだよ。

 

「五番オーダー来たぞ。こいつを頼む」

「わかったわ。すぐに用意するから紅城君はそこで待機してて」

「了解。それと、少しの間休憩に入ってもいいか? 無論仕事ができればすぐに戻るが」

「特別問題はないと思うよ。この一時間だけでもかなりの売り上げだし…………何よりご指名で入るすごいメイドがいるしね」

 

そう言って相川が指さすのは今も必死になってオーダーを取っている一夏であった。ご指名が入るほどって…………おいおい、どうなっているんだ? てか、指名してんの殆どが三年生とかだし。…………あかん、何者かがキマシタワーとか叫んでいやがる。何が起こるというんだ、全く。

 

「なるほどな」

「一夏ちゃんは反則じみた可愛さの持ち主だからね。あ、注文の品できたからお願いするよ」

「りょーかーい」

 

トレイを二つ受け取った俺は片手で無理無理持つ。いやぁ、こうでもしないと上手くテーブルに置けねえんだよ。テーブルにはバランス的な問題でトレイを二つも置くなどできんからな。腕でホールドしておかないといけないんだわ。

 

「ほら、注文の品だ」

「おう、サンキュー」

「想像してたより薄い…………」

「これだ、これ! やっぱりまちがいねえ!」

「久々のカフェオレっぽい!」

 

オータムの反応は大して変わりはない。だが、渚、想像より薄いってどういうことだ? 豆の分量を五倍にしてやってもらったんだが…………お前カフェイン中毒なんじゃねえの? あと、天龍、お前のその不良っぽい見た目から想像できねえほど乙女な物注文したな…………。それと、夕立と名乗る彼女はなんだ、飲む様がどこかの気品ある令嬢にしか見えん。なぜだ?

 

「で、この後どうするお前ら?」

「俺は特にないな…………強いてなら、かんちゃんに会いたい」

「俺たちはマスターの指示にしか従えねえもんな。なぁ、夕立?」

「本当にそれだけが不便よね〜〜」

「語尾抜けてるぞ」

「ぽい!」

「とりあえずお前らに同行するわ。案内は任せろ」

「うーし、じゃ、いつぞやの北アフリカ戦線の編成で行くとしようぜ」

 

北アフリカ戦線、か…………懐かしいな。あの時に俺たちは出会って、即興の小隊を組んで、擬似コア機二十機を相手にとったんだっけな。もう三年も前になるのか。この編成で行くとまた俺は自然と後方支援になるんだろうな、装備的に。まぁ、全距離対応の機体を使ってんだから仕方ねえんだけどよ。

一通り飲み終わったようで、俺たちは移動することにした。許可ならさっきとったことだし、問題はねえだろうよ。

 

「っと、このメンバーに一人追加でもいいか?」

「別にいいが、誰を呼ぶつもりなんだ? お前の彼女?」

「ちげえよ、相棒の方だ。——ほら、武蔵、出てこい」

 

俺がふとそう呟くと

 

「呼んだか?」

 

具現化した相棒(武蔵)がどこからともなく現れた。ただし格好はあの露出の高いやつではなく、いつぞやのホスト的なやつ。ここで露出の高いやつで出てこられたら俺は完全にお縄確定だ。

 

「げえっ、武蔵…………」

「…………天龍、さすがにげえっはないだろう。で、そっちの奴は?」

「藍狂狼のコア人格、夕立。よろしくね、武蔵さん」

「黒龍のコア人格、武蔵だ。よろしく」

 

…………ここでふと思った。夕立がコア人格だとわかったのならば、もう一人連れて来れば良かったと。すまん、榛名。

 

——榛名だけ仲間はずれですか!?——

 

どこかで榛名の叫び声が聞こえたような気がしたんだが気のせいだろう。

 

「ってか、なんでお前のコア人格は中学生みたいな格好なんだよ。お前、ロリコン?」

 

ここで俺は疑問に思っていたことを口にした。いや、だってよ、コア人格がどれもこれもぶっ飛んでいるのは知っていたが、今まであった夕立以外の奴らは皆高校生以上には見えんだ。逆に夕立だけが中学生にしか見えん。もしや、渚の奴ロリコンじゃねえのかと不安に思ってしまう。

 

