守りたい、ただそれだけ(本編完結) 作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)
今朝はなんだか教室が騒がしい。何かがあったのだろうか? あの台所の黒い彗星でも出現でもしたのだろうか? いや、そいつはないか。
「どうしたの? そんなに考え込んだような顔をして」
「いや、なに、なんだか周りの落ち着きが無いなと思ってさ。何があったのやら」
「ああ、そのこと? 多分、それはね——」
「転校生の噂でしょう」
「あのー、それ私のセリフ…………」
「ああ、セシリアか。しかしこの時期にか?」
今は四月の第三週。それも始まったばっかのような頃だ。学校としても、まだ入学した頃が抜けてない感じ。そんな時期に転校してくるなど、最初っから入学すりゃいいじゃねえか。
「おそらく悠助さんや織斑さんのデータ取りが目的でありましょう。私も命じられてますし」
「あ、マジで? ってことは、変な事したら、後ろからグエッってやつか?」
「それはしませんわよ。両親の思いを伝えてくれた恩人には特に」
「あのー、話が見えないんですけど」
「さよか。だが、何処からの転校生って情報だ?」
「中国かららしいですわ。あと、ハイパワー型の第三世代機も完成したらしいのでその試験運用の面もありますわね」
「あれ、できたんか。第二世代は散々な評価やったらしいけど」
「そうですわね。私も一度見ましたが、爆発する機体なんて聞いたことがありませんわ」
「ぐすん…………もういいよ」
あかん、一夏が半泣きになってる。
「おいおい、泣くなって」
「だって…………悠助が全然相手してくれないから」
おいまて、そこで頬を膨らますな。そしてちょい上目でこっちを見てくるんじゃない。周りの視線が少々にやけてんじゃねえかよ。あと、俺への破壊力はマックスで抜群だ。大破〜〜!
「仲睦まじいですわね」
「それよりも俺は精神的に殺されそうだ。あとでなんか奢ってやるから、な?」
「…………わかったよ。許してあげる」
「なるほど…………これがジャパニーズカップルのすることですわね」
「ふえっ!? か、カップル!?」
「待てコラ、どこでそんな知識身につけたんだおい」
「企業秘密ですわ。それよりも、一夏さんには悠助さん以外合いませんわよね?」
「「「うんうん、いかにも彼氏彼女みたいだし」」」
などと囃し立てられて顔を赤く染める一夏。おお、かわええなぁ。って、俺のキャラがブレッブレだな。まぁ、確かに可愛いんだけどさ。さすがに俺は釣り合わねえだろ。希望がないわけではないけどよ。
そんなこんなで賑わっている時だった。
「え!? なに!? 一夏に彼氏ができたの!?」
そう言って教室のドアが開いた。そこにいたのはツインテールのよく似合う快活そうな少女。誰だ? 一夏の名前を知っているから一夏関係の人間ってことはわかる。
「って、鈴!? なんでここにいるの!?」
「そりゃあ、あたしが転校してきたからよ。それよりも、あんた彼氏ができたの!? 本当なの!?」
「うえぇぇぇ…………鈴、やめて、揺さぶられて気持ち悪い…………」
「あ、ゴメン」
「ぷはぁ…………ほんと、加減を知らないんだから」
「いーじゃん、いーじゃん。それよりも、どうなの? ねえ?」
「え!? え、えっとそれは…………まだ、だよ?」
「…………まー、あんたのことだからそう思ったけどね」
そう言うと、こちらを見てニカっとした笑みを浮かべた。
「あたしは凰鈴音。鈴って呼んでくれるといいわ。一夏とは幼なじみよ、よろしくね」
見た目によらず本当に快活な少女だ。一夏と幼なじみか…………多分、かつて言っていた少ない理解者って彼女のことなんだろうな。
「あ、あたしそろそろ時間だから戻るね。それじゃ、また」
そういって教室から出て行った。本当、行動力あるよ、あいつ。嫌いじゃないな、あういう性格のやつは。
「鈴か…………久しぶりに会ったけど、まだ小さかったな」
「感傷に浸るのもいいが、時間見とけよ」
「うん? あ、マズイ! アレが来る!」
その一言で全員が席に座る。その数秒してから、余裕ぶっこいて天才君(笑)とモップがやってきた。明らかに遅刻や。そして織斑千冬が入ってくるんわけだが、全くもって注意とかせえへんのな。見たぞこれは、身内贔屓の現場や。おい誰か、誰かカメラとか持っていねえのか?
