守りたい、ただそれだけ(本編完結) 作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)
「
エイミーからそう聞かされたアーミアは言葉に怒りを込めて口を開いた。実際、俺だって、渚だって、束さんだって怒っている。戦うためだけに生み出された存在、だと? ラウラのような
「はい…………識別番号はR01、最初の被験者です…………」
エイミーの顔はどんどん曇っていく。だが、そんな顔をさせてまでも俺たちは情報を聞き出さなければならない。こいつは、命を冒涜する行為だ。最も、金のために殺しまくっていた俺ら傭兵が言えた立場じゃないが。
「…………一体、何をされたの?」
「あの、話してもいいんですけど…………かなり重い話かもしれませんし、もしかすると気分を悪くするかもしれませんよ? それでもいいですか?」
それに答えを出すまで一秒とかからなかった。俺たちは揃って無言で首を縦に振った。
「では、話しますね…………後天的能力強化素体計画は、元の人間に薬物の投与による肉体強化、脳へ電磁波を与えることによる反応強化を行い、戦闘能力及び空間認識能力の付与といった、ただ戦うためだけに調整を施した
「そう、なのか…………」
「はい…………一人だけ脱走した人がいるんですけど、生きているかどうかはわかりません。——話、戻しますね。ただ一人生き残った私はありとあらゆる情報を得るように命令されました。強化のせいで頭も良くなっていたんでしょうか、パソコンは得意で、セカンドの基地サーバにハッキングするくらいは簡単でした。そうやって詰め込んだ情報の多くは敵となるISの機体データでした。ロシアのラマーチ、イタリアのテンペスタ、イギリスのティアーズ、ドイツのレーゲン、そしてアメリカのクーガーと福音…………これらを相手に取ることを考えていたみたいです。そしてある日、私にはISが——クーガーが与えられたんです、それも他とは違う…………あの機体には私の感情や状態に応じて起動するシステムが積まれているんです。それを使った私は——五機のクーガーを一分程度で沈黙させました。正直、自分が怖くなって…………いつ人を殺すんだろうって…………いつ殺されるんだろうって…………死にたくなって、死にたくなくなって…………頭の中がぐちゃぐちゃになって、それで…………」
聞いているのが辛くなる。人体実験など、俺たちは実際に見たことがないからなんとも答えることはできないんだが…………それでも、これは人のやっちゃいけないことだってのは、俺にだってわかる。命をなんだと思っていやがるんだ…………戦場では生きるか死ぬか、それだけの簡単で重い命のやり取りをしている。その中でもそれぞれが背負った役目を果たそうとした結果、そうなるだけだ。だが、これはどうなんだ。孤児だからって理由で命を弄びやがって…………そして当の本人たちは椅子の上に踏ん反り返っていやがるんだろう。年端もいかない少女達に非人道的な事をしでかしやがって…………。
「クソッ! 俺が憧れていた…………信じていたアメリカ軍はこんな事を平然としてやっているのかよ! 世界の警察が一番の大罪を犯しやがって…………!!」
アーミアはかつて米軍にいたらしい。だからこそななんだろうな、信じて憧れていた正義の軍隊が、こんな非人道的な事をしているんだから。怒りに身を任せ、床に拳を叩きつけている。その音はただ虚しく格納庫内に響き渡るだけだった。
「…………なぁ、親がいないってのはそんなに立場の悪いものなのか? そんなはずねえ! 俺たちだって生きているんだ! だから、命を弄ぶのは許せねぇ…………!!」
渚はそう叫んで、怒りを露わにした。こいつはそうそうキレることはない。だが、この時だけは違った。こいつも俺と同じく、親を亡くしている。孤児だ。しかし、その命は死んだ親から託された大切なものだ。それを弄ばれると考えたこいつは、腸が煮えくりかえるような怒りがこみあげてきたんだろう。俺も同じ思いだからな。
「…………えーちゃん、機体を確認させてもらったよ。そのシステム、なーくんの藍狂狼に積まれているシステムと同じようなもの…………だけど、これは人を狂わせる、人が一つのパーツになっているようなものだよ‼︎ 命は玩具なんかじゃないのに…………!!」
そう言って束さんが見せてきたディスプレイには[WRAITH SYSTEM]と表示されている。よりによって
「…………具体的にはどういうシステムだ?」
そういう類に最も多く触れてきた渚が問う。あいつもシステムを使えば荒れ狂い、敵を殲滅する狼だからな…………知りたいことでもあるんだろう。
