守りたい、ただそれだけ(本編完結)   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

44 / 56
第44話

「さぁ、てめえら覚悟は決めたか? 言っておくが今の俺、加減なんてできねえからな」

 

バスターソードを右肩に担ぎ、俺はさっき蹴飛ばした自称天才とモップへと向きなおる。さっきの特攻兵器共のせいで実弾兵器は腕部マルチランチャーや頭部近接防御機関砲も含めて弾切れ、残ってるのはインパルスライフルだけだ。まぁ、チャージが必要なもんだから今は使えない。というわけで俺が現在使えるのは近接武装というわけであり、黒龍最大の破壊力を持つバスターソードを使うしかないってわけだ。ま、俺としては慣れ親しんだ武器だし何の問題もねえ。

 

——CODE:OVER DRIVE

——RATX4-00 [HYPERION MODE]ACCEPT

 

〔行くぞ、悠助。この戦いが正念場だ!〕

「お前に言われるまでもねえ…………さぁ、派手におっ始めようじゃねえか!」

 

バスターソードを両手で構え、自称天才へと突撃していく。限界負荷機動のお陰でこちとらスラスターの出力が爆発的に上昇している。ノーマルユニットですらBⅡ型より出力あるぞ。

 

「真っ直ぐ突っ込んでくるなんて、愚直でありがとう!」

 

自称天才はそう言って何やら砲身のようなものを展開、俺に向かってビームを放ってきやがった。インパルスライフルほどではないが、それでも層状になってるところから見りゃ大分破壊力はあるだろう。当たりどころが悪けりゃ黒龍だって一発で御陀仏。だがな、

 

「こっちこそ、見え見えの攻撃をありがとよ!」

 

あれだけ長い砲身を展開してりゃ、射線は見えるっての。放たれたビームを最小限の動きで躱し、そのままビームに沿うようにヤツへ攻め入る。

 

「チョイサァッ!」

 

バスターソードを振り下ろし、そのまま奴のビーム砲を叩き折った。

 

「くそっ! なんで当たらないんだ!」

「んなもん目で見てりゃわかんだろうが! 相変わらず口だけなようだな、えぇ? 天才さんよぉ〜」

「き、貴様ぁぁぁぁぁっ!」

 

叩き折られ使い物にならなくなったビーム砲をバックユニットより破棄し、代わりに大剣を構えて突っ込んでくる自称天才。だが相変わらずの直線的機動だ。予測もクソもねえ。最早慣れているその道の奴なら目を瞑っても反撃できんじゃね?

 

「うるせぇ!」

 

バスターソードで斬り結び、その一撃を簡単に受け止める俺。大した力もねえし、この程度余裕だわ。

 

「オラオラァッ! どうした、この程度かよ! やっぱり口だけじゃねえか!」

「本当にそう見えるのかい?…………やれ、箒!」

「死ねぇぇぇぇぇっ!」

 

斬り結んでいると、俺の背後からモップの奴が斬りかかってきた。ほう、挟撃というわけか。つまり俺は罠に掛かった狂犬ということになるな…………んなわけあるか!

 

「バスターソードがいつから両手剣だと思っていやがった! こちとらもう一本あるんだよ!」

 

俺の場合、罠に掛かろうともその罠を破壊する龍だ。ヤワな犬っころ共などでない。左手をバスターソードの柄から離し、もう一本のバスターソードを抜き放ち、下段から振り上げモップの日本刀を弾き飛ばした。

 

「ぐはっ!」

「箒! くっ、一旦引くよ!」

「了解…………したっ…………!」

 

自称天才は大剣の刃を滑らせ、俺との鍔迫り合いから逃れ、先ほど吹き飛ばしたモップを回収、俺から距離をとる。そしてそのまま、俺との交戦区域から撤退する素振りを見せている。

 

「おい待ちやがれ、てめえらっ!」

「悠助っ!」

 

俺もあいつらを追いかけようとしたが、その時に一夏に呼び止められた。

 

「あ? どうした一夏? 俺はすぐにあいつらを追わなきゃならねえんだが——」

「一秋お兄ちゃんが、二人を追うならこれを持って行けって…………」

 

そう言って俺に手渡してきたのは、バズーカと予備のマガジンだった。使用許諾(アンロック)も済んでいるようだ。どうやらこいつを持って行けっていうことらしい。

 

「…………恩にきる」

 

俺がそう言うと、紅い蒼龍を纏っている一秋がサムズアップして答えてくれた。弾切れになった身としてはこうして武器を渡してもらえるだけでありがたい。

 

「一夏、早くこの空域から離れておけ。可能な限り安全なところへな」

「うん…………悠助も気をつけてね」

 

バズーカを左手に担ぎ、予備マガジンを拡張領域に無理やり押し込む。これでなんとかなるだろう。俺は一夏に背を向けた時、言っておかなければならないことを思い出した。

 

「ああ、それと一つ言い忘れた。俺はあいつを殺す。つまりお前の血縁者を奪うことになる。もし、お前があいつらを家族と思っている時は、辛い結末を迎えるかもしれねえ。そうなったら」

 

俺はB型ユニットを装備、全ブースターを起動させる。これだけの推力があれば、奴らの元にもすぐに追いつけるだろう。

 

「俺を赦す必要ない。恨んでくれ」

 

全ブースターを一斉に点火、奴らを追うべく最大出力を維持、戦闘空域を駆け抜けた。

 