「違うわっ!! 俺はいたってノーマル!! お前ならわかるだろ!?」

「いや忘れた」

「てめぇ…………203mm対物多目的砲を撃ってやろうか?」

「あれはもう打ちたくないっぽい!! 夕立が使えるのは127mmまで!!」

「あ、うん、冗談」

「…………お前の冗談って結構問題引き起こすよな」

「てか、さっき天龍が言ったアーミアって誰?」

「あ、それ俺だ。オータムは前の組織にいた時のコード。本当はアーミア・カリウスだ」

「マジか」

 

オータム改めアーミア・カリウス。その名前に聞き覚えがあるな。アメリカ空軍最高のISドライバーだったはず…………まさかのこいつかよ。てか、オータム——いやアーミアがそう言うが、大抵の問題を一人で引き起こすお前にだけは言われたくねえ。俺は軍から機体を強奪しなければ、自爆もさせねえぞ。

 

「で、本題に戻るがどこに行きたいんだ?」

「俺はどこでもいいぜー。こういうとこは初めてだしな」

「俺は…………かんちゃんに会いたい」

「それしか言ってねえな、お前。で、かんちゃんって誰?」

「簪。昔の幼馴染みだ。今どこにいるのかわからねえんだよなぁ」

 

いや、俺知ってるわ。てか、機体をあいつにやったのも俺だし。というか、もう四組の前まで迫ってきているから会おうと思えば会えるぞ。

 

「じゃ、会いに行くか?」

「おいおい、さっきの話聞いてきたのかよ?」

「今どこにいるのか知らないっぽい!」

「簪だろ? この学園にいるぞ」

「マジか!」

 

ぐわっとした勢いで食らいついてくる渚。おいやめろ…………肩を掴んで揺らすな。野郎同士でやると危険なんだ、その行為は…………! 腐共が集まってきやがんだよ!

 

「お、落ち着け。とりあえず四組に入るぞ。そこにいるはずだ」

「了解したぜ!」

 

なんとかして渚を抑え込む。ふう、あぶねー。

で、四組の方にきた。四組はどうやら一組に対抗してか和風喫茶なるものをしている。皆着物を着ているという徹底振りな上に畳に卓袱台という和風というよりは、古き日本の空間を生み出している。丁度簪も水色を基調とした着物を着て接客待ちだ。それを見つけた渚は躊躇いなく向かっていく。

 

「簪…………!」

「…………なぎ、さ?」

 

どうやら数年ぶりの再会のようだな。反応から大体は予想できる。

 

「渚、とても嬉しいっぽい。ずっと簪に会いたがっていたっぽいから」

「どのくらいの期間だ?」

「三年前っぽい」

「渚のやつだってやるじゃねえか」

 

夕立は再会できたことを心から喜んでいるようだ。アーミアも茶化してはいるが、冷やかしとかそういった類は一切ない。ただな…………

 

「…………武蔵、俺ってこういう時どういう反応すればいいんだ?」

「…………私に聞くなよ。天龍の方がわかっているんじゃないか?」

 

若干二名ほど反応に困っている奴らがいたことも事実なんだがな。いや、普通に喜んでやればいいじゃねえかよ。

 

 

 

 

 

「簪…………!」

 

俺はあの水色の髪を見た瞬間、歓喜に包まれた。三年間、ずっと…………ずっと会いたいと思っていた奴がそこに居たんだからな。しかもかなりの美人になっていたしよ。

 

「…………なぎ、さ?」

 

どうやら向こうも俺に気づいたみたいだ。何年も会ってねえからわからねえのかと思っていたが…………もしかして覚えててくれたのか?

 

「ああ、そうだ。久しぶりだな、簪」

「…………うん。ちょっと待ってて休憩を貰ってくるから」

 

そう言うと何やらここの責任者みたいな奴に話をしに行った。げ…………俺もしかしてなんかめんどくさいことをさせてしまったのか?