「それでは、出席を取る」
こうして面倒くさいSHRの時間が始まるのであった。
四時間目の終了のチャイムが鳴る。
「一夏、飯食いに行くぞ」
「おっけー、ちょっと待ってて」
「私も同席してもいいでしょうか?」
「別にいいよな?」
「私はいいよ」
俺たちに追加してセシリアも同席することにしたようだ。さて、それじゃ行くとしますか。
食堂へと向かう道中
「…………悠助、一夏」
「あ、簪。これからお昼ご飯?」
「…………うん」
「じゃあ一緒に行こ。私達も丁度行くところだし」
「…………じゃ、行く」
途中簪も混じって向かうことになった。まぁ、特にどうということはないし、一夏もなんだかんだでいい顔してるからいいか。俺としても大人数で飯を食うのは気分がいいしよ。ただし、こういう風に心を許せる奴らにのみ限る。後ろからグエッってオチは嫌だからな。
さて、少し混み始めているがなんとか席は確保できるような状態だ。俺も列に並ぶとしますか。
「待っていたわよ、一夏!」
「鈴、そこに居られると邪魔みたいだから、適当に大人数で座れる席を取っておいてくれないかな?」
「一夏の頼みならまっかせなさい!」
今朝、俺らのクラスに突然現れたあの少女、凰鈴音は一夏の頼みを聞くと、片手にラーメンを持ちながら軽々としたフットワークで席を確保しに行った。速えー、しかもラーメンの汁の一滴すら零さねえとか、とんでもねえ技能だな。
「悠助、食券ださないと」
「お、もうそんなにきたか。カツ丼特盛で頼んます」
さて、俺も注文した事だし、後ろを待つとしますか。
「はい、カツ特盛、あがり」
「はいよー」
そう言ってカツ丼特盛を受け取るが、その量がすげえ。カツが二枚乗っている時点で、最早女子用ではないということがはっきりしている。もしや、男子用に用意してくれたのか? 身体が資本の俺には嬉しいことだぜ。
「じゃあ、鈴を探そうか」
「なぁ、その鈴ってさ、彼処にいるのか、あの大人数用のテーブルんとこ」
「本当ですわね…………というか、ここからよく見えましたわね」
「職業柄、このくらいの距離は肉眼で見えないとな」
「…………どんな職業?」
とりあえず、その鈴ってやつがいるところに向かう。席を確保してくれているようだしな。
「一夏、ここならいいでしょ?」
「そうだね。それじゃ、皆ここに座って」
「ほーい」
「わかりましたわ」
「…………わかった」
ということで、この席に座る。俺の座る正面には一夏が座り、その横に鈴ってやつとセシリア、俺の横には簪という配置だ。
「さて、自己紹介してなかったわね」
「いや、朝していたよね?」
「一人話してない人がいるでしょうが。あたしは凰鈴音、鈴って呼んで。一夏とは幼なじみよ」
「私はセシリア・オルコットですわ。イギリスの代表候補をしていますわ」
「…………私は更識簪。日本の代表候補」
「うひょー、代表候補がこんなに集まるとは…………そんで、あんたが」
「俺? 俺は紅城悠助。特にいうこともねえから、とりあえずヨロ」
「噂通りの性格してるわね…………でも、好感が持てるわ。かたいのは好きじゃないからね」
まぁ、そりゃあなぁ、俺もかたっ苦しいのは嫌いだ。こう、フレンドリーな感じでいるのが一番なんだよ。あ、フレンドリーはフレンドリーでも、フレンドリーフィアは嫌いやで。とりあえず飯食お。冷めるとせっかくのもんも美味さが半減しちまう。
「ところで、鈴はなんでIS学園を? やっぱり代表候補だから?」
「それもあるけど、一番はあんたが心配だからよ。引っ込み思案のあんたが友達とかできるかなとか、いじめられてないかなとか」
「心配してもらえるとか、いい親友いるじゃねえか、一夏」
「あはは、でも鈴の心配は杞憂かもね」
「どういう意味よ?」
「だって、友達はたくさんできたし、なにより悠助が守ってくれるからね」
そう言うと鈴はこちらを向いてきた。
「…………あんた、何者よ」
「いや、何を目の敵みたいな顔で見てるの。悠助は私を拾ってくれた人だし、悪い人じゃないよ」
「え⁉︎ じゃ、あの鬼と自称天才とも一緒じゃないの⁉︎」
「そうだよ。前までは悠助の家でお世話になっていたし」
「なんか一夏の恩人に喧嘩売ろうとしてたわ…………ゴメン」
「いや、実害ねえから謝らんでええよ。それよっか、一夏を心配して転入してくるとはすげえやつやな、お前も」
「にひひ、そうでしょ? ちょっと上の人とお話して許可もらったからね」
「何をしとんじゃアホ」
上の人間を脅して転入してきたのかよ…………もしかしてとんでもねえ人間が来たんじゃねえのか? そのうち学園自体を乗っ取って、その器に入ろうとしてんじゃねえだろうな?