「…………機体の性能を人の体も壊れるほどに引き上げて、脳に直接敵の情報を流す。なーくんの場合は制御リミッターがかかっているから反動はないけど…………えーちゃんの場合、制御リミッターなんてないから、負荷が大きい。使用するたびに脳細胞が破壊されて——いずれ精神そのものを取り込まれる危険があるよ…………」
聞いててさらに胸糞悪い気分だ。完全に人がマシンの一パーツとしてしか機能してない。狂気に満ち満ちている。おそらく彼女の身体はその負荷に耐えられるようにと改造を施されているのかもしれない。だがそれでも限界はいつかは訪れる、それが今なのか、十年先かはわからない。
空気は何やらぴりぴりとしている。まぁ、米軍共に対するストレスだろうけどな。
「あ、あの…………そんなに怒らなくてもいいですよ。こう言っちゃうのもなんですけど、私、ISに乗っている時だけは自由な気分になれたんです。そうやって鳥みたいに飛んでいるのが楽しくて…………」
だが、その空気は彼女がふと漏らした言葉で次第に消え失せていく。その事を話す彼女の顔は何処か儚くもある弱い笑顔だった。
「それにあの子——あ、私のクーガーですよ? なんだか心持っているみたいで、飛んでいるときはよくお話ししてました」
しかし、次の言葉に俺たちは驚かされた。ある意味で区別するための基準をあやふやにされたからな…………。
「お、おい、そのクーガーに積まれているコアって、金色に光るキューブか?」
「え? 鈍色の球体ですけど…………」
「おいおい…………擬似コアが意志を持ったのかよ…………」
「あり得ないけど…………ありえなくもないかも」
「は? コアってみんな意志を持ってんじゃねえの?」
いやいやそれはちげーよ、と渚にツッコミを入れる俺。擬似コアはオリジナルコアの劣化版である事は周知の事実であり、自己修復はできるが自己進化は不可能である。つまり、コア自体が意志を持ってないということだ。だが、彼女は今なんと言った? クーガーに嵌められているのは擬似コアであることが確定した。なのに、意志を持っているように言ったではないか。
〔少なくとも私達に敵対するようではないな…………〕
武蔵もそう言っていることだし、とりあえずの問題はないようだ。
「ふーん、大分ワケありすぎてややこしくなっちゃったけど、えーちゃんはどうしたい?」
唐突に束さんがそう言いだした。その目や顔はいつになく真剣。なんだが、手にスパナやらドライバーやらを持っている時点でアウト。何かとシリアスムードが破壊されている。
彼女は少し考えるような仕草をし、口を開いた。
「…………できれば、私はもう戦いたくないですね。殺されるのも殺すのも嫌ですし…………でも、こんなバケモノの私には居場所なんて——」
「——じゃ、ここにいたらいいよ」
彼女はハッとして束さんの顔を見上げた。その顔には驚きやらなんやらが含まれている。一方の束さんときたらいつも通りの顔だ。だが、目だけは真剣である。
「ここなら誰も邪魔しないし、戦いに出すことなんて考えないよ。それに、誰か助手をもう一人欲しかったからね。どうかな?」
確かに束さんの元ならどこにいたって自由なことに変わりはない。まぁ、色々とぶん回される事はあるだろうが、この人は基本的に嘘はつかない。冗談はよく言うがな。
「…………本当に、いいの、ですか?」
エイミーの顔は所々に不安があることが読み取れる。だが、そんな顔はするだけ無駄だぞ。
「もちろんだよ、えーちゃん」
束さんは一度決めたことはそう簡単に変えることはない。それがどんなことであろうとな。満面の笑みで答えた束さん。その顔を見たエイミーは居場所ができたことに安心したのか目を潤ませる。
「え!? ちょ、束さんなにかまずいことでも言った!?」
「ち、違うんです! ただ、私にそんなことを言ってくれた人が初めてなので、つい嬉しくて…………こちらこそよろしくお願いします!」
突然のことに束さんが一番あたふたとしていた。自身の発言に何か問題があったのではないかと考える束さんに、エイミーはすぐにフォロー的なものをいれる。まぁ、彼女自身、気づいてないようだが笑顔になっている。そんな微笑ましい光景を俺ら傭兵どもは眺めさせてもらったわ。だが、俺たちにはまだそんな風に安堵できるほどの余裕はない。まだ主任務が完了してない。
『間も無く大西洋へ進出、そのままCN305の信号を追跡します』
どうやら大西洋へ出たようだ。ってか、この船速くねえか!? 戦艦って速度あんまり出ねえんじゃねの!?