 

 

 

 

「くっ…………春十の機体が損傷を受けたのか。忌々しい男だな、紅城は」

「私はそう思わないけどねー。まぁ、お前たちにはそう思っちゃうか」

 

桜色の機体を見つけた()はすぐさまにその背後へと降り立った。この機体、そしてこの声…………間違いない。

 

「!? た、束!?」

「そう、私だよ、ちーちゃん…………いや、織斑千冬」

 

世界最強にして私と一緒に白騎士事件を引き起こした張本人、そして私の親友である織斑千冬だった。一体どこで手に入れたのか、それはわからないけど擬似コア搭載機にその身を委ねている。所々損傷しているところを見ると、つい先ほど戦闘をしていたようだ。

 

「なんでそんな擬似コアなんでものを使っているのかな? 束さんはそれが嫌いなんだよ?」

 

特に戦闘用に作られたものは。だけど、治安維持や探査用に使われているんだったらなんとも思わないんだから、虫のいい人間かもね、私。

 

「ふん、お前こそあのモルモット(RAT)と同じ様な機体を使っているくせに何を言うか。まぁいい、どの道オリジナルは力の象徴としてのイコンとなる」

 

そう言って千冬は背中から大剣を抜き放ってきた。桃色の刀身の外には薄っすらとレーザーが展開されている。確実に人を殺すためだけの剣、か…………つまり私とはもう決別という意思を見せたということでいいんだね。

 

「そしてお前もそのイコンとなれ!」

 

振り下ろされる大剣の速度は現役の時とそう大きく変わりはない。普通ならそれで避けると思うけど…………寧ろ私にはこれで好都合だった。

 

「…………加賀ちゃん、ビットの操作権全て譲渡するよ」

〔了解しました…………ですが、この程度鎧袖一触よ〕

 

この機体のコア人格である加賀ちゃんはそう言ってくれた。それと同時に両肩、両腰から伸びるアーム、脹脛の外側、アームから外れた装甲から幾多ものビットが姿を見せる。その数、全部で三十五機。どこの機体でもこれほど多くの思考制御兵器を積んだ機体はない。でも、加賀ちゃんが操作するから私に負担はかからないし、何より制御が精密だからね。

一方の私は両手にブレードピストルを取り出した。碧龍唯一の近接武装でもある。銃身下部に設けられたブレードで振り下ろされる大剣を防いだ。

 

「私がそんなものになるわけがないって、お前が一番知っているはずだろうに!」

「ならばそれを無理やりでも押し通すまでだ!」

 

再度振るわれた大剣をブレードで受け流し体勢を変えた。さっきからブレードしか使ってないけど、この武器は本来飛び道具だって事を向こうは気づいていない。

 

「そんな事はさせない!」

 

両手のブレードピストルを交互に放つ。濃いピンク色のビームが次々と放たれる。多分かんちゃんのビームガンよりは連射速度は低いが、代わりに威力は高そうだ。そのビームは真っ直ぐ千冬を狙って飛んで行ったが、当たる事はなかった。千冬が大剣の腹で全てを打ち返したのだ。現役時代も弾丸を切り捨てたり、レーザーを打ち消したりと人外っぷりを遺憾なく発揮していたけど、今でも顕在とは…………いろんな意味であれ人間? 細胞単位でオーバースペックの私が言えた立場じゃないけど。

 

「お前の力はその程度か!」

「そんなわけないでしょ!」

 

立て続けに振るってくる大剣を躱し、時にブレードでいなしながら此方もビームを叩き込んでいく。私の装甲の表面にもダメージが蓄積されていくが、それは向こうも同じだった。最小限の動きで躱そうとする、その瞬間に攻撃を叩き込む。乗り慣れた操縦者であれば必ずとるギリギリでの回避、そこにつけいった攻撃だ。

 

「ぐうっ…………! くそっ!」

「この程度で済むと思わないでよ! 加賀ちゃん!」

〔了解しました〕

 

私の攻撃で肩の整流ブレードを破壊された千冬は一度距離をとろうとするが、それこそ判断ミスだ。回避した先には加賀ちゃんがビットをスタンバイさせているんだから。

 

〔ガンビット、シールドビット・ガンモード、一斉射。続いてラージシールドビット、フィンライフルモード、最大出力〕

 

その言葉とともに放たれる二十九条のビーム。それらは複雑に絡み合った射線を取り、逃げ場を次々と制限していく。その中に叩き込むのは右手に飛び出したスナイパーライフル。それをマシンガンモードに切り替え、さらにビームを叩き込んだ。

 

「くっ、この羽虫風情が!」

 

だが、その中でも千冬はわずかな逃げ道を使い回避、そしてガンビットを一基、また一基と破壊していく。それでも、あいつの機体の装甲はかなり抉れている。絶対防御を有さないが故、実体装甲が頼みの綱である擬似コア機にそのようなダメージはフェイタルダメージとなってしまう。それを理解しているのか、はたまたオリジナルと同じものだと思っているのか…………前者であるならまだいいが、後者であるならば私は怒るよ。

 

〔ビット、エネルギー残量二十五パーセント。補給に一度引っ込めます〕

 