「そういえば、鈴さんは代表候補ということですから、専用機もお持ちで?」
「最近出来たハイパワー型よ。今のところ負けなしだから、負ける気はしないわ」
「…………多分、負けるよ」
「そうですわね、それもこの中のメンバーに」
「誰よ?」
「一夏さんと」
「…………悠助」
「うん? 私達?」
突然指名される俺ら。一体どういうこと? あ、簪がハンドシグナルで伝えてきてる。なになに、模擬戦したら強いのは誰かって? んなもん知るか、時と場合によって勝率なんてもんは変わってくるだろ。
「あ、うん。なんとなくそんな気してた」
「何を納得してるの?」
「こっちの話よ」
ふー、飯食い終わっちまったわ。さて、食後の茶でも飲んでいようかな。そんな時だった。
「やぁ、こんなところに集まっていたんだ」
「うげ、春十…………なによ、何か文句あんの?」
面倒な天才君(笑)とモップがきやがった。はい、さっさとおかえり下さ〜い。
「別に、どうせその屑と一緒にいると思ってね。様子を見に来ただけさ」
「いちいちむかつく言い回し…………」
「…………同感、これって人間?」
「貴様っ!」
「まぁまぁ落ち着きなよ、箒。どうせ、僕たちのような選ばれた人間の事を理解できないだけだから。それに、妹がこんなんじゃ姉の方もたかが知れているね」
ブチィッ
そんな音が俺の横から聞こえた。明らかにブチ切れる時の音。あ、あかんやつやこれ。
「…………お姉ちゃんを馬鹿にするな、自称天才。お前らなんか、お姉ちゃんの足下にも及ばない」
簪は口調こそ変わってないが、静かに熱く怒りを出していた。その光景にセシリアはビビっていた。おそらく容姿から思いつかないほどの怒りを感じたのだろうな。俺にもビンビン伝わってくる。
「貴様ぁ! 春十を愚弄するな!」
そう言うとモップはどこからか取り出したのか、木刀を簪へ向かって振り下ろす。まぁ、させないんですけどねー。
「ほいさー」
俺は左手の籠手からナイフをシースごと取り出し、木刀を受ける。うん、力ねえから片手で十分押さえつけられるわ。よゆーよゆー。
「なっ!? 貴様っ!」
「はいはーい、食事中だから静かになー。あと、下手に発言したら鉛玉のデザートをプレゼントするぜー」
「くっ…………」
「行こう箒、こんな奴ら相手にしていても無駄だからね」
そう言うと天才君(笑)とモップはどこかへと行った。ふう、これだからめんどくせえんだあいつらは。もういっそのこと殺してしまった方が世界のためなんじゃないんだろうか。とりあえず、ナイフしまっとこ。
「…………あ、ありがとう」
「気にすんな。あいつらは俺も嫌いだからよ。それに、憧れの人が貶されたんだろ、誰だって怒るさ」
「本当、悠助ってそういうところ敏感だよね」
「ってか、あの速度で振り抜かれた木刀をナイフ一本、それも片手で押さえるってどういう事⁉︎」
「まぁ、あんな試合をする方ですから、仕方はありませんわね」
そんなこんなで昼休みも終わりに近くなってきた。あー、あいつらのせいで気分最悪だわ。若干ぬるくなった茶を一気飲んで、俺は飯を終了とした。
「んじゃ、戻るか」
「そうだね」
「そうですわね」
「あたしは二組に戻るわ」
「…………私も四組に」
現地解散ということでそれぞれの教室に戻る俺たち。さて、午後の授業も頑張っていきますか。
えー、午後の授業も消化し、俺としてはさっさとアリーナで訓練したいんだがな。ちなみにちゃんと利用するための申請書を出してある。今日は簪の訓練に一夏が付き合うって言うからな。だがな