 

「…………ごめん、待たせた」

 

そう言ってさっきの着物姿で簪はきた。水色の着物。どこか儚げで、それでいて強さを感じる色。それは簪のパーソナルカラーといっても差し支えないだろう。というか、待ったといっても三十秒くらいだぞ。これくらい待ったの内に入らねえぜ。長い時は三時間も待ったことあるからな、爆撃止むの。

 

「ちょっと待っててくれ。あいつらに少し話してくる」

 

俺は簪にそう言うと一旦二人(とコア人格達)の元へと向かった。自由に動くのは傭兵の特権だが、今は仲間として行動しているからな、離脱することくらいは伝えるのが流儀ってものだろうよ。

 

「なぁ、悠助、アーミア。少し簪と二人で話してきてもいいか?」

「ああ、俺は構わねえぞ。数年ぶりの再会なら積もる話もあるだろう。行ってこいよ」

「そうだぜ。なにせ色恋沙汰は十代の少年少女の特権だろ? 次会えるかどうかわからねえんだから話してこい」

 

俺が離脱する旨を伝えると、二人はなんともあっさりと許可を出してくれた。いや、二人を信じてないわけではないんだが、なんとなく、な。だがまぁ、悠助は嘘偽りなさそうだし、アーミアも同じようだな。けどな、アーミア、最後のそれやめろ。マジフラグ以外のなんでもねえんだからよ。俺、それとだけは絶対に関わりたくねえと思っていたんだからさ。

 

「そっか。じゃ、また後でな」

「おう! …………しっかし、青春してるな、あいつ」

「合流地点は夕立に教えとくぜ! …………いや、所帯持ちのお前には言われたくねえぞ?」

 

…………なんだ、あいつらがボソボソと言っていることが凄え耳に入ってくるんだが…………というか悠助、お前ってもしかして、け、結婚でもしたのか!? 所帯持ちってなんだよ!? 嫁さんでも貰ったのか!? …………後で聞いておかねえといけないな、これは。

とまあそれはさておき、また簪の元へと戻る。

 

「すまん、待たせちまったな」

「…………気にしなくていい。これでおあいこ」

 

そう言ってくすりと笑う簪はとても可愛い。本人に言ったらどう思われるかわからないが、簪は小動物のような感じがするからな。こりゃ、刀奈——いや、現楯無姉ちゃんが過保護になるのも間違いねえよ。

 

「…………どこか行きたいところある?」

「相変わらず欲がねえからな…………お前の行きたいところでいいぜ」

「…………わかった。じゃ、適当にぶらつく?」

「案内は任せるぜ」

「…………任された」

 

というわけで、簪の案内のもと学園祭をまわることにした。こうやってこいつと二人でいるのは何年ぶりなんだろうな…………最後に会ったのが三年前。それからというものの色々あったからな…………それに、傭兵やってたら息つく暇もねえくらい女権団体潰してきたし。

 

「…………どうかしたの?」

「いや、こうやっているのは何年ぶりなんだろうってさ」

「…………大体三年。懐かしさついでに」

 

簪は急に俺の手を取る。俺の手よりは小さい。けど、俺の手よりは温かくて、血で汚れていない。そう考えると俺は…………俺は一体何人を手にかけてきたのだろうか。

 

「そうだな…………昔を思い出すな」

「…………本当にどうしたの? なんだか悩んでるようだけど」

「少し考え事。あの日から色々あったからさ」

「…………あの日って?」

「家族を殺された日」

「…………!?」

 

簪は信じられないと言った顔をしている。仕方ないか…………俺の親たちも一族も簪を始めとする更識との仲は良い方だったしな。そんな人達が俺以外殺されたなど聞いたら驚きもするか。まぁ、俺自身がなんとも言えない程に悲しみとか感じてない。

 

「少し座るか。ゆっくりしたい」

「……………………うん」

 

簪はいつもより小さな声で頷くと近くにあったベンチに座った。人は多いが、別にこんな話は祭りの喧騒にかき消されてしまうだろうよ。

 

「…………何が、あったの…………?」

「そうだな…………政治的なものに消された、ってとこか。お前と刀奈姉ちゃんを巡る争いにな——」

 