どうやらビットのエネルギーが枯渇してきたようだ。最初にビットがマウントされていた場所にそれらが戻っていく。だが、今の所全ビットの十パーセントに当たる四基が破壊されてしまっている。ガンビットが三基、シールドビットが一基だ。シールドビットは極めて頑丈だからそう簡単には壊れないだろうけど、ガンビットは脆いからね。

弾幕が明らかに消失し、千冬は接近しやすくなったことを確認したようだ。

 

「ふっ…………知識はあるが、実戦はダメのようだな! 細胞単位で規格外のお前でも、経験の差だけは埋められるものか!」

 

大剣を振るい私の胴を袈裟斬りにしようとする千冬。左手に持つブレードピストルで受け流したが、右肩の装甲の一部を削られてしまう。…………確かにそうだ、私は殆ど実戦なんてした事がない。そういう物騒事はいつもゆーくんに依頼していたし、何より大抵ラボに篭りっぱなしだったから、身体自体あまり動かしてすらいない。けど、それでも!

 

「それでも、私にだって守りたいものがある!」

「ほう、それはお前の夢か? なら私だってあるぞ。春十が私と同じ地位に並び立つという夢がな」

「そんなちんけなものじゃない! 復讐に駆られた少年(ゆーくん)傷ついた少女(いっちゃん)が休める世界を、私は守りたい!」

 

私にはそうしなければならない義務がある。全ての始まりは私が原因なんだから。私がオリジナルコアを生み出したから女尊男卑に飲まれ、いっちゃんはそれに傷つき、そこから生み出された擬似コアでゆーくんは復讐に取り憑かれてしまった。罪滅ぼしなどとは思っていない。けど、私は二人に本当の幸せを知ってほしい、心の底から休める世界で。

 

「随分と皮肉なものだな! 世界を壊したお前が言える立場か! それにお前のやろうとしている事は偽善だ。世界の善になりはしないぞ!」

「それでも私にとっては善だ! 世界の善なんて私に関係ない! それに今でも守ろうとはしないお前よりはマシだ! いくよ、加賀ちゃん!」

 

——CODE:OVER DRIVE

 

〔流石に今のは頭にきました…………全力で叩き潰します〕

 

エネルギーチャージが済んだビットが次々と射出されていく。その全てが鋭角的な機動をし、千冬を翻弄していく。

 

「何故なんだ…………何故お前は理解しようしない!」

「悪いね。私は、人の心を持たず、自分が頂点に立っていると思っている人間が大っ嫌いなの!」

 

振るわれ、直撃仕掛けた大剣を軽く受け止めた。大質量の物体がぶつかる勢いで、私の身体は軋みをあげる。けど、そんな事は些細なものだ。

 

「だから…………死んで」

 

両膝の装甲とフロントアーマーを解放、そこから放たれるのはマイクロミサイル。誘導性能は低いそれらだけど、この近距離なら外さない!

 

「ぐうっ…………! 小癪な!」

 

放たれたミサイルを大剣で受け止められてしまったが、突き刺さったミサイルはその内部から破壊していく。武器を失った千冬は距離を取り、新たにブレードを取り出した。日本刀に近い形をしているが、おそらくあれは雪片を真似たものだろう。なんだか滑稽だね…………かつての栄光に縋り付いているように見える。

だけど、その栄光があったからいっちゃんは辛い思いをしてきたんだ…………あの刀を生み出した私にも責任がある。だから、

 

「ここでお前を討つ!」

「やれるものならな!」

 

私は一気に接近し、千冬も私に突撃してきた。そして交錯するブレードと刀。大剣の時とは違い、軽量で細身となった刀は先ほどの倍近い速度で振るわれる。だけど、限界負荷機動のお陰でその速度域にもついていける。だから、私たちの間に差なんてない。あるとしたら想いの強さだけ。

 

「どんな手品かは知らないが、いい加減果ててもらうぞ!」

「そうはいかない! 私はまだ贖罪を果たしてない…………それを果たすまで私は死ねない!」

 

刀が胴体の装甲を軽く掠め抉り取っていく。お返しとばかりに肩部の装甲を吹き飛ばす。

 

「貴様が死ぬ事で世界に平穏が訪れるというのにか!」

「何もかもが定められた世界なんていらない! そんな世界だから、私は掻き乱したかったんだ!」

「気に入らないから壊すとはな…………この自己中が!」

「それはお前もだ! 罪の意識を持たない外道が!」

 

左膝部の装甲が破壊される。破損した箇所からは翡翠色の粒子が噴き出し、私達の間に翠色の空間を生み出す。向こうも被弾数が上がり、至る所の装甲が破壊されている。絶対防御が無いため、装甲を破壊された箇所からは血が所々見えた。

 

「何とでも言うがいい! だが、勝ったのは私だ!」

 

そう高らかに叫ぶと、千冬は私に目掛けて、大振りの一撃を振るってきた。流石にアレに当たるのはまずいと思う。恐らく腕の一本は切れるかも。だけど、私には避ける価値など無い。だって、

 

〔そうはいきません〕

 

加賀ちゃんの操作するガンビットが刀を握る腕を撃ち抜き、シールドビットが落ちてくる刀を弾いた。先程の一撃で両腕を撃ち抜かれた千冬はあまりの痛みに悶絶している。

 

「ぐうっ…………! く、そっ…………何故だ…………何故、私が…………!」

 

こちらを睨みつけてくる千冬。普通の人が見たらそこに恐怖を感じるだろう。しかし、私にはそんなものを一切感じられなかった。ただそこにあるのは、無駄に力を振るいすぎた者の虚勢。

