シィ・クロラ   作:ティーチャ

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以前、ss投稿速報に上げた作品を改良した物です。基本的な流れは同じですが、文章を大幅に弄りました。
ss投稿速報では地の文のあるssが殆ど無かったので全く見向きもされず、悔しい思いをしました。
そうでなくても、自分に作品を魅せる力がなかったのも痛感しました。
作風は、原作を艦これ。文体の形式をスカイ・クロラ。雰囲気や世界観をアーマード・コア、という感じです。
もし宜しければアドバイスや、感想をお願いします。


Thinker シンカー

一度だけ見た夢。

 

海の上を。あたしと、あたしの手を取って走る誰か。

とても大事な人の様な気がしたけど、顔も、名前も、性別も、なんで一緒に走っているかも、あたしの中を満たしている感情も、分からない。

あたし達は早かった。景色は線のようになって、撫でる様に過ぎてゆく。

どんな無理な動きも、夢の中は可能だった。空も、海の中へも、どこでも自由に行けた。

でも、陸地が見えると嫌な気分になった。

もう少し走ろう。

そう言って振り向くと、その人は消えていた。

繋いでいた手のぬくもりを残して。

そこで目が覚めた。

 

 

たった一度だけ、見た夢。

似たような夢で同じような動きをしようとするけど、決まって身体は鉛の様に重い。あの人もいない。

その夢を見て以来、今まで戦場としか意識してこなかった海が突然、魅力的に感じられる様になった。

シチュエーションは関係ない。戦闘の時でも高揚感が雪崩のごとく押し寄せた。海の上にいる時間があたしの人生になった。

代わりに地上のあたしは抜け殻になった。

会話をするのも億劫になったし、いつも海の事だけを考えていた。何事にも関心がなくなった。

全てを海に置いてきたように。

夢の中で、あたしと手をつないで走っていた人物。あれはあたし自身だったんじゃないかと、今では思う。

あたしは半分だ。もう半分はあの海の夢に落としてしまった。

 

 

 

 

 

♢ ♢ ♢

 

 

 

 

 

海を眺めていたら、海鳥が海を滑るように飛んでいた。二匹。

夫婦か。兄弟か。恋人か。友達か。

もしかしたら恋敵かも。

仲良く飛んでいるように見えて、雌の取り合いでもしているのかもしれない。

海鳥なんて腐る程いるが、同一人物(鳥だが)は存在しない。オンリーワンだ。負けても種族は残る。しかし、自分の子孫は残せない。

いいじゃない。子孫なんて。自分さえよければ。

子孫残すためじゃなくて、気持ちよくなるためにセックスしようよって思う。自分の人生なんだから好きに生きなよって思う。競争なんてしないで楽しく飛びなよって思う。

そう考えるのはあたしが艦娘だからだろうか。不老な分、楽観的なのかもしれない。

いつの間にか海鳥は消えていた。

結局、何が正しいとか間違ってるとか考えたところで意味はないし、何も変わらない。1日は相変わらず24時間で、海が干上がるわけでもないし、空も落ちてはこない。

手元の無線機から黒板に爪を立てた様な音が鳴った。音量を調節して耳に当てる。

「もしもし」

「依頼だ。20分以内にビーチに来い」

返事を返す前に無線が切れた。

 

 

自室に戻ると姿見に目が行った。全体的に汚れて端にヒビが入っている。因みにここは何十年も放置されている基地だから姿見以外も当然ボロい。

鏡の前に立つと大分荒んでいるのが分かった。あたしが。

髪はボサボサで、おさげもまつ毛も伸びまくり。元の地味さも相まってもの凄く貧乏臭くみえる。傭兵になってからさらに顕著になった。

と言っても、以前から身だしなみに対して鈍感だったからさして気にしてはいない。女として生きることなんて、とうの昔に捨てている。

だから、周りの艦娘が化粧しているのも、そいつらに馬鹿にされるのも不思議でならなかった。そもそも化粧をした人を綺麗だと思った事は一度もない。

やっぱり自然が一番。

けれど、無意識にはねた髪の毛を直したり、頬のススを拭ったりしてしまうあたり、女の子のあたしは死んでないみたいだ。きっとあたしが死ぬまで死なない。

ひとしきり直して気が済んだので、鏡から離れて装備を確認する。

14cm単装砲(銃剣付)。61cm酸素魚雷、片側×十発づつで合計二十発。22号対水上電探、最大稼働時間70分。

他に、鉄板を重ね合わせた盾一つ、グレネード二個と、スタン、チャフを一個づつ。あと、私物の入ったポーチ。

武器は殆どが旧式で、さらに彼が弄り回したため独特のクセがある。代わりに性能自体は向上しているから、慣れてしまえば心強い。

異常なし。

装備を担いで部屋を出た。

 