「ナターシャ・ファイルス中尉、何故君がここに呼ばれたか、その意味はわかるかね?」
正直言って、そんな意味わかるわけないでしょ。あの日、無事にアメリカに帰国した私は、とある秘匿基地に連れて行かれ…………そして、あの子と切り離されてしまった。最初は冗談じゃないのかと思ったけど、周りの反応は全然違う。明らかに私を敵、罪人と見てるような顔。もう、うんざりって感じだった。それで気がつけばこんなよくわからない胡散臭い高官たちに囲まれた法廷にいた。両手には拘束具、解除なんてできそうにもない。
「さぁ? 私には身に覚えがありませんが?」
「ふざけるのは大概にしたまえ。君の罪状はただ一つ、銀の福音の暴走事故の件だ」
暴走事故…………おかしい。あれは完全に外部からの強制アクセスによるエラーだって、開発主任も言っていたし、何より篠ノ之博士からの言葉で福音の凍結停止と査問会の件は全て消えたはず…………なのに、私は今、軍事法廷で裁かれようとしている。どういうことなのよ…………?
「銀の福音の暴走、君が不用意に操作をしたことによるエラーが原因だ。解析班からの報告にはそうある」
違う…………そんなの。私には全くもって理解ができなかった。開発主任からの報告書はどうなったのよ⁉︎
「ここまでなら良かったものの、その後友軍に被害を出し、あまつさえIS学園の生徒を危機に陥れた…………これだけあれば十分だろう」
確かにその被害を出したのは間違いない。でも、私は暴走した福音を止めようと尽力した。そのことについて触れられてないのはどうでもいい。
「よって、シルバー計画は全面破棄、コアも凍結させた。開発チームは解散だ。ああ、彼らは君と違って場所を変えさせただけだから心配するな」
そんな事を言われても今ひとつ信用できない。アーミアが言ってたっけ…………場所を変えさせられたってことは、左遷されたってことだって。開発チームとはずっと一緒にいたから、一つの家族みたいなもののように感じていたところもあるのかしらね。主任はちょっと変態な人だったけど優しい人だった、副長は臆病でビビってばっかりいたけどどこか憎めない人、整備士は口数が多くない人だったけど仕事真面目…………みんな大丈夫かしら。
「そして、最後に残ったのが君なのだよ、中尉。君は暴走を引き起こし、友軍に被害を出した張本人だ。悪いが、我々米軍にはそんな人材はいらない。よって貴様には終身刑が課せられる。いいな?」
そんな…………それは理不尽すぎるわよ。私の信じた米軍というものはそこに存在していなかった。代わりに見えたのは、自分の椅子を守ろうとしている中年男性と中年女性。ただ権力を手放したくない、そんな腐った現状が嫌という程見せつけられる。…………アーミアが軍を辞めた理由、今ならわかるわ。
結局発言する事を終始できなかった私は憲兵にこれから入るであろう牢獄連れて行かれるかと思った。だが、突如として部屋が大きく揺れた。それも一度だけじゃない、何度もだ。
「なんだ!? 一体何が起きている!?」
「敵襲です! 所属不明機がこの施設を破壊しようとしています!」
「なんだと!? 対空火器をフル稼働し、速やかに迎撃せよ! この施設の存在を知られてはならんのだ!」
高官たちは皆慌てている。一体何が…………? というか、知られてはいけない——アメリカ軍でそう呼ぶのは全て
数分前。
(見えたっ…………!)
僕のレーダーが捉えた先にあるのは一つの小島。あんまり価値とかないように思えるところだけど、僕にとってはここが一番重要な場所。
(待ってて、ナタル!! すぐ行くよ!!)
