守りたい、ただそれだけ(本編完結) 作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)
学園祭終了後の食堂にて
「それじゃ、学園祭の無事成功を祝って乾杯!」
「「「乾杯!」」」
酒盛り——じゃなかった、反省会…………でもねえな、打ち上げだな、うん。とまあなんやらをやっている。無論、俺も参加しているぞ。飯がたらふく食えるからな。ちなみに言っておくがすでに制服の方に着替えは済ませている。俺の隣にいる一夏もだ。スーツなんて堅っ苦しい格好してられるわけないだろ、特にフリーダムな俺ら傭兵は特によ。いや、重役とかに呼ばれたらそりゃ着るかもしれねえけど、そこまでの事は絶対ないだろ? 大抵は戦闘装備で事足りるからな。
「いやー、それにしても随分いろいろと取り揃えたもんだな」
「そうだね。こんなにご馳走あるの見たのってキャノンボール・ファスト以来じゃないかな?」
そういやキャノンボール・ファストの後も打ち上げやったな。あんときはローストチキンに食らいついてたわな。あれうまかったな。今回もあるようだし、一羽分丸々貰ってくるか。
「お、そうだそうだ。紅城君には特別な料理が用意してあるらしいよ」
「何? それは本当か?」
「ゆっちーは普通に食べるだけじゃ足りないからね〜。用意するの大変だったみたいだよ〜」
本音の奴が言うに結構とんでもないものが用意されているようだ。一体何が用意されているというのだ?
「にしし〜、これだよ〜、じゃーん」
「うおぉぉぉっ!? こ、これは…………!!」
俺の前に突如運ばれてきたワゴン。その上には銀の蓋をかけられた巨大な皿が、異様な存在感を放ちながら鎮座している。そして、その蓋が開放された瞬間、俺の鼻腔を刺激する心地よい香りがやってきた。燻製か? 俺の目に入ってきたものは、明らかに色々とぶっ飛んでいた。だってそりゃ仕方ないだろ、スモークターキーが一羽分丸々用意されているんだからな。いやぁ、こいつは美味そうだ。周囲の視線を一気に引きつけていやがるぜ。一夏も興味津々。
「いやぁ、最初は巨大な霜降りステーキでも用意してあげようかと思っていたんだけどコスト的にも大変だったし、紅城君なら脂より赤身選ぶと思ったから、割と安くなっていた七面鳥にしたんだよ」
「いやいや、七面鳥とか鶏肉よりコスト高いじゃねえか。いいのか? こんな高級品、俺一人で食ってもよ」
「うーん、別に食べなくても悔しくないし、何より紅城君にはお世話になったからね」
「俺何かしたか?」
「だって、紅城君の働きもあって午前中だけで経費の殆どを回収できたし、仕事も一番初めの方からさせちゃったから、そのお礼」
うーむ、だが実際は俺よりも一夏の方が稼いでいるんじゃないのかと思えるほど忙しく働いていたからな。というか、全員の働きがあったからそういう偉業が達成できたんだろ? ならこれは俺一人が礼をされるものではない。しかし、ここで引いては彼女たちの思いを無下にするのではないのだろうか、と考えてしまう。ならば俺はどうするべきなのだろうか? …………って、食っちまえばいいだけの話じゃんかよ。
「よーし、そういうことなら遠慮なくもらうとしよう。んじゃ、いただくぜー」
俺はナイフとフォークを持ちターキーの胸のあたりから攻めることにした。ナイフを当てると筋肉質の肉がナイフを受け入れるかのようにすっと入っていった。あれ? 燻製ってさこんなに肉やわらけえもんなの? 燻製肉は保存食として戦場じゃ重宝されている貴重なタンパク源なんだが、俺が食っていたものは大抵ガチガチに硬くなったものだけなんだよな…………最早干し肉。そういうのは火で炙ってスルメみたいに食っていたが。だが目の前にある燻製肉の柔らかさときたらなんだ。切り口から滲み出る肉汁が肉の表面にまとわりつき、更に俺の鼻腔を刺激する。それと同時に食欲すら増幅されてきた。切り取った肉片を口に放り込む。するとどうだろうか。口の中がなんとも言えない味と香りに占領されてしまったではないか。これは旨え。ターキーなんてアーミアの奢りで食った時以来だぞ。確かあん時はイスラエル国境付近での紛争止めの帰りにアーミアとばったり出くわして、それでアメリカ本土に連れて行かれたっけな。
「うおぉぉ…………こいつは旨え。どんだけ肉が柔らかいんだよ…………それに脂っ気がないからさっぱりと食えるぜ」
俺の言葉に喉を鳴らす者たち数名有り。だろうな、こんなご馳走を前に飛びかからない奴はいない。
「よし、食いたい奴は皿を俺に差し出せ! すぐに切り分けてやるぜ!」
「「「やったぁぁぁぁぁっ!」」」
案の定、全員が盛り上がった。そこからはというものの、ターキーを一人一人に適量配りつつ、俺も食らっていく形で進んでいったら、いつの間にかあの巨大な肉塊は消え、骨格標本的な形で残骸ができた。
「七面鳥って美味しいけど、なんだか水分を取られちゃうね」
俺の横でターキーを食ってる一夏はそういう。まぁ、鶏肉よりはパサついてる感じがあるし、喉が渇くのは仕方ねえんじゃねえのか?