 

「本当に無様だね…………まだ昔の方が救いがあったよ」

 

そう、本当に昔のとき。私と初めて会った時の方がまだ人間味があった気がする。あの天才が生まれる時も喜んでいたが、それ以上にいっちゃんが生まれた時の方が喜んでいた。あの時は何も壊れていなかった。けどそれも長くは続かなった。千冬の両親と兄は消え、彼女は特定の人間以外を信じる事ができなくなり、必要以上の事を残された二人に求めた。天才は難なく越えていったが、いっちゃんにはその力が無かった。でもそれは、ほんの僅かな差であり、私が見ても凄いと思えるものだ。しかし千冬はそれを出来ないものとし、いつしか存在を排除していった。——これが、彼女の闇だ。こう言ってしまえば彼女が全ての始まりの被害者でもあるが、ここに至る道程で犯してきた罪はそれを遥かに超える。最早、罪人として扱ってもいいくらいだ。

 

「なぁ、わかってくれ束…………私がどうしてお前を裏切り、裏に手を出したのか…………お前ならわかってくれるはずだ…………」

 

だからこそ私はこいつを許せる気にはならない。どこまでいっても自分を正しいと信じてやまず、その正当性を誰かに押し付けるその性分だけは。そして、それを受け入れてしまう弱い心が。

 

「わかるわけないでしよ。それに、お前は私を裏切ったんじゃない」

 

私は右手にマシンガンモードにしたスナイパーライフルを装備し、照準を千冬の頭に合わせた。既にエネルギーのチャージは始まっており、独特の音が辺りに鳴り響いている。

 

「お前は、お前自身の心と想いを裏切ったんだ」

「よせ! たば——」

 

圧縮された粒子ビームが千冬の頭を貫いた。そのまま大きく仰け反っところを、延髄、心臓、そして擬似コアの順に撃ち抜いていった。世界最強と謳われた女は最後に何を言おうとしたのか、そんな事は私にはわからない。だが、最後まで自分の心に裏切りを働きながら死んでいった。昔はいっちゃんを褒めることだってあった。しかし、大きな出来事は人を変えてしまう。彼女も例外にはならず、いっちゃんを褒めることを忘れてしまった。かつての心を自身で塞ぎ、忘れ去ってしまった。だけど、これで良かったのかもしれない。

 

〔友人同士で殺し合うのは辛いもの、ですか…………〕

「そうだね…………でも、彼女の心は変わる事を拒否していた。そしてこのまま存在していればいっちゃんが危なかったかもしれないからね。悪い植物を抜くのも仕事だよ」

〔そう、ですね…………〕

 

そう言う加賀ちゃんの顔は少し悲しげなものであった。でも、これで大分片が付いてきたんじゃないかな? あと残っているシグナルは、黒龍とアンノウン二機。恐らくこれが最後の戦いとなるのかもしれない。たとえどんな結果になろうと、その最後をしっかりと見届けなければならない。それが世界を大きく動かした罪を晴らすため、私に課せられた使命なのだろう。

 

「じゃあね、織斑千冬。もうじきにお前の弟も行くかもね。…………正直、私は今のあんたが嫌いで仕方なかったよ」

 

既に落下を始めている亡骸を一瞥し、ゆーくん達が戦っている場所へと向かった。…………どうしてなのだろうか、悲しくもない筈なのに、涙が溢れて仕方がなかった。

 

 

 

 

 

俺の前方を逃げる二人を見つけ、左手に装備した借り物のバズーカを撃ち込んだ。高速で放たれた榴弾は、奴らの間を通り抜け、さらにその前方で起爆し二人を飲み込む。

 

「くっ! しつこい奴だな!」

「敵が目の前にいんのに、逃がすやつなんざいねえだろ? ええ? 自称天才クーン?」

 

爆風をもろに受け体勢を崩した自称天才とモップは俺を睨みつけてくるが、俺からすればそんな事は何の足しにもならねえ。俺はバスターソードを右肩に担ぎつつ、そう言って挑発する。案の定、自分の事を言われていると思った奴は顔を赤くし、怒りをあらわにしている。無論、金魚の糞のようなモップも同じだ。

 

「貴様ぁっ! 春十を愚弄するな!」

 

そう言って猪のように突っ込んでくるモップ。突撃しながらバックユニットより、高密度レーザーを放ってくる。一般人にとって恐怖の対象となるかもしれんが、紛争に何度も首を突っ込んできた俺からすればそれは生易しいもんにしかすぎねえ。

 

「おいおい、俺は愚弄したつもりねえぞ? ただ本当の事を言っただけだぜ?」

 

飛んでくるレーザーを避け、バズーカを数発撃ち込む。マガジンに残されている四発をランダムで撃ち、奴の目前に砲弾が飛んでいくように仕向けた。モップはそれに気付き速度を落として回避しようとしたようだが、時既に遅し。目の前を埋め尽くすように放たれた220mm多目的榴弾は奴の目前で起爆、爆風が奴を飲み込み、大きく弾き飛ばす。

 

「隙だらけだぁっ!」

 

俺の後方から奇襲を仕掛けてきた自称天才だが…………無駄に声を出して接近してきたもんだからすぐにばれるっつーの。

 

「甘いわ! そんな攻撃、当たるわけねぇだろ!」

 