そう、ナタルがいるんだ。場所の名前は…………イレイズド・サードだったかな? まぁ、そんなことはどうでもいいよ。大切なのはそこにナタルがいるって事。それがわかった今、僕にできることはただ一つ。ナタルを連れ戻す。
だけど近づくたびにミサイルが飛んでくる。防衛火器が配備されているんだ…………大きさはハープーンとかと同じくらい。実際に見た方がデータよりも大きく感じる。けど、こんなもので止まるわけにはいかない。ウィングバインダーを畳んで被弾面積をできる限り小さくして避ける。
「邪魔、だよっ!」
僕は両手にフィンライフルを展開、ミサイルの飛んできた方向に向かって何発か放った。立て続けに起こる爆発。それ以降ミサイルは飛んでくることはなかった。僕は再びウィングバインダーを展開、一気に加速した。
「着いたっ!」
基地のようなものがはっきりとわかる。僕はそこに一旦降り立った。アクティブ・カノンだっけ? あれで瞬時加速をして、そこからさらに大出力ブーストをしてこっちまで来たから、少し頭が疲れちゃった。でも、こうやってのんびりなんてしてられない。そう思って飛び立とうとした時、僕にまた銃弾が襲いかかってきた。
「こんな時に限って!」
固定砲台からの射撃。こんなところで変にダメージを受けたくないから回避するしかない。両手のフィンライフルとビームアサルトガンで砲台を撃ち抜いてくけど、捌ききれない。
「邪魔しないでよ! 僕は急いでるの!」
なんとか最後の砲台を破壊し、その場を乗り切ることには成功した。ナタルの気配はより一層強くなっている。あぁ、やっと会える…………やっと会えるんだ!
施設の入り口らしきところをビームエッジブレイドで切り裂き、中へと突入した。中はなんだか入り組んだ構造をしているけど、この際一直線に抜けちゃってもいいよね? ナタルの気配がする方へ壁を抜け、天井を抜けて向かう。すると、木でできた扉の前に出た。この先にナタルが…………そう思い、僕はその扉を開けた。
「ナタル…………」
そこには確かにナタルがいた。手とか拘束されていて酷いことをされていたみたいだけど、でも生きててよかった…………会えてよかった。
「だ、誰なの…………?」
あ…………今の僕ってフルフェイスバイザーを展開してたんだ…………。僕はフルフェイスバイザーを解除して顔を晒す。だけどナタルは僕だってわかるかな…………? 今までずっと顔を出せなかったから。
「僕だよ…………って言ってもわからないよね」
僕がそう言うとナタルはきょとんとした顔をしてるけど、暫くして口を開いてくれた。
「もしかして…………福音、なの?」
そう言ってもらった時、僕の視界は次第に滲んでいく。
「あ、あれ? 私、間違ったこと言っちゃった?」
「違うの…………ナタルが僕の事を覚えてくれてて嬉しかったから…………ごめん、今手錠を壊すね」
僕は膝の装甲からビームサーベルの柄を取り出し、短刀状態でビーム刃を展開する。高温のビームがナタルにかかってる手錠を溶断する。
「これで自由だね…………」
「そうね…………ありがとう、福音」
「うん。じゃ、帰ろ? ほら、手を出して」
「えっ? こう、かしら——」
ナタルが僕のマニピュレーターを握った時、僕の肉体は消えていく。だけど、今の僕には新しい
私は気がついたらISを纏っていた。えーと、色々起きすぎて頭が追いついてないのよね。まず、急に施設が揺れ始めたかと思ったら、よくわからないISがやってきて、それに乗っていたのは見覚えのない子だったけど福音だってわかったし、その子の手をとったらそのISを纏っていたし…………だけど、これはこれでいいかもね。私だってこんなとこ早くおさらばしたいもの。
〔ルートはこっちで示すから、それに従ってね〕
「わかったわ。早くこんなところでましょう」
「そうはさせるものか!」
だが、抜け出そうとした時、私は包囲されていた。手に握られているのはアサルトライフル。だけど、それは本来対人用で使うもの。対IS用としてはあからさまに貧弱な装備だ。
「貴様、ここからそう簡単に逃げられると思うな! そのISをこちらに引き渡せ!」