「おい、お前ら。ここはこれから僕たちが使うんだ。さっさと出て行け」
「そうだ! さっさと出て行け!」
乱入してくるだよなー、この面倒なコンビがよ。
「あー、まず申請書みせろ」
「ほら、ちゃんと書いてあるだろ」
まぁ、確かに書いてあるんだがな。どうもこうにも怪しい。俺は昨日のうちに申請書を取っていたから今日から使えるもんなんだが、この申請書の時刻を見る限り俺らの方が優先される時間になってんのよな。
「お前らの申請書、でっち上げじゃねえの?」
「何!? お前、千冬姉さんを馬鹿にする気か!?」
はい、でっち上げ確定。というかあのアマが勝手に一夏に嫌がらせでもしようとしてんじゃねえの? だったらまずは…………コイツラ処分シネエトナ。
「お前らもどうせ引かないんだろ? だったら俺が相手してやるわ」
「ゆ、悠助!?」
「どうせ訓練すんならそっちの方が早い。やるのかやらねえのかはっきりしろ。なんなら二人掛かりでもいいぞ」
「その言葉、後悔するなよ」
そう言うとあいつらは別のピットへと向かっていく。
「…………いいの、あんなこと言って」
「面倒ごとにさっさと潰してやったほうがいい。それに訓練中なら何が起きても仕方ねえもんな、ククッ」
「うわ、悠助が外道の道を行こうとしてるよ…………」
「そんじゃ、ちょっくら行ってくるわ。すぐに片付けてきてやんよ」
俺は闘蛇龍を展開する。さて、久々に大暴れでもしてやるとしますか。
「闘蛇龍、出るぜ!」
俺はブースターを点火して一気にアリーナの中へと出た。中ではすでにあいつらが白式と打鉄を装備してやっていやがった。
「さて、始めるとしようじゃねえか」
「ああ、望むところだ!」
そう言って自称天才は俺に切りかかってくる。それと同時にモップも刀で俺に切りかかってくる。はぁ、めんどくせえけどやってやろうじゃんかよ。
「隙だらけなんだよ!」
俺は両手にバスターソードを持つと、それを一気に振り抜いて本体にダメージを与える。大体胴体に隙がありすぎなんだよ。
「があっ!?」
「あがっ!?」
「ヒャッハー、断頭開始だぜぇ!」
俺はバスターソードを構えると一気にブースターを点火、近距離まで詰める。
「くっ、これでも——」
「見え見えなんだよ! オラァッ!」
バスターソードで投げつけられたグレネードをお返しする俺。
「「ぎゃあっ!!」」
「真面目に投げろ、春十!!」
「やっているよ!!」
「ざまぁねえなぁ、お前ら。散々言ってこの程度かよ!」
最早バスターソードを使うような程でもないため、武装を切り替える。今度の装備はナックルだ。それもただのナックルじゃねえ。
バスターナックル。
二本の超高度ブレード装備の破壊力満点のナックルだ。それを両手にはめ、俺は自称天才を殴る。
「オラオラ、どうだよ、理不尽な暴力の味ってのはよォ! 楽しいかァ?」
「うぎゃあっ!!」
「貴様っ! 春十を離せ!」
「邪魔すんじゃねえよ、モップが。命あっての物種だろーが」
「うわぁっ!!」
横から攻めてきやがったモップを俺はつま先で、こめかみの辺りを蹴り飛ばす。ブースターの加速付きだ。その衝撃でモップは気絶する。フン、根性ねえ奴。
「箒!! お前っ!!」
「邪魔してくんのが悪いんだろうが。さて、てめえも同じ目に合わせてやるよ!」
俺は自称天才の腹に膝蹴りを叩き込む。すると、自称天才の顔は苦悶に歪んだ。そして、でけえ隙すら生み出した。これで勝てねえわけはねえよ。