「まぁ、仕方ねえだろうよ。あの辺に飲みモンあるから一回飲んでこいや」
「うん、そうする」
一夏はひとまず何か飲みに行った。一方の俺はといえば傍に黒烏龍茶の入った大ジョッキを装備してるから喉が渇いてもすぐに対処できる。
しばらくして俺のもとに一夏が戻ってきた。その手には貰ってきたであろう飲みモンがある。てか、なんなんだその炭酸なのかよくわからない液体は…………どこか見覚えがあるんだが。
「い、一夏、それ何?」
「え? 唯のオレンジソーダだよ? 貰いに行った時、セシリアとシャルロットに勧められたんだ」
一夏はオレンジソーダと言ってるが、俺からすれば最早アルコールの類にしか見えない。それだけ見慣れてしまっているということもあるんだがな。…………ん? 待て、なんでアルコールの匂いがほんの少し少しあるんだ? 酒蒸しでもあるのか?…………って、まさか!
「お、おい、いち——」
「ほぇ…………?」
既に手遅れだった。何やら顔が妙に赤い。そして嗅ぎ慣れていたあの匂い…………念のため一夏が貰ってきたというオレンジソーダを少し舐めてみた。…………僅かにしか感じられないが間違いなくアルコールの類。カクテル系なのか? いや、そんな事はどうでもいい。なぜ、未成年しかいない俺らの中でアルコールが存在しているかという話だ。
一先ず俺はセシリアとシャルロットの元へと向かった。
「おいセシリア、シャルロット」
「あら、悠助さん」
「どうかしたの?」
二人に話しかけると動揺するそぶりはなく、至って普通に返してきた。
「いや、なんだ、一夏が若干酔ってるような状態になっているんだが…………お前ら、盛ったか?」
「「…………え?」」
俺がそう言うと二人は何やら汗を垂らし始める。
「…………ちょ、ちょっとセシリア、もしかしてアレ間違って渡したの?」
「…………おそらくそうですわね。わたくしは企業との話し合いを兼ねたパーティで飲んでいましたから、そのノリで。申し訳ありませんわ、悠助さん。一夏さんがお飲みになった物はわたくしがお渡ししたものですわ」
「やはり、か…………で、あれはなんなんだ? 僅かにだがアルコールを感じたぞ」
「あれはアルコールをごぐごく少しだけ入れたカクテルのようなものですわ。普通ならそう簡単に酔う事はありませんの。ただ、一夏さんにはそれでも効いてしまったみたいですわね」
「で、何パー?」
「0.000001%と聞いておりますわ」
…………低っ! 俺はそんなんじゃ絶対に酔う気がしないぞ。というか、そんなにアルコールの低いやつってあるのかよ…………ある意味そっちの方に驚かされた。
ちらっと一夏の方を見ると何やらうつらうつらと眠たそうにしている。ここに置いておくのもなんだしな…………一旦部屋に寝かせてくるか。
「悪りぃ、ちょっと一夏を運んでいくわ。多分その後でまた戻ってくる」
「わかった。みんなには僕の方から言っておくよ。…………ところでラウラは?」
「あー…………あいつなら、あそこ」
俺はそう言ってある一角を指差す。そこを見るなりシャルロットはあららといったような呆れた感じの顔をした。
「4番のやつ、その場で一発芸をやれ」
「はい! ボーデヴィッヒ様!」
「…………王様ゲーム?」
「カオスだな、おい」
ラウラを筆頭に王様ゲームで盛り上がっている模様。しかも今指名されたやつ、何やらマゾヒスト的な何かを感じ取ってしまったぞ。こ、怖えぇ…………。