高官が引け腰になってそんなことを言っているけど、私にはそんなつもり一切ない。
「はぁ…………これじゃ、アーミアが軍を辞めたのもわかるわ。悪いけど、一切従うつもりなんてないから」
「貴様っ! 罪人は罪人らしく、大人しくいうことを聞けばいいんだ!」
「あら、そう。なら、罪人らしく脱獄させてもらおうかしら?」
「貴様ぁぁぁぁぁっ!!」
「——黙りなさい」
私は右手にフィンライフルだったかしら? その武器を展開して高官に向けていた。それを向けられた高官は竦んで転び、さっきまでの威勢はどこへ? といった感じになった。
「何が罪人よ。こっちは祖国を守るために軍に入ったのに、それを指揮する人は私利私欲を肥やす害悪。私の信じた軍はこんなところにない。自分の椅子を守ることしか考えていない指揮官に兵士従わないわよ」
私はライフルをさげ、代わりに背中の翼を広げる。
「あなた達も下がりなさい。吹き飛ぶわよ」
そのまま私は飛び立ち、壁を突き破って空へ飛び出た。空はどこか赤くなり始めている。明け方見たいね…………道理で少し瞼が重いはずよ。
〔ナタル、眠いの?〕
福音からそんな風に言われる。本当に人みたいね。もしかしてアーミアもこんな感じでコアが人格を持っていたりするのかしら? とりあえずはこの子に返事してあげないと。
「そうね、少し眠いわ」
〔なら、操縦は僕がするよ。ナタルは休んでてね〕
操縦が
「ありがと。じゃ、おやすみ」
〔おやすみ、ナタル〕
可愛らしい声で返答された私は、疲れがたまっていたのかすぐに意識を手放した。
〔ナタル、寝ちゃった。疲れていたのかな?〕
僕はあの戦艦に帰還する道を進んでいた。あの戦艦、大西洋に出ていたみたいだ。って、速すぎないかな!? 普通に考えても、最速の戦艦である僕たちアイオワ級だって31ノットが限界なんだよ!! どう考えたっておかしいよね!? と、とりあえず、戦艦のいる座標はわかっているし、なんとかいけるよ。
〔でも、無事で良かった…………〕
封印されてから、僕は一人ぼっちだったし、ナタルが気がかりで仕方がなかった。封印された悲しみよりも、ナタルに会えない寂しさの方が強かった。だからこうして会えてとても安心してる。
しばらく進んでいくとあの戦艦が見えた。外観だけを見ると日本の
『こちら天海龍、銀龍はそのまま後部甲板に着艦せよ』
〔了解しました、っと〕
後部甲板を見れば何やらガイドビーコンみたいなものがみえる。これなら安心して着艦できるよ。
〔こちら銀龍、間も無く着艦コースに入ります〕
「無事に帰ってきたみたいだな…………」
「ああ…………そうみたいだ」
俺たちは後部甲板に出て、アイオワの帰りを待っていた。視線の先には銀色に輝く翼を広げた龍がいる。銀龍は後部甲板に着艦するとすぐに装甲が解除された。中からは金髪の女性、ナターシャ・ファイルス中尉が出てきた。
「ナタル…………お前、ナタルなんだよな?」
「アーミア…………ええ、そうよ。私よ」
「無事で良かった…………!」
そして再会を喜ぶ二人。というよりアーミアの熱の入り方が違う。どんだけ…………って、仕方ねえか。下手すると今後一切会うことができなかったのかもしれないんだからな。
「あはは…………僕だけなんだか疎外感」
そう言って頬を書きながら苦笑いしてるアイオワ。まーまー、そういうなって。
「これで一件落着って感じか?」
「そう見たいですね」
渚とエイミーは事態の終結をそれなりに喜んではいる。だがな…………アーミアにファイルス中尉に抱擁長くねえか?
「さぁさぁ、とりあえず中に入ろうか! ここにいても潮風に吹かれるだけだしね!」
というわけで俺らは一旦格納庫の方へと向かった。現在俺たちの機体は銀龍を除いて全機が駐機状態になっている。一機ほどガチのスクラップ寸前の奴——というよりスクラップがあるが…………。
「皆さん! お疲れ様でした! 朝ご飯の準備ができていますので、これから食堂に案内しますね!」
そんでもって、この子誰だ? いつぞやのパーツ風に説明するぜ。
頭部:なし
胴体部:白ジャージ
胴体下部:ミニスカート
脚部:膝下までの黒靴下、革靴
こんな子、俺たちが乗艦した時に乗っていたか?