 

彼はもうビーチに居た。毎回、ここで出発になるのだが、必ず彼はあたしより早く来ている。あたしより遅いと死ぬ病にでもかかってるのかもしれない。

あたしは移動用の軍用ゴムボートに装備を乗せながら尋ねた。

「今日はどんなの?」

彼はあたしの言葉を無視してボートに乗りこんだ。毎回、依頼の内容は道すがらに説明しているから、今回もそのつもりでいるのだろう。だが、それでは困る。

「いやさ、エンジンの音おっきくて聞こえないんだよね。いっつもさ。これから、ここでブリーフィングしてよ」

昆虫の様な目があたしを見据えた。相変わらず厳つい顔だと思う。顔というか、マスク。

彼は地上にいるときはいつ何時でもガスマスクを外さない。おかげで表情なんて読めるわけないし、顔も見たことがない。

マスクだけじゃない。

長いロングコートに皮手袋、だぼだぼのズボン、長靴。加えて、例のマスクの上にフードを被っているから素肌が全く見えない。完全に不審者の格好だ。

彼は『たぶん』不愉快そうにあたしを見ている。負けじと睨み返す。

暫く黙って見つめ合っていたが、彼が先に視線を外した。

よかった。ちょっと怖かった。

「護衛だ。輸送船3隻」

彼が言った。希望は通ったみたいだ。

「脅威は?」

「海賊か、はぐれだ」

「どこから何処まで?」

「外洋から○○港」

「は?港からじゃなくて?」

「向こうはもう出航してる」

「あたしらが来る前に襲われるとか考えてないのかな?」

ドルン!と、彼がボートのエンジンを掛けた。

会話は終了らしい。

 

 

----

 

 

ゴムボートは今日も快調、腹に心地よいエンジン音を響かせながら海を割いて風をきる。

早く海の上を走りたいが、水上起動は現場に着いてから。エネルギーの節約のためだ。彼の意向である。

ストイックな生き方だなぁ、といつも思う。

あたしには無理だ。欲望のまま生きたい。ご飯と寝る時だけ陸に上がって、それ以外はずっと海を走っていたいと、いつも思う。

そもそも海で寝たり食べたり出来れば、煩わしい陸なんかに上がらなくて済むのに。

ボートのへりに寄りかかる。

空は真っ青だった。水平線は空との境界が分からない程青い。空が海まで降りてきている様にも、海が空まで昇っている様にも見える。太陽は少しだけ傾いていた。

ぐぅ、と腹が鳴った。ボートの激しいエンジン音の中でも、その情けない音はっきりと聞こえた。そういえば今日はまだ何も食べてない。

ポーチから食料の鉄を取り出して齧る。不味くはないが、美味くもなかった。

これが艦娘の身体の一部じゃなかったらもっと美味く感じただろうか。

 

 

 

---

 

 

 

深海棲艦の殆どを撃退してから、少しの間は世間にチヤホヤされた。当然だ。海路を復活させた英雄なんだから。あたしら艦娘の呼びかけで国々は対・深海棲艦で一致団結、過去の因縁も解消した。戦争も無くなり、本当に穏やかな惑星になった。

まぁそれも、地球の資源に陰りが見えるまでだったけど。石油や鉄が有限だってことは子供でもわかる。でも、自分の生きてるうちに尽きるとは大人でも思わなかったみたいだ。

短い平和だった。残った資源を掛けて戦争が起こった。それも、かつてない規模の。艦娘も徴兵された。従わない者は『はぐれ』と呼ばれ、解体されて、その体は武器の生産に使われた。ちょっと前まで、英雄ともてはやされてたのが嘘みたいだ。

人対人、艦娘対艦娘。いつの間にか撃退した筈の深海棲艦もひょっこり出てきて、何が何だかわからなくなった。

気付いた時には地球は綺麗に丸裸になっていた。

今では艦娘も人も、あたし達みたいな商売をしてかなきゃ食うことが出来ない。その食う物も選べない。こうやって共食いでもしなきゃ生きていけない。

 

 

 

----

 

 

 

残りの鉄を噛み砕いて、飲み込んだ。喉がグゥッと変な音を立てた。

 

でも

 

悲観はしていない

 

元通りになっただけだ

 

一致団結から、弱肉強食に

 

選んだだけだ

 

手を繋ぐことより、引き金を引くことを

 

それが間違っているとか、正しいとか

 

醜いとか、美しいとか

 

思わない

 

ただ

 

殺す時も、死ぬ時も、海の上がいい

 

あたしの右手は誰かを殺す

 

その代わり

 

誰かの右手があたしを殺してくれるだろう

 




皆さんの目に留まるかドキドキしています。作品を作るからにはやっぱり色んな人に見てもらいたいですね!
次の投稿は近いうちにします。
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