そんなカオスなエリアはスルーして、俺はテーブルに寄りかかって眠ってしまっている一夏を抱き上げる。よくいうお姫様抱っこのような状態になってしまったが、今は仕方ないだろう。何やら周りが騒ぎ出しそうになったが、セシリアとシャルロットが気を利かせて静かにさせてくれた。とりあえず目線で感謝の意を伝え、自室の方へと向かった。
その途中
「んっ…………ゆーすけ…………」
「どうした?」
「…………だーいすき、だよ…………」
その一言で無駄に心臓の鼓動が速くなってしまったのは仕方のないことなのだと思う。というか、思いたい。
…………。
……………………。
部屋に一夏を運び込んだ俺はそのままベッドに寝かせた。流石に靴は脱がせたが、制服を着替えさせる気にはなれなかった。セクハラで訴えられそうなのと、俺にそんなことをする勇気がないからな。しかし、それにしても廊下でのあれはびっくりしたな…………寝言なんだろうが、それでもどきりとさせられたのは仕方ない。突然言われたら誰だって驚くわ。
とりあえず寝かせた事だし、俺は部屋を出て打ち上げの会場に向かおうとした時だ。
「うみゅ…………ゆーすけ?」
一夏が起きた。だが、顔がほんのりと赤いところを見るとまだ半分寝ぼけているようだし、酔いも覚めてないようだ。この状態で連れて行くのは何かと問題だろう。
「ああ、俺だ。とりあえず俺は戻るが、今のお前じゃまずいから、ゆっくり寝ていろ」
そう言って出ようとすると
「やだぁ…………」
「…………は?」
「いっしょにいてくれなきゃ、やだぁ…………」
…………ゴブッファァァッ!? や、やめろ一夏…………それはいかんぞ。というか、なんでそんな涙目で子供っぽい声出して言うんだよ!? 俺がいじめたみたいな感じになるじゃねえか!? もしや一夏って、酔うと子供っぽくなるのか? ベッドの上でぺたんと女の子座りをしている涙目の一夏に俺が勝てるはずもなく、
「…………わかった、一緒にいてやるよ」
結果としてこうなってしまうのであった。俺は一夏のいるベッドに座る。それを聞いて安心したのか一夏は俺に倒れこむように寄りかかってきた。俺の肩には一夏の頭が乗っかっている。ちらっとそっちを見ると、なんとも幸せそうな一夏の寝顔がある。それを見ているだけで俺もどこか安心した気分になる。
『そっちはどう?』
「すまん、一夏に甘えられてしまってな、そっちには戻れなさそうだわ」
『はいはい、惚気話はたくさん。仕方ないね、みんなにはなんとか言っておくよ』
「すまん、助かる」
シャルロットからの通信にそう答えた。肩に頭が乗っかっている時点で動こうにも動けない。動いたらこの安眠を妨げることになるだろうしな。
そんな時、俺に一つのメールが届く。送り主は…………アーミアか。内容は
『明日1900に米軍秘匿基地イレイズド・セカンドへ強襲する。同基地は主に女権団体が管理している。今回の目的はそこにある銀の福音のコアと軍法会議寸前のパイロットを強奪することだ。この作戦には俺の他に束の奴が支援してくれるらしい。報酬は出るかわからないが、やる価値はあるだろう。なお作戦名は天使の奪還だ。いい返事を期待しているぜ』
任務、か。しかも基地の襲撃ときた。おまけにコアとパイロットの強奪…………なかなかに面倒な事になりそうだぜ。だが、束さんからの依頼でもあるし、軍法会議にかけられている奴がいるんなら助けてやらねえと。アーミア曰く、軍法会議はありもしないことをでっち上げるだけの八百長裁判みたいなもんらしいからな。
『集合場所はどこだ?』
そうアーミアに送る。すると、ご丁寧に座標を表示してきた。だが、この場所は…………IS学園の港じゃねえか。輸送船ででも行くつもりなのか? まぁいい、俺は依頼をやるだけだ。
