年末の焼肉店は忙しくて忙しくて……そんな日、私にタンを任せるなど正気の沙汰か疑いますね
私はおとなしくドリ刺でもしていたいのですが、赤や白なんてできません
と、専門用語で失礼。ではでは
「なぁなぁ、アルビレオさん」
『はい、どうかしましたか?』
「どうにか外に出たい」
『今は無理ですねぇ』
俺がアルビレオさんの身体を乗っ取ってしまってから早3日、ちょうど退屈を持て余している現状に嫌気がさしてきた所だ。
初めは未知の技術の魔法に興味津々だったけど、やっぱり飽きる。いくら俺が田舎育ちだからってな、行動範囲がアルビレオさんの住居付近だけじゃあ慣れるしよー。
かと言って外に出ようとしても出られない、アルビレオさん曰く「魔力が満ちるまでは無理」だって。そもそもアルビレオさんの身体って今は魔力で構成してるらしいんだよね、その魔力が貯まるまではここからは出られない……大変だなぁ。
『新しく傭兵を雇ったとも聞きましたし、私も収集したいのは山々ですがね』
「暇過ぎる……せめて畑弄りくらいさせろっぺー。オラは退屈が何より嫌いなんだずー」
布団の上でゴロゴロと転がりながらアルビレオさんと会話する。元々はベッドだったけど、俺が布団が良いと言ったら近衛の爺ちゃんが持ってきてくれた。お返しにマッサージしてあげたら喜んでもらえたみたいで良かったず。
「ふぉっふぉっふぉ、相変わらずじゃのうアルビレオ殿」
「あ、近衛の爺ちゃん久しぶりー」
『こんにちは、学園長』
確か転移魔法とか言うので一足飛びに現れる近衛の爺ちゃん。相変わらずすんげー頭部、ウチの畑のナスより立派だげ?
「この前に来た時にの、本来の用事を告げる暇がなかったのでな。再度参った次第じゃよ」
「にしては間、空きすぎじゃね? 爺ちゃんボケた?」
「そうそうそう。婆さんや、飯はまだかのぅ……って、まだボケとらんわい!」
『学園長は、貴方の肉体の方を色々と調べてくださっていたのですよ』
そうだったのか、やっぱ良い人だなぁ近衛の爺ちゃん。後でまたマッサージしたるでなー?
どうやらウチがあまり裕福じゃないため、入院費も馬鹿にならないだろうという配慮から近衛の爺ちゃんが払ってくれてるらしい。それと病院の方に魔法系のスタッフさんを何人か派遣したりもしてくれて……何この爺ちゃん、ナス神様? 外見だけなら七福神でも違和感は少ないかもな。
「あんがとな、近衛の爺ちゃん。爺ちゃんには感謝し尽くしてもし足りないよ」
「何々、元はと言えば巻き込んだワシらのせいじゃからな。これくらいは当然じゃて」
か、神様……! ありがたやありがたや、なんまんだぶなんまんだぶ。お賽銭代わりにマッサージで勘弁してけろ。
「ふぅ、極楽極楽。マッサージ、中々良かったぞい」
「ははっ、なら良かった」
『和んでいるところ申し訳ありませんが。学園長、何か用があったのでは?』
そうじゃったそうじゃった、などと言う爺ちゃんは、やっぱりボケてるんじゃないかなーと失礼ながらに思ってしまった。
「実はアルビレオ殿が休眠しておる間に雇った者の事なんじゃが……」
「俺」と「私」はいちばん書くのが難しいです