Gの軌跡   作:シン•A•クライン

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 三月二日、誤字修正。
三月四日、内容改変。


覚醒

 程なくして、少年は公園に到着した。辺りは閑散としていて、色鮮やかな花壇があった。少年は疎外感を感じた。しかし、この状況は少年にとって好都合だ。人がいれば嫌でも気をつかう、それに頭がひどく痛む状態で人の声があることはおっくうだ。木の下に椅子があった。木の葉は大人しかった。日陰にあるベンチに向かい、ベンチへランドセルを投げる。

___物を丁寧に扱いなさい。

祖母は少年に口酸っぱく言った。祖母が少年に繰り返して伝えることはたいてい字面だけでは測れなかった。

___物を大事に扱えない者は人に優しくできない。

真意を祖母は教えなかった。祖母の伝えたかったことを少年はそう解釈した。しかし、今だけはそれを守る気にもならない。ムカムカする気持ちを解消するには物に当たることしか思いつかなかった。ベンチに乱暴に座る。頭痛が強まった。少年は自身がいらついている理由が分からなかった。頭の痛みは関係はないはずだ。関連していたら少年は風邪を引くたびにこの気持ちを味わうのだから。なぜか沸々と湧き上がって来るのだ。赤い物が。解き放たれたら制御できない代物、ひどく危ないものに感じた。無意識に唇を切っていた。鎌首をもちあげたそれは少年の体に変化を起こした。風が体を優しく撫でる。小さき物の唄が聞こえる。花の香りがする。鉄を感じる。景色が広がる。己が研ぎ澄まされていく。頭痛は忘れ去られていた。

___今なら何でもできる気がする。

少年は初めての感覚に酔いしれた。

___異世界に迷い込んだようだ。

チリッと首に何かを感じた。後ろを振り返る。草陰に目を凝らした。目と目があった。地面を蹴る音が聞こえた。黒い巨人が駆けてきた。

 

 

 

ホテルの一室に男たちがいた。机には紙が散乱していた。部屋の隅にはスーツケースが置かれ、黒い鉄がはみ出していた。

 

「作戦内容を確認する。明日、我々は作戦を決行。目標をコードGⅡとし、下校中のGⅡと接触し捕獲する。依頼主は無傷でこちらまで届けて欲しいようだ。よって、殺傷能力を持つ武器をGⅡに使用するのを禁ずる。なに、楽なことさ。GⅡには卓越した戦闘能力はないとされている。せいぜい、武偵の強襲科のDランクレベルだ。HSSにも目覚めてないそうだからな。こいつは成功するだろう。問題はGⅠだ。こいつが鬼のように強い。さすがは鬼検事の息子といった所だ。俺がサシで殺り合っても五分五分だ。いいか、この作戦の肝はいかにこいつを抑えることができるかにかかっている。決して殺り合おうと思うなよ。足止め、時間稼ぎを目的にしてやれ。GⅠは実家にもう帰省しているはずだ。よって、そこで交戦しろ。そいつの祖父母がそこに住んでいるから、そいつらをちょくちょく狙えば、GⅠも本気を出せないはずだ。そいつらを守るはずだからな。こちらは、火器を使用するのを許可する。おおっと忘れていた。祖父母も年とはいえ強いからな。特に祖父の方は俺らにとってトラウマの相手だ。いや、本当にこの一家は恐ろしいな。こちらの揺動班は貧乏くじに違いない。なので、こちらは俺が指揮する。足を引っ張るなよ。少しでもミスしたら、現世からさよならだ。捕獲班はお前が指揮しろ。そっちはお前に任せる。素早くな。そうしないと、武偵やら警察やらがたくさん来るぞ。...大まかにはこれぐらいだ。詳しいことはもう各自頭に入れているだろ。なんか聞きたいことあるか? 」

 

「あります。なぜ我々はGⅠが武偵校にいるときにGⅡを捕獲しないのでしょうか? 作戦ですと、目標は実家に近いので万が一逃げられる可能性がありますし、なにより目標の兄を足止めする必要があります。これは非常にリスクが高くありませんか? 」

 

「...どちらも危険なことには変わりはない。ただ、前者の方が退路を確保しやすい。後者はしにくい。GⅡは兄が帰ると分かれば家へすぐ帰るそうだ。ブラコンだな。___GⅡが家に帰るのが遅かったとき、祖母がGⅠに電話をしたそうだ。するとな、GⅠは捜索願いを警察、武偵校に出したそうだ。警察はもちろん取り合わなかったが武偵校は違った。くくくっ...おもしろいぞ。なんと依頼の報酬が一千万円だ。破格で簡単な任務だ。当然金欠な武偵の学生は食いつくし、中には教務課の一部も参加したそうだ。んで、結末はなんとあの小僧はきれいなお姉さんとお茶をしていたそうだ。意味不明だよな。どうすれば、ガキんちょが美人さんとデートできるんだよ。奴は女たらしだ。しかも天然だ。うらやましいぜ。俺もルックスが良ければ...」

 

「___あなた見た目はいいでしょうが。それにそんなつもりがないくせによく言えますよ...なるほど、つまりGⅡになにかあれば武偵がすぐ来て敵になると...根本的になぜこの任務がこの時期なんですか? GⅠが長期任務を行う間にすればいいじゃないですか。そうした方が楽でしょ」

 

「依頼主のせいだ。俺のせいじゃない。あいつはいつも無理難題をふっかけてくる。一週間以内にやれだと。失敗したら、援助するのを止めるだと...まあ、いいじゃねえか。しばらく軽い仕事ばかりだったんだ。たまに、難しいのやらないとなまるし」

 

「不可抗力ですね。...お答えありがとうございました」

 

「おう、他はもういいか? んじゃ、解散」

 

 

「「「「「「「「「了解」」」」」」」」」

 

 

___彼らは非常に運が悪かった。少年はその日HSSに目覚めたのだから。

 

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