俺ら伊達家は別にどこぞの戦国大名とかとは関係ないが古くから更識の護衛を務めてきた家だ。位としてはどうなのかは知らないな。その中で俺と簪、そして刀奈姉ちゃんは良く遊ぶ仲だった。無論俺に護衛をさせているという名目でな。だが、そんな日は長くなかった。後継者を選び、二人の許婚を決めることが更識傘下の各家系より選ばれることとなった。更識家としては俺を選んだ。伊達家と更識家は単に俺たちの幸せだけを願ってそう決めた事らしいが…………それが今となっては後手の判断となったのかもな。その取り決めが終わって一ヶ月経ってくらいか、俺以外全員が殺されていた。相手は家紋から見て織篠家、伊達家と更識家の取り決めに唯一反対していた一族だ。何が目的だったのかわからない。それでも、目の前で家族を…………親を殺された俺には目の前にいる黒服の奴らを殺すしかないと考えた。二振りの日本刀を手に取り、奴らを斬り殺した。躊躇いなんてなかった…………殺されたから殺すなど愚の骨頂かもしれない。けど、そんな理性で押さえつけられるほど俺はうまくできてない。後は更識の人間がわんさかきたから織篠の連中が犯人とわかる証拠を書き残して俺は失踪した。後はいろんなところを転々としていたくらいか。

 

「——これが以上だ」

「…………そんなことが…………なんで、おじさんやおばさんが死ななきゃいけなかったの…………!?」

「…………俺が知る由もねえよ。ただ、今の俺は傭兵して生きてるってことくらいだ」

 

俺の過去を言い終わると簪は俯いてしまった。やっぱり悲しむよな…………親父やお袋と仲良かったの、簪が一番なくらいだし、親父達も本当の子供みたいに接していたからな…………それはそうなるか。

 

「…………でも」

 

簪は俺の手を握る力を少し強くした。

 

「…………渚が一番悲しいのはわかる。だからもう一人にさせない…………!」

 

彼女の顔は今にも泣きそうなほど不安定なように見えたが、その奥には強い何かが宿っている。…………昔の怖がりだった面影はもうねえんだな。強くなりやがってさ…………なんか親父くせえな、俺。

 

「ありがとう。その一言で救われた気がするぜ」

 

俺はそんな強く成長した彼女に向かって、できる限りの笑顔を見せてやった。人を安心させるにはこれが一番だろうよ。

 

「…………渚っ…………!」

 

簪は俺に抱きついてきた。そして俺の胸の中で何やら涙を流しているようだ。ってか、ここ人だかりのど真ん中じゃねえか。

 

「おいおい、ここじゃさすがに目立つぜ?」

「あら、それはどうかしらね?」

 

そう言って姿を見せたのは刀奈姉ちゃんだった。よく見れば周りには何やら水のようなものが展開されている。しかも周りの人は全くこちらの様子を気に止めることもなく、通り過ぎていく。

 

「ちょっとアクアナノマシンでね。流石に二人の邪魔はさせないわよ」

「すまねえな、刀奈姉ちゃん」

「まだそう呼ぶの? そろそろ普通に刀奈って呼んでくれないかな?」

「いいじゃねえか。二人を預かるには俺はまだ早い」

「あら? それはどっちかしか受け止められないってこと?」

「ちげえよ。単に結婚とかできる年齢じゃねえだろ、俺。てか、お前ら二人が俺の許婚だったろうよ」

「当たり前じゃない。あなたが幸せになるのが、私達二人の幸せなんだからね」

「なら俺は意地でもお前らを幸せにしないといけないな」

 

久々の再会。それは少々悲しみを伴ってしまったようだが、それでも喜びってものは感じれたのかもしれねえな。俺にとってこうやって再開することが一番の目的に近いものだった。その願いを叶えた今、俺がやるべきことはそう多くはない。俺の嫌いな女権団体を潰すのもアリ、紛争を止めるために戦場をかき乱すのもアリ。だが、それらよりも

 

「お前らは必ず守り抜く。更識家直属戦闘護衛集団伊達家の名にかけて、な」

 

守り抜くこと、それが第一だろう。




キャラ紹介

伊達渚(cv.平田広明)

身長:176cm
体重:71kg
年齢:16歳
容姿イメージ:雨宮リンドウ(GOD EATERシリーズ)
専用機:???
特筆事項:更識簪・更識刀奈両名の許婚





渚「というわけで特撮さんの案もちょいちょい混ぜながら生まれたキャラってのが俺だ。専用機は都合で出せないんだが、まぁ、今後よろしく頼むぜ」
悠助「特撮さんの原案をもう少し多く使えたら良かったと作者の奴は言ってるな。とにかく、この小説をこれからも生温い目でよろしく頼む」
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