「なぁ、突っ込みたいところすげえたくさんあんだけどさ…………お前ら、誰だ?」
天海龍の食堂に集まった俺たちだが、その中には見慣れない奴らが三人ほどいる(うち一人はさっきのマネージャー的な子)。なお、この場には武蔵、天龍、夕立、アイオワの面々もいる。
「あらあらぁ、私は陸奥よ。天海龍の射撃管制と機関出力調整は私が担当しているわ」
「日向だ。カタパルトデッキ操作と索敵担当をしているぞ」
「私は糧食とエネルギー配分を担当している速吸です!」
上から順に露出のアカン茶髪で単発な女、どこか侍的な雰囲気のある女、後は格納庫で俺たちを出迎えてくれたマネージャー風の女の子。それぞれ、陸奥、日向、速吸と言うらしい。って、まさか…………
「お、お前らって、コア人格?」
「ええ、そうよ」
「まぁ、そうなるな」
「はい、そうです!」
まぁ、天海龍の制御に幾つかのコアが使われていると聞いたが、三つ使っているのか? となると、コア本体はどこにあるんだ?
「とりあえずみんなご飯にしよーよー。折角速吸ちゃんが作ってくれたわけなんだしー、冷めちゃったらもったいないでしょー」
「それもそうだな。第一、昨日の夜から何も食ってねえし…………」
「俺はガス欠寸前…………」
「わ、私も…………」
「早く食べたいわ…………」
「私もだ…………」
「俺も…………」
「私もっぽい…………」
「ぼ、僕もかな…………」
束さんの言うことももっともなんだよな…………最後に食ったのよりよりだし、昼飯も大して量はなかったし…………腹が減ってるしな。昨夜は基地の制圧と同時に奪還作戦だろ? 後は大西洋まで回ったし…………俺、夜まで帰るって言ったけど、大丈夫かあいつ。不安しかねえ…………。
それでもって、俺たちの前には糧食の入ったパッケージが置いてある。というかよくこれだけの人数が入る部屋があること。ゆとり自体はかなりあるな。ということで、とりあえずパッケージを開ける。中にはカツサンドと付け合わせのサラダ、さらに厳重に梱包されているスープがそれぞれの区分けされた場所に入っていた。おお、うまそうだ。
「それじゃ、早くたべようか! いただきまーす!」
束さんの掛け声を始まりとして俺たちも飯を食う前の挨拶をする。さて、俺も食うとするか。まずはメインのカツサンドだな。それを一口入れる。肉は柔らかい上に量もそれなりにある。戦闘でエネルギーを使った体、あと空の胃袋を満たしていくのがわかる。味も少々濃いめだし、これは美味いな。
「軍のレーションより美味い…………」
「本当それよね…………」
「その気持ちはわかります…………」
アーミア、ファイルス中尉、エイミー…………お前ら、比べる基準が自軍のレーションかよ。あれは栄養補給さえできればいいっていう代物だろ。つくづくあれは人の食うものじゃねえって。第一、米国沿岸警備隊の栄養補給ブロック、ハエさえ集まらねえって話じゃねえか。
「最近は肉とか食ってなかったからな…………中東じゃ豚は食えなかったし」
渚、お前って豚肉が好物かよ。そんなんでよく中東に行けたよな、マジで。まぁ、俺は鶏肉が好きだが。
「日向、久しぶりだな。瑞雲を飛ばしたいとか今でも思っていたりするのか?」
「流石に今はそんなことはないよ。瑞雲よりも特別なものは積んでいるがな」
「む、陸奥さん、今度は爆発したりしないよね…………?」
「流石に第三砲塔は爆発しないわよ…………というかアイオワ、あなたも第二砲塔爆発してるわよね!?」
「戦艦たちは元気だなぁ…………」
「そうっぽい!」
「あはは…………でも、みんなに喜んでもらって、速吸嬉しいです!」
コア人格共はみな元気そうだ。てか、戦艦率高え…………こいつら揃って進軍してきたら、俺は逃げたい。同じ高火力もちだがそれはISでの話だし、なにより四十センチを超える砲弾を見て正気でいられる自信がない。とか言いながら、Dアームズには460mmアクティブ・カノンが積まれているんだが…………。