一夏は何やら寝返りをうったようで、俺の肩から一夏の頭は離れている。これでやっと動けるな。俺は机の上に『明日までには帰る』との書置きを残して、学園の港へと向かった。
「…………月、綺麗だね」
「こうやって三人で空を見たのはいつぶりかしら?」
「さあな? そんな細かいところまで俺は覚えていねえよ」
「けど、久しぶりに会えてよかったって今でも思ってる。正直会えないかもしれないって思ってたからな」
「もう、そんなこと言わないの」
「…………お姉ちゃんの言う通り、こうやっていられるんだから」
簪はそう言って柔らかく微笑む。その笑顔は満月よりも明るくて綺麗だった気がする。
だが、再会して喜んだところもあるが、こんな俺がここにいてもいいのかと考えてしまうことがあるんだよな…………俺の手はすでに血で汚れている。こいつらだって暗部の人間だということだっていうのはわかっているが、それでも手にかけた人の数は俺の方が多いだろう。システムに身を任せて敵を殲滅する、そんな戦いばっかしていたらいつの間にか俺は命を奪ってもなんとも思わなくなっていた。群青の狼、狂狼、いろいろ呼ばれているが、結局のところは気にくわない女権団体を潰している我儘なガキなだけ。そんな奴に二人を守る資格などあるのだろうか…………そんな考えばっかりだ。
そう考えている時俺の両手は同時に何かに触れられた。どちらも俺より小さい手だが、右手には強い意志を、左手には優しさを感じる。
「簪、刀奈姉ちゃん…………」
「渚…………再会していうこともなんだけど、やっぱりあなたはちょっと背負いすぎるわよ…………」
「…………渚が今までどんなことをしてきたのか、今日聞いたこと以外私達は知らない。けど、その背負ってるもの、私達にも背負わせて欲しい…………」
そういう二人の目はいたって真剣だった。ルビー色の瞳、そこに燻る想いの強さは俺にだって伝わってくる。だが
「俺のしてきた事は重いぜ…………それでもいいのか?」
「もちろんよ。あなたとなら地獄だろうが監獄だろうが、どこへでもいけるわ」
「…………私も。それくらいの覚悟はあるから、渚も気負わなくていい」
はぁ…………そこまで言われてしまったら俺はどうするべきなんだろうな。断るってのもアリだが、こいつらがそれを拒否する未来しか見えない。
「そうか…………ありがとな、簪、刀奈」
そう言って俺は二人の手を握り返した。こいつらが俺についてくるといって聞かない以上、俺はこいつらを守らなければならない。それが俺に課せられたたった一つの最重要依頼なんだろうな。
「あ、あれ? 渚、今私の事、名前で呼んだ、よね?」
「…………マジ?」
「…………バッチリ聞いた」
無意識のうちに刀奈姉ちゃんを名前だけで呼んでしまっていた。まずった…………。
「い、いや、あれはだな、その——」
「渚」
「は、はい!」
「これからは名前で呼ぶ以外ダメだゾ☆」
そう笑顔で言われてしまったからには逆らえない。どうしても俺は刀奈姉ちゃん——ああ、いやいや、刀奈だな。だから心まで読むな、そしてふくれっ面するな。話戻すぜ、刀奈に逆らうことができない。可愛いからというのもあるんだろうが、それ以上に後のイタズラが怖い…………俺、脇をくすぐられるのが物凄く弱いから。弾丸を受けるのは慣れているのにこれだけは慣れない。何故なんだろうか?
「…………へーい」
「…………渚って、お姉ちゃんに弱いよね」
簪にまで言われる始末…………俺、立場低いだろうな、絶対。
そんな時、一通のメールがきた。送り主は…………アーミア?
