Gの軌跡   作:シン•A•クライン

3 / 4
 「プロローグ」、「覚醒」共に改変しました。私は未熟なため随時このような動きがみられるでしょう。これからもよろしくお願いします。


初陣

 男は冷静だった。予期してないことに遭遇し、正しく対処できる者は少ない。男は一流だった。

 ___ならば、男と渡り合う少年は?

 

 大きい男だ。筋肉の形、肩幅を考慮して男と判断した。ずうたいがでかい割に存分素早い。少なくとも素人ではない。厳しい訓練を積んだ優秀な兵士だ。顔はフードで隠されていた。正面から見たら、武装してないように見える。

___速い! 離脱は無理だ。

少年は逃げることをあきらめた。そもそも、子供と大人では脚力が雲泥の差だ。しかもこれほどのやり手に背をさらす真似はしたくなかった。少年は腹をくくった。格闘を行う場合相手の性別でおのずと対策が決まる。女の場合、一撃が比較的軽くガードできればせいぜい腱や筋肉を傷めるだけだ。絞め技をされても力が弱いので完璧に入らなければ抜けられるはずだ。代わりに柔軟性が優れているので、自由度が高い攻撃できたり、こちらの攻撃を避けやすかったりする。注意深くいる必要がある。...少年も子供だから柔らかいが。それに女である時点で実力者のはずだ。男女の垣根は広い。それを覆すほど強いということだ。男の場合、少年にとってどんな攻撃も致命傷になり得る。少年が反撃してもダメージは少なさそうだ。基本回避重視で急所狙いのカウンターがいいだろう。もしくは格闘のラッシュで息をつかせず攻める。...兎に角、機動性を生かして相手に隙ができたときが勝負だ。少年は凄まじい速さで思考していた。相手が接近している間に。

___ちょうどいいや。今はすこぶる調子がいい。目的は分からないけど...やっつけてやる。

 少年の初めての実戦が始まった。

 

 ___俺が発見されるとは...勘が鋭い。

男の隠密は優れていた。対象に己の気配を気取らせず、ぎりぎりまで近づく。子供であっても手を抜くことはしなかった。落ち度はないはずだ。少なくとも行動に移る前に発見されることは、男にとって初めてであった。

___後手にまわったが仕方あるまい。気絶させる。

牽制をせずにいっきに少年の元へ近づく。無傷で捕獲せねばならない。狙うは首だ。ステップを刻み少年の視界から男は外れた。少年の視界に入るよう小石を投げる。少年の視線がそれに向く。男は少年の背後に移動し首を絞めた。...かのように見えた。

___少年がいない。

男は驚愕した。息つく暇もなく、蹴りが迫って来る。男は後ろへ飛んだ。

 

「ぐっっ」

 

 腹に衝撃を受けた。それによりたたらを踏む。威力はなかった。バックステップをしたことが功を制したようだ。追撃はなく、目の前に少年が君臨していた。

___おいおい、冗談だろう。諜報部は何してやがる!

男は情報が正しくないことに悪態をついていた。少年に反撃を貰うことなど予想していなかったからだ。

___こいつ...強襲科のAランク並みじゃないか。下手すりゃSだ。

少年は強かった。対峙する男と同等ぐらいに。そうなると意識を切り替えなければならなくなる。迂闊に攻められない。男は少年に既視感を感じた。人が発し得る段階を超えた重圧。

___まさか...HSSの状態なのか!?

想定外にも程がある。仮に少年がHSSを扱いこなせるのならば、男の勝ち目は薄い。しかし情報によれば、つい最近までHSSに到達していないはずでかつHSSの存在自体を知らない...らしい。実際、男自身少年を観察しても全くHSSの素振りを見なかった。学校で同級生である美少女の下着を見ても、美人なお姉さんの胸を触っても、あられもない少女たちの水着姿を見てもだ。...男はイラついた。

___Fuck you! ふぅ、落ち着け俺。...トリガーが特殊なのか?

 

  HSS<ヒステリア・サヴァン・シンドローム:返對(へんたい)>

 Gの血族<コラテラル・プロス>だけが持つ遺伝特性。βエンドルフィンが一定以上分泌されると神経伝達物質を媒介し大脳・小脳・精髄といった中枢神経系の活動が劇的に亢進され、その結果HSS時には思考力・判断力・反射神経などが通常の約30倍にまで向上する。βエンドルフィンの生成条件は、一般的には性的興奮をすること。また人によってはβエンドルフィンの分泌要因は異なる。研究により美術品に触れることでβエンドルフィンが生成されるケースが判明した。

 

 HSSは長時間発動できる代物ではない。脳に莫大な負荷がかかるからだ。以上から少年は少なくとも現在から数十分の間にHSSのトリガーを満たしたことになる。

___帰りの会、下校時に特筆すべき点は見当たらなかった。強いて挙げるならば、通常に比べ全力疾走した位だが...

冷静に己の現状を把握することに努める。しかし、それもここまでだった。陽気な声が響いた。

 

「攻めて来ないの? 考える時間は十分にあげたよね。なら、次は僕からと言いたいけど...あと二人隠れているよね? 出てきたら? 」

 

二人姿を現した。

 

「ご名答だ。隠れんぼはお得意かな? 」

 

「うーん...どうだろう? 普通だと思う。僕は鬼ごっこの方が好きだな。あっ、追う方ね」

 

「それは残念だな。君は今から追われる側なのだから」

 

「上等! 僕を楽しませてよ。オジサンがた」

 

「はっ、速攻で捕まえてやるよ! 」

 

大人と子供の鬼ごっこが始まった。

___少年は敗北した。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。