「D」ー長門有希の異変ー
ここは長門の部屋だ。
幽霊探索は悪いがまた今度だな。
「…座って」
「あ、ああ。大丈夫か、長門」
「平気。周防九曜による情報攻撃には遠く及ばない拙い物。対処出来る。
既にわたしの中で防御が出来ている。」
すげぇな長門。
周防九曜の攻撃の時からやはりなにか情報攻撃に対する学習とかもしてるのだろうか。
「あなたと二人で話すことはそれではない。
「それ」は既にわたしにとって脅威ではない。
これを見て。」
そう言うと長門は何やら白紙の紙を広げる。
…まさか何も書いてないこの紙に何が書いてあるか当てろとか言うんじゃないだろうな。
長門はペンで何かを書き始めた。
長門「…これがわたしたち情報統合思念体の宇宙」
丸を書いて長門は真ん中に情報統合思念体と書いた。
なるほど、説明してくれるのか。。
「…そして」
隣に小さな丸を描く。
とても中に文字なんて書けそうにないほど小さく、だ。
「これが今回、攻撃をしてきている情報統合思念体の宇宙。
わたしたちには遠く及ばない。
外敵とも見做さない。 正体は不明。
情報インターフェースによる時間平面攻撃である事が発覚。
過去と未来のわたしと同期した結果、
朝倉涼子
の仕業の確率が55%で周防九曜よりも高い。
情報攻撃の時点で周防九曜の可能性は払拭。」
「朝倉…涼子だと!?
お前のバックアップだった、あの朝倉涼子か!?
でもあいつは確かに、お前に倒された後何度か出てきはしたが…
長門と同じ「情報統合思念体」のインターフェースだろ!?
なぜそんな隣の小さな情報統合思念体に…」
「恐らく自由を求め逃げ込んだと思われる。
隣の情報統合思念体も周防九曜ら「天蓋領域」の様に名付けるという概念も沸かなかった。
しかし今朝 情報統合思念体は隣空間を名付ける事を決めた。これも大きな進歩。
彼らは遥か彼方、海の底から宇宙に飛散した生命体
現在情報統合思念体は「潜泳疑念空間」と名付けた。
彼らの意志は支配欲に近い。
朝倉涼子を媒体として地球の支配を目論む可能性がある。
朝倉涼子は潜泳疑念空間と地球惑星を繋ぐバトンの様な立ち位置。
利用されていると言った言い方が正しいと思われる。」
こ、小難しいとか言うレベルじゃねぇ…けど!
カタカナ文字が少なかった、「利用されている」と分かりやすくも解釈してくれた。
俺のために少しでも分かりやすく説明しようと頑張ってくれてんだ、俺だって古泉ではないが理解してみせるぜ!
…質問はあるけどな
「じゃあ、その、せん…潜泳なんたら空間は朝倉涼子、を使って地球を侵略するってことか?」
「…ニュアンスは同じ。
しかし少しだけ外れている。
潜泳疑念空間は地球全土を支配する思惑は持たない。
簡潔に言えば「涼宮ハルヒ」「朝比奈みくる」「古泉一樹」そして、あなたとわたし。
この5名の殺害を目論んでいる。
そしてこの5名を殺して「文芸部室」を取ろうとしている」
「ど、どうしてそんなことを!?」
「あの部屋は既に異空間化している事はしっているはず。
そこに集う力を潜泳疑念空間は欲している。
そうする事による力の拡大、空間の創造。
本当の目的は一つ。隣空間にあるわたしたち情報統合思念体を飲み込むつもり。
そしてそれは宇宙全土の支配を意味する」
「そういう事かよ…。
!
で、でも、それなら俺たちを殺さずともこうやって部室を留守にしてる時を狙えばいいんじゃないのか?」
「それは不可能」
長門は少し残念な顔をした。
このくらいならもう分かる気がした、と言わんばかりに。
…ああそうだった。ごめんな長門。
聞くまでもなかったよな。
「涼宮ハルヒがあの部室を手放したくないと思っているから。
奪うことは不可能」
そうだった。ハルヒはあの部室やSOS団が好きなんだった。
ハルヒが望んでいる「部室」も「仲間」も奪えるわけないんだ。
「でもそれは涼宮ハルヒ自身の力の消失を意味する」
「えっ…?」
「涼宮ハルヒは自分の身よりわたしたちを案ずると思う。
最近の身の回りで起きる異変には少なくとも涼宮ハルヒは無自覚ながら気付いている。
鉄骨が急に落ちてきたり、本棚が倒れてきたり。
それがたまたま助かっていると思い込んでいる。
実際はわたしが涼宮ハルヒにばれないようガードしている」
「まさか、ハルヒのやつ、「自分がその災害の中心」だと思い込んでるってことか!?」
「こくっ」
「そうか、ハルヒは情報統合思念体とか潜泳疑念空間?とやらを知らねーんだもんな。
だからって自分が不幸の原因と思い込むか?
普通さ」
「涼宮ハルヒは無自覚。
けれど涼宮ハルヒの中の力は気付いている。
「何者かが涼宮ハルヒを狙っている」と言う事象に。
しかしその意志は涼宮ハルヒに反映されない。
心に溜まる不安感が疑念を呼び「狙われている」から「私のせいで身の回りに不幸が起きている」と独自解釈。
そのため、ここ何日か涼宮ハルヒは周りのことしか考えていない。
「自分の周りの人間に何も起きませんように」と
まるで祈るように。」
そうか…。だからここ最近は俺の周りでは何にも起きねーんだな。
「何者かに攻撃されている」
と長門が朝っぱらから話してくれたあの日から一週間。
最初の2日くらいは椅子が急に壊れたり電球が落ちてきたり。
全て長門がバリア張ってくれたりハルヒの見てないところだと直接守ってくれたり、俺も気を張ってた。
でもこの5日間は何にもなかった。
てっきり、長門がずっと守ってくれてるんだと思ってた。
ハルヒ、お前だったんだな。
…馬鹿野郎、、俺たちのために自分一人で危ない目に遭いやがって…。
今ハルヒは、長門の力で一定時間だけ超能力の力を強められた古泉とあんまり戦闘面では役に立たないけど朝比奈さんが守っているそうだ。
にしても、この話を知らなかったのは俺だけだったのか。
朝比奈さんは未来から教えてもらったらしい。
古泉は自分で解釈して分かったみたいだ。
俺だけかよ…だから今日話してくれたんだな、つくづくごめんだぜ。
でも、その為だけなのか?
次の瞬間長門の口から想像を絶する言葉が出された。
「わたしの為に戦ってほしい」
秋風が優しくなる季節。
ハルヒの恩恵と長門の努力を俺は無駄にしたくない。
俺に出来ることならなんでもしたい。
そう思い、俺は頷くのだった。
だが俺は未だに拭えないでいた。
1週間前見た謎の小難しい夢の正体。
そして、長門に感じる異変の正体を…。
お気に入りの長門とキョンのやりとりがあるシーンです!