肩に担いでいたバスターソードを振り抜き、振るわれた大剣ごと自称天才を吹き飛ばした。大きく体勢を崩され、無様な姿を晒す。かつて対峙した時の力なんざ全くと言っていいほど残っていねえ。あの時よりもかなり劣っている。…………自分が天才だからって、その能力を磨かずにいたんだろう。そうでなければこんな事はならねえ。どうせ、今まで散々蝶よ花よと持て囃され、何もかもが得られる温室で育ってきたからこんな結果を招いているんだろうよ。一方の一夏はそれこそ生き地獄のような環境で生きてきたんだ。俺の境遇なんて比にならねえ。殆ど誰も認めてくれなかったから努力を続けるしかなかった。それでもダメだったからまた努力する…………そんな事を続けて身体的にも精神的にも限界を迎えようとしていた。今でこそそんな事はなくなり、状況は改善されているが、それでも彼奴は努力する事を怠る事はなかった。そんな姿が俺には辛くも美しく見えてしまったんだ。だから

 

「俺はてめえらに手加減なんて出来ねえ…………一夏の受けた痛み、少しは味わっていきやがれ!」

 

そんな努力を続けていく人をコケにし、あまつさえ貶めていたこいつらを許せる筈などない。地獄に送り込んでもまだ足りない。それに、昨今の世界じゃ此奴らを裁くことなど出来ない。なら、俺が直接手を下すまでだ。

バズーカの弾倉を交換し、残り一つのマガジンを装填する。普通に考えて残っている射撃武装が弾数が少ないバズーカで、さらに予備マガジンがもう残されていない状況なんて絶望以外の何でもないだろう。だが、俺にとって弾が一発でも残っていれば、それはまだ希望へと繋げられる。傭兵はそこに報酬さえあれば、どんな状況にあろうが大抵の仕事はやり遂げる。それが戦場で生み出された狂犬達だ。

 

「巫山戯る、なぁっ! 僕とあの出来損ないを一緒にするなぁっ!」

 

復帰した自称天才が再び俺に向かって突撃を仕掛けてきた。だが、あの直線的な機動であり、俺の射線上を突っ込んできてくれた。俺は躊躇いなくバズーカを放つ。

 

「その攻撃は読めたぁっ!」

 

しかし、奴も学習できる脳があったのか、大剣でその砲弾を切り捨てた。ほう、あの細身の大剣でもできるもんなんだな。

 

「死ねよ、ゴロツキ風情が!」

 

爆煙を抜けて俺に大剣を振り下ろそうとしてくる奴。だがな…………その得物には欠点があるって事、知らねえようだな。

俺はバスターソードとバズーカを一度格納、代わりにバスターナックルを両手に装備、一気奴の懐へと潜り込んだ。

 

「しまっ——」

 

自称天才が気付くも既に遅い。俺はバスターナックルをそのガラ空きの胴体に叩き込んでやった。

 

「ぐあっ!?」

 

呻き声を上げる自称天才だが、俺には関係などない。そのまま左ストレート、右フック、左フック、右アッパーを顔面に叩き込んだ。その衝撃でフルフェイスバイザーは還付なまでに破壊され、素顔が露出した。そこから頭に回し蹴りを叩き込み、そしてその無防備な状態の奴にバズーカを一発撃ち込んだ。完全にやったかと思ったが、エネルギーシールドが作動したせいでダメージを与えるには至っていない。

 

「貴様っ! 春十に何をする!」

 

今度はモップだ。どうやら俺が自称天才を派手に吹き飛ばしたことに苛立っているようだ。まあ、そうもなるか。自分の大切な人が飛ばされりゃそうもキレる。だけどな、お前らは揃いも揃って一夏を虐めてきたんだ…………その償いを果たしてもらわなければならない。

 

「何をするって…………そりゃ、戦闘に決まってんだろ! ええ? 篠ノ之束の妹さんよぉ!」

「私を彼奴と一緒にするな!」

 

勢いよく振り下ろした日本刀ではあるが、俺は上方に宙返りをし、そのままの勢いで奴の背後を取る。

 

「巫山戯るな…………あんな家族を滅茶苦茶にした奴などと、一緒にするな!」

 

振り向きざまに振るわれた日本刀を左手に装備した対装甲ナイフで受け止める。全く、相も変わらず力の無い事。片手だけで余裕で受け止められるわ。

だが俺は奴の言い分に怒りを持った。他人を比べはするのに、自分は比べるのが嫌だと…………?

 

「巫山戯てんのはてめえの方じゃねぇか! 一夏と織斑千冬は比較すんのに、お前は束と比べられたく無いとは…………随分と勝手な奴だな! 人を比べてんだから、自分も比べられるって事くらい想定しやがれ!」

「ぐぅっ…………!」

 

バズーカを格納し、ビームサーベルを抜き放つ。限界負荷機動のせいで粒子生成力が上昇しており、サーベルの刀身も煌々とアカく輝いている。もう一本の日本刀が振るわれるが、それはビームサーベルで受け止める。すると、あまりの高熱であるためなのか、日本刀の刀身が溶かされていく。日本刀を溶断しきったビームサーベルはそのまま奴のバックユニットのウィングを切り裂いた。

 

「ちぃっ…………!」

「おうおう、もう終わりか? なら、こっちからやらせてもらうぞ!」

 

