「E」ー涼宮ハルヒの苦悩ー
私がキョンに恋をしたのは出逢った時だった。
私が何をしても離れないキョン。
どれだけ横暴にしても崩れないキョン。
そんな優しいキョンに惹かれるのなんて当然のことだった。
だから
キョンと回りたかったなと思うこともある。
でもみくるちゃんや古泉くんを嫌いなわけではない。
だから、これも楽しい。
有希は羨ましいと思うけどね。
「古泉くんー! なにか居た〜?」
「いえ、こちらには何も居ないようです」
「はわわ、涼宮さん、古泉さん、まってくださ〜い 」
「遅いわよ!みくるちゃん!
さあ!次はどこを探しましょ〜か!」
「涼宮さん、闇雲に探してもこんな昼間から見つかりはしませんよ、相手は幽霊です。」
「それもそうね、良い事言うじゃない古泉くん」
「恐縮です」
古泉くんは少し、微笑んでいた。
「なら、他に何か良い案はあるの?」
「そうですね、僭越ながら…。
仮に僕が幽霊だったとします。
だとすれば第一に「幽霊どこーっ!」と叫びながら走る集団には近づきませんね」
くすりと笑う。
確かにそうね…
「ならどうやって探すと言うのよっ」
「僕なら、まず手始めに商店街を探しません、ここは人が賑わっています。
幽霊ですから、墓場や曰く付きの孤島、人気のない場所が居る確率は高いと思われます」
「えっ、お墓にいくんですかぁ!?
こわいですぅ…」
「大丈夫です、今は昼間。
普通にお墓詣りだと思えばなんら問題はありません。」
「そうね、それも一理あるわ。
確かに商店街にはいなさそうね…
よし!なら古泉くん先頭でお墓までれっつごーよ!
いくわよ!みくるちゃんー!!」
「涼宮さんまってええ」
「ふふ、行きますか!」
私は涼宮ハルヒ。
宇宙人などの人外が好きだけど…
地球人でSOS団と鶴屋さん。
そしてキョン。
これだけは、譲れない。
・・・・・・・・・
私を犠牲にしてでも譲れない、
大切な人たちだ。
ーーーー
長門の部屋で長門は静かに瞑想をしている。
なにやらを唱えて、俺の背中に手を当てている。
遡ること10分前だ。
「お願いがある」
「ん?なんだ?」
「わたしのために戦ってほしい」
今、なんて言ったんだ?
長門が、自分の事を考えて…くれただと!?
「ど、どういうことだ!?」
「あなたたちはわたしがガードする。
だからあなたにはわたしの為に戦って欲しい。
わたしでは出来ない事がある。
それはわたしを軸にしあなたを媒体にする方法であなたの意識を潜泳疑念空間に飛ばすから」
「わかりやすく、説明してくれ」
こくっと頷く長門。
また白い紙とペンを取り出した。
そして、丸を書き…
「これが情報統合思念体。
そしてこっちが潜泳疑念空間。」
「ああ」
「あなたが飛ぶのはこっち。潜泳疑念空間の方。
潜泳疑念空間に現在わたしたちを攻撃している情報インターフェースが帰結している。
わたしたちの帰結方法も今からやる物と同じ。
意識だけを飛ばし、マスターと呼ぶわたしたち情報インターフェースの創造者との会合を試みる。
潜泳疑念空間の情報インターフェースが正確に誰なのかを見たい。
だけれどわたしは情報統合思念体の情報インターフェース。
潜泳疑念空間には飛べない。
潜泳疑念空間に飛べるのは潜泳疑念空間の情報インターフェースか何処にも属さないノットヒューマノイドだけ。」
「むむ…な、なんとか理解した、とりあえず顔を見てこいってことだよな!?」
「そう」
「もちろんだ、やっと、やっとお前の役に立てるんだな!
やってくれ、どこになと飛ばしてくれ!」
「あなたの身の保全は安心してほしい。
わたしはあなたの右目に同期する。」
「なるほど、顔を見てこいと言うか、確認したいから体を貸してくれ、使わせてくれってことだな、よし、いいぜ!」
「……う」
「え?」
ありがとう。
長門からこの言葉を言われるのは二回目だった。
それは俺の心にとても響いた。
「…おう!」
そして今に戻る。
「…ハッキング終了 接続準備 オン…」
(き、緊張する…。どうなるんだ、俺…
未来に飛ぶ時もこんな緊張感だったな…
でも長門が居てくれる。
なんとかなる…よな)
「完了。 今から飛ぶ。準備は良い?」
「ああ、ばっちりだ!」
「そう。では行く」
「転送」
ギュオオオン!!!
きた!!この感覚だ…っ!
意識が遠のく…そりゃそうか、遠くに飛ぶんだもんな…っっ
あぁぁぁああああああああああ
「はっ!!」
「起きた?」
「ここは…?」
「わたしの部屋」
「ど、どうなったんだ!?」
「転送のエナジーに気圧されたあなたはとんだ瞬間気絶した。
あなたの身体だけを借り、右目を使いわたしが確認してきた。」
(お、俺だせぇ!情けねぇ!
役に立つどころかお荷物だった……)
「朝倉涼子本人で間違いなかった。
憶測は仮定に変わり確信に変わった。
わたしはこれから朝倉涼子を消滅してくる。
涼宮ハルヒに不在を疑われないようカバーしてほしい」
「あぁ…それより、すまん長門…」
「…いい」
こうして長門はとある呪文を唱え、身体だけを布団に入れておいてとのメッセージを残し意識を飛ばし何処かへ行った。
恐らく潜泳疑念空間だ。
一度行った場所ならアクセス出来るとか言っていた。
時間は夜中だった。
着歴にはハルヒから50件。
古泉から2件、朝比奈さんから10件、妹から2件。
…心配かけてすまん。
そして長門が行く前に言っていたが家の前までハルヒが来たらしい。さて、どこで何をしていたかをどう説明したものか…。
長門の体を布団に置いた。
今もまさに戦っているのだろう。
「ハルヒや俺たちのため」とは言っているが、これはしていることは「世界を救う」ことだ。
長門たちの情報統合思念体を潜泳疑念空間が乗っ取れば長門よりも遥かに強いインターフェースが生まれるということだ。
しかもそれが戦いの思想持ちと来たもんだ。
こりゃ、地球は滅ぶな。
だから、長門のこの戦いは地球を守る最終決戦だよな。
お前にばっかりそんな役目を押し付けて…。
すまん長門、謝ってばっかりの俺を許してくれ
そう思い残し、俺は長門の部屋に鍵をかけエレベーターを使い外に出た。
目の前に広がる夜の空は情けなく倒れていた時間の長さとずっと付き添っていた長門の苦悩、心配して探し回っていたハルヒ達の苦悩を噛みしめる様な宵闇だった。
涼宮ハルヒの苦悩。
サブタイトルの中では一番気に入っています。笑