「束様、遅くなりました」
「うーん、待っていたよー、くーちゃん。操艦は?」
「先ほど航路の設定をして自動操艦に。全兵装は第二主警戒態勢を維持しています」
「いや、警戒態勢は…………って思ったけど、別にいっか。ほらほら、くーちゃんも食べよー」
大分くつろいでいる頃にもう一人入ってきた。なんか海自の士官服的なもの着てるし、何よりラウラにそっくりだ。
「どうも、束様の助手兼天海龍の艦長——というより操縦者のクロエ・クロニクルと申します」
クロエ・クロニクル。恐らく束さんのよく言っていたくーちゃんがそうなんだろうな。って、こいつが天海龍の艦長⁉︎ すげえ…………この怪物を指揮してんのかよ。
「ところでナタル、お前これからどうするんだ?」
「軍に戻るなんて考えはないわよ? あんなところ懲り懲りよ」
話の議題はいつの間にかファイルス中尉のこれからについてになっていた。まぁ、軍を離反した時点で色々と面倒くさいらしいが。
「しかし、ファイルス中尉は傭兵なんて柄じゃないんだろ?」
「そうなのよね…………あ、私の事はナターシャでいいわよ、よろしくね紅城君」
「悠助で構わねえよ」
しかしこうなるとな…………傭兵がダメなら何を勧めればいいのやら。普通に職をしてても軍からの逮捕状とか出てたらすぐに捕まって獄中確定。アーミアは辞職してるからいいが、脱走だしな…………。
「だとしたら、ここの護衛機としていたらいいんじゃね? ISに突っ込んで来られたらやばそうだし」
「いえ、対空兵器も対IS用のものが殆どです。万が一を考慮すればそれは避けるべきかと」
「現に擬似コア機なら撃破してるしねー」
ま、マジか。渚の疑問に対する答えを聞いて俺はビビったわ。まさか旧時代の形をしている戦艦に擬似コア機が撃破されてんだからな。やはり俺らって艦載機みたいな感じなのか?
「まぁ、それでも後部甲板があるせいで後ろにはアクティブ・カノン撃てないからねー。これはなかなかの痛手。護衛機ってのもいいかもしれないねー」
「12.7cmアクティブ・カノンで迎撃したのをお忘れで?」
「そうだけどねー。あ、いいこと思いついたー!」
束さんはそう言うと椅子から立ち上がった。一体何を思いついたんだ?
「ついでになーくんとえーちゃんもね!」
その言葉の意味を理解するのに大分時間がかかってしまうのは仕方のない話である事は、今語る必要はない。
「束さんは何を思いついたんだ?」
「…………何と無く面倒くさいことになる予感」
それから四時間ほどでIS学園港に到着した。うん、やっぱりある意味異常な速さだわ。どんな機関を積んでいるのかと聞いてみたいが、立ち入り禁止的な感じなってるしな。最重要機密なんだろう。てか、IS学園の港に寄港していいのかよ。面倒なことになるんじゃねえの、とかと思ったが恐ろしいほど何もなかったことに驚く。まぁ、夜だし、人の目が少ないんだろうよ。下艦許可出たの俺だけだがな。
「よう、今帰ったぜ」
寮の自室に戻るなり俺はそういう。どうせまだそんなに遅くないわけだし、一夏も起きているだろ、きっと。
「お帰り、悠助!」
そう言って俺を迎えてくれた一夏。やっぱりこうやって日常に帰ってこれた、それだけで俺は不思議といい気分になってくる。というより、俺が目を離しているときに何か起きないか不安になっているだけなのかもしれないが…………それでも、こうやって笑顔が見れてよかった。
「ああ、ただいま」
そう答えると一夏は俺に抱きついてきた。ああ、これが何時もの事だ。こんな風にほのぼのとして過ごせる日々を俺は守りたい、そう思ってしまう自分がいた。
翌日。
「今日は皆さんに転校生と新しい先生を紹介します!」
朝のSHR。そこで山田先生が新しい先生と転校生を紹介すると言ってきたが、いったい誰だ? というか、こんな時期に普通くるのか? いや、よくわからないんだが。
「失礼するわ」
「失礼します」
ん? おい待て、今の声って…………!