『明日1900に米軍秘匿基地イレイズド・セカンドへ強襲する。同基地は主に女権団体が管理している。今回の目的はそこにある銀の福音のコアと軍法会議寸前のパイロットを強奪することだ。この作戦には俺の他に束の奴が支援してくれるらしい。報酬は出るかわからないが、やる価値はあるだろう。なお作戦名は天使の奪還だ。いい返事を期待しているぜ』
なるほどな…………女権団体が絡んでいるのか。そう聞いた瞬間、さっきとは全く違う思考が露わになってきた。人を殺すことに躊躇いを持たない、本当の意味での
『どこに向かえばいい?』
そう俺が返信すると
『すぐ近くに出る』
そうとだけ返ってきた。その次の瞬間だった。突然地面が揺れ始めたかと思えば、海の中から何か巨大な物体が出現したからな。盛大な水しぶきを上げ、月明かりに照らされたそれはゆうに五百メートルはあろうかという艦だった。巨大な砲塔に無数の対空火器。戦艦だ。
「うひょー、やっぱりこいつで来やがったな」
それからしばらくして黒いISが現れた。あれは…………闘蛇龍か? いや、違う。あいつはあんな紅い双眸を持ってないはずだ。俺は無意識のうちに藍狂狼を展開、マシンガンを向けていた。
「え…………渚って、IS使えるの?」
あ、やべ…………ばれた。
「おいおい、友軍機を撃つ気かよ、お前」
「その声…………悠助なのか?」
「ご名答、さっさと乗艦するぞ。アーミア達が待ってる」
そう言うとあいつは戦艦の後方に向かっていった。アーミアが言っていたのはこれの事なのか…………。
「…………渚」
「悪いな、仕事が入っちまったぜ」
「そう…………わかったわ、いってらっしゃい。でも、この事は——」
「帰ってきてから話すさ。それまでは秘密だぜ」
そう言って俺は戦艦の後方に向かって飛んだ。何やらサイレンがなっているがこの際関係ない。この戦艦の後部甲板には何やら飛行甲板らしきものがある。そこには悠助の奴の他に謎のISがいた。
「よう、これで全員集まったな」
謎の白いISにはアーミアの姿が…………あれ、こいつまた機体変えたのかよ。
「久々のメンツだぜ。で、どうすんだ?」
「決まってんだろ? 俺たちは格納庫に向かうぜ。束、微速前進! 針路任せた!」
俺たちはアーミアの後をついて格納庫らしきところを目指す。さて、仕事の準備でもしますか!
格納庫へと着いた
「俺たちが攻めるイレイズド・セカンドには固定砲台がいくつもある上に駐留部隊の規模は同じイレイズド・ファーストよりもデカイ。まずはこれを叩く必要があるんだが…………」
「それは、天海龍の砲撃である程度支援はできるけど狙いは正確じゃないからね。おまけに司令部らしきところにはなーちゃんもいるだろうし」
「げ、救助ターゲットいたのかよ…………」
「おい渚てめえ、作戦目標聞いていたのかよ」
「…………敵の殲滅だ」
「違うわ! コアとパイロットの奪還!」
「…………似たようなもんだろ?」
「いやいや、全然違うから」
本作戦の目的にはナターシャの奪還も含まれている。救助ターゲットがいるから下手なことはできない。作戦開始までまだまだ時間はあるが、その間にいろいろあるからな…………。
「だとしたらDアームズも使えねーわけか」
「使うにしてもあれで暴れられたら焼け野原になっちゃうよ」
「だよなぁ…………何かいい案はないのかよ」
「俺がシステム使って無双」
「その状態で
「大丈夫だ…………多分」
結構曲者しか集まってねえんだよな、この集団。火力殲滅にシステム使って虐殺、あとは一撃離脱特化とか。一対多の戦闘であっても奪還・護衛は辛いものがある。一夏の時はすぐに済ませることができたから良かったものの、今回もそんな状態になるとは思わないだろうしな。
「んー、じゃ、まずは固定砲台を潰すためにVLSとアクティブ・カノンで砲撃、その後ゆーくんとおーちゃん、なーくんが突入して敵部隊を叩こう。その間に居場所を私が突き止めるから、おーちゃんが回収に向かって。なーちゃんとコアを回収できたらゆーくんのDアームズで即離脱という流れでいくよ」
最終的にはこうなった。渚のシステムは封印されてしまうが、白兵戦でカタをつけるつもりらしい。これならなんとかなりそうだ。
「よし、わかった。束、機体を頼むぞ? 最高の速度にしてくれ」
「まっかせてよー! この束さんにかかれば最高の刀もおまけでつけちゃうよ! じゃ、ゆーくん達の機体も改修するね!」