対装甲ナイフとビームサーベルを格納し、再びバズーカを取り出す。俺が遠距離武器を取り出したため、モップは好機と見たのか俺に向かって残された一本の日本刀で切りかかってきた。だが、動きが単調な上に、こいつもイノシシみたいに突っ込むしか能がない。

 

「だから、甘いって言ってんだよ!」

 

スライドブーストで振り下ろされた日本刀を避け、奴の背後にバズーカの砲弾を撃ち込んだ。シールドバリアが作動しなかったのか、奴のバックユニットに直撃し爆散する。それによって体勢を崩したのを俺は見逃すわけがない。

残弾の切れたバズーカを格納し、俺は奴の腕と肩を掴むと、そのまま背中に向かって無理やり曲げた。本来人の関節というのは一定の方向にしか曲がらねえ。だからこそ、ぶっ壊しやすい。何やら硬いものが軋みを上げ、そして

 

「がぁぁぁぁぁっ!?」

 

背中にぴったりと腕がくっついた。それと同時に悲鳴を上げる。折れた腕は最早その本来の機能などを一切失い、重力に従ってぶら下がったままだ。

 

「貴様…………私にこんな事をしておいてタダで済むと思うな…………私は、篠ノ之束の妹だぞ…………!」

「随分と身勝手な事言うもんだな。さっきは比べられたくない、一緒にするなとか言いまくったくせに、今更家族面すんのかよ」

「うるさい…………!」

「まぁ、どの道それは叶わねえ事かもしんねえなぁ。なぁ、束さん?」

 

俺は束さんへと通信を繋いだ。といってもさっきまでの内容は束さんに向かって流れていたし、会話なんてバッチリ聞こえている。

 

『へぇ…………今更家族ヅラされたって、こっちも困るんだよね〜。第一、お前がいっちゃんを虐めていた事、私も含めて家族全員知っているよ』

「そ、そんな事、今はどうだっていいはずだ…………!」

『そうとも限らないんだよねー。お前はいっちゃんより剣術は弱かったし、お父さんもいっちゃんには特別に二刀流教えていたよ。いっちゃんが剣道をしようとした時に怒ったのはそれが原因、後は私がこっそり教えていた』

 

聞いていて驚きしか出てこない。一夏はかつて道場の師範、束さんの親父に嫌われているとか言っていたようだが、全くと言っていいほどそんな事はなかった。寧ろ賞賛していたとは…………後でちゃんと言っておくか。

 

「なぜだ! なぜ父は私には教えてくれなかったんだ⁉︎ 私の方が上手く扱えるはずなのに…………!」

『剣を扱う上での心の発達が足りていなかった。だからお前は門下生のままだ。それに、いっちゃんを虐めていたと知った今、お前は家族から追放する事となった。剣は武器ではあるが、他人を傷つけるだけで何も守れない剣を振るう者などとは絶縁する、だって。ゆーくん、あと任せたからヨロ』

 

そう言って束さんは通信を切った。まぁ、確かにそうだわな。以前も簪が何かちょっと反抗しただけで木刀を振り下ろすような奴だ。こんな奴が社会に出たら確実に誰かを殺す事になる。それだけは避けねばならん。それに、いつ一夏にその矛先が向かうかもわかんねえ。

 

「だってよ。残念だったな、神って奴がいなくてよ」

「嘘だ…………こんなのは嘘だ…………」

「嘘も何も現実に起きた事じゃねえか。人を殺すとかと言って、自分は全くと言っていいほど殺される覚悟がねえとはな。笑い話にもならねえ」

 

俺はバスターソードを取り出し、上段に構えた。太陽に照らされたその刀身は幾多もの人の命を奪い去ってきた事を象徴するように、禍々しくアカに煌めいている。

 

「まぁ、恨むんなら、こうなってしまった自分の人生でも恨んでいな」

「い、いやっ…………やめ——」

 

命乞いをされようと俺に慈悲などあるわけがねえ。躊躇いなくバスターソードを振り下ろすと同時に、金属が圧壊する音とともに何かが潰れる音も混じって聞こえた。生体反応なし。確実に殺した。それでいて何も感じない…………唯一感じているのは殺したという事実を認める事だけ。俺の心は壊れていんだろうかねぇ…………。

 

「ほう、き…………嘘だろ…………?」

 

復帰したと思われる自称天才が今の状況を見て呆然とした面をしている。バスターソードの突き刺さっている残骸は紫電を走らせ、その場で爆散した。この程度でバスターソードの刃が欠けることなどないし、俺自身も全身を埋め尽くす強固な装甲が飛び散った破片から肉体を保護する。だが、それがトリガーとなったのか、自称天才は現実へと意識を引き戻されたようだ。

 

「お前…………! よくも箒を!」

 

そう言って俺に大剣を振り下ろしてきた自称天才。だが、怒りで我を忘れているのか、かなり単調な動きしかしていない。振るわれた大剣をバスターソードで受け止めるも、構えた時の力だけで押さえつけられるほどだ。相当弱い。

 

「何故だ! 何故箒を殺した!?」

「はぁ? ここは茶を出したら帰るどっかの喫茶店かなんかなのか? そうじゃねえだろ、ここは死ぬか生きるかの二択しかねえ戦場だ! 戦う覚悟のあるもの同士が争い、勝者が生き残り、敗者は地に崩れる、それだけだろうが!」

 