「お、いいこと思いついた」
俺は自称天才の両足をそれぞれ持つと、そのまま男の急所であるアレをとにかく踏みつけた。
「¥$€%#¥$#5○*○○○*!?」
最早言葉にならないような痛みが自称天才を襲う。そりゃあまぁそうだろうな、俺も多分あれは悲鳴あげる。だがな、男は皆共通してアレが弱点なんだよ。
ある程度踏みつけてから、地面へと大スイングさせて叩きつける。もはや言葉を放てないほどの痛みが襲っているようだ。いい様だぜ。
「ほらよ、隅っこでおとなしくしてなー」
そこらへんに転がっていたモップ共々壁面へと蹴って飛ばす。だが、まだ少々意識はあるようだ。
「そーれ、纏めて御陀仏!」
俺は躊躇なくバスターソードを再び展開し、振り下ろす。そこでエネルギーが切れたのか、それとも戦意が失せたのか、二人は気絶したのだった。よし、こんなもんでいいか。ひとまず面倒ごとを片付けた俺はピットへと戻るのだった。
「…………容赦ない」
「うわぁ…………なんて言うんだっけ、あういうのって」
「…………オーバーキル」
「…………なんか、悠助怒らせるのはやめた方がいいような気がしてきたんだけど」
「…………同じく」
訓練を終え、俺は寮への帰路についていた。その途中、俺の目を引くものがあった。学年掲示板だ。そこには今月末のクラス対抗戦の対戦表が貼り出されていた。
(さて、一回戦は…………お?)
一回戦は三組と四組の試合だ。スウェーデンの代表候補生と簪の試合。まぁ、俺は向こうをを応援する気さらさらねえんだけど。まぁいいじゃないか、別に。
「…………てかさ、そこから見てないで出てきたらいいんじゃねえの?」
「…………あ、ばれてた?」
そう言うと、後ろの茂みから一人の女が出てきた。髪は水色。どことなく簪に似ているが、髪が外ハネなため容易に見分けがつく。さっきから視線はずっと感じていたからな。むしろあれで気づかないほうがどうかしてる。
「んで、俺に何の用? 生徒会長さんよ」
「もう、名前知ってるくせに。おねーさん、そういう子にはイタズラしちゃうぞ」
「触れたらCQCな」
「すみませんでした」
なんかちょっかいを出してきたから、軽く警告。まぁ名前くらい知ってるからな、一応こいつもその筋の人間だし。
こいつは更識楯無。対暗部用暗部のリーダー。だが、それは実質上本家の方に任せて、実際は更識グループの重役だったりする。裏で更識の名前そんなに聞かねえし。大体はスパイキラーで通じるからな。ちなみに情報は束さんより。
「…………でも、君には感謝しているわ。ありがとう」
「あ? なんのことだ?」
「簪ちゃんのことよ。あの子の専用機、たしか緋龍だっけ? あなたでしょ、渡したの」
「まぁな。てか、そん時も見てんだろ」
「…………はい」
「あの機体が簪を選んだから託した、それだけなんだがな」
「そ…………それにしても、一回戦が楽しみね」
「簪の晴れ舞台、か。姉として楽しみなのか?」
「あら、そこまで知ってるの?」
知ってるも何も簪が喋ったしな。
「簪がいるから話くらい聞くわ。んじゃ、俺はあと戻るんで」
「わかったわ、引き止めてごめんなさいね」
俺は楯無にむかってただ「はいよー」とだけ答えて寮へと戻る。さて、クラス対抗戦が楽しみなってきたな。緋龍、大暴れってか? あの機体の速さは異常だからな。もしかすると現行最速かもしんねえ。
そんな事を胸に秘めながら、俺は自室のベッドにねっころがるのだった。あー、もう寝よ。