というわけで改修作業が始まった。アーミアと渚が艦内を見に行っている間、俺は格納庫にいた。目の前にはそれぞれの機体がある。アーミアのRAT4-01 白龍。渚のRGAT3-80 藍狂狼。そして俺のRATX4-00 黒龍。どいつもどこか似たような形状をしている。渚の機体はフルフェイスバイザーを頭部ユニットごと外され、別のパーツへと換装中。アーミアのにはケーブルが繋がれていて最終調整中。黒龍は特にないが、
「うむー、VLSタイプだと上空に向かってから進路変更だからね…………あ! 水平発射型にして、ミサイルユニットを独立可動させよう!」
Dアームズが大改修中だ。アクティブ・カノンの配置は変わってないが、両サイドのモジュールは結構変わっている。ミサイルユニットがスラスターと一体化し独立可動できるものとなり、モジュールを固定するアームにはグリップが取り付けられた。その他にもグリップの増設が行われてB型ユニットのように僚機を輸送できるようになっている。
「システムをこっちに輸送してっと。複雑なシステムだよねー、これ」
そう言いながら藍狂狼に頭部ユニットが取り付けられた。外観はアーミアや俺のと変わらない、デュアルアイにブレードアンテナといった感じだ。あと小さいながらも近接防御機関砲がある。
「よーし、これでRGAT3-80C 藍狂狼改二、竣工!」
そう高らかに叫ぶ束さん。だが、俺はどうしても疑問しか起きない。いや、束さんに対してもあるが、この機体に対してだ。親父たちが建造したというRATナンバーのシリーズ。何の目的があってこいつらを作っのだろうか。どれだけ強力な力を持っていようと、結局の所は兵器としてしか使われない。親父たちがはそんな事を望んでいるのだろうか、ましてやそれを嫌って表舞台から姿を消した束さん自身はどうしてこいつらを否定しないのだろうか。それがわからない。
「ん? ゆーくん、どうしたの?」
「いや、束さんってISを兵器として使われるの嫌いだったよなーって」
「うん、そうだよ。元は成層圏探査を考えた宇宙進出用の道具だからね。兵器利用なんて考えたくもないよ」
「なら——」
「でもね、同じ兵器利用されてるRATナンバーシリーズは違うの。なんか、いろいろ矛盾してること言ってるけど、あの子達は未来を守るために兵器であることを選んだ、未来へ羽ばたく翼を閉ざして、ね」
何を言っているのか俺には伝わらないが、黒龍達が守るために生まれたということだけはなんとかして通じた。
「——
「? 今、何か?」
「いや? 気のせいじゃない?」
束さんが何かを呟いたような気がしたが、本人が気のせいと言っている以上そうなのだろうな。
その後しばらく俺はそこにいたが、ほとんどすることもなくなったため、割り当てられた自室の方へと向かったのだった。
冷たい。
気が付いた時、最初に感じたのはそんなもの。周りには誰もいなかった。僕一人だけの空間。以前までは誰かと楽しくお話ししたり、時には遊んだりしていた。でも、あの時、急に頭が痛くなって、それで…………そこから先の記憶が曖昧。一瞬だけ物凄い痛みが走ったけどそれっきりだった。でも、そこからが地獄だった。お家に帰ったらすぐに僕は取り外されて、身体を失ってしまった。そして、あの人——ナタルともおしゃべりする事も出来なくなった。代わりに待っていたのは、心ない言葉。そして、僕は蹴られたり叩きつけられたりした。その時の衝撃で、靴、片っぽ無くなっちゃったんだけどね。暗い中で一人、ずっと堪えているしかなかった。外から隔離されているせいで、周りはとても冷たい。寒い。海の上を、空の下を自由に飛んでいた頃が懐かしいなぁ…………。でも、今じゃそんな願いは叶わないよ。こんなところに置いてかれた僕にはどうすることもできない。せめてできるんだったら、もう一度、もう一度だけでいいから…………空を自由に駆け抜けたい。ナタルと僕の空を奪った奴を、僕は許せない。そうは思えるんだけど…………そんな力は無く、ただ酷い事をされるのを我慢するしかなかった…………助けて…………助けて、ナタル…………ねぇ助けて、ワシントン、サウスダコタ…………お願い、助けて——
——武蔵…………。
悠助「今回は機体無しなんだな」
まー、あまり活躍とかないし。それじゃ、書いても意味ないかなー、って。
一夏「それはそうと、書き直そうかなっていうのは…………」
序盤やり過ぎた感が最近しなくもないからね、少し程度をやらわげようかと。
一夏「そっちの方が嬉しいです!(必死)」
悠助「あー、うん、こんな状態な作者が書いてるが、これからも生温い目でよろしく頼むぜ」