俺はバスターソードに込める力をさらに強めていく。向こうにはそれに対抗するまでの力がないのか、次第に押し込まれていき、俺の方が圧倒的に優位に立った。

 

「そういやよぉ、何でお前はこんな事をやらかしたんだ? 罪のねえ奴が次々と死んでいった事を、それがどういう事か理解してんのか!」

 

俺はずっと気になっていた。何故このようなクーデターかテロ紛いの事が起こせたのかという事に。恐らく十数人、いやもっとそれ以上の命が失われた可能性がある。それをこいつは一体どう思っているのか、俺はそれが知りたい。

 

「はっ、そんな事僕には関係ないね! 僕は君たちのような邪魔になる存在を消せればよかったんだ! それに、彼らの犠牲は僕たちの作る世界の礎となったんだ。むしろ光栄じゃないのか?」

 

…………聞いていて胸糞悪くなってきやがった。世界を作る? 礎となった? …………世迷言も大概にしやがれってんだ。

 

「それにだ、君に勝てば僕の有用性は不動のものとなるんだ! そうすれば、僕の地位は揺るぎないものとなる!」

 

そうして返ってきた答えは、自分の腹を肥やすだけの、欲に激しくまみれたもの。人を殺す事に躊躇いを感じてないどころか、人を殺すというのがどういうことなのかを理解していない。——そういうことか、この胸糞悪さは。あいつは俺ら傭兵と違って、死への受け入れ方が全く違っていた。殺した者を忘れないのが傭兵であるが、こいつは…………死を必要以上に着飾っており、殺された奴が誰であろうと覚えている気はないようだ。

 

「そうか…………そのパターンの答えが聞けてなによりだ、なっ!」

「ごふぅっ!?」

 

密接状態で、奴の自前の日本刀に膝蹴りを叩き込んでやった。運が良ければ破裂による大量出血でショック死、そうでなくても耐えがたい痛みが襲ってくる。野郎は総じてアレが弱点であるからな。そういや前の時もこうやって叩き込んでやったな。

案の定、大ダメージを受けたやつはアレを押さえてうずくまった。恐らくやつに与えなければならねえ痛みはこの程度ではまだ足りない。地獄に何度落ちようとも、それだけでは償えるわけがない。だからこそ…………俺が鉄槌を下す。いや、鉄槌というよりは断頭の刃だが。

 

「ぐほっ…………お、お前…………卑怯、だぞ…………!」

「卑怯? 何を言ってやがる。ここは戦場だ。生き残りたい奴が彼方此方に屯しているような場所だ。卑怯もクソもあったもんじゃねえ。そこにお前は足を踏み入れたんだ。お前の知っているようなフェアな戦いなんざ存在してねえんだよ!」

「うる…………さい…………! 僕に…………口答えするなぁぁぁぁぁっ!」

 

一度距離をとった自称天才は大剣を再び振り抜き、俺に切りかかってきた。だが、先ほどの痛みが引いていないのか、動きはどこかぎこちない。それに、あんな鈍臭い動き、俺には止まっているようにしか見えない。限界負荷機動の恩恵で、俺自身にも強化がかかっている。動体視力はかなり跳ね上がっていることだろうよ。

 

「自分が最上だと思っているからそうなんだよ!」

 

大剣を軽く避け、俺は奴の背後に回り込んだ。俺の右手には対装甲ナイフが握られている。回り込んだ俺は奴のバックユニットであるウイングを左手で掴み、その付け根に対装甲ナイフを突き立てる。だが、思ったより硬いのか、一撃で打ち砕くことなど出来なかった。

 

「お、おい! 離せ、離せよっ!」

「ギャーギャー喚くんじゃねえよ」

 

ナイフを握る右手でウイング本体を掴み、左手はがっちりと自称天才本体を抑え込む。生憎、生身でも握力は高いんでね。そのまま引きちぎるように力を加えていく。

 

「お前は俺の手で、地に堕ちろ!」

 

そう言うと同時に、金属が引き裂かれる音が響いた。右手には引きちぎった片方のウイングがある。それを海面へと投げ捨て、自称天才も地上へと叩きつけた。

しかし、あのバックユニットは片翼でもそれなりの推力があるのか、地上に当たることなく空中で体勢を整えた。

 

「くっ…………僕は千冬姉さんの弟だぞ! 僕に手を出したらどうなるか——」

「知ったこっちゃねえ!」

 

自称天才が何かを言っているが俺には関係ない。どうせ既に織斑千冬は死んでんだ。今更それを如何の斯うの言われたって何も変わるわけでもねえし、何が起こるわけでもねえ。

バスターソードを再び構えた俺は奴の大剣を叩き折った。大剣は叩き折られると同時に刀身として展開していたレーザー刃が消失する。後奴に残されてるのは徒手格闘しかないが、あいつの事だ、喧嘩なんてしたことねえだろう。

 

「どうしてだ! 僕は特別で! 天才で! 選ばれた存在なんだぞぉぉぉぉぉぉっ!」

 

自称天才はそうやけになって叫んでいるが、最早唯の虚しい声だ。自分が至高の存在、そう思い込んでいるが故に自分が今置かれている状況を認めることができないでいる。特別、ねえ…………そんなもんいくら自分で言ったって普遍的な存在であれば、周りはそうとしか認めない。詰まらねえ御託ばっかり並べやがって。

 

「御託はぁ!」

 

