テレビに入って前のように落ちると、この前と同じ場所に落ちた。どうやら、テレビによって落ちる場所は決まっているみたいだ。まあ、決めつけだから信憑性は微妙だが、花村と鳴上もいるし可能性的には当たっていると思う。
周りを見渡したがやっぱり霧だらけ、何にも見えない。と、思っていたら奥の方に見覚えのある影が近づいて来た。だいぶ見えるところまで来ると、その影はあの時無理矢理俺たちを追い返したクマだった。
「ああ!君たちなんでまた来たクマ!」
「成功だな」
「さては、君達が異変の犯人クマか!」
「異変?」
「そうクマ!最近人があっちの世界から放り込まれてこっちの世界がめちゃくちゃになっているクマ!!」
その言葉に花村は反応した。
「お、おい!おまえ、人が放り込まれてるって言ったか!?」
「そうクマよ。そして、それを行っているのは君たちクマ!こっちに自由に来れるっていうことは、そうゆうことクマ」
なるほど、クマの言うことにも一理あるな。俺ら犯人じゃないけど、疑われても仕方わないな。しかし、その言葉に少々苛立っていた花村がキレ気味に反応した。
「なんでそうなるんだよ!?」
「君たち以外に誰がいるクマ。それとも証拠があるクマか!」
「しょ、証拠は・・・ない」
「ほぉら!やっぱり、君たちクマ!」
「そんなこと言ってお前が犯人じゃないのか!」
うん。そうだよね。普通はそう思うよね。と言うかこいつどう見ても怪しいし、この世界に詳しいし、何よりこいつの場合ここから自由に出れるだろうからな。そんなクマは驚き、戸惑い始めた。
「クマが犯人だったクマか!?」
「そんな着ぐるみきやがって、中身見せろ!」
「や、やめれぇ!」
花村が無理矢理クマのチャックを開けて、着ぐるみの頭の部分を取ると、衝撃の光景が目に入る。なんと、着ぐるみの中身は空っぽであった。頭を失った胴体は、言葉を喋れず助けてと言わんばかりに腕をジタバタさせていた。
花村は驚き腰が抜けたが、鳴上は動じること無くクマの胴体に頭をかぶせた。すると、クマは何事もなかったかのように動いた。
「た、助かったクマぁ・・・・」
「な、鳴上って意外に動じないやつ?」
「?」
不思議そうに首を傾げる鳴上。
「自覚なしみたいだな」
「君達は犯人じゃないって言うのは信じていいクマよ」
「どうした急に」
「君達そんなに悪い感じがしなかったクマよ。それで、ちょっと信じてもいいと思ったクマ。けど、その代わり、真犯人を見つけてこんなことやめさせて欲しいクマ!」
すると、クマは泣きはじめた。着ぐるみのような姿をしているために嘘泣きのようにしか見えない俺。
「おいおい、なんか、急に頼み始めたぞ」
「わかった」
「即答!?」
「鳴上だからそう言うと思った。まあ、俺もそれでいいぜ」
「わーったよ!その代わり、俺らに協力しろよ?」
「ありがとクマァ!それでは、これを君たちにあげるクマ!」
熊が差し出した手にはメガネが三つあった。特に変哲もないメガネのようだが、何かあるのか?差し出されたメガネをかけてみると、さっきまで濃くて周りを見渡すこともままらなかった霧が綺麗に消え、遠くまで見ることができるようになった。そして、メガネをかけて気づいたが 、俺たちが立っているここはまるでテレビのスタジオのようだった。
「でっけえ、スタジオ」
「そうだ!クマ吉、この人この中で見てないか?」
花村はそう言うと、クマに小西さんが写った写真を見せた。
「うーん・・・・クマこの子はしらないクマ」
「じゃあ、最近ここに入った人がいた場所はわかるか?」
「待つクマよ。むむむむ・・・・・」
匂いを嗅ぐように鼻を動かし、探し始めるとすぐにクマは反応した。
クマについて行くとそこは俺たちが住んでいる稲羽市の商店街とそっくりの場所だった。しかし、人の気配は一切しない。
「ここ、まるっきり商店街じゃねえか?」
「そうみたいだな」
「商店街ってことは確か小西先輩の家が・・・」
花村が奥の方に向かった。着いて行くと、一つだけ明かりが灯ったお店があった。看板には小西酒店と書いてあった。どうやら、あれが小西さんの家のようだ。中に入ってみると酒樽などが無造作に転がっていた。まるで誰かが荒らしたかのように。机の上には、映画のチケットが散らばっていた。それを見た花村は驚きながら、拾おうとした。すると、突然、周りから話し声が聞こえて来た。
ーコニシ酒店の早紀ちゃん、ジュネスで働いてるんだってー
ージュネスの所為で商店街がどうなってるのか、わかってるはずなのにねぇー
ーお父さんも娘があんなで可哀想にー
声は商店街に住む人達だった。どうやら、小西さんの陰口のように聞こえた。その声に花村は戸惑っていた。
「な、なんだよこれ・・・」
今度は男の人の怒鳴り声が聞こえてきた。
ー早紀!よりによってジュネスで働きやがって!コニシ酒店の娘として恥ずかしくないのか!!ー
「お、親父さんの声?」
まるで、小西さんの記憶の声を聞いているようだった。また、別の声が聞こえてきたが、今度は小西さんの声であった。
ー言えなかった・・・・ー
「小西先輩!?」
ー私、今まで花ちゃんのことー
「お、俺のこと・・・?」
ーうざいと思ってたー
急に声のトーンが変わった。
「う、うざい?」
ージュネスの店長の息子だから、仲良くしてただけなのに浮かれてホントウザイ!ー
「う、嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だ!!先輩がこんなこと言うわけねえだろ!!」
小西さんの言った言葉を花村は認めることができなかった。花村に声をかけようとしたその時、ある聞いたことのある声が響いた。
『可哀想だなぁ・・・可哀想だなぁ俺』
声がした方向を見るとそこにはある男が立っていた。
「俺・・・?」