「今日からここの副担任をするナターシャ・ファイルスよ。質問があったら気軽に来てね」
「エイミー・ローチェです。よろしくお願いします!」
束さんの思いついたいい事ってこういうことかよ…………というか、この短時間でそんな根回しすぐにできたな、おい。確かにこれなら国からの干渉は受けないし、後天的能力強化素体のエイミーだって自由に過ごすことができるだろう。それを考えれば妥当な判断だと思える。
「ローチェさんは紅城君の隣の席を使ってください。ファイルス先生はこっちに」
「了解よ」
「わかりました」
ナターシャは山田先生の後をついて行き、エイミーは俺の席の隣へとやってくる。あ、これ修羅場になったりしねえよな…………?となると、俺はその緩衝地帯に…………えげつねえ。
「よろしくお願いします、悠助さん」
「お、おう、よろしくな、エイミー」
「あれ、悠助? その子と知り合いなの?」
「ま、まぁな」
「私、束さんの助手をしていますから。よろしくお願いしますね、一夏さん」
「あ、なるほど。よろしくね、エイミーさん」
…………修羅場にならなくてよかったとホッとしている俺だった。
その頃四組では
「伊達渚だ。まぁ、男だがよろしく頼むぜ」
「…………あと、私の許婚だから、色目はダメ」
「簪、おい…………」
渚が
「これでいいのか?」
「ああ、問題ないさ。寧ろよく来てくれたよ」
「この程度は苦にならないさ。だが、何故私達を誘った?」
「君達が来てくれたおかげで、俺たちは象徴、権力と世界を変えるものを手に入れられたよ。後は君達の自由だけど、俺の指揮には従ってもらうよ」
「それくらいお安い御用だ。そうだろ、お前達?」
「僕は姉さんの言うことに従うよ。それで、僕達の世界の秩序を作れるなら、尚更かな」
「私も同じです。これで、これで私は力を手に入れた!」
「はははっ! みんな意気込みはいいねえ。俺たちのルールに合わない世界なんていらないからねぇ!」
人知れず、闇の中で嗤う者たちがいた。彼らの言う言葉が何を指しているのか、それはこの場にいるものしかわからないのであった。
——悲劇は確実に動き始めていた。
銀龍
【挿絵表示】
型式番号 RAT4-02
所属:なし
操縦者:ナターシャ・ファイルス
白龍とともに開発された機体。フレームの一部は共通している他、脚部フレームのは全くの同一である。量産化を検討していたとされているが、ハイエンド機であることに間違いはない。
本機に搭載されているウィングバインダーは全展開する事により、緋龍に匹敵する速度を得ている。また、バインダー内には大型プラズマカノンが搭載されている。
なお、本機のコアにはアメリカで凍結封印されていたシルバリオ・ゴスペルの物が用いられている。
固定武装
[大型プラズマカノン]
ウィングバインダー内に搭載された本機最高火力兵装。プラズマにより生じた粒子ビームを放つ。連射・照射の切り替えが可能。
[ビームアサルトガン]
大腿部に装備されたビーム兵器。一撃の威力はビームキャノンに及ばないが、連射力では勝っており、牽制等にも使用可能。
[ビームサーベル]
膝の装甲内部に装備されている近接武装。グリップにはスイッチがあり、そこを押すことでビーム刃が形成される。
射撃武装
[フィンライフル]
フィンのような形状の銃身を持つビームライフル。銃身自体が粒子ビーム整流板の機能を持っているため、集合化した巨大ビームを放つことも可能。
近接武装
[ビームエッジブレイド]
ビーム刃、実体剣の二つの能力を持つ武器。機体の全高ほどもある大剣である。実体剣は極めて高い硬度を誇り、並大抵のことでは折れない。
キャラ紹介
エイミー・ローチェ(cv.竹達彩奈)
身長:154cm
体重:〔この項目は検閲により削除〕
年齢:15
容姿イメージ:轟雷(フレームアームズ・ガール)
専用機:クーガー・カスタム
備考:
悠助「と言うことで、銀龍とエイミーの紹介だったな。ん? アイオワのイメージがよくわからない? しゃあねえな、ほいきた」
【挿絵表示】
アイオワ「って、なんで僕の写真が勝手に出てるの⁉︎」
悠助「こんな感じになっているらしいぜ」
アイオワ「スルーされた⁉︎(半泣)」
あと、黒龍の途中経過でも報告しておきます。
【挿絵表示】
こんな感じですね。では、これからも生温い目でよろしくお願いします。