俺はバスターソードを大きく構え、一気に奴へと詰め寄る。

 

「沢山なんだよ!」

「ぐ、あぁぁぁぁぁっ!」

 

そのまま一気に振り抜いたのはいいが、奴の両足を切り落とすしか出来なかった。まぁ、それでも十分な痛みだろうが。

 

「逝っちまいなぁぁぁぁぁっ!」

 

すかさず俺はインパルスライフルを展開、直様チャージを開始する。チャージ完了まで残り三秒。

 

「や、やめろ…………やめろぉぉぉぉぉぉっ!」

 

その三秒が奴にはどんな風に映ったんだろうな。最後の最後で命乞いときた。全く…………天才っていうのはそんな都合のいい生き物なのか? 一夏なんか、死にかけるほどの虐めを受けて、それで命乞いをしたって何もしてもらえなかった。それどころか、その様子を面白がってさらに虐めていたと言うじゃねえか…………その首謀者のこいつが命乞いをしたって受け入れる気なんざ、さらさらねえわ。

後はもう口を開けさせない為、俺はインパルスライフルのトリガーを躊躇いなく引いた。複雑な色彩を帯びたビームが奴の全身を呑み込んでいく。吐き出されるビームは奴の機体が爆散してもなお収まることはない。暫くしてビームが全て吐き出された後、その場には何一つとして残されていなかった。爆散した時に飛び散った装甲の破片一つすらない。高熱で全て融解して蒸発したのだろうか。まぁ、命のやり取りをしているんだ。死に方を選べるはずなんざねえ。

一先ず、こいつで全て終わったな…………残敵は現在撤退中。今後攻めてくる事はないだろ、保証できねえけど。だが、あれだけの被害を食らって進撃してくるような馬鹿の集まりでもねえだろ。戦力の三割の損失は部隊の壊滅を意味するしな。凡そ七割も損失してれば、全滅もいいところだ。

 

〔やっとこれで全て片が付いたな…………〕

「ああ…………当面は面倒くせえゴタゴタがあるだろうけど。それを差し引いても、結果は上々ってところだな」

 

ふと俺は空を見上げる。そこには雲一つない、澄み切った蒼空が広がっていた。まるで、全ての終わり、戦いの終わりを示すかのように。

 

「——戦闘終了(コンバット・クローズ)だ。帰投するぞ、武蔵」

〔了解した。っと、限界負荷機動も丁度限界時間になったところだな〕

 

全身から光が弾け飛び、それにつられてアカい粒子の放出は止まった。血に濡れたバスターソードを格納し、俺は一夏が待っている場所へと今出せる最大速力で向かった。




機体解説



アヴェンジャー


【挿絵表示】



【挿絵表示】



【挿絵表示】



【挿絵表示】


(上よりスティグマト機、箒機、春十機、千冬機)


亡国機業過激派が建造させた第二・五世代機。擬似コア搭載を前提としている為全身装甲である。極めて汎用性の高い機体であり、同じ二・五世代機の代表とも言えるアメリカ製クーガーと比較してもその差は歴然、第三世代機にカテゴライズされてもおかしくはない性能を誇る。
本機の特徴は操縦者の様々なオーダーに応えられる拡張性の高さもその一つだ。その為、量産機と言うよりはほぼカスタム機体である。
全部で四機が建造され、その全部がIS学園における戦闘で失われてしまっている。


固定武装
[腕部レーザーガン]
スティグマト機、箒機に装備された武装。手首に当たる部分に装備された小型のレーザーガン。大した威力はないが、連射力は高く、牽制等に用いられる。
[大型レーザーカノン]
春十機に装備された武装。身の丈ほどもある大型のレーザーカノン。連射は効かないが、それを差し引いても余りある破壊力が特徴である。
[リニアカノン]
スティグマト機に装備された武装。バックユニットに搭載されているリニアカノン。連射力、威力の両立を主眼としており、スティグマト機では重要な火器である。
[剣]
全機に装備された近接兵装。スティグマト機では取り回しを考慮した双剣型、箒機は自身のスタイルに合わせた日本刀型、春十機と千冬機には一撃の破壊力を求めた大剣型がそれぞれ装備されている。スティグマトと春十はバックユニットにラック、箒も大腿部に鞘を取り付けているが、千冬はバックユニットそのものが大剣となる仕様だ。


格納兵装
[ショートレーザーライフル]
スティグマト機に装備されている。エネルギーは先に充填されている為、それを撃ち切ってしまえば使用不可になる。しかし、本体にエネルギー負担を掛けない仕様となっているのも確かである。
[日本刀]
千冬機に装備されている。扱いとしては万が一のサブウェポンという扱いである。しかしその形状は他の日本刀型ブレードとは変わっており、かつて千冬が愛用していた刀[雪片]をモチーフとしている。





悠助「というわけで、今回は敵さんのアヴェンジャーだったな。ん? RATとなった他の機体も見たい? …………全く、仕方ねえな」


【挿絵表示】



【挿絵表示】



【挿絵表示】



【挿絵表示】



【挿絵表示】


悠助「上から甲龍改二、雫龍、疾風龍、雨龍、霧龍だ。なんかやっとここまで来たっていう感じしかしねえな。ま、作者はもうしばらく書くと言っていたから、むしろ始まりか? まぁ、とりあえずこの小説を生暖かい目でよろしく頼む」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。